今日は無権代理と相続という論点を勉強するわね。 無権代理人と本人との間で相続が生じた場合の法律関係は、大きく分けると・・・ @本人を無権代理人が相続するパターン(無権代理人相続型) A無権代理人を本人が相続するパターン(本人相続型) の2パターンなんだけど。 実際には個別的なパターンもあるから、2パターンだけ勉強して御仕舞いってわけには、いかないのよね。 そういうわけで、今回は無権代理と相続という論点に絞って、様々な事案ごとに、どのような法律関係になり、また、どのような処理がなされるのか、ということを、判例を通じて勉強することにするわね。 |
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2パターンだけでいいでしょ。 野球だって、勝ちパターンと、負けパターンの2パターンだよ? 勝利の方程式と敗戦処理。 これさえ抑えとけばOKOK。 |
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それなら巨人には、1パターンだけでいいって話になっちゃうわね。 あ、横浜も逆の意味で、1パターンで済んじゃうのかしら? |
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今季の横浜は、巨人相手には4勝6敗(8月1日現在)です! 一昨日(7月30日)だって、延長戦の末のサヨナラ負けさえなければ勝率5割だったんです! それなのに、ナニを勝ち誇っているんですか! |
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竹中さん・・・ 時事ネタは風化しちゃいますから、あまり言わない方がいいかと思いますよ? |
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まぁ、ソレ言うなら、野球ネタをちょいちょい入れること自体どうなんだって話にはなるけどね。 特にクレームもないから、やっちゃってるけどさぁ。 |
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みんなで巨人を応援すれば、こんな不毛な会話もなくなるわよ! そうだ! いっそ、今日の勉強会は、巨人がいかに素晴らしいか、という球界の盟主の尊さについて知ることにしない? |
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無権代理と相続をやるです! 私は巨人の勉強会なら帰るです! |
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おぅおぅ・・・ チビっ子が吠える、吠える。 あ、そう言えば、横浜の前身は、ホエールズだったなぁ。 |
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ナカちゃんは、本当に勉強が好きなんだね。 まさか、巨人よりも勉強をとる人がいるなんて思わなかったけど、じゃあ、今日はナカちゃんのやる気を優先して、巨人を知る集いは延期することにするわね。 無権代理と相続について、その法律関係を理解する上で、基本的な考え方があるの。 まぁ、ここは絶対抑えておかないといけない・・・って話でもないから、正直飛ばそうかとも思ったんだけど、まぁ、一応、知らないというのもね、って思うから説明だけはしておくわ。 この無権代理人と本人との間で相続が生じた場合の考え方としては、学説は幾つか分かれているんだけど、ここでは、通説・判例の考え方だけを紹介することにするわね。 地位並存説(無権代理構成)→ →信義則説→ →追認不可分説 というのが、一応、通説・判例の考え方とされているわ。 たまに違う判例もあるんだけれど、大体の判例は、この考え方に則っていると言えるわね。 地位並存説というのは、相続によっても無権代理人と本人の地位が同化することはなく、並存するため、無権代理は無権代理のままである、と考えるの。 そして、相手方との関係において、追認拒絶を認めるか否かで、説がさらに分かれることになるわけ。 それで、通説・判例は、信義則説を採っているんだけれど。 信義則説というのは、地位並存の主張を、場面によっては、信義則によって適切に制約していこうとする考え方なの。 この考え方によれば、無権代理行為を行った者が、追認を拒絶することは、信義則上許されない、とされるわね。 まぁ、判例の事案を見る前に、学説だけ理解してね、っていうのも、およそ無理があると思うから、今日の判例検討の後に、復習がてら見るといいかもね。 |
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・・・なんで、巨人を知る集いから勉強会となった途端に、こんな難しい話がくるんだお。 これなら、まだ巨人を知る集いの方がいいよ! |
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なんてことを言うんです! 藤先輩は、勉強も赤ヘル魂も捨ててしまうのですか! |
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竹中さん。 藤さんは、竹中さんのことを慮って言ってくれているんですよ? 藤さんは、勿論、こんな基本的な考え方については熟知されてみえますからね。 |
