じゃあ、今日の勉強会で、種類債権の勉強を終わらせることにするからね。 今日の論点は、大きく2つ。 制限種類債権 変更権 という2つの論点を学ぶことにするわね。 |
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変更権は、私もあまり得意な論点ではないので、しっかり押さえておきたいところですね。 | ||
そうなんだ。 えーっと、ソレじゃ先ずは、制限種類債権からね。 制限種類債権(=限定種類債権)とは、一定の範囲(特定の場所・範囲)によって制限されている種類債権をいうわ。 |
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むむむ・・・ちょっとよくワカラナイです。 | ||
定義だけ聞くと、ちょっとワカリにくいかも知れないわね。 でも、例を聞けばピンと来ると思うわよ。 例えば、ナカちゃんのご実家ではポインセチアを栽培しているじゃない。 私が、ナカちゃんとの間で、今年、ナカちゃんの家の農園で採れたポインセチア100株を、私に売り渡すという契約を結んだとしてみて欲しいわ。 |
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私の家で今年採れたポインセチア・・・ってことですね? | ||
そう。 このような一定の場所に現存する一定量の種類物の中から給付を求める債権を、制限種類債権っていうのよ。 では、この制限種類債権と、(通常の)種類債権との違いがどこにあるかワカルかしら? |
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ナカたんとこのポインセチアは、ナカたんのとこにある限りってことじゃないの? | ||
まぁ、そういうことね。 裏返すと、制限種類債権と、通常の種類債権との違いは、履行不能が認められるかどうか、という点にあるといえるわ。 今、サルが言ってくれたように、制限種類債権では、限定された範囲内の種類物がなくなることがありうるわ。 そのため、履行不能がありうるということね。 |
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あ、ホントです! ウチの農園で今年採れたポインセチア(=制限種類債権)ってことになると、全部燃えてしまったり、盗まれてしまう等で、なくなることが考えられるです。 つまり、履行不能ってことになるです! でも、普通のポインセチア(=通常の種類債権)なら、市場に出回っているわけですし、そのポインセチアが一株もなくなるような事態(=履行不能)は、ちょっと想像し辛いです。 |
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そういうことよね。 ここまでが制限種類債権の話ね。 さぁ、じゃあ種類債権の最後の論点にいきましょうか。 今日の勉強会のもう一つの論点である変更権についてね。 |
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しっかり聞かせて頂きます! |
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変更権について定めた条文はないので・・・。 先ずは、変更権の定義からね。 変更権とは、特定後に、当事者が別の物に給付を変更することをいうわ。 では、何故この「変更権」を認めようって話になるのか、ってことから考えて欲しいわ。 はい、ソレじゃもうお馴染みになったお米屋のチイちゃんに、またここでも登場してもらうわね。 |
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ワーイ! お米屋さんだよぉ! |
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ナカちゃんは、お米10sを買おうと、チイちゃんのお米屋さんに電話をかけました。 そして「夕方6時に取りに行くので、お米10sを用意しておいて欲しい」って伝えました(=取立債務)。 チイちゃんは、これを受けて、お米10sを、倉庫の米俵から出し(分離)、米袋に詰め直して、店の入り口付近に置き(準備)、その旨をナカちゃんに電話しました(通知)。 |
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ということは、特定が生じていると、いえるです! | ||
そうね。 この事案におけるチイちゃんの債務は取立債務なんだから、準備・分離・通知によって特定が生じているわ。 つまり、チイちゃんとナカちゃんとの間の売買契約の目的物は、今、チイちゃんのお店の入り口付近に置かれた米袋(お米10s)ってことになったわけよね。 |
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ですです。 | ||
ところが、ソコにサルが来店しました。 サルは、お米10sが欲しい、と言って来ました。 また、サルはとてもお腹が空いているから、すぐに買って帰りたい、とお米屋のチイちゃんに言ってきました。 そこで、お米屋のチイちゃんは、店先に丁度(ナカちゃんの為に準備した)10sの米袋があったので、すぐに買って帰りたいと言っていたサルに、ソレを売り渡しました。 |
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・・・あれ? でも、チイが渡した、その米袋って、もう特定物だよね? 特定が生じてしまっている以上、ソレがなくなってしまったのなら、チイはナカちゃんには、もう頼まれていたお米10sは渡せない(=履行不能)ってことになっちゃうのかなぁ? でもでも、チイのお米屋さんの倉庫には、お米はまだ一杯あるんだから、渡そうと思えば渡せるんだよねぇ。 |
