最判平成11年1月21日
〜志免町水道給水拒否事件〜
はい、ソレじゃ配役からね。

志免町にマンション建設計画をした不動産会社を、サル
志免町(行政)を、つかさちゃん
ナレーターを、が務めるわ。
よーし、あたしはこの町にドカンとマンションを建てるお!
そうと決まれば、建設予定戸数分の給水を町に申し込んでおかないとね。

はい、お忙しいとこ失礼すんお!
うちの会社は、この町に420戸のマンションを建設すっから、その戸数分の給水を申し込ませてもらうお!

不動産会社

町(行政)
420戸分の給水申込みですか!?
だおだお。
不動産会社

町(行政)
えーっと、町で検討させて頂いたのですが、御社の給水申込みについては、拒否させて頂く事にします。
ほげっ!?
ナニナニ、そんなことが許されるとでも思ってんの?

不動産会社

ナレーター
ここで少し関連法令を見てみることにします。

水道法

(この法律の目的) 第1条
 この法律は、水道の布設及び管理を適正かつ合理的ならしめるとともに、水道を計画的に整備し、及び水道事業を保護育成することによつて、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もつて公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的とする。




(責務) 第2条
1項 国及び地方公共団体は、水道が国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないものであり、かつ、水が貴重な資源であることにかんがみ、水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持並びに水の適正かつ合理的な使用に関し必要な施策を講じなければならない。
2項 国民は、前項の国及び地方公共団体の施策に協力するとともに、自らも、水源及び水道施設並びにこれらの周辺の清潔保持並びに水の適正かつ合理的な使用に努めなければならない。




(給水義務) 第2条の2
1項 地方公共団体は、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、水道の計画的整備に関する施策を策定し、及びこれを実施するとともに、水道事業及び水道用水供給事業を経営するに当たつては、その適正かつ能率的な運営に努めなければならない。
2項 国は、水源の開発その他の水道の整備に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを推進するとともに、地方公共団体並びに水道事業者及び水道用水供給事業者に対し、必要な技術的及び財政的援助を行うよう努めなければならない。




第15条 
1項 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。


と、定めており、志免町では、この水道法に基づき志免町水道事業給水規則を定めていました
この規則には
開発行為又は建築で20戸(20世帯)を超えるもの
又は
共同住宅等で20戸(20世帯)を超えて建築する場合は全戸
に給水しない旨が定められていました同町水道事業給水規則3条の2第1項)。
この定めに基づき、志免町は不動産会社の給水契約の申込みを拒否したのでした。
いやいやいや、ナニを言ってんだお!
水道のひいてない家なんて売れるわけないじゃないの!
契約締結を拒否するなんて許されないお!!
ってか、そんな締結拒否は水道法15条1項に反するお!

不動産会社

町(行政)
いえ、我が町の給水状況を考えると、420戸分の給水には応じかねるというのが実情ですので。
この拒否には、水道法15条1項にいう正当の理由があると言えます。
なぬっ!?
まだ言うのか!?
そんなら訴えてやんよ!
裁判で決着つけてやんよ!

不動産会社は給水申込みの承諾等を求めて、給水契約上の地位の確認を求めて出訴

不動産会社
   





そこまでで、いいわ。  
給付拒否の内容が、水道の給付拒否なんですね。
給付内容が水だけに、生活する上では死活問題です。
お水はないと困るもんねぇ。
そうね。
本件の争点も、まさにその点にあると言えるわ。

ただ、水道法15条1項を再度読んでもらいたいんだけれど

第15条 
1項 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。
と定めているわけよね。

つまり裏返せば『正当の理由があるのであれば需要者から給水契約の申込みをを拒んでもよい、といえるわけよね。
つまり、行政の拒否に正当の理由があると言えるか、という認定を裁判所が、どのようにしているのか、ということを読み取って欲しいわ。
  ふむふむ。
ソレじゃ、判決文を見ることにしましょうか。

