今回と次回の2回に分けて、利息債権について学ぶことにするわね。 先に伝えておくけれど、利息制限法については、勉強会ではあまり触れないわ。 まぁ、理由はあくまでも「民法」の勉強会ってことでね。 |
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まぁ、そう言われると、そうなんですが、最低限押えないとならない点は幾つかありますよね。 | ||
そうね、その点については触れるつもりでいるわ。 ただ、もしやるならやるで、いっそ利息制限法の歴史的変遷を立法や判例の流れと一緒にドラマ仕立てでやっちゃってもいい! という気持ちもなくはないくらい、この利息制限法を巡る社会背景や判例の動向、そして立法・・・というのは、すごく目まぐるしく、また司法の苦悩を垣間見ることが出来るものだと思っているわ。 でも、現実問題そんなに需要があるとは思えないし、またドラマ仕立てといったところで、私たちが演じることになるんだから、微妙な代物になっちゃいそうだもんねぇ。 |
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(※ 需要が相当多ければ『雑記』掲載で、回を跨いでのドラマ仕立てということも検討します。 ただあまり需要がないとも思いますので、そう言うだけでやらないんでしょ? と思って頂いて結構です。 全くの余談ですが、雑記掲載の連載をお読みになられて面白いって思って下さった方は、掲示板等で御報告頂けますと、続編、別連載の意欲に繋がりますw) |
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最低限って言うたんやから、最低限で頼むお! | ||
サルは、どこに食い付いてんのよ! まぁ、いいわ。 ソレじゃ勉強会を始めましょうか。 先ず 1)利息の定義 からね。 利息とは、流動資本としての元本から生じる収益をいうわ。 つまり、金銭その他の代替物である元本の使用の対価として、元本額と使用期間に応じて、一定の利率により支払われる金銭その他の代替物をいうのね。 従って、利息には次のことがいえるわ。 @固定資本(土地・建物・機械など)の使用の対価である「賃貸料」、「小作料」は、利息ではない。 A金銭債務が履行遅滞に陥った場合における、損害賠償としての「遅延利息」は(約定利率または法定利率によって算出され、かつ、利息という名前こそ付いているけれど)元本の使用の対価ではないから、利息ではない。 (※ 「遅延利息」は、正確には「遅延損害賠償金」) B利率によらないものは「報酬」・「謝礼」であり「利息」ではない。 (※ 裏返すと「利息」とは利率によるもの) |
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ふむふむ。 | ||
むむむ・・・ちょっと確認の質問をして欲しいです。 | ||
そうね。 ソレじゃ、一問出してみましょうか。 質問! つかさちゃんは、サルに対して、自己所有の絵画を売却し、その引渡しも終えたのね。 この売買契約の締結にあたり、つかさちゃんとサルとの間で、絵画の代金の支払期日は、○月○日って決めたわけ。 ところが、期日になっても相手はサルだから、例によって例のごとく代金を支払わなかったのよね。 そこで、つかさちゃんは、サルに対して、絵画の代金の支払いを求めると共に、実際に支払いがなされるまでの期間につき、年5%の利率で計算した額の遅延利息の支払いを求めたのね。 さて、この事案における「遅延利息」は「利息」でしょうか? |
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えーっと、藤先輩が負っている債務は、絵画の購入代金ですから金銭債務です。 黒田先輩の「遅延利息」は、年5%という「利率」(民法404条・法定利率)によって算出されてはいますが、金銭債務の履行遅滞に対する遅延損害金であることから、コレは正確には「利息」とはいえない・・・です。 あ、合ってるですか? |
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うんうん、合ってるわ。 | ||
ナカちゃん、かっこいーっ! |
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ワーイ、嬉しいです! | ||
ソレじゃ、次は利息債権の定義についてね。 利息債権とは、利息の支払いを目的とする債権をいうわ。 利息債権には、次の2つがあるのね。 @約定利息債権 A法定利息債権 @約定利息債権とは、金銭消費貸借(587条)、消費寄託(666条。銀行預金は消費寄託の一種)等の契約から発生する利息債権を「約定利息債権」といい、その利息を「約定利息」っていうのね。 A法定利息債権とは、法律の規定により発生する利息債権を「法定利息債権」といい、その利息を「法定利息」っていうわ。 この法定利息債権の例としては、連帯債務者の求償に関する民法442条2項や、これを準用した委託を受けた保証人が弁済した場合の求償に関する民法459条2項、他には、代金の利息に関する民法575条等が挙げられるわね。 ちょっと、まだ勉強していない条文ばかりだから、ここでは紹介だけで済ませておくわね。 |
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666条・・・。 お、お、恐ろしい・・・「獣の数字」だお。 |
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はいはい。 下らないオカルトに勝手に震えてなさいよ。 次は、利率について説明するわね。 約定利息の利率(=約定利率)は、契約または慣習によるわ。 原則として、この利率の決定は自由だわ。 ただ、自由だって言うのなら幾らでもいいのよね? っていうと、決してそんなわけではなく、利息制限法による制限はあるわけだし、不当な利率は、公序良俗規定(民法90条)や、貸金業規制法(貸金業規制法42条の2第1項)によって無効とされることもあるわ。 |
