さぁ、ソレじゃここからは種類債権について学ぶことにするわね。 一応、ここまでの勉強会で出てきた図を見て、種類債権がどこの範囲の話になるのかって確認をしておいてね。 |
||
ふぅむぅ〜。 見覚えのない図が出てきたなぁ。 |
||
やったからっ! 見覚えがないのは、あんたの責任だから!! |
||
ひ、光ちゃん。 藤さんのご冗談じゃないですか。 ナニも、そんなに本気になって怒らなくっても、いいじゃないですか。 |
||
だおだお。 カルシウムが足りないんだお。 あと、人に対する優しさも。 |
||
・・・(こ、こ、この2人は・・・)。 | ||
明智先輩。 大丈夫です! 私たちは、明智先輩の味方です!! |
||
え? え? オネーちゃんと、光おねーちゃんはケンカしてるの? |
||
ケンカはしてないわよ。 そうね、心配かけちゃ迷惑だろうし、今日の勉強会に入ることにするわね。 今日からの勉強会で学ぶことになる種類債権。 この種類債権とは、どのようなものをいうのか・・・という定義から、先ず押さえておきましょうか。 種類債権とは、給付すべき目的物を「種類」と「数量」のみによって定めた債権をいうわ。 種類債権について定めた条文を、六法で確認しましょうか。 民法401条を見てくれる? |
||
民法第401条 (種類債権) 『1項 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。 2項 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。』 |
||
種類債権は「種類」と「数量」のみによって定められた債権であることから、不特定物債権ということになるわ。 具体的な例を出して、この種類債権を理解することにしましょうか。 お米屋のチイちゃんのお店で、ナカちゃんが、お米10sを買うという契約を締結(売買契約)したとしましょうか。 この場合の、ナカちゃんのチイちゃんに対する債権、ソレが種類債権ってことになるわけ。 |
||
ここで、重要なのはお米を買うナカちゃん(買主)は『お米10s』と定めただけであって『どのお米』とは言っていないわけよね。 ナニをもって同じ「種類」と見るかは、当事者の意思によって決まるわ。 その為、物の客観的な性質上、代替物(代替の効く物)だけでなく、厳密には不代替物(代替の効かない物、例・住宅、動物等)も、種類債権の目的物となしうる・・・ってことになるわ。 この点については、前々回の勉強会で説明したことになると思うけどね。 |
||
ですです! | ||
さて、次は種類債権において引き渡されるべき目的物の品質についてね。 条文を、再度確認しておきましょうか。 |
||
民法第401条 (種類債権) 『1項 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。 2項 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。』 |
||
種類債権において給付すべき目的物の品質は、次の基準で決定されるわ(401条1項)。 1)『法律行為の性質』 2)『当事者の意思』 3)『中等の品質』 例えば、チイちゃんとナカちゃんとのお米の売買契約において、買主のナカちゃんが特に品質について定めなかったとしたら、その場合は自動的に中等の品質のお米ってことになるわけね。 だから、その場合、種類債権の債務者であるチイちゃんは、中等の品質を欠くお米を引き渡しても、ソレは『債務の本旨に従った履行』とは、ならないってことになるわ(=債務不履行・民法415条)。 |
||
大丈夫だよぉ。 チイの実家では、美味しいお米しか作ってないから、全部上等なお米だもん。 |
||
確かに、藤先輩の家で頂くお米は、ホントに美味しいです。 | ||
ウキャキャキャキャキャ!! 父ちゃんと母ちゃんも喜ぶお! ぶっちゃけ、あたしも外食でご飯食べた際に、ウチのお米の勝ちだなって思うときあっからね! だもんで、外でご飯食べても、あんまり食が進まないんだおねぇ。 |
||
・・・どの口で、そんなこと言ってんのよ、あんたは。 さて。 この種類債権では『特定』という大論点があるわ。 『特定』の話については次回以降の勉強会でするつもりだけれど、種類債権の『特定』前の特質について話しておくわね。 種類債権は、『特定』される前には、債務者に調達義務があるわ。 |
||
調達義務・・・ですか? | ||
そう。 種類債権は、給付物が具体的に特定しているわけではないから、種類物が滅失・損傷した場合には、債務者は、それが自己の責めに帰さない事由であったとしても、同種の物が市場に存在する限り、なお同種の物を調達して給付すべき義務を負っているわけ。 この義務が「調達義務」と呼ばれるものなのね。 |
||
それくらい当たり前なんじゃないの? | ||
とんでもない。 よく考えてみて欲しいわ。 だって、債務者(事案でいう米屋のチイ)は、同種の物が市場に存在する限り、その有責性の有無にかかわらず(例え、チイに責任のない場合でも)常に目的物の調達義務を負うってことなのよ? 同種の物が市場に存在する限り・・・なんて、物によっては市場に、それこそ数限りなく存在するわけなんだから、最早、無限の調達義務とも言えるくらいの非常に重たい責任と言っていいわ。 |
||
た、確かに言われてみると、めっさ重い義務に聞こえてきたお・・・。 | ||
そこで、民法は『種類債権の特定』という制度を設けて『特定』後は、債務者を目的物の調達義務から解放し、以後は『特定』された物だけが、債権の目的物となることとしたのよね。 コレが、次回以降に学ぶ『特定』の話になるわけ。 条文を、確認しておく? 民法401条2項に定めがあるわね。 |
||
民法第401条 (種類債権) 『1項 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。 2項 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。』 |
||
何回同じ条文を読ませるんだと言ってみるテスト。 | ||
大事な条文は、何度も読んで理解に努めるべきだからね。 あんたも、たまに言ってるじゃないの。 『大事なことだから2回言いました』 って。 ・・・もっとも、サルの言葉なんて2回言う必要ないことばっかりなんだけどね。 |
||
うわっ!! ひどい!! 聞いた? 聞いた? ねぇ、クロちゃん。 今のはヒドくない? |
||
非常に問題のある発言だと思います。 光ちゃんは、速やかに藤さんに対して誠意ある謝罪をすべきだと思います。 |
||
だおだお。 | ||
つかさちゃんも、いつものやりとりを聞いているのに、どうして私が一方的に責められなきゃいけないのよ。 | ||
クロちゃん。 被告は、むぅぁぁあぁったく謝意を示そうとしてないお! |
||
かなり問題のある対応と言わざるを得ませんね。 藤さん。 コレは、訴訟の準備が必要な案件かも知れませんよ? |
||
はいはい。 じゃあ、2人には訴訟の準備もあるでしょうから、今日の勉強会はここまでってことにさせてもらうわね。 |
||
・・・。 (黒田先輩の藤先輩に対する思いが、なんだか、ますますとんでもないことになっているです・・・。 黒田先輩は、藤先輩のこととなると途端に残念な人になってしまうです。) |