それじゃ、今日から行政法の勉強を始めるわね! 
光ちゃん!
昨日予習しようと思って、六法開いたら、あたしの六法全書には「行政法」が載ってなかったんだお!
  ・・・ふ、ふ、藤先輩。
ナニそれ?
まさか、予習してきませんでした・・・の言い訳?

『行政法』という法律学分野はあるけど、『行政法』という名前の法律が存在しないのは、あんたの買った教科書の冒頭に書いてあったんじゃないの?
そっかっ!
謎は全て解けたよ!
危うく有斐閣に落丁ですって連絡しちゃうとこだったからね!
  行政法って名前の法律がないなんて常識でしょ?
行政法は、ザックリ言っちゃうと「行政にかかわる法律関係を全般的に扱う科目」よね。

行政法」という名称の法令は、たしかに存在しないわ。
でも、行政にかかわる多様な法令の存在はあるの。
憲法を始めとして、法律、政令、勅令、府令、省令・・・これらののうち、行政に特有な個別のの集まりが行政法と呼ばれるものなのよ。

行政手続法、行政事件訴訟法、行政組織法、行政不服審査法等を中心として、事案毎に個別法を検討することになるわ。

行政法(学)とは、これらの行政に関するに共通する原理、一般的に用いられる行為形式、一連の行為形式によって構成される制度、行政に関する不服手続きについて学ぶことなのよ。

じゃあ、常識問題を一つ聞こうかしら?
公務員の数は、2000年から2009年にかけて増えてると思う? 逆に減ってると思う?
  1999年    2009年 
 国  114万人 ⇒  65万人
 地方  325万人 290万人
公務員の数は、国・地方、共に減少傾向にあります。
これは、20世紀初頭から中盤にかけての福祉国家現象と行政が肥大化したことによる財政支出の増大と財政赤字の恒常化を受けた第二次臨時行政調査会以降の行政改革による効率化、スリム化、民間化に伴う結果です。
行政の肥大化・・・近代立憲主義の変容参照)
黒田さんへの質問じゃなかったんですけど・・・
まぁ、いいわよね。

行政改革のトピックとして有名なのだと、郵政民営化国立大学法人化などが挙げられるわね。
公務員の数の減少の結果、その受け皿として民間業者が行政の仕事を受け持つことになったんだけど、この民間業者と行政との関係についても行政法において論点として学ぶことになるわね。
(・・・や、や、ヤバス。
 クロちゃんの参入によって展開が早まりそうな危険な予感が・・・)
明智さんの御質問が、あまりに低レベルだったせいで、藤さんが呆れてみえますよ?
え?
・・・だって、サルが「行政法が六法に載ってない」なんて、トンでも発言するもんだから・・・ 
明智さんは、藤さんの冗談も分からないんですか?
(・・・サルだけに冗談じゃないと思うんだけどなぁ)

そ、そ、そうですよね。
それじゃ、行政の目的について、まとめますね。

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」(憲法前文第1項

この憲法前文第1項に、行政の目的は示されているわ。
憲法は、行政が国民の福利、すなわち、国民の人権保障に仕えるところに、その存在理由を見出すものなのよ(憲法ってなに?A参照)。
  こくこく(相槌)
行政の手法については、3つの視点が大事とされているわ。
それぞれの視点について、抽象的にまとめるより、具体的な質問をするから、それぞれどういう行為か考えてみてね。

あ、黒田さんには、ちょっと退屈な質問になってしまうと思いますけど、サルやナカちゃんの勉強と思って、付き合ってください。

質問
今からいう3つの行政手法の違いを、行政による一方的な行為かどうか、という観点から考えてみて
  (コクコク)(相槌)
 
例1  都道府県知事    伝染病患者 
    入院措置  
例2 市町村長 住民
    避難勧告  
例3 市    文房具店 
    鉛筆の売買契約締結   
って感じかな。
上の3つの例の場合が、それぞれ行政による一方的な行為かどうか、という観点から考えてみて
行政による一方的な行為かどうか、つまり、行政が優越的な地位に立って行う相手方に対する一方的な行為かどうか、という視点からの回答を求めてみえるんですね。
権力性の有無に着目して考えれば、答えは自ずと導かれますね。
なんかムズカしいこと言ってるのはワカッタ・・・。
そう考えますと・・・。

例1は、知事が患者に対して入院措置をとらせているから、行政による一方的な行為、つまり、権力的行為ですね。

例2は、避難勧告ですか。
勧告なので、避難するよう勧める、というものなのだから、行政による一方的な行為とまではいえないので、非権力的行為、という理解でいいのでしょうか?

