最判平成14年7月9日
〜宝塚市パチンコ条例事件〜
それじゃ配役の発表からね。

ソレじゃ、パチンコ店の建設をしようとした被告サル
宝塚市(行政)を、つかさちゃん
ナレーターが務めるわね。

ナレーター
宝塚市では、パチンコ施設建設に対する住民運動を契機として「宝塚市パチンコ店等、ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条例」を作っていました。

条例では、パチンコ店を建設しようとする者は、市長の同意が必要とされ(3条)、市長は、施設の位置が市街化調整区域である時および商業地以外の用途地域であるときは同意をしないものとされ(4条)、そして、この同意を得ずに建築行為がなされた場合は、市長は建築行為を行う者に対して、建築の中止や原状回復等の措置を命じることができる8条)、とされていました。

しかし、本条例には罰則規定はありませんでした。
ウキャキャキャキャキャっ!
あたしはパチンコをやる側やなくって、やらせる側になるんだお!
射幸心煽りまくりなMAXタイプを、ズラズラズラぁ〜ッと並べまくって、ジャンジャンバリバリ儲けまくってやんだお!

さてさて。
この宝塚市で、パチンコ店を建設するのには、市長の同意が必要なわけか。
ふむふむ。

市長さん、市長さん、あたしはパチンコ店を建設したいんだお。
さささ、同意だお、同意だお。
同意をしてくれお!

パチンコ店経営者

市長
お生憎ですが、同意は致しかねます  
あれまっ!!
まぁ、仕方ない。
先に建築確認だけ取っておくか。

パチンコ店経営者

ナレーター
このパチンコ店を建設しようとした被告の建築確認は、宝塚市の建築主事には市長の同意書がないことから拒否されますが、同市建築審査会への審査請求がなされ、その結果、認容裁決をされたことで建築確認を得るに至ります。

建築確認は、あくまでも建築確認の要件を満たすものか否かという判断によってなされるものであり、そこに市長の同意がない、ということを考慮することは他事考慮となるために、この判断は妥当なものといえます。
よっしゃぁ!
建築確認さえ下りれば、こっちのもんだお!
さぁ、あたしのパチンコ店の建築工事に着工すんお!!

パチンコ店経営者

市長
ま、待ちなさい!
宝塚市の条例を御存じないんですか?
パチンコ店の建設には、市長の同意が必要なんですよ!
この同意を欠く建築である以上、条例8条に基づいて、あなたのパチンコ店の工事中止命令を出させて頂きます!
そんなの関係ねぇーっ!
そんなの関係ねぇーーっ!
ハイっ! 着工だぁーーっ!

パチンコ店経営者

市長
なんて古いネタを持出してくれるんですか。

でもソッチが、そう来るのなら、宝塚市としては工事続行禁止を求める仮処分を申し立てさせてもらいますからね!

ナレーター
この宝塚市の仮処分の申し立ては認容判決を得ました。
宝塚市は、パチンコ店の建設を続行しようとする被告に対して、民事訴訟を提起し、パチンコ店の建築工事の続行の禁止を求めました
   





・・・って、そこまで・・・で、いいと思うんだけど。
ナニ、あんた勝手な脚色を加えてくれてんのよ!
もっと真面目に、やってくれなきゃダメじゃない!
いやぁ、パチンコ店のオーナーになれるのかと思ったらワクテカがとまんなくって。

でも、この事件珍しいよね。
訴えられる側が行政じゃなくって、あたし(=パチンコ店を建設しようした私人)が訴えられてんだね。
そうね。

今日の勉強会のテーマと絡めて、本件から学ぶべき争点は、行政上の義務履行確保の手段として、行政上の義務履行規定が「ない」場合で、かつB金銭支払義務以外で財産上の請求として構成できないという場合に、民事上の強制執行が出来るのか
そして、今ひとつは本判決判断枠組みを、しっかりと確認して欲しいわ。
むむむ・・・。
なんだか、やたらと小難しい言い回しをしとるけど・・・。
まぁ、取りあえず判決文見てみよっか。
大丈夫なの?
それじゃ、判決文を見るわね。

本件は,地方公共団体である上告人の長が,宝塚市パチンコ店等,ゲームセンター及びラブホテルの建築等の規制に関する条例(昭和58年宝塚市条例第19号。以下「本件条例」という。)8条に基づき,宝塚市内においてパチンコ店を建築しようとする被上告人に対し,その建築工事の中止命令を発したが,被上告人がこれに従わないため,上告人が被上告人に対し同工事を続行してはならない旨の裁判を求めた事案である。

 第1審は,本件訴えを適法なものと扱い,本件請求は理由がないと判断して,これを棄却し,原審は,この第1審判決を維持して,上告人の控訴を棄却した。

2 そこで,職権により本件訴えの適否について検討する。

 行政事件を含む民事事件において裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は,
裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」,すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ,それが法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる(最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁参照)。

この『法律上の争訟』についての規範が述べられた判例は、憲法統治機構の勉強会で見ているわよね。
ちょっと憶えていないなぁって思うのなら、この機会に再度確認しておくといいと思うわ。
大事なことは何度も反復して学ぶことだからね。
  こくこく(相槌)
さて、判決文の続きね。

国又は地方公共団体が提起した訴訟であって,財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には,法律上の争訟に当たるというべきであるが,国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから,法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく,法律に特別の規定がある場合に限り,提起することが許されるものと解される。

 そして,
行政代執行法は,行政上の義務の履行確保に関しては,別に法律で定めるものを除いては,同法の定めるところによるものと規定して(1条),同法が行政上の義務の履行に関する一般法であることを明らかにした上で,その具体的な方法としては,同法2条の規定による代執行のみを認めている。

 また,
行政事件訴訟法その他の法律にも,一般に国又は地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定は存在しない。

 したがって,国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,
裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらず,これを認める特別の規定もないから,不適法というべきである。

 本件訴えは,地方公共団体である上告人が本件
条例8条に基づく行政上の義務の履行を求めて提起したものであり,原審が確定したところによると,当該義務が上告人の財産的権利に由来するものであるという事情も認められないから,法律上の争訟に当たらず,不適法というほかはない。

 そうすると,原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を免れない。
 そして,以上によれば,第1審判決を取消して,本件訴えを却下すべきである。


最高裁は、本件において宝塚市がとろうとした司法的執行については、法律に特別の規定がある場合に限り提起出来るものである以上、認められない、としているわ。
法律の特別の規定って、例えばどんなのがあったかなぁ。
今までに学んだものを例にするならば、例えば客観訴訟よね。
条文を確認しておく?
行政事件訴訟法第42条 (訴えの提起)
民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。
だけど、本件では法律の特別の規定は存在しなかったわ。
そうであるならば、司法的執行をとることは認められない、としているわけね。

そして、本件での行政上の義務についても判断をしているわ。
この行政上の義務が契約上の義務であるならば、
法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって,自己の権利利益の保護救済を目的とするもの
と言えることから、司法的執行も認められるものといえる本件では、行政権の主体としての行政上の義務履行であることから法律上の争訟にはあたらない、としているわけね。
・・・マヂでか。
珍しい・・・パチンコ店を建築しようとした被告のあたしが勝ってまったやないの。
そうね。

ただ、この最高裁の判断については、旧来からの公法私法二分論のような整理に基づく考え方であって妥当ではない、とする学説からの大批判もあるところなのよね。
  公法私法二分論
・・・ナニそれ?
・・・やったから。
行政法の勉強会で、ちゃんとやったから。
・・・。

(ソレもう約2年前の話やで?)
・・・。

(メ、メタは駄目ですぅぅぅ!)

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