補講勉強会の続きを始めますね。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
つかさちゃん、今日もヨロシクね! | ||||||||||||||||||||||||||||||
はい! 前回の勉強会では、履行強制の方法について 直接強制(民法414条1項) 代替執行(民法414条2項、3項) 間接強制(民事執行法172条、173条) の理解を前提として、具体的にどのような履行を強制しうるのか、ということを学びましたよね。 今日は、その続きになります。 |
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こくこく(相づち)。 |
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前回は、作為・不作為義務の内容が、代替給付に適する場合を中心に見てきましたが、作為・不作為義務の内容が代替給付を許さない場合もあります。 そのような場合にどうするのか? ということを、次の事例を素材に考えてみますね。 今回は、光ちゃん頼りにならないよう、ちゃんと事例を考えてきましたよ。 |
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流石、つかさちゃん! | ||||||||||||||||||||||||||||||
ありがとうございます。 ソレじゃ事例を。 私は、著名な画家であるチイちゃんに、私の部屋に飾る為の絵を描いて欲しいと依頼しました。 チイちゃんは、私からの絵の制作の仕事を請け負ってくれました。 ところが、約束の期日が来ても、チイちゃんは絵を完成させてくれませんでした。 ・・・という事例ですね。 さぁ、この事例において、私はどのような手段を取り得るでしょうか? |
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待ってれば、ええんやないの? チイも、そのうち絵を完成してくれるんやないのかな? |
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あ・・・す、す、すみません。 藤さんはお優しい御方だから、そのような方法を選択される御気持ちは重々承知しておりますが、法律の勉強会ですので、出来れば法的手段を言って頂ければ・・・。 |
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つかさちゃん、ソコはもっとビシッと言ってくれないと! でも、この事例はなかなか悩ましい問題よね。 チイちゃんの債務は、絵を描くという債務だから作為債務よね。 ただ、著名な画家ということを考えると、つかさちゃんもチイちゃんの絵(タッチや構図、色彩等の画家の個性を感じることの出来る絵)が欲しくって頼んでいるわけだから、他人が描いた絵では意味がないわけよね。 つまり代替給付に適するものではないと言えるわ(=不代替的な作為)。 ということは、代替執行は取り得ないってことになるわ。 |
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ってことは、アレかな? 間接強制だったっけ? やらないのなら、1日3万円をクロちゃんに支払えってことで、チイに絵の制作をするようにすれば、ええんやないのかな? |
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うーん、どうなのかなぁ。 チイは、そんな間接強制は、人の自由意思や人格尊重の理念に反するようにも思うなぁ。 ソレに、そんな心理的圧迫の下で描かされた絵が、果たして、つかさおねーちゃんの満足のいく絵になるのかなぁ? |
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むむむむ・・・言われてみればソレはあるお。 あたしが、そんな、いわば罰金みたいなもん支払わされた上(=間接強制)で絵を描かされたなら、ぶっちゃけ、やっつけ仕事の絵を描いてまいそうだお。 あたしが描いた絵には違いないんだし、コレで完成だお! さぁ、とっとと受け取れやぁ! ってな勢いで描いてまいそうだお。 |
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・・・すごくイメージ出来るです。 間違いなく、藤先輩なら、とんでもない絵を渡してきそうです。 |
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ま、まぁ、そうですよね。 代替給付に適するものではないため代替執行が出来ず、また、その強制が自由意思や人格尊重の理念に大きく反するため間接強制も出来ません。 実際、藤さんが、おっしゃられるような問題も考えられますしね。 ですので、この事例のような場合には、そもそも履行を強制することは出来ず、債権者である私としては、チイちゃんに対して、損害賠償を請求するしかない、ということになるでしょうね。 またこの事例のような場合とは異なりますが、債務の履行が、債務者の意思のみにかかるのではない場合ということもありますね。 つまり、債務を履行するにあたり、債務者の意思だけでなく、特殊の技能・設備や、第三者の協力を必要とする場合には、債務者に圧力をかけるだけでは債務を履行することができないので、この場合も、そもそも履行を強制することは出来ず、債権者は損害賠償を請求するしかない、ということになりますね。 |
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そっかぁ。 その場合も、履行強制は意味をもたないわけだもんねぇ。 うんうん、納得だよぉ。 |
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問題となるのは、次の2つの場面なんですが 1)幼児の引渡し 2)謝罪広告 ま・・・ |
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よ、よ、幼児の引渡しぃ!? ナニナニ、その人身売買みたいな話は? |
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あ、す、すみません。 議論の前提を先に言うべきでしたね。 夫婦だった両親が、離婚した結果、親権者が夫か、妻かのいずれかになることってありますよね。 |
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え? そうなの? あんの? |
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黙って聞いてなさいよ、サルは。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
えーっと、その場合なんですが、親権者・監護権者は、看護権限を持たない者の下に子が留められている場合には、親権・監護権に対する妨害を理由に、妨害排除請求権を行使して、相手方に対し、妨害の停止、および、子の引渡しを求めることができるんですね(※ さらに緊急のときには仮処分の申請もできる)。 では、その場合に具体的に、どのような強制方法をとることができるのか? ということなんですが、この問題については議論がありますね。 古い判例は、間接強制によるべき、だとしています。 (大判大正1年12月19日) この問題について学説は分かれていますが、通説は判例と同様 間接強制によるべき だとしていますね。 その理由ですが、幼児の人権を尊重し、幼児を物同様に扱ってはいけない(=直接強制は許さない)ことからと、されていますね。 |
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あぁ、成程ねぇ。 そういう話だったわけね。 いやぁ、なんかすっごいアングラな話なのかと思ったお。 |
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なんで勉強会で、そんな話題になるって思うのよ、あんたは。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
いやだって、幼児の引渡しとか言い出すんだもん。 そりゃ、驚くよね。 |
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誤解のあるような言い方をしてしまって、本当に申し訳ござません! | ||||||||||||||||||||||||||||||
ええお、ええお。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ありがとうございます。 藤さんが寛容な方で良かったです。 次に2)謝罪広告ですね。 判決によって、謝罪広告をすべき義務が生じた場合(民法723条)、債権者は、債務者に対して、どのような強制方法をとることができるか? という問題があります。 この点、判例は、謝罪広告の内容によっては、間接強制しか認められないものや、強制執行に適さないものがあるが 『単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するに止まる程度のもの』 は、代替執行できる、としていますね。 (最判昭和31年7月4日) |
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へぇ、ソレは知らなかったわ。 択一で問われたら答えられそうね。 ありがとうね、つかさちゃん。 |
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い、いえ! そう言って頂けると嬉しいです! ソレじゃ、最後に履行強制制度リストを、まとめておきますね。 (参照 『プラクティス民法 債権総論 4版』潮見佳男 信山社 2012年) |
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・・・この表だけ・・・ | ||||||||||||||||||||||||||||||
はいはいはい。 サルのお決まりの台詞は要らないから!! どうせ、この表だけで良かったって言いたいんでしょ? 違うから! 勉強をした後だから、一覧にした表が理解できるんだから!! |
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ま、まあ、藤さんには今更な説明ばかりだったと思いますからね。 その御気持ちは、私は理解しているつもりです。 |
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もう、つかさちゃんはサルには、とことん甘いんだから。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
・・・。 (私のキャラではないのですが、黒田先輩の藤先輩への態度には私も言いたいです。 『あまぁ〜いっ!!』って。) |