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そうよね。 特定物だってことになると、もうソレ!って話なんだから、それがなくなってしまうと履行不能ってことになってしまうわけよね。 でも、特定されて特定物になった・・・と言っても、そもそもは種類債権なわけよね。 つまり、種類債権は、特定後においても、それが種類債権だったという性質は依然残している部分があるってことよね。 実際、この事案のお米屋のチイちゃんだって、自分のお店の倉庫には、お米なんていくらでもあるわけでしょ? それなのに、特定してしまったんだから、もう履行不能だぁ、ナカちゃんにはお米は渡せないよ、債務不履行だから損害賠償するよぉ・・・なんて話は、一体誰が得する話なの?って気持ちになっちゃわない? |
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確かに。 なんか端から聞いていると、頭のいい馬鹿に見えてまう。 |
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なかなか辛辣な言い方してくれるじゃないの。 でも、確かにそうよね。 もっと両当事者にトラブルのない解決は出来ないものかってことから、変更権が認められているわけ。 そして、この変更権は、取引通念上、妥当である限り、当事者(債権者・債務者双方)に認められるといえるわ。 |
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成る程です。 | ||
種類債権では、当事者としては、種類に属する個々の物の個性には注目していないわけよね。 例えば、事案のナカちゃんはお米10sを求めているだけであって、それ以上のことは求めてはいないわけよね。 だったら、たとえ特定がされたとしても、その後に種類に属する他の個物への変更を認めたところで、債権そのものの性質からは問題がないって思わない? |
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そうだよね。 ナカたんだって、お米10sを取りにチイのお米屋に行ったら、もう渡すお米はないから損害賠償(=債務不履行に基づく損害賠償)するよぉって言われたら、はぁ?ってなるよね。 だって、チイはお米屋さんなんだから、ソレこそ売るくらいお米があるっていうのに、ナニ言ってんだ、コイツって思ってまうお。 |
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そうね。 だから、この変更権は、取引通念上、妥当である限り、当事者(債権者・債務者双方)に認められるってことになるわけ。 一応、債権者(買主)、債務者(売主)からの、取替えの請求ができるのか? ってことを、それぞれ整理しておきましょうか。 |
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え、でけるって結論を既に言ってんのにナニを整理するつもりなの? | ||
まぁまぁ。 債権者(買主)からの取替えの請求(変更請求権)は、もともと種類物だったのだから、取引通念上妥当である限り認められるわ。 もっとも、その法的構成については議論のあるところではあるんだけれど、まぁ、そこまで踏み込んで押さえる必要はないかなってことで、ここでは、この程度で。 次に、債務者(売主)からの代替物への取替えの主張(変更権)は認められるのか? ってことだけど、判例・通説は、これを認めているわね。 債権者(買主)に特別な不都合がなければ、取引慣行、ないし、取引上の信義則(民法1条2項)によって、変更権を認めてよい、という考え方ね。 (大判昭和12年7月7日) |
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変更権については、条文がないので、つい忘れがちになってしまうんですよね。 | ||
そうね。 種類物が特定した後に、滅失・損傷って問題が生じると、(債務者に帰責性がある場合には)債務不履行に基づく損害賠償や、契約の解除って話になってしまうんだけれど、必ずしもそのような解決が、両当事者にとって好ましいことなのかってことよね。 実際、私もつい忘れがちになってしまうから、ここで再確認出来て良かったと思っているわ。 |
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なんか当たり前のことなのに、難しい話にしてんなぁって思ってまうのは、あたしだけかお? | ||
藤さんにしてみれば、私達の議論や悩みなんて、全てそう映ってしまわれるんでしょうね。 | ||
難しいって思わなかったり、悩みがないのは、そもそも頭をつかってないからじゃないの? | ||
なにゅっ!? ナニをサラっと、ディスってくれてんだお! |
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あたしが頭を使っていないだとぉ!? 見ろやぁっ! この華麗なる頭の動きをっ!! ふんふんふんっ!! (ゴスゴスゴスンっ!) |
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痛いですぅぅぅぅぅっ!! | ||
わ、私はナニも言ってないです! なんで、いきなり頭突きをされたですか!? |
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せっかく作ったナカたんのタンコブアイコンを使わないままでは勿体無い! という「天の声」が、あたしに届いたんだお!! |
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・・・と、と、とんでもない「天の声」もあったものです! | ||
うわぁーーんっ!! ナカちゃんをイジめちゃ駄目だよぉぉ! |
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・・・コレは最早待ったなしと思って欲しいわね。 ・・・「天の裁き」が下る日は。 |
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・・・(ガクガクブルブル)。 (ヤバス、ヤバスっ!! また、あのゴリラが召喚されてまうやないのっ!! えらいこっちゃ、えらいこっちゃだお!) |