行政上の義務履行確保の新たな手法
はい、それじゃ今日は行政上の義務履行確保手段の最後の勉強会にするわね。

今日学ぶ論点は、行政上の義務履行確保の為の新たな手法として

@給付拒否
A公表
B違反金


という制度をみていくことにするわ。
ソレ、ちょい前に名前だけ出て来たよね?
そうね。
チイちゃんが、近時新たな手法として条例による義務履行確保手段として言ってくれたからね。
今日の勉強会では、ソレを見ていくってことね。
まーた3つも出てきちゃったよ。
言っておくけれど、このあたりは決して疎かには出来ないところよ?
現に、過去の新司法試験の論文でも問われているところだからね。
  ですね。
詳しいことは、また後で話すつもりでいるけれど、大事なところだと思えばこそ、回を割いて丁寧な説明に努めたつもりでいるわけだからね。
・・・。

(あたし、途中棄権があるやないかお!
 なんで、そんな大事なことを今更言うんだお、このアホは。)
・・・。

(まさかまさかの責任転嫁がきたです!)
ソレじゃ、先ずは@給付拒否からね。

給付拒否とは、行政側から見て、私人の対応に不適切な部分があるとき、上下水道、電気、ガス等行政サービスの給付の拒否をすることで、私人の対応の是正を図り、あるいは、このような手段を留保することにより、予め私人の行動を規制しようとするものをいうわ。

ただ、この給付拒否は、義務不履行を前提としないものであることから、厳密には義務履行確保の手段ではないわけだけどね。
ちょ、ちょ・・・。
水道や電気なんて、めっさライフラインとして重要やないかお!
なんか、かなりえげつない気がしてまうんだけど・・・。
そうよね。
このような拒否は、当然みだりに許されるものではないわ。
では、どのような場合に許されるものなのか・・・ということは学ぶ必要があるわけよね。

ソコで、水道給水拒否給付拒否の許容性について考える判例を見てみることにしましょうか。

検討判例は、志免町水道給水拒否事件ね。
最判平成11年1月21日 百T(5版)96事件
  (ジトォ〜)
  ひ、光ちゃん、次いこ、次っ!!
ナニを取り繕おうとしてんのよ。

ソレじゃ、行政の義務履行確保の新たな手法である@給付拒否は見たから、次はA公表ね。
新司法試験の論文でも問われた公表ですね。
そうね。

公表とは、義務の不履行あるいは行政指導に対する不服従があった場合に、その事実を一般に公表することをいうわ。
「バラされたくなかったら、やれや(ニヤリ)」
ってことだね?
その理解は乱暴ね。

というのは、この公表は、次のような分類がなされるものなのよね。

情報提供としての公表
制裁としての公表
義務履行確保の手法としての公表


という分類ね。
  どう違うの?
情報提供としての公表は、ニュース等での公表をいうわね。
一般情報としての公表

義務の不履行に対して公表されると、制裁としての公表ってことになるわね。

義務履行確保の手法としての公表というのは、さっきサルが言ってくれたものになるわね。
公表しますよ?」
と相手に伝えることで相手側の履行を促す、というものね。
因みに、制裁としての公表、義務履行確保の手法としての公表については、法律の根拠が必要、ということになりますね。

これは、公表されることは、公表される相手方にとっては社会的地位や信用を失墜させる可能性があるという不利益なものであることから、義務履行確保のための公表制度を設けるには法律の根拠が求められるってことですよね。
そうね。

法律の根拠も必要だけど、一旦、公表されてしまうと社会的に大きなダメージを被ることになってしまうから、事前手続きの整備直接の利害関係者に意見提出を認める等の措置も必要よね。
あ、私は今、公表について『不利益なもの』という表現をしたのですが、この公表に処分性を認めるか、については意見が分かれるところですね。

通常は、事実行為という理解が一般的なんですが、制裁としての公表については処分性を認める、という考え方もありますね。
公表は、義務履行確保の手段としての実効性が期待されるものであることから、義務履行確保のルートとして近年よく用いられるものとなっているわ。

代執行や直接強制は条例では定められないから条例で定められる公表が用いられるとも言えるわね。
新司法試験の過去問では、実効性のある義務履行確保の為には、どのような条例を設ければいいか
といった論文設問もありましたよね。
(※ 平成23年度新司法試験 公法系第2問【設問3】
そうね。
でも、アレってもう法解釈ではなくって立法論じゃない。
いくら行政法が、政策実現の為の手段法だから立法論とは切り離せないって言っても、正直そこまで踏み込んだ勉強はしていないものねぇ。
ですよね。
試験現場で、あんな問題と直面したら固まっちゃいそうですよね。
落ち着いて、よくよく設問を見てみれば、あぁコレは立法論じゃなくって解釈論の問題ってワカルんでしょうけど、ソレはゆっくり問題を見る余裕があるからこそ気付くものであって、緊張してる試験場の、ソレも最後の設問で、あんな問われ方されちゃったら、それこそもうパニックよね。
私も間違いなく混乱しちゃいそうです。
あの設問は、ここまでの勉強会で学んだ行政代執行法による執行を可能とするような代替的作為義務を相手側に求める規定条例におくとか、今日学んだ論点である公表制度によって義務履行の実効性を図る、といった検討が求められた問題だったんですよね。
うんうん。そうね。
まぁ、だからこそ細かく見てきたつもりだったわけなんだけど・・・。

実際問題、試験を作る方だって答案にすることを考えて出して欲しいわよね。
採点実感で、あーじゃない、こーじゃない、って言うばっかりじゃなくって、模範答案という形で示して欲しいって思うもの。
じゃあ、実際どんな答案を書けばいいの?
って思うものねぇ。
ホントそうですよね。
あ、でもすごい時間かけて答案作成されたものを「どうよ?」って見せ付けられても困りませんか?
試験には制限時間があるわけですし。
そうよねぇ。
限られた時間内での競争だものねぇ、試験は。
おいおい、いつまで新司法試験の「あるある」話してんだお。
気持ちはワカルけど、そのへんにしとけお。
あら、いけない。
なんか言わなくっていいことまで言っちゃってたわね。

それじゃ、今日の最後のB違反金について説明するわね。

違反金は、義務の履行を直接図るものではないという点で、強制徴収とは異なるわ。
そして、この違反金には、課徴金加算税とがあるわ。

課徴金とは、違法行為によっての予定しない利得を得た者に、当該利益を帰属させない為に、国家がこれを徴収するものをいうわ。
加算税とは、納税義務者が申告・納付等の法律上の義務を果たさない場合に課されるもので、税務署長の賦課決定により義務が確定するものをいうわね。
この違反金については、同一の行為に対して刑事罰則が定められていることから憲法39条に定められる二重処罰禁止原則にあたるのではないか、という論点がありますね。

ただ、この問題については、加算税は行政上の措置であり、反社会性に対する制裁として科されるものではないから違法ではない、と解されていますね。
最判昭和33年4月30日 百T(5版)116事件

 課徴金につき最判平成10年10月13日 百T(5版)117事件
つかさちゃん、いつもナイスフォローありがとうね。
いえいえ、いつも勉強会に参加させてもらっているんですから、私にも補足できることは・・・って思っているだけです。
参加させてもらっている・・・なんて、そんな言い方しないで欲しいわ。
私だって、つかさちゃんが来てくれると嬉しいもの。
そ、そう言って貰えると、なんだか嬉しいですね。
おいおい。
ナニ、いい話で締めて、新司法試験への不満をダラダラ言ってたことを水に流そうとしてんだお。

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