今日は、民法総則・第5章・第5節の条件及び期限から、期限について学ぶわね。 条件及び期限というのは、法律行為の付款とも呼ばれるわ。 つまり、法律行為の効力の発生または消滅を制約するために付される特約をいうの。 その内容として、条件と、期限とがあるのよ。 ザックリ両者の違いを言っておくと・・・ 成否不確実な事実が、条件。 到来確実な事実が、期限って違いね。 前回は条件を学んだから、今日は期限ね。 まずは六法で民法135条をみてくれる? |
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民法第135条。 『(期限の到来の効果) 第135条 1項 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。 2項 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。』 |
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期限とは、法律行為の効力の発生もしくは消滅、または債務の履行を、将来の到来することの確実な事実に係らせる特約をいうの。 法律行為の効力の発生または履行に関する期限を始期というわ(民法135条1項)。 そして、法律行為の効力の消滅に関する期限を終期というの(民法135条2項)。 条文の定めがあるわけではないけれど、期限には2種類あるわ。 期限自体は、最初に言ったように、将来到来することが確実な事実、と定義されるんだけど、その時期の確定の有無によって種類が分けられているの。 @ 事実の到来の時期が確定しているものを確定期限。 A 事実の到来は確実なんだけど、その時期が不確定なものを不確定期限っていうのね。 @の例としては、例えば「8月15日」って定めた場合ね。 これは確定期限といえるわね。 Aの例としては、例えば「私が死んだ時」って定めた場合ね。 人は必ず死ぬものである以上、事実の到来は確実と言えるけれど、それがいつかはワカラナイわ。 これは不確定期限といえるわよね。 |
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例えと分かっていても、死んだ時なんて言葉は、あまり気持ちのいいものじゃないですね。 | ||
そうよね。 パッといい例えが浮かばなかったから、ついね。 えーっと、期限の到来と、法律効果の発生について説明するわね。 期限の到来により、法律行為の効力が発生もしくは消滅し、または履行の請求をすることができるわ。 始期と、終期とがあるから、それぞれに分けて、まとめるわね。 始期付きの法律行為については、 始期が停止期限の場合と、始期が履行期限の場合とがあるわ。 始期が停止期限というのは、法律行為の効力が期限の到来によって生ずる場合をいうわ。 例えば、「来年の4月1日から、この建物を賃貸する」というような場合ね。 多いのは、始期が履行期限とされている場合ね。 これは期限の到来によって、履行を請求することができるという場合ね。 終期付きの法律行為は、法律行為の効力が、期限の到来によって消滅するものをいうわ。 雇用契約や、賃貸契約などの継続的契約関係においては、この終期が問題になることが多いわね。 |
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こくこく(相槌) |
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そうそう。 条件の勉強会のときに話した期待権ってあったわよね。 期限付き法律行為であっても期待権は保護されるわ。 だから、条件に関する条文である128条(不可侵義務)、129条(独立した財産権)が、類推適用されることになるというのが、通説的理解ね。 |
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まぁ、条件であっても、期限であっても、なんか貰えるって約束したら期待しちゃうもんね。 ワカル、ワカル。 | ||
まぁ、ここまでは条件の話とパラレルの説明になっちゃったんだけど、今から話す期限の利益は、期限固有の話になるわね。 期限付きの法律行為においては、期限が付くことによって、当事者のいずれかが利益を受けるんだけど、この利益を「期限の利益」というの。 先に、六法で確認しましょうか。 民法136条をひいてくれる? |
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民法第136条。 『(期限の利益及びその放棄) 第136条 1項 期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。 2項 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。』 |
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136条1項にあるように、期限付きの法律行為である債務の履行において、普通は債務者が期限までの間、その債務の弁済を猶予してもらえることが多いわけだし、また債務者も、この債務の弁済を猶予してもらえる「期限の利益」を期待するわよね。 だから、『期限は、債務者の利益のために定められたものと推定する』と定められているわけ。 ただ、「期限の利益」は、常に債務者の利益のためだけにあるわけじゃないわ。 例えば、こういう場合を考えてみてくれる? 私がサルにお金を貸したの。 「返済は半年後でいいよ。でも、その代わり毎月利息が貸し金に対して1%つくからね。」 って契約(=利息付消費貸借契約)だったとした場合、弁済期限までの間は、私にとっては毎月ごとに利息が見込めるわけなんだから、私にとっても「期限の利益」があると言うことになるわ。 だから、債権者・債務者双方に「期限の利益」がある場合もあるということは忘れないでね。 この理解を前提に、136条2項は『期限の利益は、放棄することができる』んだけれど、『これによって相手方の利益を害することはできない』とされているわけ。 「期限の利益」を放棄すると、期限は到来したことになるわ。 債務者であれば、期限の到来は債務の弁済の履行が求められることとなるわね。 |
