取消

今日は取消ね。

取消というのは、いったん有効に成立した法律行為を、初めに遡って無効にすることをいうの。

民法121条本文が、そのことを定めているわね。
六法で確認してみましょうか。
民法第121条本文

『(取消しの効果) 第121条本文
 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
取消は、表意者を保護するための制度なのね。
表意者を保護しなければならない場合としては、大きく次のつの場合があるわ。

制限能力者の行為
コレは、未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の行為がそうよね(民法4条2項、9条、12条4項、16条4項)。

次に、瑕疵ある意思表示
コレは、詐欺・強迫がそうよね(民法96条1項)。

それぞれの内容については、既に勉強済みだから、説明は対応する勉強会の内容を確認することにしてね。

取消の法的性質は、単独行為であり、形成権であるとされるわ。
六法で、民法123条を確認してくれる?
民法第123条

『(取消し及び追認の方法) 第123条
 取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
この条文からもワカルと思うけれど、取消は、相手方に対する一方的な意思表示ってことね。 

次は、民法120条を見てくれる?
民法第120条

『(取消権者)  第120条
1項 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2項 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
無効と異なり、取消は、取消権者が限定されているところがポイントね。
取消権者については、民法120条に列挙されているから確認しておいてね。

次に、取消の方法なんだけど、取消権の行使は、裁判外における、単独の意思表示によってなされるわ。
だから、わざわざ訴える必要はないわけね。

但し!
取消権の行使を、裁判上でなさなければならない場合もあるから注意してね。
親族・相続の条文なんだけど、一応、条文だけ見ておこうかしら。

六法で、民法744条1項747条1項をみてくれる?
民法第744条1項

『(不適法な婚姻の取消し)  第744条
1項 第731条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。



民法第747条1項

『(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)  第747条
1項 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる
そういうことね。

なんか、私とナカちゃんだけで勉強会しているみたいになっちゃってるわね。
じゃあ、ここで質問しちゃうわね。

六法も引かずに、ボケーっとしているサルに答えてもらおうかしら。

質問

私が、サルに騙されて、私の持っている土地をサルに売却しちゃったの。
その後、サルはその土地を、さらにナカちゃんに転売しちゃった場合、私が、詐欺を理由に、私とサルとの間の売買契約を取り消したいと思ったとき、私は、取消の意思表示を、誰に対してすればいいと思う?
ふぇ?
え? ナニナニ?
あんま、よく聞いてなかった・・・

取消の意思表示を、誰にすればいいかって?
相手方にすればいいんじゃない? 
なんか漠然とした回答ね・・・
まぁ、合ってるのかな?

そうね。私は、取引の相手方であるサルを取消の相手方にすればいいことになるわね。
私のサルへの、取消意思表示によって、私とサルとの間の売買契約は、遡及的に無効となるわ(民法121条本文)。
私は、この無効をナカちゃんに主張し、土地の返還を請求することになるわね。

但し、勉強したのでワカッていると思うけれど、私が、この無効をナカちゃんに主張することができるか否かは、第三者保護規定96条3項があるから、ナカちゃん次第といえるんだけどね。

まぁ、質問は、誰に対して、取消の意思表示をすればいいのか? って話だったから、取引の相手方ってところまでが答えになるわね。
  い、い、いきなり当てないでよね!
心臓に悪いよ・・・
なんで勉強会の最中に、当てたことに怒られないといけないのよ。
六法ひくのが、ナカちゃんじゃないといけないわけじゃないんだし、たまには、あんたが引けばいいじゃないの。  
六法をひくことも勉強ですからね。
藤さんは、竹中さんの勉強の機会を奪ってはいけないという配慮があると思います。
流石、クロちゃん!
あたしのことは、全てお見通しみたいだね。
  藤さんのことは、私が一番理解しているつもりですよ? 
(・・・・つかさちゃん、相変わらずよねぇ。
 それにつけても許せないのは、サルよね・・・くぅぅぅ。)

まぁ、効果については何度か言っているけれど、取消の効果は、その法律行為が初めから無効となるという遡及的無効ね(民法121条本文)。

取消の効果としては、他にもあるわね。

まずは返還義務の発生よね。
この内容については、居酒屋の勉強会で話したと思うんだけど、その法的構成については、通説不当利得構成によることとされているわね。 
簡単に言っちゃうと、法律行為が取消されて無効になった場合、取消以前に給付していたものがあるときは、その給付物は返還されなければならないってことね。

あ、でも制限行為能力者の返還の範囲については、現存利益でいいって話は以前したわよね?
憶えている?
あぶく銭は、とっとと使うに限るって話だよね?
どういう憶え方をしてくれちゃてんのよ!
そんな話はしてないじゃないのよ!

