前回の勉強会から債務不履行の3類型を、一つ一つ見ていくことにしたわよね。 そして前回は、履行遅滞について学んだわ。 今回と次回の2回では、履行不能について学ぶわね。 |
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頑張るよぉ! |
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相変わらず元気ね、チイちゃん! それじゃ、履行不能の定義からね。 履行不能とは、履行が不可能になることをいうわ。 |
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・・・うん、知ってた。 ・・・ってか、いちいち勿体ぶって、そんな当たり前のことを「定義」とか言い出す人がいることに驚いた。 |
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ま、まぁ。 藤さんにとっては、全ての定義や趣旨が、その言葉に収まってしまうわけですものね。 |
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そんなわけないじゃないのよ! まぁでも確かに履行不能の定義は、そのままよね。 さて、この履行不能の種類だけど 1)物理的不能 と 2)社会通念上の不能 の2つがあるわ。 1)物理的不能というのは、債務の対象(客体)が、不存在または消滅した、という場合ね。 この物理的不能については、説明するまでもないことだと思うんだけど・・・。 |
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むむむ・・・なんか風雲急を告げるような嫌な予感が。 | ||
2)社会通念上の不能 については、幾つかの具体例、典型例があるところだから、今日の勉強会では、この点について、しっかり押さえておくことにしようと思っているわ。 |
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予感的中っ! マヂ嬉しくないこと限りなしっ!! |
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はいはい、騒がない、騒がない。 2)社会通念上の不能とは、履行が、たとえ物理的には可能であっても、法的には不能と評価されるような場合をいうわ。 見ていく具体例・典型例としては @不動産の二重譲渡 A他人物売買・他人物賃貸借 B公序良俗・強行法規に反する内容の給付 の3つね。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
トップバッターは@不動産の二重譲渡。 物権法の勉強会で学んだから説明は不要だと思うけれど、不動産の二重譲渡っていうのは、下の図のような場合だったわよね。 |
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復習方々、質問しちゃおうかな。 質問! 上の図のような不動産の二重譲渡が行われた場合に、第1買主(ナカちゃん)と、第2買主(つかさちゃん)とは、どのような関係になるんだったかしら? |
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「てめぇ、ナニ、あたしが先に買ったモンに、後から手ぇ出してんだお!」 という戦争状態寸前の緊張関係。 例えるなら、かつての東西ドイツのような・・・朝鮮半島の38度線のような・・・ |
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・・・対抗関係だよぉ、オネーちゃん。 | ||
そうね。 二重譲渡の第一買主と第二買主とは、対抗関係に立つんだったわよね。 ・・・サルは、それ冗談で言ったのよね? |
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・・・も、勿論やないかお。 いちいち確認するまでもないことやで? |
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そうよね。 それじゃ、次の質問は、その木下さんに答えて欲しいわ。 質問! では、不動産の対抗問題を決するのは、なんだったかしら? 条文も一緒に挙げて答えて欲しいわね。 |
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拳かな? 漢の言葉は、拳で語るもんだかんね。 条文? 漢の世界には、熱い気持ちさえあればええから、そんなもんは要らないんじゃないのかな? |
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・・・かつてのマガジンかヤンマガみたいなノリの世界観です。 | ||
対抗問題は、登記で決するんだよぉ。 条文は、177条だよぉ。 |
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あ、突っ込んでて肝心の答えを忘れていたです。 そうです、そうです。 民法第177条 (不動産に関する物権の変動の対抗要件) 『不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。』 です。 |
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木下さん・・・ホントのホントに冗談で言っているのよね? 物権法の復習なんだから、下らない冗談を言っているんじゃなくってサクサク答えて欲しかったわねぇ。 でも、チイちゃんの言うとおり、不動産が二重に譲渡された場合においては、第一買主と第二買主とは、対抗関係に立つわけだけど、それは登記で決するってことだったわよね。 第二買主(第一買主に後れて、不動産を譲渡された者)が、所有権移転登記を経たときには、売主(債務者)の第一買主(債権者)に対する財産権移転義務(所有権移転登記)は(例外的に履行を可能とする特殊事情のない限り)履行不能となる、と解されているわ。 (最判昭和35年4月21日) |
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ということは、図の場合・・・オネーちゃんが、第二買主のつかさおねーちゃんに所有権移転登記を行った時点で、第一買主であるナカちゃんへの所有権移転登記(財産権移転義務)は、社会通念上、履行不能になるってことだね。 | ||
そういうことね。 次はA他人物売買・他人物賃貸借ね。 他人物の取引における、次のような場合も「社会通念上の不能」と考えられているわ。 ・他人物売買において、所有者が、売主への所有権移転を、終局的確定的に拒絶している場合 ・他人物賃貸借において、所有者が、賃借人に使用・収益させることを、終局的確定的に拒絶している場合 が、そうね。 |
