最判昭和48年4月26日判決 〜神奈川所得税課税処分無効確認請求事件〜 |
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じゃあ、配役の発表からね。 私はナレーター・・・あと、土地の売却相手の2役を。 あ、そう言えば、つかさちゃんが行政側じゃない方がいいって言ってたわね。それじゃ、行政側の役は、サルにやってもらおうかな。 原告に無断で不動産の名義をとっていた人を、つかさちゃん。 その無断名義をされていた原告を、ナカちゃん。 所轄税務署長を、サルって配役にするわね。 |
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私の土地、建物の登記名義をもっていても、別に得することなんてないからねぇ。 無断で、移転登記して、竹中さんの名義で不動産の登記をさせてもらうことにしましょ! ウフフフ。 |
登記無断使用者 |
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私は、なんにも知らないです! | 無断名義された原告 |
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不動産の売却相手 |
ところで、黒田さん。 あんた借金あるんだって? |
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あぁ。確かに、債務返済に困っているんだ。 どうだい? この土地と建物を売るけど買わないかい? |
登記無断使用者 |
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不動産の売却相手 |
それは、あんたの名義の土地、建物じゃないじゃないかい。 | |
うるさい奴だ・・・。 仕方ない。 登記申請書も、売買契約書も・・・あ、あと委任状も偽造すればいいか。 よし、書類は揃ったな。 ホラ、コレで文句はないだろ? 買ってくれるよな? |
登記無断使用者 |
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不動産の売却相手 |
うんと・・・。 うん、書類は全て揃っているな。 それじゃ、この土地と建物を買わせてもらうよ。 |
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よし。 それじゃ、あんたの名義に登記移転もするよ。 まぁ、私も金が入ったし、お互い、いい取引だったな。 |
登記無断使用者 |
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私は、なんにも知らないです! | 無断名義された原告 |
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税務署 |
えーっと、登記簿の記載だと、この人だねぇ。 もしもしぃ〜。 |
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なんですか? | 無断名義された原告 |
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税務署 |
登記簿の記載を見ると、あなたは土地と建物を売却していますよね〜。 なのに、その売却にかかる所得についての申告をしていませんよね〜。 納税は国民の義務ですから、そういうことでは困るんですよぉ。 したがって、土地と建物の売却について、課税処分をとらせてもらいますね〜。 |
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な、な、なにを言っているです? 土地も建物も、売却した憶えはないです! 売買がない以上、所得もないのに、何故、課税処分を受けないとならないのですか!? |
無断名義された原告 |
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税務署 |
まぁ、文句あったら私に言うんじゃなくって、異議を申し立てて下さいよぉ。 それじゃ、伝えることは、それだけなんで私は帰りますねぇ。 |
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一体全体ナニがどうなっているです!? なんで、持ってもいない不動産の売却なんて話が、急に、私にきたんですか? 意味がワカラナイです! |
無断名義された原告 |
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税務署 |
あぁ〜。 異議申し立てをされなかったんですねぇ。 まぁ、納得されてみえるようで何よりですよぉ。 それじゃ、課税処分については了承して頂けたようですので、速やかに納税して下さいねぇ。 |
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違うです! 違うです! あまりに突然の出来事に対応が遅れただけです! 異議申し立て期間が過ぎてはいますが、私は、この課税処分の無効を求めて訴えるです! こんな受け取ってもいない売却代金に課税されるなんてことは、おかしいです! 重大かつ明白な瑕疵があると言えるです! 無効です、無効です! |
