成年後見制度

それじゃ、今日からはしばらく行為能力制度の、それぞれの類型ごとに、その内容を勉強することにするわね。

それぞれの類型ごとの要件効果については、条文を確認して理解するようにしてね。

今日は、まずは成年後見について、まとめることにしましょ。
  こくこく(相槌)
うわ・・・
始まった死のロード・・・
成年後見に始まり、保佐、補助と続くんだよね。
想像しただけで軽く死ねるお。
始まる前からネガティブ発言で、どうするのよ!

まずは、成年後見の定義について。
『精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある者』(民法7条)が、後見開始の審判を受けた場合、その者を、成年被後見人というのよ。 

さ、じゃあまず六法で、民法7条を確認してね。
  ナカたん、出番だよ?
はい。
民法第7条

『(後見開始の審判) 第7条
 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
サル、あんたがひきなさいよ!

ここにいう『事理を弁識する能力を欠く常況にある』とは、意思能力がないことをいうのね。

開始審判の手続き要件は、7条にある通りね。

実質的要件は、精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にあること
そして、形式的要件は、本人、配偶者、その他一定範囲の者からの請求があること

条文には、家庭裁判所は後見開始の審判をすることができる・・・と定められているけれど、要件を備えているときは、家庭裁判所は、審判をしなければならないということに注意してね。
ナカたんが、すっごい六法ひきたそうな顔してたんだよねぇ。
こりゃ、ひかせて上げないと可哀相だなぁ、って思ったんだよねぇ。
六法ひきたそうな顔って、どんな顔よ!

要件ときたら、次は効果よね。

効果については、民法第8条ね。
それじゃ、六法ひきたそうな顔しているサルがひいて!
残念でした!!
あたしのこの顔は、六法ひきたくないなぁって顔なんだよねぇ。
はい、というわけでナカたん、出番だよ?
はい。
民法第8条

『(成年被後見人及び成年後見人) 第8条
 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
  サル・・・
『仏の顔も三度』って諺は知ってるわよね?
次はないわよ?
仏だけに、そんなのホットケ!
ってね。
そもそも光ちゃん、仏じゃないしぃ〜。
  誰のための勉強なのよ!
下らない屁理屈言わずに、六法ひくことも勉強だと思ってやったら、どうなのよ!
はぁはぁ・・・

あ、効果の話だったわね。
家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、本人(成年被後見人)のために、保護者(成年後見人)を選任するの(民法8条、843条1項)。
  こくこく(相槌)
ナカちゃんは、サルみたいにだけはならないでね?

それじゃ、次は、成年被後見人の行為能力について、まとめるわね。
まずは、六法で民法9条を確認ね。

・・・サルっ!!
・・・ひきなさい!!
は、は、はい・・・(こえぇーー)
民法第9条だよね。

『(成年被後見人の法律行為)  第9条
 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
成年被後見人は、『日用品の購入その他日常生活に関する行為』(9条但書)については、単独で有効になしうるのよね。

ここにいう『日用品の購入その他日常生活に関する行為とは、本人が生活を営む上において、通常必要な行為をいうとされるわ。

典型例を挙げると・・・
食料品・衣料品の買い物。
電気・ガス・水道等の光熱費の支払い。
そして、これらの経費の支払いに必要な範囲での預貯金の引き出し
ね。

一応、厳密に言えば、婚姻などの一定の身分行為や、取り消すことができる行為の取消も、単独でなしうる行為になるわね。
事理弁識を欠く常況にあるのに、婚姻などの身分行為ができるのか? というところはあるけれど、流石に婚姻は、本人の意思が尊重されるべき事柄といえるからね。

尚、今述べた行為以外の行為については、単独では、有効になしえないわね。
したがって、日常生活に関する行為以外の行為については、成年後見人に代理してもらってなすこととなるわ(民法859条1項)。
成年被後見人が、単独では有効になしえない行為を、後見人の代理なしにやってしまったら、どうなるんですか
9条に定めがあるからね。
その行為については、成年後見人だけではなく、本人(成年被後見人)自身も、取り消すことができるわ(民法9条、120条1項)。