法15条1項にいう正当の理由とは、水道事業者の正常な企業努力にもかかわらず給水契約の締結を拒まざるを得ない理由を指すものと解されるが、具体的にいかなる事由がこれに当たるかについては、同項の趣旨、目的のほか、全体の趣旨、目的や関連する規定に照らして合理的に解釈するのが相当である。

 いうまでもなく、水道は、国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないものであるが、我が国においては、地形、気象、人口等の自然的社会的諸条件のため、需要に見合った水道用水の確保は必ずしも容易ではなく、水は貴重な資源である(法2条1項参照)。

 市町村は、このような水道事業を経営する責任を負うものである(地方自治法2条3項3号、4項、法6条2項参照)ところ、は、市町村を始めとする地方公共団体に対し、水の適正かつ合理的な使用に関し必要な施策を講じなければならず(法2条1項)、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、水道の計画的整備に関する施策を策定、実施するとともに、水道事業を経営するに当たっては、その適正かつ能率的な運営に努めなければならないとの責務を課し(法2条の2第1項)、他方、国民に対しては、市町村等の右施策に協力するとともに、自らも、水の適正かつ合理的な使用に努めなければならないとの責務を課している(法2条2項)。

 右にみたとおり、水道が国民にとって欠くことのできないものであることからすると、市町村は、水道事業を経営するに当たり、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、可能な限り水道水の需要を賄うことができるように、中長期的視点に立って適正かつ合理的な水の供給に関する計画を立て、これを実施しなければならず、当該供給計画によって対応することができる限り、給水契約の申込みに対して応ずべき義務があり、みだりにこれを拒否することは許されないものというべきである。

 しかしながら、他方、水が限られた資源であることを考慮すれば、市町村が正常な企業努力を尽くしてもなお水の供給に一定の限界があり得ることも否定することはできないのであって、給水義務は絶対的なものということはできず、給水契約の申込みが右のような適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、法15条1項にいう「正当の理由」があるものとして、これを拒むことが許されると解すべきである。

 以上の見地に立って考えると、水の供給量が既にひっ迫しているにもかかわらず、自然的条件においては取水源が貧困で現在の取水量を増加させることが困難である一方で、社会的条件としては著しい給水人口の増加が見込まれるため、近い将来において需要量が給水量を上回り水不足が生ずることが確実に予見されるという地域にあっては、水道事業者である市町村としては、そのような事態を招かないよう適正かつ合理的な施策を講じなければならず、その方策としては、困難な自然的条件を克服して給水量をできる限り増やすことが第一に執られるべきであるが、それによってもなお深刻な水不足が避けられない場合には、専ら水の需給の均衡を保つという観点から水道水の需要の著しい増加を抑制するための施策を執ることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。

 そうすると、右のような状況の下における需要の抑制施策の一つとして、新たな給水申込みのうち、需要量が特に大きく、現に居住している住民の生活用水を得るためではなく住宅を供給する事業を営む者が住宅分譲目的でしたものについて、給水契約の締結を拒むことにより、急激な需要の増加を抑制することには、法15条1項にいう「正当の理由」があるということができるものと解される。

として、町(行政)の給水拒否は許容される、との判断を示したわ。
あ・・・あ・・あたしのマンション建設計画がぁぁぁぁぁ。
あんたのマンションじゃないでしょうよ。
えーっと、整理するわね。

判決文にあるように
水道は、国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできない〜中略〜貴重な資源
なわけよね。

だから、原則として
市町村は、水道事業を経営するに当たり、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、可能な限り水道水の需要を賄うことができるように、中長期的視点に立って適正かつ合理的な水の供給に関する計画を立て、これを実施しなければならず、当該供給計画によって対応することができる限り、給水契約の申込みに対して応ずべき義務があり、みだりにこれを拒否することは許されない
ということになるわけよね。
  そりゃ、そうだろう。
常識的に考えて。
ただ
水が限られた資源であることを考慮すれば、市町村が正常な企業努力を尽くしてもなお水の供給に一定の限界があり得ることも否定することはできないのであって、給水義務は絶対的なものということはできず、給水契約の申込みが右のような適正かつ合理的な供給計画によっては対応することができないものである場合には、法15条1項にいう「正当の理由」があるものとして、これを拒むことが許される
と述べているわけね。

