債権・債務の定義

前回の勉強会では、債権の定義について学んだわよね。
うんうん。

債権とは、特定人が特定人に対して、一定の行為を請求する権利をいうんだよね!
権利意思説による債権定義
そうね。

物権法で学んだ物権が、物に対する直接支配権であるのに対して、債権法で、これからしっかり学ぶことになる債権とは、人に対する請求権である、という物権と債権との違いについても学んだわよね。
  こくこく(相づち)。
今日の勉強会では、債権関係にある当事者が、それぞれどのような地位に置かれることとなるのか、という点を学びたいと思うわ。

前回の勉強会でつかったイメージを、もう一回見てみましょうか。
サルは、ナカちゃんとの間で、サルの所有する住宅(建物)を、ナカちゃんに売る契約を結んだ・・・って事案だったわよね。
この図の場合において、当事者の一方であるナカちゃんのもつ『一定の利益を獲得できる地位』(給付の要求)を『債権』といい、その地位を持つ者のことを『債権者』というわ。
権利利益説による債権定義

そして、債権者であるナカちゃんこの利益を得させるための拘束を受けた地位』(給付の義務)を『債務』といい、この拘束を受ける者、つまり図におけるサルのことを『債務者』というのね。
権利利益説による債務定義
ん?
なんでチビッ子だけが債権者になるんだお?
あたしも債権者やないの?

だって、あたしはチビッ子に、あたしの家を売ったわけでしょ?
だったら、あたしはチビッ子に、家の売買代金を請求出来るんだから、債権者になるんじゃないの?
そうですね。
この事案ですと、家の売買契約が、藤さんと竹中さんの間で交わされているわけですよね。

この売買契約から、売主の藤さんは、竹中さんへの建物の引渡しという債務を負っている為、債務者と言えますが、他方買主である竹中さんは建物代金支払い債務を、売主である藤さんに対して負っているわけです。ですから、竹中さんもまた債務者であることになりますね。
でも裏返すと、オネーちゃんはナカちゃんに代金支払請求権という債権を有する債権者だし、ナカちゃんはオネーちゃんに対して建物引渡請求権という債権をもつ債権者ってことだよね。
だから、オネーちゃんが言うように、オネーちゃんもまた債権者ってことになるよぉ。
そうね。
ここでの説明は、ちょっと早い気もするんだけれど、この事案の売買契約のように、サルもナカちゃんも当事者双方が、互いに対価関係に立つ債務を負担する契約のことを『双務契約』っていうのよね。

双方が債務を負担しているってことは、裏返せば双方が債権を有しているってことになるわけよね。
少し説明が雑だったかもね。ゴメンね。
うんうん。
謝罪の気持ちは形にしてくれて、ええんやで?(ニッコリ)
食事会は、サルの誕生日ってことで、先日したばかりじゃないのよ。
みんなの勉強なんだし、気付いたことを教え合うのは当然じゃなくって?
うわっ!
謝るのは口先だけなんだ!!
誠意ってもんは、まるで無いんだ、恐い、恐い、恐いっ!!
・・・。

(隙あらば口実見つけて、たかろうとされる藤先輩の方が恐いです。)
双務契約の話は、ここではさておき。
債権者には、一定の利益を実現するための法的手段が与えられるわ。

その内容としては

履行請求権
損害賠償請求権
契約解除権
代金減額権

などがあるわね。
ここではザックリとした紹介だけしておきますと

履行請求権とは「早くして欲しい」ってことで。
損害賠償請求権とは「してくれなかったせいで余計なお金がかかったんだから、それを支払って欲しい」ってことで。
契約解除権とは「頼んでるのに、いつまで経ってもしてくれないから、もういいよ!」ってことで。
代金減額権とは「遅れた分や足りない分については、代金まけてもらうよ」って感じでしょうか。

少し言葉足らずな説明ですが、イメージとしては掴めるのではないでしょうか。
ふむふむ。
あたしの伝家の宝刀のザックリ説明を、いつの間にかクロちゃんが使うようになっているとはね。
いえ、藤さんのザックリ説明の切れ味には、まだまだ遠く及ばないと思っています。
うんうん、精進に努めるがよいぞ。
はいっ!
ありがとうございますっ!
何様のつもりよ、サルは。