無断名義された原告 |
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つ、つ、つかさちゃん、熱演だったわね・・・。 | ||
はいっ! 一生懸命やり切りました! |
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いやぁ、ぶっちゃけ、あたしヒいちゃったけどね。 ナニ、あの犯罪者面。 |
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え? いや、あの・・・藤さんが以前教えて下さった黒澤流のリアリティーを私なりに追求した結果なんですけど。 |
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他人のこと言えるの? サルの税務署の役は、ヒドかったんじゃない? なんで、あんなにやる気ない態度でやってたの? |
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あたしなりに、御役所仕事をしている行政の人間を演じてみたんだお。 やる気のなさが伝わっているなら、あたしの迫真の演技は、満更じゃないってことだお。 |
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・・・。 (公務員の方々に土下座してくるべきです!) |
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うーん、やっぱり、行政側は、しっかり者のつかさちゃんに任せるのが無難な感じしちゃうわね。 | ||
私も、せっかく藤さんに黒澤流の手解きを受けたので、頑張りたいという気持ちはあるんですけどね。 | ||
・・・。 (私のお尻をツネっておいて、黒澤流なんて、藤先輩は黒澤流にも土下座してくるべきです!) |
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そうよね。 どうせ判例再現するのなら、楽しく再現できないとね。 まぁ、配役の話はそのへんにして。 事案のポイントね。 ・・・と思ったけれど、今回は、先に判決文を見ちゃうことにしましょうか。 有名な判例で、例外的な事案ということもあるから、長めに引用しているけれど、頑張って読み込んでみて欲しいわ。 |
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ぐ、ぐ、グリーンマイルが来るお・・・。 たっけて、たっけてぇ! |
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最高裁の判断は、次のものね。 『課税処分に対する不服申立てについての右の原則は、もとより、比較的短期間に大量的になされるところの課税処分を可及的速やかに確定させることにより、徴税行政の安定とその円滑な運営を確保しようとする要請によるものであるが、この一般的な原則は、いわば通常予測されうるような事態を制度上予定したものであつて、法は、以上のような原則に対して、課税処分についても、行政上の不服申立手続の経由や出訴期間の遵守を要求しないで、当該処分の効力を争うことのできる例外的な場合の存することを否定しているものとは考えられない。 すなわち、課税処分についても、当然にこれを無効とすべき場合がありうるのであつて、このような処分については、これに基づく滞納処分のなされる虞れのある場合等において、その無効確認を求める訴訟によつてこれを争う途も開かれているのである(行政事件訴訟法36条)。 もつとも、課税処分につき当然無効の場合を認めるとしても、このような処分については、前記のように、出訴期間の制限を受けることなく、何時まででも争うことができることとなるわけであるから、更正についての期間の制限等を考慮すれば、かかる例外の場合を肯定するについて慎重でなければならないことは当然であるが、一般に、課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであつて、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である。 これを本件についてみるに、上告人らは、前記のように、土地および建物のいずれをも所有したことがなく、その真の譲渡人はA(=つかさ)であり、したがつて、譲渡所得はほんらい同人に帰属し、上告人らについては全く発生していないのであるから、本件課税処分は、譲渡所得の全くないところにこれがあるものとしてなされた点において、課税要件の根幹についての重大な過誤をおかした瑕疵を帯有するものといわなければならない。 そして、上告人らが本件課税処分を受けるに至つた事情についてみるのに、原審認定の事実関係を前提として考察すれば、本件課税処分の基礎資料となつたものは土地および建物に関する登記簿の記載であるが、その登記手続は、Aの偽造した上告人らの印章、上告人ら名義の売買契約書、登記申請書、委任状等によるものであつて(売却された相手方に対する反面調査において提出されたのも、右の売買契約書および領収書等である。)