そして、この規範に基づいて、志免町の給水状況を考えると、水道法の趣旨・目的に照らして、給水契約の申込みを拒否するに足る正当の理由があると認定しているってことね。
確かに、ただでさえ水不足問題のあるところに420戸も新たな給水供給をしないといけない・・・なんてことになったら、なんともならなくなってしまうです・・・。
そういう理解になるかな。
このあたりの事実認定は、事案によって異なるものといえるわね。
じゃあ、ここで考えて欲しい問題があるから聞いてみようかな。

質問

違法建築物をなくすために、水道の給水を拒否することは許されるでしょうか
・・・なかなか、あこぎな話だねぇ。
いやぁ、でもなんか感覚的には、ソレは駄目でしょ・・・って言いたいなぁ。
出来れば、法律的に言って欲しいんだけどね。
拒否に『正当の理由』があれば、いいってことになるのでしょうか?
でも、その理解だと、違法建築物をなくす為という理由は『正当の理由』になり得るようにも思えるです。
うーん。チイはそうは思わないよぉ。
だって、判例はこう言っているんだよぉ。

法15条1項にいう正当の理由とは、水道事業者の正常な企業努力にもかかわらず給水契約の締結を拒まざるを得ない理由を指すものと解されるが、具体的にいかなる事由がこれに当たるかについては、同項の趣旨、目的のほか、全体の趣旨、目的や関連する規定に照らして合理的に解釈するのが相当
である、って。

つまり、『正当の理由っていうのは、あくまでも水の供給を定めた水道法の趣旨・目的に照らして考えるべきであって、水道法とは関係のない違法建築物をなくす為ってことを理由に、水道の供給を拒否することはダメ(『正当の理由とは、ならない)だと思うよぉ。
そうね。
チイちゃんのように考えるべきだといえるわね。

私達の使用している基本書のサクハシでも、次のように、まとめられているわね。
各法律は基本的にそれ自体として完結した存在であり、法治主義という場合の「法」が、個々の法律を想定していることの帰結である
とね。

つまり、水道法建築基準法とは、基本的には、それぞれが独立した目的をもった法律である以上、それぞれのの趣旨・目的に照らして合理的な解釈がなされるべきであって、今、チイちゃんがまとめてくれたように、そのと関係のないを、行政側が恣意的に関連付けて運用するようなことは許されないってことになるわけね。
成程、成程です。
チイちゃんの説明を聞いて納得できたです。
いくら行政が義務履行を確保したいからと言って、生活する上で必要最低限のサービスを供給することを拒否してまで、その義務履行を図るなんてことは、みだりに認められないってことよね。

もっとも、今検討した判例のように許容される場合もあるわ。
許容される場合と、許容されない場合との、違い・・・つまり『正当の理由の有無を、どのように考えるのか、ということを抑えて欲しいわ。
  ふむふむ。
最後の質問のお陰で、しっかり抑えられたような気がするです!
  気がするだけじゃなぁ。
ねぇ? クロちゃん。
そうですね。
少し厳しいようですが、藤さんの仰られる通りですね。

竹中さん。
「気がする」なんて理解に留まらないよう、ワカラナイことがあったら、私や藤さんに何時でも聞いてくれていいんですからね。
  いいんですか?

(ジトォ〜、とサルに視線)
あ、あ、甘えてんじゃないおっ!!

天は自ら助くる者を助く
って言うやないのっ!!
先ずは、自分で必死こいて努力することが大前提なんだお!!
そうやって、すぐにあたしに頼ろうとするんじゃないお!!
て、手厳しいです、藤さん!
私は深い考えもなく竹中さんの努力をする機会を奪おうとしてしまっていました!! す、すみません!!
聞かれたら困るからでしょうに。
・・・サルは、いつまで、その「知ったか」キャラでいくつもりで、いるのよ、一体。

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