確認の意味で、もう1回改めて質問しておこうかな?

質問

18歳のサルが、お店にお父さんに買ってもらったパソコンを10万円で売却したんだけど、その後、取消したわけ。
取消したサルは、パソコンを返して、ってお店に言ったところ、お店はサルに支払った代金の10万円と引き換えにお返ししますって言ってきたの。
でも、サルは、10万円のうち9万5千円は、遊んで使っちゃった、って言って、5千円しかないよって言ったの。

この場合、お店は、5000円しか返してもらえないことになる?
なる、なる!
なるなるなるなるなるなるなるなるなるなる!!
・・・。
(まったく可愛くないなるぞうくん(『ハチワンダイバー』)がいます・・・)
こういうことだけは、しっかり憶えているのね。

そうね。
ここにいう現存利益とは、制限行為能力者の手元に現存している利益でいいわけだからね。
遊興費で消費してしまったというのであれば、現存利益は残っている5000円になるわけだから、そういう結論になるわね。

ただ、利得が現存していないとする立証責任は、それにより利益を受ける制限行為能力者側にあるから、9万5千円は遊興費としてしまったことは立証しなければならないことになるけれどね。 
  あぶく銭は使った者勝ちって理解で、あってたじゃないの!
  ・・・藤先輩は法律を学ぶ姿勢が、いつもおかしいです。
そうだよねー。
私、そんなこと一言も言ってないっていうのにねぇ?

じゃあ、次は、取消すことができる行為の追認ね。

追認についても、これまで何度か話してきたところだけど、改めて、定義を言うわね。

追認とは、取り消しうる行為を有効に確定することをいうわ。

六法で、民法122条124条をみてくれる?
民法第122条

『(取り消すことができる行為の追認)  第122条
 取り消すことができる行為は、120条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。



民法第124条

『(追認の要件)  第124条
1項 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。

2項 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。

3項 前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。
今日は、ナカちゃんが六法を頑張ってひいててくれてるわね。
ありがとうね。

追認の要件は、次の2つね。

@取消の原因状況の消滅
A追認の意味の了知


@追認は、制限能力・詐欺・強迫など、取消原因となっている状況を脱した後でなければ、その効力を有しないわ。このことは、民法124条1項に定められているわね。
どうしてこの要件が求められているかと言うと、取消原因となっている状況下において追認をしてしまうと、追認自体が、取消原因下になされたものであることから、取消すことができることとなってしまうからね。 

A追認は、その行為を了知(=取消しうる行為であることを知ること)した後でなければすることができないわ。このことは、民法124条2項から導かれる要件ね。
124条2項は、成年被後見人についての規定なんだけれど、他の制限能力者についても同様とされているわ。

さて、じゃあ、次は民法125条をみてくれる?
民法第125条

『(法定追認)  第125条
 前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

1号  全部又は一部の履行
2号  履行の請求
3号  更改
4号  担保の供与
5号  取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
6号  強制執行。
民法125条は、法定追認について定めているわ。

法定追認とは、取消権者が取り消すことができる行為について、追認できる時以後に、『社会観念上、追認と認められるような一定の行為』をしたときは、取消権者は追認をしたものとみなされるということなの。

これは、取引関係の安定化のために定められた追認の擬制の制度なのよ。

法定追認要件は、次のつね。

@追認が可能な状態であること125条本文)。
A異議をとどめないこと125条但書き)。
あのね・・・
法定追認になる事実が、一杯あがっているんだけど、内容がよくわからないものが多いんだけど・・・。
物権や、債権で学ぶ言葉も多いからね。

まぁ、簡単に説明できる範囲で言えるものなら、例えば125条3号更改っていうのは、取り消すことができる行為によって成立した債権・債務を消滅させて、新しい債権・債務を発生させることね。
まぁ、ワカラナイ言葉については、今後の勉強の中で、学んでいくってことにしておきましょ。

じゃあ、少し説明と六法確認作業しかなかったから、ここまでの内容の理解を問う意味で、質問するわね。
質問すると文句言う不届きな方が、若干1名いるようだから、前もって告知してからにするわ。ね? サル? 
なんだよ・・・
名指しするのなら、最初っから「若干1名」なんて厭味な言い方しなければいいのに。
だって、しっかり言っておかないと、また曲解して自分を正当化しようとするじゃないの!

