無効の行政行為
さぁ。それじゃ、今日は無効の行政行為について学ぶことにするわね。

これまでの勉強会でも話したように、行政行為には、民事法律行為と比較して大きな特権があるわよね。
例えば、公定力や、執行力などがそうよね。

しかし、すべての行政行為に、そのような大きな特権を認めてもよいのか? という疑問は生じるところよね。

そこで、一定の行政行為には、そのような特権を否定すべき!
という考えから、今日学ぼうとしている無効の行政行為があるってことなの。

取消しうべき瑕疵と、無効の瑕疵との違いは、ザックリ言ってしまうと瑕疵の程度が違うってことになるわ。

つまり、取り消されるまでは有効と扱っても構わない程度の瑕疵であれば取消しうべき瑕疵にとどまるわけで、この場合は、取消訴訟によって取り消されるなどの手続きを踏むまでは、公定力が働くってことになるわ。
他方、無効の瑕疵という瑕疵の程度が大きい行政行為であれば、取消訴訟の排他的管轄には服さないことから、当然、公定力も働かないってことになるわね。
  開幕スタートダッシュかよ。
のっけから飛ばしすぎじゃない?
取消しうべき瑕疵のある行政行為は、取消訴訟で争うというのはワカッタんですけど、それでは無効の瑕疵のある行政行為については、どうやって争えばいいんですか?
いい質問ね・・・って言いたいんだけど、それはまた改めて別の機会に学ぶことにするわ。
今、一応答えだけ伝えておくと、

無効の認定方法は、
無効等確認訴訟行政事件訴訟法3条4項
当事者訴訟・民事訴訟行政事件訴訟法36条
という手段があるわね。

例えば、行政処分によって土地の所有権を奪われたような事件があった場合には、民事訴訟で土地所有権の返還を請求し、その先決問題として、行政処分の無効の認定をする・・・といった手続きを経ることになるって話なんだけど、ちょっと、今、その話をするのは早いかなって思うのよね。 
  うん、早い、早い。
ヅダ並に早い・・・。
そ、そ、ソレは驚異的な速さです。
それなら改めて学ぶことにも納得いくです。
ドコで納得したのかは、ちっともワカラナイんだけど、まぁ、納得してくれたみたいで何よりだわ。

今日は、無効の行政行為、その区別の基準について学ぼうと思っているの。
ナカちゃんが聞いてくれた無効の認定方法については、また後々やるってことで今は我慢して欲しいかな。

さて。
それじゃ、無効の行政行為区別の基準ね。

この基準を示した最高裁判例としては、ガントレット事件最大判昭和31年7月18日)が有名ね。 
  ウキっ!
なにやら厨二心を刺激するような名前の事件きたよ、コレ!
なんかテンション上げているみたいなところ悪いんだけれど、判例再現はしないからね。

事案を簡単に説明しちゃうと、戦前に第八高等学校で英語教師をしていた英国人の男性が、太平洋戦争中に、強迫を受けて無理矢理帰化申請を行って許可されたんだけど、戦後に、その許可について無効であると主張して、国を被告に日本国籍不存在確認訴訟を提起した、という事案なの。
ガントレット事件最大判昭和31年7月18日))
ん?
なんで、ガントレット事件なんて名前で呼ばれているの?
その英国人の男性が、ガントレットを装備して、裁判所に来たとか?
そんなわけないじゃないのよ!
この事件の原告となった英国人男性が、英国人エドワード・ガントレットの長男で、ジョン・オウエン・ガントレットって名前だったから、その名前に因んで、ガントレット事件って呼ばれているみたいね。

っていうか、あんた、どこに食いついてんのよ!
どうせ食いつくなら、最高裁の示した考え方に食いついてよね!

原審は、戦時中の敵国への帰化は無効であるとする英国法および二重国籍を認めない日本法の規定に照らし、本件帰化の許可は無効と判断したのね。

でも、最高裁は、次のように判断したわ。
しかし、旧国籍法7条1項によれば、「外国人ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ帰化ヲ為スコトヲ得」たのであり、同条2項の規定はこの内務大臣のなすべき許可処分につき通常の場合における帰化の条件を定めているのである。

 すなわち内務大臣は法律に別段の定めのない限り(
同法8条、9条、10条、11条、14条等参照)同条項1号乃至5号所定の条件を具備するか否かを審査し、その条件を具備すると認めた者に対してのみその帰化を許可すべきものであることはその法文に照らして明白である。

 しかしながら、一旦内務大臣がかかる条件を具備するものと認定してその帰化申請を許可した以上、仮りにその認定に過誤があり、客観的には該条件を具備しない申請人に対して帰化を許したこととなるような場合においても、かかる瑕疵を理由として取消の問題を生ずるか否かは格別少くともその許可処分を目して法律上当然無効となすべきいわれはない。

 けだし国家機関の公法的行為(行政処分)はそれが当該国家機関の権限に属する処分としての外観的形式を具有する限り、仮りにその処分に関し違法の点があつたとしても、その違法が重大且つ明白である場合の外は、これを法律上当然無効となすべきではないのであり、そして前示認定上の過誤の如きものが、ここにいわゆる重大且つ明白なる違法といい得ないこと勿論だからである。