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自由って言うたのに、ちっとも自由やないやないの! | ||
・・・藤先輩が「自由」の意味をはき違えているだけです。 | ||
そうよね、ナカちゃん。 サルの好きなようにやらせたら、無法地帯になるじゃないのよ! そうそう。 約定利息において、利率の定めがないときは、法定利率によるわ。 この法定利率については、民事は年5%(民法404条)、商事は年6%(商法514条)って話は、以前したわよね。 そして、法定利息の利率は(法律に別段の定めがなければ)言うまでもなく、法定利率によるわけね(民法404条ないしは商法514条)。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
じゃあ、最後に「重利(複利)」について話して、オシマイにするわね。 重利(=複利)とは、利息の利息をいうわ。 |
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利息の利息・・・なんかエラいことになりそうな悪寒が・・・。 | ||
そうね。 債務者にとっては、過酷な負担となってしまうこともあるわ。 実際、そうした観点から、多くの国では規制されているものだからね。 さて、この重利(複利)だけど、組入重利を抑えておいて欲しいわ。 組入重利(民法にいう「重利」)。 これは、履行期の到来した利息を、元本に組み入れ、元本の一部として利息をつけることをいうわ。 |
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ふえっ? ちょ、ちょっとよくワカラナイです。 |
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実際に数字を入れて計算してみた方がワカリやすいと思うわ。 ソレじゃ、今、説明した「組入重利」の計算事例を。 私がサルに、100万円を、年利10%で貸し付けたのね。 その際に 『貸付から1年後に、サルは明智光に110万円を返済する。 返済を怠ったときは、利息10万円を元本に組み入れ、貸付元本110万円として、年利10%の利息を付するものとする。』 という内容の合意を交わしたわけ。 勿論、みんなもお察しの通り、相手はサルだからね。 お金なんて返してはくれないわけよね。 さて、この事案において「2年後」に、交わした合意に基づいて、私はサルに対して幾らを請求出来るでしょうか? |
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2年も経ったら普通の人なら忘れているだろうに。 マヂ粘着っすわ! |
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1年で返すって契約なのに、返していないことを先ず恥じるべきです! あ、そんなことに突っ込んでいる場合じゃなかったです! えーっと、「組入重利」は、履行期の到来した利息を、元本に組み入れて、元本の一部として利息をつけるんですよね? |
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そうね。 | ||
えーっと、そうなると、年利10%ってことなので、1年後の弁済期における利息は 100万円×0.1(年利10%)=10万円 で、10万円になるです。 そして、組入重利は、この履行期の到来した利息10万円を、元本100万円に組入れて、元本の一部として利息とするわけですから、2年後における明智先輩の請求額は 100万円(元本)+10万円(履行期到来済みの利息) =110万円(利息の組入れられた元本) 110万円×0.1(年利10%)=11万円(2年目の利息) 110万円(1年目の利息の組入れられた元本)+11万円 =121万円 つまり、事案の2年後の明智先輩は、藤先輩に対して121万円を請求できることになるです! |
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ほげっ!! そうなってまうの!? コレ、元本が大きいと、あたしは、さらに厳しくならない? こんなことって許されるわけ? |
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許されるもナニも、契約自由の原則があるからねぇ。 利息制限法や、公序良俗規定に反しない限りは有効なものよ? 因みにだけど、重利の予約も有効とされているわね。 (最判昭和45年4月21日) 重利(複利)については、今の事案のように特約がある場合が基本だけれど、特約がなくとも、法律上重利(複利)が認められる場合が定められているわ。 民法405条を見てくれる? |
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民法第405条 (利息の元本への組入れ) 『利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。』 |
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この民法405条の元本の組入権だけれど 『利息の支払が一年分以上延滞した場合』で、 かつ 『債権者が催告』がなされたにもかかわらず『債務者がその利息を支払わな』ければ 債権者は、一方的意思表示により、利息を元本に組み入れることができる、とされているわ。 (※ この組入権は形成権) 重ねて言うけれど、この場合には特約がなくても、法律上、重利(複利)が認められるってことね。 |
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怖い、怖い。 コレは、しっかり覚えておかんと・・・エラい目に遭ってまうお。 |
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・・・それより先に「借りた物は返す」ってことを学んで下さいです。 |