はい、じゃあ質問

取消権者が、取消原因となる状況の止んだ後に、自己の債務について承認した場合、その承認は追認したことになるでしょうか? 
なる、なる!
なるなるなるなるなるなるなるなるなるなる!!
  ・・・。
(またなるぞうくん(『ハチワンダイバー』)をやってます・・・)
ナニ、そのフレーズ? 気に入ってるの?
因みに、答えは「ならない」よ?

追認要件を、しっかり確認しなさいよ!
単なる債務の承認だけでは、追認したことにならないわ。
何故なら、追認要件A取り消すことができる行為であることを知った上で追認をすることが必要だからね。

追認要件つのうち@については充たしているけれど、Aについては充たしていないでしょ?
だから、この場合は、追認の意思表示とはいえないわ。 
あぁぁ・・・
な、な、なるぞうくんが・・・
なるぞうくんが泣いているぅぅぅっぅうぅぅ。
泣かなきゃいけないのは、なるぞうくんではなくって、間違えた藤先輩です・・・。
大丈夫、大丈夫。
なるぞうくんゴッコがしたかっただけで、質問の答えなんて考えちゃいないから平気、平気。 
・・・そこまで不真面目な態度で、平気平気と嘯(うそぶ)くあんたが心底腹立たしいわね。

次は、取消権の時効消滅についてね。

まずは、六法で民法126条を確認しましょうか。
民法第126条

『(取消権の期間の制限)  第126条
 取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
取消権は、追認できる時から、5年間行使しなければ、時効消滅するわね(126条前段)。
この『追認することができる時』というのは、さっき説明した取消の原因状況の消滅した時のことをいうわ。

また、行為の時から20年間行使しなければ、時効消滅しちゃうからね(126条後段)。
取消権と、取消後の返還請求権との関係については、説明して頂けるのでしょうか?
個人的には、光ちゃんの考え方を聞いておきたいのですが。
不当利得についての理解がまだないから、説明しないでおこうかと思っていたんだけど、それじゃ軽く話しておこうかしら。

取消権の行使と、その結果として生ずる不当利得に基づく返還請求権とは異なるものなのね。
つまり、どういうことかと言うと、取消の意思表示をするじゃない?
そうすると、取消の効果である法律行為の遡及的無効ということになるわよね。
そうすると、相手方に給付された物がある場合、その占有が、法律上の原因を欠く状態となるわ。
そこで、給付物について不当利得に基づく返還請求権が生じることになるわけ。
うーん。
ワカルような、ワカラナイような。
そうね。ちょっとまだ不当利得を勉強していないから、ワカラナイところがあるとは思うんだけど・・・

取消権の時効期間は、さっき126条で確認したように5年よね。
不当利得に基づく返還請求権は、その消滅時効期間は10年なのよね。

では、この両者の関係はどのような関係にあるのか、という論点があるの。

判例の立場は、取消権制限説と呼ばれる考え方とされているわ。
つまり・・・

取消(5年) + 不当利得に基づく返還請求(10年)
               =(合わせて)15年


と考えるわけ。
判例大判昭和12年5月28日、最判昭和35年11月1日

取消権・返還請求権制限説合わせて5年と考える説)、返還請求権制限説等の学説もあるところだけれど、まぁ、判例の立場で抑えておけばいいかしら。
  ・・・ちょっと、よくワカラナイです。
平気、平気。
あたしなんて、ちょっとどころか途中から、聞き流しているから。
あんた、勉強会担当のときの真面目さは、どこ行っちゃったのよ!
聞く側になった途端、ソレ?  
逆に考えようよ!
あたしに過度なプレッシャーを与えた結果のリバウンドが、今の態度になってしまったと。
これに懲りて、もうあたしに勉強会担当なんてさせないでよね!
あんた担当前から、そんな態度だったじゃないのよ!
ナニ、さも因果関係あります、みたいな嘘ついてんのよ!  
  ウキっ!

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