取り消すことが出来る行為については、成年後見人追認することもできるわ(民法122条)。
また、本人(成年被後見人)も、条件さえ整えば、追認することができるわ。この条件とは、本人の意思能力の回復と、行為の了知をいうのよ(民法124条2項)。

ただ、事理弁識能力を欠く常況にあった者が、その意思能力を回復するに至ることは、相当起こりえないことではあるけれどね。
こくこく(相槌)
成年被後見人の保護者については、1人でも複数でもよく、さらに自然人のみならず、法人でも出来るのよ(民法843条3項、4項)。
この自然人に限らず、法人でもなれるというのは、後見制度を充実させようとする新法施行に伴い、拡充されたところね。

従来は、自然人しか保護者に就任できなかったところを、社会福祉事業を行う法人でも就任できるようになったのよね。
このことは、成年後見人だけじゃなくって、保佐人についても同じだから、先に言っておくわね。
  便利になったんですね。
そうよね。

次は、成年後見人の役割・権限について説明するね。

この、成年後見人の役割・権限については、身上について、と財産について、と分けて考えるべきと言えるんだけど。

身上については・・・
身上配慮義務善管注意義務とがあるわ。

六法で、民法第858条を確認してみて。
あ、一緒に民法第869条を見てみて。
民法第858条

『(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)第858条
 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。



民法第869条

『(委任及び親権の規定の準用) 第869条
 第六百四十四条 及び第八百三十条の規定は、後見について準用する。
身上配慮義務については、858条直接の根拠条文になってるわよね。
でも、善管注意義務については、準用規定である869条をあげてから、644条の善管注意義務をあげれるようにしておいてね。
  こくこく(相槌)
財産については、まず、六法で民法859条1項を見てから説明するわね。
それじゃ、六法で民法859条1項をひいてみて。
民法第859条1項

『(財産の管理及び代表) 第859条
1項 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。

859条1項前段部分は、財産管理権を述べているわ。
成年後見人は、成年被後見人の財産を管理するってことね。

そして、859条1項後段は、代理権について述べているの。
この代理権には、取消権追認権(事後同意権)もあるからね。

成年後見人は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為を除いた財産行為については、代理して行うこととなるのね。そして、代理してもらうべき行為について、成年被後見人が、後見人の代理を経ずに行った場合には、その行為について取り消すことや、追認することができるっていうことなの。

ただし、この点について注意すべき点があるから、抑えておいて欲しいんだけど・・・。

民法第859条の3を確認してくれるかな?
民法第859条の3

『(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可) 第859条の3
 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
ここは択一でも問われるところだから、しっかり抑えておいてね。

条文のまんまの説明になっちゃうんだけど、例えば売却の対象が、居住の用に供されていない土地・建物であれば、家庭裁判所の許可は不要なんだけど、売却ならずとも、例えば、抵当権設定の対象が、居住している土地・建物の場合には、家庭裁判所の許可が必要になるっていうことなのね。

あ、抵当権については、物権の方で学ぶから、今は理解していなくてもいいからね。

もう一つの注意点は、民法864条ね。ソッチも六法見てくれる?
民法第864条

『(後見監督人の同意を要する行為) 第864条
 後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第13条第1項 各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号 に掲げる元本の領収については、この限りでない。
ザックリ言っちゃうと、後見監督人がいる場合は、その同意がいるってことね。
ただ、同意が必要となる行為については、その中身は一応確認しておいてね。

後見監督人がいると、同意が必要な場合もあるんだけど、ある行為については、便利な面もあるんだよね。

それが、利益相反行為なの。
成年後見人と、成年被後見人との利益が相反する行為(利益相反行為)については、家庭裁判所は、成年後見人の請求により、必要な場合には、特別代理人を選任しなければならないのよね(民法860条本文、826条1項)。
ただし!
後見監督人がいる場合には、選任しなくって済むのよ(860条但書)。