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ええぇぇっ!? そ、そ、そうなのですか? |
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ま・・・まぁねぇ・・・。 (知るわけないじゃないの! 地位並存説? ナニ、それ? あたしの妹の小(チイ)が、分身でもしてるってか?) |
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あら、木下さんは御出来になるんですね? それなら、この判例の事案の質問は、木下さんの見識にあやかることにさせて頂こうかしら。 質問させて頂きますね? ナカちゃん(=親)の子のサル(=子)は、親のナカちゃんの印鑑を無断で使用して、自らを親のナカちゃんの代理人であると偽って、親の所有する不動産を、私に売却して、所有権移転登記も完了してしまいました(=@無権代理行為)。 その後、サル(=子)の親であるナカちゃんが死亡(A)して、サルは、親のナカちゃんを単独相続することになりました(B)。 ところが、親である本人を相続したサル(=子)は、親である本人(=ナカちゃん)が有していた追認拒絶権を取得したとして、先の自らがなした無権代理行為を追認拒絶すると私に言ってきて、所有権移転登記の抹消を求めてきたのです(C)。 さぁ、かかるサル(=子)の請求は認められるでしょうか? (最判昭和40年6月18日をベースにした事案) 下に、この質問の図を示したから、検討の際に利用して下さいね? |
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・・・・認められない。 | ||
理由っ!! 理由のない答えなんて、答えじゃなくってよ? 木下さんっ!? |
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先の学説の基本的な考え方に徴しますと・・・ まずは、地位並存説から、相続によって、無権代理人の藤さんは、それまで有していた無権代理人としての地位と、相続によって取得した本人の地位とが並存することになります。 しかし、信義則説から、相続によって本人の追認拒絶権を取得したからといって、自らがなした無権代理行為の相手方に対して、取得した追認拒絶権を行使することは、信義則(1条2項、ここでは禁反言)に反すると言え、認められないということになるかと思います。 ですから、藤さんが端的に述べられたように、結論としては、本人を相続した無権代理人の追認拒絶権の行使は認められないということになります。 |
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まぁ、あたしの要約したことを論旨展開すると、そうなるかな。 | ||
あんた、いっぺんブン殴るわよ!! ハッ! あまりのサルの言動に思わず、こんな言葉を・・・ ・・・・・・・自己嫌悪だわ・・・。 |
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あうあうあう。 (明智先輩のお気持ちはワカリマス。 でも明智先輩は、巨人の話をされるときこそ自己嫌悪を感じるべきだと思うです。) |
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落ち着いて・・・落ち着いて、私・・・。 そうね。 無権代理人相続型の典型とされるこの事案に対して、判例は 『無権代理人が本人を相続し、本人と代理人との資格が同一に帰するに至った場合においては、本人自らが法律行為をしたのと同様の法律上の地位を生じたものと解するのが相当』 であるとして、本人と無権代理人の資格は一体となったことで、追認があったのと同様に、無権代理が治癒される、と考えるのね。 この判例の考え方は、先の無権代理と相続を考える上で、基本的な考え方として述べた考え方とは異なるもので、「地位同化説」による解釈とされているわ。 ただ、今、つかさちゃんが説明してくれた通説・(多くの)判例の解釈による理解もできる事案だから、この理解で抑えておくといいと思うわね。 流石、つかさちゃん。 先の基本的な考え方を抑えたワカリヤスイ検討だったわ。 |
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まぁ、あたしのまとめを代弁してくれただけなんだけどね。 ね? クロちゃん? |
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はいっ! 藤さんの理解を前提に答えたまでです。 流石、藤さんです! |
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・・・・そ、そ、そうね。 じゃ、じゃぁ、次の問題も木下さんに答えてもらおうかしら? |
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あうあうあう。 明智先輩、明智先輩・・・ |
