公法私法二分論の克服 | ||
今日は、行政上の法律関係への民事法規定の適用問題について勉強しましょうか。 その前に、行政法の課題について考えたいと思います。 まず、下の図を見てください。 |
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(※ 大臣の部分は、知事・市長等に置き換えて捉えても可。) 行政主体は、行政庁(大臣・知事等)と、その行政庁を支える補助機関、そして、それらに対して第三者的立場から助言を与える第三者機関という行政機関から構成されていますよね。 そして、行政庁は、国民に対して法的行為を行うわけです。 「機関」という言葉の定義についてですが、「機関」とは、「ある自然人の行為が、その背後にある主体の行為とみなされるときは、その自然人のことを機関と呼びます。 行政法の課題とは、この行政主体たる国家と私人との関係を法的に構成し、行政作用に関する法的コントロールを及ぼすことにあるのです。 |
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要は、行政が好き勝手しないように、法で縛っとくってことだね? | ||
まぁ、ザックリ言っちゃうと、そういうことだけど・・・ あんた、ホントそういう安直な理解の仕方が好きよね・・・ どうかと思うけどなぁ。 この「行政機関」の行政法学上の把握の仕方として、「作用法的行政機関」と「事務配分的行政機関」という2つがあります。 作用法的行政機関とは、行政主体のために、行政活動を行うべき地位の権限の配分に着目した把握の仕方です。 行政主体を構成する、行政庁、補助機関、諮問機関、参与機関を、行政機関と把握します。 私たちが学ぶ行政法では、この作用法的行政機関として把握することになります。 これに対して、行政の事務配分に着目して、官房、局、部、課、室(国家行政組織法3〜5条、7条、9条)という受け皿で把握する行政機関概念を事務的配分行政機関といいます。 実務では、この把握の仕方が用いられます。 相手方国民に対して、どのような権限を「誰が」もっているのか? という視点から、行政機関を把握するのが作用法的行政機関。 ある事務は、行政組織のどの部署にふり分けられるのか? という視点から、行政機関を把握するのが事務配分的行政機関。 という、それぞれの把握の仕方の違いがあると、まとめられると思います。 |
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うみゅ? ムズカシイ・・・ |
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さて。 それでは、本日のメインテーマの、公法私法二分論(「公法私法二元論」とも呼ぶ)の克服について、まとめたいと思います。 公法私法二分論とは、実定法を公法と私法とに二分して、公法関係たるところに行政の独自性と異質性を認めて、行政法特有の解釈原理を導き出す、という考え方なんです・・・が! 法律関係を、ザックリと、公法関係か、私法関係かに二分して、取り扱うことが果たして妥当な考え方といえるのだろうか? という疑問が生じることとなるわけです。 |
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権力関係の事案だから、公法が適用。私法は排除。 といった考え方は、明確である反面、硬直的な考え方であると言えますよね。 また、当該事案の解決において、そのような考え方が妥当する場面ばかりではないというのが、現代行政の抱える現実ですよね。 |
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そうですよね。 だから、今は、公法私法二分論は採用せず、紛争解決にあたって適用する法規は、個別・具体的な、法律関係の実質に即して判断すべきであるという考え方がとられているのです(公法私法二分論の克服)。 |
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今は使わない考え方だって言うのなら、最初っから言わなくていんじゃね? | ||
実用的な意義は乏しいけれど、行政法を学ぶ上で、かつて当然のようにあった考え方をどのように克服してきたのか、という視点は、判例を検討する上で必要なのよ? うーん、それじゃ、公法私法二分論を克服して、紛争解決にあたって適用する法規は、個別・具体的な、法律関係の実質に即して判断すべきであるという考え方が、どのようなものかを理解するという意味で、ちょっと難しい判例だけど、別府農地買収処分事件見ちゃおっか。 |
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権力関係の事案ですね。 かつての公法私法二分論ならば、権力関係であるということから、私法の適用がバッサリ切られることとなるわけですが、当該事案では、どのような判断がなされたかを、実際の判例から学ぶということですね。 |
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そうです。 ほら、サル! 判例検討するよ! 百選開いて、開いて! 別府農地買収処分事件ね。 (最判昭和28年2月18日 百選T 9事件) |