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他人物売買等については、まだ勉強していないので簡単な例えだけ話しておきますが・・・。 真の権利者(所有権者)が藤さんだという物を、私が、チイちゃんに売ったような場合ですね。 この場合において、藤さん(真の権利者)が、チイちゃんに対して 『あなたには絶対に売りません!』 って伝えたような場合には、チイちゃんは、その物の所有権を得られないことが確定してしまうわけです。 まだ他人物売買自体を勉強していないので、詳しい話は、後の勉強会でってことになりますが。 |
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そうね。 社会通念上の不能の典型例だけど、最後に B公序良俗・強行法規に反する内容の給付 があるわね。 |
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はいはいはい。 例えば、麻薬取引とかだよね? コレは、強行法規に反する内容の給付になるんじゃない? |
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珍しく勉強会に関係すること言ってくれているけれど、ソレは、ここで問題にしている「履行不能」とは異なるわ。 | ||
ん? なんで? ナニが違うんだお? 合っとるやないの? |
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麻薬や拳銃の取引等のように契約締結時点で、公序良俗違反・強行法規違反の内容の契約を締結した場合は、さっきまで話した@やAの場合と異なり、そのような契約は、国家が、その内容実現を禁止していて、不法な内容の給付を目的とする契約として、契約そのものが無効となるわ。 条文を確認しておいてもらおうかしら。 民法90条の問題よね。 |
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民法第90条 (公序良俗) 『公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。』 |
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民法総論の勉強会で、この公序良俗については学んだわよね。 このような公序良俗や強行法規に違反するような契約の場合には、履行請求権が成立し、ただ、その権利行使が阻害される@やAの場合とは異なって、履行請求権の成立自体が否定されることとなるわ。 だから、サルの例示は、ここでの「履行不能」の問題とは違うってことになるわね。 |
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め、珍しいですね。 藤さんが間違われることがあるなんて。 |
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フッ。 合格だ。 |
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ふえっ!? | ||
試しただけだお。 まぁ、心配するまでなかったようだけどね。 |
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あっ! そ、そうだったんですか! 藤さんは、そんな変化球も投げてくるんですね。 でも、引っ掛からなかった光ちゃんも流石です! |
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・・・。 (引っ掛かっているのは、いつも黒田先輩だけです・・・。 黒田先輩には、藤先輩の牽制球にさえバット振るような勢いを感じるです・・・。) |
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へぇ〜。 試していたんだぁ〜。 へぇ〜。 社会通念上の履行不能が問題となるB公序良俗・強行法規に反する内容の給付の例について説明するわね。 さっきのサルの例示は違うってことは押さえておいて欲しいんだけれど、ここで問題となるような履行不能というのは、契約締結時点では、契約は有効であったんだけど、その後に生じた事由により、履行期に履行を強制することが不法・不当となった場合、または、いわゆる「動機の不法」にあたる場合で、契約の締結後に、債務者が、債権者の不法な動機を認識したような場合をいうわ。 |
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少しイメージしにくいかも知れないですけど。 例えば、契約締結後の価値観の変化、経済政策、社会政策の変化等の事情によって、債務を履行させることが公序良俗違反と評価されるようになった場合になりますね。 具体的なイメージをもてるようにするのなら・・・ そうですね、次のような事案を考えてみてください。 精肉屋の藤さんが、アメリカ産の牛肉を、私に売却するという契約を締結したんです。 ところが、契約締結後に、アメリカ産の牛に狂牛病の事実が発覚したんです。 そのため日本政府による輸入禁止措置がとられ、さらには輸入済みのアメリカ産の牛肉についても焼却処分という対処がされた・・・。 |
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ふむふむ。 売買契約の締結の時点では問題のなかった契約内容が、その後の事情によって履行する(させる)ことが出来なくなったわけだねぇ。 つまり、狂牛病の事実の発覚と、それに伴う一連の措置の過程で、社会通念上の履行不能が生じたってことだねぇ。 |
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そういうことですね。 牛肉自体は物理的には履行可能なわけですが、狂牛病に罹患し、さらには国策による輸入禁止や焼却処分まで求められるような牛肉を売却するなんてことは認められないことですからね。 これが、社会通念上の履行不能の一例といえますね。 |
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メモメモです! | ||
いい具体例ね、イメージが持ちやすいと思うわ。 流石、つかさちゃん! |
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ありがとうございます。 藤さん、いかがでしたでしょうか? 私の説明は。 |
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なかなかええ球を放れるようになったやないの、クロちゃんも。 コレなら、もうすぐ1軍昇格もあるで? |
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こ、光栄ですっ!! | ||
・・・。 (黒田先輩が悪いコーチ(=サルのこと)の指導でフォームを崩したりしないか心配です。) |