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じゃあ、さっきの事案と似ているんだけれど・・・ 親である本人が、無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡して、その本人を無権代理人が相続した場合は、どうなると思う? 質問させて頂きますね? ナカちゃん(=親)の子のサル(=子)は、親のナカちゃんの印鑑を無断で使用して、自らを親のナカちゃんの代理人であると偽って、親の所有する不動産を、私に売却して、所有権移転登記も完了してしまいました(=@無権代理行為)。 その後、子のサルの無権代理行為を知った本人(=親)であるナカちゃんは、無権代理行為に対して、追認拒絶をしました(A)。 その追認拒絶の後、サル(=子)の親であるナカちゃんが死亡(B)して、サルは、親のナカちゃんを単独相続することになりました(C)。 ところが、親である本人を相続したサル(=子)は、親である本人(=ナカちゃん)が追認拒絶権を行使したのであるから、先の自らがなした無権代理行為は無効であると主張してきて、私が追認をして欲しいと言っても応じてくれようとしませんでした。 さぁ、かかるサル(=子)の主張は認められるでしょうか? (最判平成10年7月17日 百選T5版 37事件をベースにした事案) 下に、この質問の図を示したから、検討の際に利用して下さいね? |
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はいはい。 アレね、アレ。 |
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そうですね。 この事案は、有名ですものね。 |
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じゃあ、さっきは、あたしとクロちゃんが答えちゃったから、次はナカたんに回答チャンス上げるね。 | ||
わーい。嬉しいです! が、が、頑張りますね! 藤先輩は、自らが無権代理をしておきながら、親が追認拒絶をしたからという理由で、その追認拒絶の効果を、無権代理行為の相手方に言うことは、信義則に反して認められないと思うです。 |
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木下さんは答えては下さらないのですか? | ||
機会は均等にしないとね。 まぁ、この質問はナカたんに答えさせてあげてよね。 |
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私の回答は正しいですか? | ||
うーん、少なくとも最高裁は、そういう見解は示していないわね。 読み上げるから聞いていてね。 最高裁(最判平成10年7月17日)は 『本人の追認拒絶によって無権代理行為は無効に確定し、その後の相続は、この効力に影響を与えない。 よって、相続した無権代理人が追認拒絶を援用することは不当ではなく、また追認をして有権代理にすることもできない。』 すなわち、『本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない』としているのね。 そして、『けだし、無権代理人がした行為は、本人がその追認をしなければ本人に対して効力を生ぜず(民法113条1項)、本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効果が本人に及ばないことが確定し、追認拒絶の後は本人であっても追認によって無権代理行為を有効とすることができ』ない、としているの。 つまり、本人が生前に追認拒絶をした時点で、無権代理行為の効力が本人に対して及ばないことが既に確定しているわけよね。 そして、一度、追認拒絶をしてしまった無権代理行為は、例え、本人であっても、最早追認によって有効にすることはできないの。 したがって、無権代理人が、その本人を相続しても、今更無権代理行為を追認しようがないわけなんだから、その追認拒絶の効果を主張したとしても問題ないでしょ? って話になるわけ。 この論点については、2014年新司法試験の民事系択一第4問でも問われているわね。 『本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合であっても、その後に無権代理人が本人を相続したときは、無権代理行為は有効になる。』 という問いがあるわ。 正解は『×』ってことになるわよね。 |
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む、む、難しいんですね。 | ||
ナカたんには、まだちょっとレベルが高い質問だったね。 やっぱり、あたしが答えておくべきだったかなぁ? |
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藤さんなら、すんなりでしたね。 でも、勉強会はみんなで検討してこそ、って藤さんの配慮が優しいなって思いました。 |