まぁ、後見監督人がいるんだから、特別代理人は不要ってことなんだけどね。
  こくこく(相槌)
説明が前後しちゃったけど、成年後見監督人について説明するね。

成年後見監督人は、成年後見人の業務を監督するため、家庭裁判所は必要があれば、成年被後見人・その親族もしくは成年後見人の請求により、または職権で、成年後見監督人を選任することができるの(民法849条の2)。
この場合、欠格自由にあたる者を除いて、適任者が選任されることとなるわ(民法850条852条が準用する847条)。

成年後見監督人の職務は、さっきナカちゃんが見てくれた864条本文の内容になるわ。
成年後見監督人がいる場合に、後見人が、成年後見監督人の同意を得ずに、同意を必要とする行為を行った場合には、被後見人または後見人は、その行為を取り消すことができるのよ(865条1項)。
こくこく(相槌)
・・・で、最後に後見開始審判の取消しね。

民法第10条を六法で引いてくれる?
民法第10条

『(後見開始の審判の取消し) 第10条
 第7条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。
はい。
コレで成年後見は、一通り見たかな。

終わったわよ?
そこの方?
 
  こくこく・・・
その擬音・・・
ナカちゃんの相槌みたいに鳴らせているけど、あんた、居眠りしてたでしょ?
 
  ふえっ?
居眠り?
誰が? 誰が?
完全に寝ぼけてるじゃないの。
あんたよ、あんた! 
 
  居眠りなんて言われると心外だなぁ。
あたし、そんなことしてないもん・・・
静かだなぁって思ったら、ノートも取らず、六法も引かずに、横で居眠りとはね。   
  だから違うって言ってるじゃない。なんで、そうやって決め付けちゃうの?
でも実際に居眠りしてたじゃない・・・別に、私だって決め付けて言ってるわけじゃないわよ?  
ガチで寝ていたから居眠りじゃありませぇーん!
居眠りなんて、根拠もなしに上から目線で決め付けてんじゃねぇーお!!
スゴいわね・・・
なんで、そんなことを、よくもまぁ、そこまで勝ち誇って言えるもんね・・・  
光ちゃんは、ちょっと思い込み強いとこあっかね!
そうやって、なんでもかんでも決め付けてかかるのは、良くないって分かって欲しかったんだよね!
ソレはソレは。
本当に、何から何まで気を遣って下さって、ありがとうございます。  
  まぁまぁ。
長い付き合いだかんね。
別にいいってことだよね。
お優しいんですのね。
私は、木下さんのような御学友を持てて果報者ですわね。 
  そうだよね。
ちゃんと自覚しといてよね?
この幸せ者っ!
ええ、ええ。
いつも日々の感謝の気持ちを欠かしたことはございませんことよ?  
じゃあ、形にして示さないとね!
感謝の気持ちがあっても、相手に伝わらないと意味ないもんね!
形にして伝えても失礼になりませんこと?   
まぁそりゃ形によりけりってところもあるだろうけど。
あたしは、貰えるモンなら何でも嬉しいよ?
だったら言ってあげるわよ!!
もう少し真面目に勉強しなさいよ!
誰のための勉強だと思ってるのよ!
あんた自身のためでしょうよ! 
 
  え?
え?
なんで急に、あたし怒られてんの?
貰えるモノなら何でも嬉しいんでしょ?
ありがたく、私のお小言を頂戴しなさいよ!  
感謝の気持ちを形に・・・って言ったじゃない・・・
なんで、ソレがお小言になるの?
本来なら見放すところだけど、感謝の気持ちがあればこそ、その気持ちをお小言という形で、あんたに伝えてあげてんのよ!  
  藤先輩は、明智先輩の話を真面目に聞かないから、ちょっと怒られるべきです。
  うわっ!
四面楚歌じゃないの!!
ブルータスお前もかい!!
確かに今日の態度はヒドかったもんねぇ。
明日からは心入れ替えて頑張らないと、いつまでも私も仏ではいられないわよ? 
  そんな犯罪者面した仏様なんていないってばぁ。
ほら、ほら。
スマァーイル。
スマァーイル。
私だって好きで、こんな顔してるわけじゃないわよ!   
  笑えばいいと思うよ?』
せっかくの名台詞も、こんなタイミングで投入されては台無しです・・・。

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