例3は、市であっても、文房具店との売買契約対等な契約になるので、これは非権力的行為でいいと思います。
例2避難勧告について、少し疑問に思っているようだから補足しとくわ。避難勧告は、行政法の講学上行政指導って呼ばれるの。

行政指導とは行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいうけれど(行政手続法第2条6号)、行政指導はあくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることを前提としている(同法第32条1項)のよ。

そうした行為であることから、非権力的行為に分類されるという理解ね。
まったくそのとおり。
質問出した私も、まだ行政法の導入だから、そこまでの回答は求めていなかったんだけど、バッチリね。
ちょちょちょ・・・
あたし、考える時間さえなかったんだけど・・・
藤さんには、こんな質問、考える時間さえ必要ないってことですよね?
え?
え?
どこをどう縦読みしたら、そんな理解になった?
 じゃあ、次の視点も、同じように具体的な場合を想定して考えて。
例4  都道府県知事
(保健所長) 
  飲食店経営者
    営業許可  
例5 都道府県知事
(保健所長)
飲食店経営者
    営業許可の取消  
上記2つの場合の、行政手法の違いを、行政の行為を受ける側の立場から性格づけて考えてみて。
行政行為を受ける側からの視点、つまり、受ける側にとって、利益的行為か、不利益的行為かどうか、という視点からの回答を求めてみえるんですね。
ああああっ!
あたしに言わせて、言わせてっ!

例4は、許可下りれば営業できるようになるから、受ける方からすれば利益的行為でしょ?

んで、例5許可取り消されたら、受けた方は営業が続けらんなくなるんだから、不利益的行為でしょ! 
 
  こくこく(相槌)
藤さんには、簡単すぎですよね。
早く済ませたいから、言わせて欲しくなっちゃう気持ちわかります。
え? あ、うん・・・

(ぶっちゃけ、これ答えないと今日なんも答えられない気がしただけなんだけどなぁ)
受ける側の視点も大事だからね。
サル、その視点は大事にしてよ!
じゃあ、最後に3つ目の視点も、同じように具体的な場合を想定して考えてみて。
例6  都道府県知事
(保健所長) 
  飲食店経営者
    営業許可の取消  
例7 市町村長 住民
    避難勧告  
上記2つの場合の、行政手法の違いを、権利義務の変動という面から性格づけて考えてみて。
権利義務の変動、つまり、権利義務ないし法的地位を変動させる法行為か、それとも、これらの変動を生じさせない事実行為かどうか、という視点からの回答を求めてみえるんですね。
その視点からのアプローチですと・・・。

例6は、営業許可の取消により、権利義務に変動が生じているわけですから、法律行為になりますね。

例7は、さっき学んだ避難勧告ですので、権利義務ないし法的地位に変動を生じさせないものということですよね。
さっき、黒田先輩が、避難勧告は、行政指導であって、あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであるって言ってみえたので、そうなるかと。
つまり、避難勧告事実行為という理解でいいのでしょうか?
うんうん。その理解でいいわよ。

今、具体的な事案から考えた3つの視点は大事にして欲しいの。
行政法の論述においては、それぞれの立場からの主張を聞かれることがあるから、それぞれの行為が、どういう行為なのかを考えること、そして、それぞれの立場からの視点を持つことが大事になるのよ。

なんだか今日は、随分とスムーズに進んだわね。
少し短い気もするけれど、それじゃ今日はここまでにしましょうか。
うんうん!

(た、た、助かった・・・コレは予習してこんと軽く死ねる・・・)
  え?
もう御仕舞なんですか?
まだ始めたばかりじゃないですか。
私としては、まだ別に続けても構わないんですけど、サルが集中力切れているみたいなので・・・。 
そうですか。

(この人、なにかあるとすぐに藤さんのせいにするんだ・・・)
でも、今日一緒に勉強して、黒田さんが随分勉強してみえるのが判りました。とても頼もしいなって思いました。 
・・・・。

(あたし、ぶっちゃけ、このメガネいらないって思ってるんだけど、どーしよ・・・)
藤さんが、せっかく誘って下さった勉強会で、足引っ張っちゃダメだって思って、しっかり予習してきましたからね。
ね、藤さん。
・・・・。

(ヤバス。このメガネ、何気にスペック、クソ高いよ・・・。こりゃエラいの誘っちゃったかな・・・)
・・・・。

(黒田さん、サルのこと少し過大評価してるみたいだけど、サルがその期待裏切らないようにと勉強に励んでくれるかも知れないから、今は黙ってよっかな。) 
あ、それじゃ藤さん。
少し今日の行政法の勉強のまとめをして帰りませんか?
このままじゃ物足りないですもんね?
  お、お、おう・・・。

(ボスケテ!)

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