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大丈夫。 まだまだ質問はありますから。 さぁ、次は木下さんよね? 質問! 無権代理人の共同相続っていう論点があるのですけれど・・・。 ナカちゃん(=親)の子の1人であるサル(=子)は、親のナカちゃんの印鑑を無断で使用して、自らを親のナカちゃんの代理人であると偽って、親の所有する不動産を、私に売却して、所有権移転登記も完了してしまいました(=@無権代理行為)。 その後、サル(=子)の親であるナカちゃんが死亡(A)して、サルは、親のナカちゃんを、もう1人の子である、つかさちゃんと共同相続することになりました(B)。 相続分は、つかさちゃん・サル、それぞれ2分の一ずつでした。 そこで、私は、親である本人を共同相続したサル(=子)に対して、サルの持分である二分の一の限度で、私への売買は有効になったものとして、不動産の二分の一の共有持分登記を求めました(C)。 さぁ、サル(=子)は、私のこの請求に応じなければならないでしょうか? (最判平成5年1月21日 百選T 36事件をベースにした事案) 下に、この質問の図を示したから、検討の際に利用して下さいね? |
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・・・・。 (共同相続? 相続した、あたしには二分の一は権利があるわけか・・・。 たしか、あたしは無権代理行為をしたわけななんだから、本人である親が生前に追認拒絶をしていない以上は、本人を相続しても、追認拒絶をすることは信義則上認められないことになるんだったっけ。 そうなると、相手方(=光ちゃん)の求めには応じないとダメっぽいなぁ・・・。 ただ、共同相続っていうところが、なんか引っかかるんだよなぁ、そんなにアッサリと答えちゃっていいのかなぁ? ダメっぽいよなぁ。) |
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木下さん? 答えて下さって結構ですのよ? |
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うんとね・・・ あたしは、光ちゃんの求めに応じますん・・・。 |
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え? なに? なに? なんて答えられたんでしょうか? よく聞き取れなかったんですけれど・・・ |
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応じません、と私には聞こえました。 そうですね、この事案においても、先の基本的な考え方が妥当します。 まずは、地位並存説から、相続によって、無権代理人の藤さんは、それまで有していた無権代理人としての地位と、相続によって取得した本人の地位とが並存することになります。 しかし、信義則説から、相続によって本人の追認拒絶権を取得したからといって、自らがなした無権代理行為の相手方に対して、取得した追認拒絶権を行使することは、信義則(1条2項、ここでは禁反言)に反すると言え、認められないということになるかと思います。 ここまでは、先の藤さんが答えられた質問と同じ考え方です。 ただし、共同相続の場合は、他の共同相続人の追認が必要となります。 先の基本的な考え方で示されていた3つ目の、追認不可分説によれば、本人の追認権は、追認権の性質上、相続によって共同相続人全員に不可分に相続されるからです。 したがって、質問ですと、もう1人の相続人である私(=つかさ)の追認が得られないのであれば、無権代理行為は無効なままとなりますので、無権代理人である藤さんが、その理由から請求に応じないのであれば、それは認められることとなります。 場合分けが必要なところですが、藤さんが述べられた結論は、もう1人の相続人の追認が得られなかった場合を想定されての回答だったものと思われます。 |
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まぁ、大分はしょっちゃったけど丁寧に言うと、そういうことかな。 うんうん。 |
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はしょったなんてレベルじゃないです。 | ||
藤さんは、いつも考え方の筋道は、自分の中で済ませてしまわれますからね。 私達みたいな凡愚には、理解できない検討をなされてみえるんですよ、きっと。 |
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人に理解できないような考え方じゃ意味ないじゃないのよ! ワカルように説明してこその理解でしょうよ!! ハッ!! ま、ま、また、こんな大声を・・・。 本件において最高裁(最判平成5年1月21日 百選T 36事件)は、次のように述べているわ。 『無権代理人が、本人を他の共同相続人と共に共同相続した場合において、無権代理行為を追認する権利は、その性質上相続人全員に不可分的に帰属するところ、無権代理行為の追認は、本人に対して効力を生じていなかった法律行為を、本人に対する関係において有効なものとするという効果を生じさせるものであるから、共同相続人全員が共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効となるものではないと解すべきである。 そうすると、他の共同相続人全員が無権代理行為の追認をしている場合に無権代理人が追認を拒絶するのは信義則上許されないとしても、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効となるものではない。』 としているわね。 つまり、共同相続の場合においては、他の共同相続人全員が追認しなければ、無権代理行為は、全面的に無効ってことね(民法251条)。 ただし、他の共同相続人全員が追認した場合には、無権代理人だけが追認拒絶することは、信義則上認められないという話になるわ。 この論点についても、2014年新司法試験民事系択一で問われているわね。 『無権代理人が本人を他の相続人と共に共同相続した場合において、他の共同相続人の1人が追認を拒絶したときは、無権代理行為は有効にならない。』 という問いね。 正解は、『○』よね。 つかさちゃんの考え方は正解だったけれど・・・ 木下さんは、そこまで考えておみえだったのかしら? 甚だ疑問ですわね! |