他方、債務者には、債権者の一定の利益の実現のための行為負担(義務)が課されるわね。
その内容としては

作為・不作為義務(様々な具体的行為義務)
結果実現保証

などが挙げられるわね。
結果実現保証というのは、どういう意味ですか?
説明するわね。

債務には「手段債務」と「結果債務」の種類があるの。

手段債務」とは、債務者として合理的な注意を尽くすことが債務の内容となっている債務をいうわ。

結果債務」とは、それだけにとどまらず、結果実現保証のある債務をいうのよね。
えーっと・・・ワカルようなワカラナイような・・・。
ソレじゃ具体的な例を出して、考えてみることにしましょうか。
今から質問する債務が、手段債務なのか、結果債務なのかを考えてみてくれるかしら。

質問

風邪をひいたサルは、つかさちゃんの経営する黒田診療所に行ったのね。
この場合のサルは患者という立場だけれど、医師であるつかさちゃんから「診療」という債務を求める債権者ということになるわ。

つかさちゃんは、サルの症状について問診し、体温と血圧を測り、聴診等をした後に、症状についての説明をしたわ。
その上で、風邪には十分な睡眠と数種の内服薬を摂ることが効果的であるとする医療方針を伝えたのね。
サルは、つかさちゃんの説明と医療方針に同意をしたので、つかさちゃんは、サルに鎮咳薬と解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬を渡して診療を終えたの。

さて、この事案における、つかさ医師の患者サルへの診療債務は、手段債務でしょうか、結果債務でしょうか?
結果債務・・・ってことだと、結果実現を保証する必要があるから、風邪が治ってないのなら、債務を果たしていないってことになるわけだよね。

えーっと、でも手段債務
手段債務だと、債務者として合理的な注意を尽くすことが債務の内容ってことなんだから、現代の医療水準に応じた適切な診療をすることが、クロちゃんの債務って話になるわけだよね?
ということは、黒田先輩の債務は、手段債務ってことになるです!
ウワッ!!
いいとこだけ持ってかれたお!!
違うです、違うです!
私も藤先輩と一緒に考えていたから、同じ答えが出ただけです!
うんうん。
ドッチも正解よ。

この事案における、つかさ医師の診療債務は、病を治すという結果までもを債務として負ったもの(「結果債務」)ではなく(風邪)に対応した適切な手当をする債務であることから「手段債務」ってことよね。
結果債務やなくって、手段債務なんだから、クロちゃんが適切な診療をした以上、風邪が治ってなくても、クロちゃんは債務を果たしてない!
って文句は言えない
ってことなのかぁ。
私の診療が力不足で申し訳ありませんでしたっ!
風邪には特効薬はないんだから、仕方がないわよね。
そのせいもあって風邪は、なかなか治らないから困るわけよねぇ。
確かに、確かに。
風邪は、ホント長引くかんなぁ。
オネーちゃんは、そもそも風邪なんて、ここ数年ひいてないよぉ。
まぁ、そうでしょうね。
だって昔から言うもんね。
何とか」は風邪ひかないって。
やれやれ。
学がないから、肝心な部分が「何とか」なんて曖昧になっとるお。
低脳は、これだから困ったもんだお。
教えてやんよ。
その「何とか」ってのは・・・ん!?
んんんんんんんんんっ!?
コラァッ!!
おまっ!!
ナニ、あたしを「馬鹿」にした発言をシレっとかましてくれとんじゃぁ!!
ナニ、その時間差は。
まぁ、サルは「何とか」だからねぇ。
一回噛み砕かないと厭味も伝わらないのね、きっと。
ムキィィィィィィッ!!
他人を「馬鹿」呼ばわりするとは言語道断な所業だお!!
謝れ、謝れ、謝れぇっ!!
・・・。

(自分だって「学がない」だの「低脳」だのと明智先輩に散々言ったのに、一方的に怒れる藤先輩は流石です!)

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