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あ、一つ質問してもよろしいでしょうか。 私の実家のマンションの話なんですが、家を買った際に住宅ローンを組んだんですよね。ただ、父が退職した際に、住宅ローンの繰上げ返済をしたんですよ。 この繰上げ返済っていうのは、本来ならばまだ弁済期にない住宅ローンを期限前に弁済するわけですから、「期限の利益」の放棄にあたると思うのです。 でも、「期限の利益」の放棄にあたっては、相手方の利益を害することが出来ない以上、本来の約定の期限までの利息も、繰上げ返済の場合には支払わないといけないということになるのでしょうか? |
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「期限の利益」の放棄によって相手方の利益を害するときは、条文上は、『相手方の利益を害することはできない』としているけれど、この条文の意味するところは、損害を賠償すれば、「期限の利益」の放棄が認められるということをいうものであるとするのが判例・通説の立場よね。 原則的には、今、つかさちゃんが質問してくれたように期限前の返済であれば、期限までの利息を付して返済することとなるんだけれど、住宅ローンの繰上げ返済の場合は、多くは特約によって、約定の弁済期までの未経過分の利息の支払までは求めないこととされている場合が多いみたいね。 ただ、別途「繰上げ返済手数料」といった名目のお金が徴収される内容となっているみたいだけどね。 ちょっと実務的な話は、私も疎いから、確答は出来ないんだけど、これじゃ答えになっていないかしら? |
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いえいえ。 よく分かりました。 民法の話とは、直接関係のない話なのに、すみませんでした。 |
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ううん。 私も、つかさちゃんからの質問なんて、正直驚いちゃった。 答えられたみたいで良かったわ。 じゃあ、最後に六法で民法137条を見て終わりにしましょうか。 六法をみてくれる? |
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民法第137条。 『(期限の利益の喪失) 第137条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。 1号 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。 2号 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。 3号 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。』 |
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民法137条は、債務者において、債権者に対し信用を失わせるような事情や行為などの一定の事実があった場合には、債務者は「期限の利益」を主張することができないということを定めているの。 そして、同条の1号から3号に、その一定の事実が挙げられているわけね。 ただ、さっきの住宅ローンの繰上げ返済じゃないけれど、実際には、債権者側の利益を考慮して、契約の中で、これら以外の一定の事実も、期限の利益喪失事由とされている契約が多いけれどね。 コレは、いわゆる「期限の利益喪失約款」と呼ばれるものね。 私もあまり詳しいわけじゃないけれど、国税を滞納して督促処分を受けたときや、他の債権者からの差押さえを受けたときなんかが、期限の利益喪失事由として契約の中に盛り込まれることが多いみたいね。 |
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こくこく(相槌) | ||
んみゅ? もう終わりなの? |
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そうね。 期限については、特に大きな論点があるところじゃないし、条文も一通り確認出来たからね。 |
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あ、じゃあじゃあ、あたしの嬉しいことがあったのを報告していいかな? | ||
ナニナニ? | ||
掲示板に、初書き込みがありました! 「わかりやすい。がんばってほしい。」(2014.8.13付)ってね! いやぁ、きっとあたしの表見代理の勉強会についての感想だね、間違いないね! |
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刑法総論についての感想かも知れないじゃないのよ! それなら、民法の勉強会なんて関係ないわよ? なんで、自分へのコメントだって思い込めるかなぁ。 |
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「(可愛い木下さんの表見代理の勉強会が)わかりやすい。 (チャーミングな木下さんには、是非今後とも)がんばってほしい。」 ってコメントだったからね。 |
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行間を読むというか、最早改竄に等しいです・・・。 |