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いちいち全部言わないとワカラナイっていうのは、ちょっと困るよねぇ? ね? クロちゃん? |
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大丈夫ですよ! 私には、藤さんの声は、しっかりと届いていますから! |
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幻聴じゃないの? ソレ! それじゃ、次の論点。 無権代理人を本人が相続した場合を勉強することにするわ。 質問! サル(=親)は、子であるナカちゃんの(=子)の不動産について、子であるナカちゃんの許可なく、無権代理人として、その不動産を私に売却して、所有権移転登記も完了してしまいました(=@無権代理行為)。 その後、無権代理行為をした親であるサルが死亡(A)して、ナカちゃんは、親のサルを単独相続することになりました(B)。 この場合、子のナカちゃんは無権代理人の親のサルを相続したわけですが、本人として有している追認拒絶権を私に対して主張しえるでしょうか?(C)。 さぁ、ナカちゃんの主張は認められると思う? (最判昭和37年4月20日 百選T 35事件をベースにした事案) 下に、この質問の図を示したから、検討の際に利用して下さいね? |
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私は、本人でありますし、無権代理行為をしたわけでもないのですから、追認拒絶権を行使してもいいと思います。 今までの質問の事案では、無権代理行為をした人が、相続で本人の地位を得た場合には、その行為をした当人が、相続で、本人の地位を得たからと言って、追認拒絶をすることは信義則上許されない、という考えだったのですから、本人である私が追認拒絶をすることは、信義則上問題ないと思います。 |
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うん、正解ね。 信義則の好きなナカちゃんには、簡単だったかな? この事案は、いわゆる本人相続型の事案ね。 最高裁 (最判昭和37年4月20日 百選T 35事件)は、次にように述べているわね。 『無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。 後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではない。』 とね。 |
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わーい、嬉しいです! | ||
ナカたんも、なかなかやるようになったじゃないの。 あたしも、ナカたんの成長は嬉しいよ。 |
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藤さんの御指導があればこそですよ。 竹中さんも、きっと藤さんには感謝しているはずですよ? |
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ただ、追認拒絶ができるということは、次の問題が出てくるわ。 つまり、相続人が追認拒絶をしたことで、無権代理人である被相続人の無権代理行為は、無効ということで確定するわよね。 この無権代理行為の責任(民法117条)の所在という問題が生ずるわけね。 この論点については、2014年新司法試験民事系択一でも問われているわ。 丁度いいから、これは質問の形で聞いてみるわね。 質問! 『無権代理人を相続した本人は、無権代理行為について追認を拒絶することができる地位にあったことを理由として、無権代理人の責任を免れることができない。』 ○ か × か? |
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○ ですね。 | ||
あ、つかさちゃんが答えちゃうんだ・・・。 確かに、私も指名しなかったものね。 つかさちゃんなら、正解しちゃうと思うから、サルに聞こうと思っていたんだけどね。 そうね。 この問題については、判例があるわ。 『民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであって、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続により無権代理人の右債務を継承するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったからといって右債務を免れることはできないと解すべきである。』 (最判昭和48年7月3日) としているわね。 つまり、質問の答えは、「○」ということになるわよね。 |