 (まして仮りに認定上の過誤ありとしても外国判例法上の解釈問題を包含する本件許可処分については、これを当然無効たらしむべき明白な違法ありとなし得ないこと一層明白であろう。)
旧国籍法7条2項5号の規定が二重国籍の関係の発生を抑制せんとする法意に出でたものであることは多言を要しないところであるけれど、同法は必ずしも二重国籍の成立を絶対的に排除していないことは同法11条の規定の存することによつても窺い得るのであるから、二重国籍関係の発生を理由として、法文上単に併例的に掲記されているに過ぎない1号乃至5号所定の条件中特に5号掲記の条件のみを捉えてこれを許可処分の有効要件と解することはできない。

 それ故原審が前説示のような見地に立つて,たやすく被上告人の請求を認容したことは違法であり、原判決は全部破棄を免れない。論旨は理由がある。 
 よつて
民訴407条1項に従い主文のとおり判決する。

とね。
マヂで・・・?
これ、原審の判断の方が真っ当に思えるんだけどなぁ。
まぁ、サルの言いたいことはワカルわ。

でも抑えて欲しいのは、ここで最高裁が示した無効の瑕疵区別基準よね。
つまり、最高裁は、行政行為が無効の瑕疵を帯びるためには、『その違法が重大且つ明白である場合の外は、これを法律上当然無効となすべきではない』として、重大かつ明白な瑕疵が必要だとしているわけ。

この基準が、重大明白説(=重大かつ明白な瑕疵説)と呼ばれる考え方なのね。 
  厳し過ぎるでしょ、これ!
私に当たらないでよね!

大事なことは、この重大明白説においては、重大性明白性とは分けて考えないといけないってことね。

重大性については、権限がないのに行政処分をしたとか、手続き面で、聴聞手続きをする義務があったのにこれをせずに処分をしたとか、処分の根拠となるような事実もないのに、許可取消処分を行った・・・といった行政行為の誤りの大きさに注目して認定して欲しいんだけど。

明白性については、また別に基準が示されているわね。
百選には掲載されていないんだけど、大事な判例だと思うんだけど・・・ちょっと私も、連続で事案説明は大変だから、一緒に判例再現しましょうか。
あ、あたし聞いているだけの方が楽だから、光ちゃんが話してくれればいいよ?
ホラホラ、やった、やった。
わ、私は、判例検討には参加したいので、判例再現をされるのなら是非やって欲しいです。
  いやいや、ここはやってもらおうよ。それがいい、それがいい。
  私もやりたいです!
明智先輩にばかり説明して頂くのは申し訳ないです!
  うわぁ。
四面楚歌じゃないの。
みんなが、やる気なのは嬉しいわ!
・・・サルは死ねばいいのに(ボソっ

それじゃ、早速判例検討しましょ。
検討判例は、課税処分賦課取消請求事件ね。
最判昭和36年3月7日
  いやぁ、厳しいっ!
厳し過ぎるよ。
外見上一見明白説っ!
じゃあ、最後に、もう1つ判例検討して終わりにしましょうか。  
  いやぁ、厳しいっ!!
厳し過ぎるよ!
もう1つ判例検討なんてっ!
あんたが、重大明白説が厳しい、厳しいって言っているから、ちょっと最後に気持ちよく検討できる判例を一緒に見ようって言ってるのに、そういう言い方は、やめて欲しいなぁ。  
  あっ!
ということは、あの判例ですね?
そうそう。
今日は、百選を使用しない判例検討ばかりだったからね。
せっかく持って来ているんだから、見ておかないとって。

百選T 86事件ね。
神奈川所得税課税処分無効確認事件を見てみましょ。
最判昭和48年4月26日) 
ま、ま、まさかオオトリに、あんな長い判例持ってくるなんて。
次回に廻すとか、そういう発想はないわけ?
話の流れっていうものがあるじゃないの。
今日の重大明白説の中で、話すからこそ、意味があるわけじゃない?
あんたも厳しい、厳しいって連呼してたんだし、良かったでしょ? 
まぁねぇ。
そりゃ、そう思うところもなくはないけれど、いやぁ、ハードはハードだったよねぇ。
コレは、なんか疲労回復にご飯でも奢って欲しいところかなぁ。 
あ、でしたら、このお店なんか、どうですか?
先日、買った雑誌がラーメン特集していて。ちょっと行ってみたいなって思っていたんですけど。
ラーメンかぁ・・・。
個人的には、光ちゃんがどうせお金出すんだから、もっと高いもんが食べたいかなぁ。 
ナニ、たかろうとしてんのよ!
いいじゃないのよ。
ラーメン。
私も、あまり行かないから是非行ってみたいわ。ね?
つかさちゃん?  
  じゃあ、コチラのお店なんかどうでしょう?
写真見てて、ビビっときちゃったんですけど!
  おおおおぉぉっ!
こ、こ、これは美味そうだお!
  藤さんにも、そう言って頂けると嬉しいです。
いかがでしょう?
光ちゃんも。
ラーメンなんて、随分久し振りだし、私は是非行きたいわ。
みんなで行きましょうか。  
  はい。
行きたいです!
  20杯は。
いきたいですぅ! 

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