、けつきよく、上告人らはAに名義を冒用されたのみで、本件課税処分の基礎資料となつた登記簿の記載の現出等につきいかなる原因を与えたものでもない、というに帰着する。 要するに、上告人らとしては、いわば全く不知の間に第三者がほしいままにした登記操作によつて、突如として譲渡所得による課税処分を受けたことになるわけであり、かかる上告人らに前記の瑕疵ある課税処分の不可争的効果による不利益を甘受させることは、たとえば、上告人らが上記のような各登記の経由過程について完全に無関係とはいえず、事後において明示または黙示的にこれを容認していたとか、または右の表見的権利関係に基づいてなんらかの特別の利益を享受していた等の、特段の事情がないかぎり、上告人らに対して著しく酷であるといわなければならない。 しかも、本件のごときは比較的稀な事例に属し、かつ、事情の判明次第、真実の譲渡所得の帰属者に対して課税する余地もありうる(論旨の指摘するところによれば、原判決の言及する証人の証言は、上告人が被上告人のした呼出に応じて、本件賦課の決定前の調査の段階において被上告人の許に出頭し、以上の事情を説明した、というものである。 はたして然りとすれば、たとえ法定の期間内に適法な異議申立てがなかつたとしても、被上告人において、真実の所得者たるAに対して、土地の譲渡につき所得税の賦課の決定をする余地も充分ありえたものといわなければならず、上告人らが適法な異議申立てをしなかつたからといつて、ただちに、被上告人においてAに対する正当な課税の機会を逸したものということもできないのである。)ことからすれば、かかる場合に当該処分の表見上の効力を覆滅することによつて徴税行政上格別の支障・障害をもたらすともいい難いのであつて、彼此総合して考察すれば、原審認定の事実関係のみを前提とするかぎり、本件は、課税処分に対する通常の救済制度につき定められた不服申立期間の徒過による不可争的効果を理由として、なんら責むべき事情のない上告人らに前記処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情のある場合に該当し、前記の過誤による瑕疵は、本件課税処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である。 』 本判決の大事な部分は、太文字部分になるわね。 |
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カントリィロォォォォォォォっ! (『耳をすませば』) ・・・って歌いたくなってもぉたお。 なんでだろ・・・ ・・・長ぇからだな、うん。 |
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ナニ、あんたのその第一声は!? この事案では、所得が現実にはないにもかかわらず課税処分をしているという、かなりレアな事態が生じているところが、まずポイントよね。 因みに、この事案では、1審、2審共に、課税処分の無効確認を求めた原告の訴えに対して、本件課税処分の瑕疵の重大性は認めながらも、瑕疵の明白性の要件(最高裁=外見上一見明白説の考え)が満たされないという理由から、原告が敗訴してきた、という経緯があるわ。 まぁ、本判決を見てもワカルように、それらの原判決は破棄されて、差戻しを受け、差戻し審である東京高判昭和49年10月23日では、原告の無効確認請求が認容されるという運びとなるわけなんだけどね。 話を戻すわね。 最高裁は重大明白説の立場をとっているはずなんだけど、本判決では、明白性の要件については判断せず、行政処分の瑕疵の重大性のみを認定して、当該行政処分を無効であると判断しているところが最大の特徴なの。 この最高裁の判断枠組みをどのように考えるのか、という点については色々な考え方があるわね。 本件課税処分につき、行政処分の存在を信頼する第三者保護の必要性が低いことを理由に・・・ @明白性の要件を不要としている、という捉え方もできるし。 A明白性補充要件説という学説を示唆する判例であるという捉え方もできるし。 B明白性の要件について不要だと明確に述べたわけではなく、第三者の法的地位(法的安定性)の保護から、個別事案に則した総合的利益衡量がされた、という捉え方もできるところよね。 ただ、本判決がいずれの見解によるものかは、ともかくとして、どうして、このような判断がとられたのか、という点については、しっかり把握しておくべきよね。 本判決では、 『課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと』 が認められ、 『徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情』 があったからこそ、 明白性の要件には特に触れず、行政処分の瑕疵の重大性のみを認定して無効という判断をしているということよね。 ここが大事なところだから、抑えておいて欲しいわ。 |
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ぎょぇぇぇぇぇっ!! 赤い道も、できよったぁっ! 『この道まるで・・・ ・・・赤い 糸みたい・・・』 |
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・・・。 (『CLOTH ROAD』? 微妙なネタです。) |