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・・・そうなってしまうと、追認拒絶しても意味がないように思えるのですけど。 | ||
まったくないわけじゃないわ。 117条の履行責任が、特定物の引渡しのような場合(例えば、特定の土地を引き渡すことが無権代理行為の内容だった場合)においては、当該無権代理行為が追認拒絶によって無効となった以上、その給付義務は免れることになるわ。 その場合は、金銭によって債務を給付する義務を負うということになるわけだけど。 どうしても売り渡したくない先祖伝来の土地、というような場合なら、追認拒絶することには意味があるわけでしょ? |
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た、確かにそうかも知れないですけれど・・・。 ・・・藤先輩は、ホント、ろくなことしないです。 |
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おいおいおい。 質問事案のあたしね! |
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竹中さんは、藤さんの御指導があればこその成長ということに、もっと感謝して欲しいですよね! ね? 藤さん? |
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じゃあ、指導を仰いでいるナカちゃんが正解をしたんだから、最後の質問は、御師匠さんの木下さんに答えてもらって幕にさせて頂きますね。 私達のような凡庸な人間にもワカルように、木下さんのお考えをご説明して頂きたく思いますので、是非とも宜しくお願い申し上げますね。 質問! ナカ(=子)ちゃんは、サル(=親)とつかさちゃん(=親)の子供でした。 親の1人であるサルは、もう1人の親であるつかさちゃんの不動産を、私に譲渡し、移転登記も済ませてしまいました(@無権代理行為)。 その後、無権代理をした親であるサルが死亡し(A)、この無権代理人を、もう1人の親であるつかさちゃんと、子であるナカちゃんが、それぞれ相続しました(B)。 その後、さらに、もう1人の親であるつかさちゃんが死亡し(C)、ナカちゃんが相続しました(D)。 そこでナカちゃんは、私に対して、無権代理をしていない親であるつかさちゃん(=本人)の地位を相続したとして、本人による無権代理行為の追認拒絶を私に主張して、移転登記の抹消を求めました。 かかるナカちゃんの主張は認められるでしょうか? (最判昭和63年3月1日をベースとした事案) 複雑な事案なので、下に、この質問の図を示したから、検討の際に利用して下さいね? |
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・・・・。 (なになにこれ・・・関係図からして全然違うことない? えぇーっと、ナカたんは子供なわけか・・・ そんで、無権代理はしていないし、本人でもない・・・と。 本人が無権代理を相続した場合は、追認拒絶できて・・・ 無権代理人が本人を相続した場合は、追認拒絶できない・・・ ・・・ん? 本人でも無権代理人でもないわけでしょ? え? え? コレどうなるの? マヂワカラナイんだけど!) |
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木下さん! 早く教えて下さいっ!! |
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うわぁ。 厭味な言い方するなぁ。 |
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(んみゅ? 待てよ? 回答したのは、あたしとナカたんだけで・・・ メガネは、あたしの回答を補足しただけなんだから・・・ 厳密には、まだメガネは、回答していないとも言える・・・ ってことは・・・ 今回は、あたしの回答する順番じゃないと言えば、よくね? ウキっ! 脱出経路発見っ!) |
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光ちゃん! 順番! 順番は大事にしてよね! |
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流石、藤さんっ!! そうなんですよね! この事案において、最も大事なポイント。 それは、つまり、相続の順番、相続の順序ですものね。 ピンポイントで、この事案の急所を的確に御指摘されるなんて、藤さんはやっぱり凄いです。 |
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ん? (え? え? なんの話をしてるんだお?) |
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・・・そうね・・・。 この場合、判例は、結局、相続の順序を大事にしているのよね。 まさか、サルが答えられるなんて、正直驚いたわ。 最高裁は、次のように述べているわ。 『無権代理人を本人と共に相続した者が、その後更に、本人を相続した場合においては、当該相続人は、本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるもの』として、追認を拒絶できない、としているのよね。 すなわち、最初の相続(図におけるB)で、相続人は、まず無権代理人の地位を承継しているわよね。 そして、その後の相続で、その地位において、本人の地位を取得しているわよね(図におけるD)わけよね。 つまり、判例は、この事案を、無権代理人相続型とみるわけなの。 無権代理人が、本人を相続した場合には、追認拒絶はできなかったでしょ? この事案は、このような考え方で捉えるわけなの。 やるじゃないの・・・サル・・・。 |