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お陰様で、いい判例検討が出来ました。 ありがとうございます。 |
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チカれたびぃ〜 | ||
いつも、あんなに食べてるのに、なんでそんなに体力ないのよ? じゃあ、次の検討判例は、事案の簡単な説明だけにしてあげるから。 ちゃんと聞くっ! 権力関係の事案において、私法の適用があるかどうかが問題となった判例としては、コッチも抑えとかないといけないという判例があるの。 富山租税滞納処分事件って事案ね。 (最判昭和35年3月31日 百選T 10事件) |
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国税滞納処分において、民法177条が適用されるか? という問題を扱った事案ですね。 『国税滞納処分においては、国は、その有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであつて、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、あたかも、民事訴訟法上の強制執行における差押債権者の地位に類するものであり、租税債権がたまたま公法上のものであることは、この関係において、国が一般私法上の債権者より不利益の取扱を受ける理由となるものではない。それ故、滞納処分による差押の関係においても、民法一七七条の適用があるものと解するのが相当である。』 と最高裁は判断していますよね。 |
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つまり・・・ 国税滞納処分は、典型的な権力関係ではあるけれど・・・ 公法私法二分論を採用するのではなく、民事法上の行為と変わらないという実質面を捉えて、その実質に即して民法の適用を認めた・・・ということですね? |
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ナカちゃん、理解できてる! うんうん、その通りよ。 あ、黒田さん、判例の御説明ありがとうございました。 |
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ナカたんまで、あたしを置いてくつもりだお・・・ | ||
ナカちゃんがノッてるみたいだし、やっぱり判例検討は、しっかりしちゃう? じゃあ、この重要判例がいいかなぁ。 民法の債権総論でも御世話になる判例だけど、行政法においても、百選掲載の重要判例だから、ドチラにせよ、いずれ検討することになる判例だし今見ちゃおうか。 自衛隊員事故国賠請求事件ね。 (最判昭和50年2月25日 百選T 37事件) |
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・・・判例は難しいし、光ちゃんは顔に青筋入れてるし・・・ | ||
藤先輩も、ちゃんと聞いていれば、私みたいに少しずつでもワカルと思います・・・。 | ||
あ、藤さん。 私の携帯を一緒に共同使用するってことではダメですか? 携帯シェアなんて、すごく仲良しみたいじゃないです? |
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黒田さん、甘やかせると際限なく付け込まれますから、ヘタなこと言わないほーがいいですよ。 サルぅ。 確かに、今日の判例は難しいのが多かったから、集中切れちゃったのはワカルから、後の論点は、この次にしましょ? それなら、いいでしょ? |
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う〜ん。 多分、体力低下も原因かも・・・ 毎日、モヤシ炒めじゃ力が出ないんだね、きっと。 |
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藤さん、そんなに切り詰めてみえるんだ・・・ | ||
じゃあ、少し早目に切り上げたから時間あるし、学食行こっか。 サルの食べたいモン御馳走したげるね。 |
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あ、今、学食は御当地フェアで、期間限定メニュー一杯ですよ。 | ||
えぇ〜。 私、優柔不断だからメニュー多いと迷っちゃって決めれないんですよね・・・ |
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迷ったら全部頼めばいいんだお! あたしは、もう今日メニュー全制覇するつもり満々だお! 一週間分の栄養を今日とってやんよ! |
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学食のメニュー、60種類はありますよ? | ||
ナカたん? 大盛りと、普通盛りは別勘定にしないと。 正確には86種類だね! |
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ナニ!? そのまるっきり無駄な知識はっ!? |
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見直した? | ||
ある意味ねっ!! |