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え? ・・・あ、うん・・・。 (ミラクルだお。 逃走経路が、よもやの宝物庫への侵入経路だったとは。) |
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なんか、相続人の私に、追認拒絶が認められないのは、厳しいようにも思えるです。 じゃあ、もし、この事案で、死亡の順番が逆・・・。 つまり、先に黒田先輩が亡くなられて、その後で、無権代理をした藤先輩が亡くなっていれば、私は、本人の地位を取得した後で、無権代理人を相続したことになるから、本人相続型である以上、追認拒絶をしてもいいって話になるんですか? |
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逆の場合の判例は、存在していないから、判例の立場はワカラナイんだけれど・・・ 判例の考え方を推し進めれば、ナカちゃんの言うとおりになるわね。 先に、本人であるつかさちゃんが死亡して、相続した場合は、ナカちゃんは本人の地位を取得しているわけで、その後、無権代理行為をしたサルが死亡して、その地位を相続によって取得した場合は、本人の地位で、追認拒絶をしたとしても、それは信義則に反しない、という結論になると思うわ。 |
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なんか納得いかないです! たまたま先に死亡したのが、無権代理をするような藤先輩だったから、私が追認拒絶することが認められなくなるというのは、納得できないです! |
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うんうん。 今のナカちゃんのような反論は学説にもあるところね。 相続の先後関係という偶然の事情によって、相続人の立場が変わるというのは妥当ではないとする批判はあるわ。 ただ、相続が偶然の事情であるとしても、相続人が相続という形で、被相続人の権利義務の包括承継をした以上は、承継した地位、権利義務関係に拘束されるのは、やむを得ないと言えるんじゃないのかな? |
||
・・・あうあうあう。 | ||
えーっと・・・。 も、もう質問ないよね? これで終わりだよね? |
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そうね。 今日の勉強会は、ここまでにしようかな。 今回は、無権代理と相続という論点に関する判例検討を、質問の形で見てきたけれど、サルの最後の回答には、正直驚いたわ。 私の知らない間に、サルがレベルアップしていたんだなぁってビックリしちゃった。 やるじゃないの! |
||
あぁ・・・えぇっと、まぁね。 | ||
・・・。 (藤先輩らしくないです。 満面の笑みか、ドヤ顔をされないなんて、おかしいです。) |
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藤さんが、いつもあんなピンポイントで論点を捉えてみえるなんて驚きました。 論点把握の苦手な私としては、是非、見習いたいです。 |
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い、いつも・・ってわけじゃないけどね。 まぁ、あまり言われると、ちょっと恥ずかしいかな? |
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これなら、サルに勉強会の担当を任せる回があってもいいかもね。 正直、そこまで的確な把握が出来ているのなら、もっとスマートな解説の出来る人の話も聞きたいもんね。 |
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あ、それ私、大賛成です! 是非是非、藤さんが担当される勉強会をやって頂きたいです! |
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・・・。 (こいつら脳みそ、夏の暑さでやられてんじゃねぇのかお? できるわけねぇお。) |
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じゃあ、次回からの代理の表見代理は、サルにお願いしちゃおっか? いいわよね? サル? |
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是非是非是非っ!! うわぁ。藤さんの勉強会なんて、すっごい楽しみです。 |
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・・・宝物庫に、お宝を守るゴッツい、ドラゴンでもおった気分だお。 |