抵当権にもとづく物上代位

抵当権とは、どのようなものか。
そして、抵当権の実行とは、どのような手続きに従って行われるのか、ってことがワカッタと思うわ。

それじゃ、今日からの勉強会では、抵当権の論点について見ていくことにするわね。
今日の勉強会のテーマは、抵当権にもとづく物上代位ね。
あぁ、先取特権のところで学んだヤツだね。
 先取特権⑤ 物上代位参照)
そうね。

この物上代位は、抵当権についても先取特権の規定を準用する形で認められているのよね。

六法で、条文を確認しておきましょうか。
民法304条準用条文372条を見てくれる?
民法第304条
『(物上代位) 第304条
1項 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2項 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。



民法第372条
『(留置権等の規定の準用) 第372条
 第296条(留置権の不可分性)、第304条(物上代位)及び第351条(物上保証人の求償権)の規定は、抵当権について準用する。
物上代位は、よく問われるところだから、復習方々、ここでもう一度しっかり理解することにするわね。

先ずは、民法372条準用する304条を、抵当権に置き換えて読んでみることにしましょうか。
抵当権の目的となっていた建物が、火災で焼失した、って事案を考えてみることにするわね。
この問題は、先に学んだ先取特権の事案とパラレルに捉えることができるわ。

抵当権の目的となっていた建物が焼失した、ということとなると、目的物が焼失した以上、その上にあった抵当権も消滅することとなるわ。
ただ、先取特権の事案の場合同様、この建物が火災保険に入っていた建物だった、ということにするわね。
あぁ、成程、成程。
ってことは、あん時と同じことになるわけね。

建物の所有者には、火災保険のお金が入ることになる・・・。
つまり、抵当権者は抵当権を失うのに、建物の所有者には、抵当権のついていないお金が入ることになって、不公平だって話ね。
そうね。
その不公平を公平なものとするには、という考えから、抵当権者は抵当権の目的物である建物が滅失した代わりに得た代償物の上に、抵当権を行使しうる・・・これが物上代位ってことだったわね。
でも、304条但書きがあるんだよね!

(物上代位) 第304条
1項 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。


って規定があることから、抵当権者は、建物の保険金に対して、抵当権を行使(物上代位を行使しようとするのであれば、火災保険会社から、建物所有者に火災保険金が支払われてしまう前に、差押えをしなければならないんだよね!(304条1項但書き
そうね。

火災保険金は、火災で焼失した建物の形を変えた物とみなす以上、その保険金が、建物所有者の一般財産と混ざる前に、つまり、保険金のみが別枠となっている状態で差押えをしなければならないってことだったわよね。
ですです!

わ、私もワカッているんですけど、チイちゃんや藤先輩達みたいに早く答えられないです・・・。
早押しクイズじゃないんだから、早く答える必要はないわよ。
ナカちゃんは、いつも丁寧に考えることが出来ていると思うし、ソレでいいって思うわ。
  ありがとうございます!
さて。
ここまでは物上代位一般の話になるわけよね。

問題となるのは、この後の話だわ。
つまり、この事案のような場合において、差押えは、なんのために要求されるのか
という問題ね。

この点、学説には争いがあるんだったわよね。

①特定性維持説
  と
②優先権保全説

の対立だったわよね。
うわ・・・また来たよ、こいつら。
もう判例から見てまおうよ、判例から。
まぁまぁ。
択一でも問われるところだから、復習しておきましょうよ。

差押えは、なんのために要求されるのか
という問題に対して、

先ずは、①特定性維持説の考え方からね。
この考え方によれば、火災保険金が、抵当不動産所有者の一般財産と混入する前に、それが火災で焼失した抵当建物に代わるものである、という特定性を保持(維持)するために、差押えが求められる、と説かれるわ。

これに対して、②優先権保全説によれば、目的物の滅失によって本来なら抵当権も消滅すべきところ、とくに抵当権が、その代償物上に存続することを認めるのが物上代位の制度であるのだから、差押えは、この抵当権者が物上代位の権利を保全するために必要なのである、と説かれるわね。
  これ、どこが違うわけ?
両説の違いは、代償物となる債権(火災保険金請求権)が、先に他の債権者によって差押えられた場合にも、なお抵当権者は物上代位権を主張出来るのか、先に差押えをした債権者が優先して、抵当権者の物上代位権が失われてしまうのか、という点にあるわ。

この問題について、現在の判例は、次のように処理しているわ。
ここは短くまとめておくことにするわね。

①抵当権者の物上代位権と、他の債権者による差押えとの優劣は、抵当権の登記と、差押えの先後による・・・いわゆる早い者勝ちってことになるわね。
もっとも、この場合であっても、抵当権者が自ら物上代位権に基づく差押えをすることが必要になるからね。
最判平成10年3月26日

②他の債権者(差押債権者)が、抵当権者の物上代位による差押えに先立って、転付命令民事執行法159条まで得た場合には、抵当権者は物上代位を主張することはできない
最判平成14年3月12日

③物上代位の目的となる債権が、抵当権者による差押えより前に譲渡されても、その債権を差し押さえて物上代位権を行使できる
最判平成10年1月30日 百選6版87事件 7版85事件

と、整理することができるわね。
学説には、さっき言うてた①特定性維持説②優先権保全説の対立があるってことだったけど、抵当権の場合も、先取特権と同じで、判例は、折衷説的な感じになるわけ?
判例の考え方は、第三債務者保護説と呼ばれる考え方ね。
さっき、まとめたの事案での判例最判平成10年1月30日 百選6版87事件 7版85事件)がLC(リーディングケース)になるわね。

同判決では
民法372条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は、主として、抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから、右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため、差押えを物上代位権行使の要件とし、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り、右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして、二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。

として、

右のような民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の『払渡し又は引渡し』には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三債務者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。

と述べて、いわゆる第三債務者保護説の考え方を示しているわ。

この判例の考え方である第三債務者保護説とは
債権の』『第三債務者は』『債権者である』『抵当権設定者』『に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるためそのような二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護することが求められる、とする考え方なのね。

いずれ債権総論で学ぶことになるんだけれど、債権は譲渡することが可能なのね(債権譲渡)。
本判決は、債権譲渡と、抵当権との物上代位の優劣が問題となった場面において、第三債務者保護の見地から弁済先を知らせるために抵当権者に対して差押えを求めているわけ。
他方、その他の者との関係においては、
抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されている』わけなんだから、債権譲渡後であっても抵当権による物上代位の行使を認めても、その他の者にとって不利益とは、ならないってことになるわけだからね。

ちなみに、動産売買先取特権の物上代位と、抵当権の物上代位との区別の根拠も、まさに、この点にあるといえるわ。
つまり、抵当権は抵当権設定登記により公示されている』(本判決けれど、動産売買先取特権は抵当権とは異なり公示方法が存在しない』(最判平成17年2月22日)として、担保権の公示の有無を、両者の区別の根拠としているわね。
・・・光ちゃん。
長い説明の後で申し訳ないんだけど。
債権譲渡をやってないんで、ちょっと債権譲渡との関係で、理解できないですぅ~・・・と、アッチの死んだ魚の目をした子が、言いたげな顔をしとるお。
ぐぬぬぬぬぬぬ。
た、確かに、ちょっと思ってましたけど、そんな言い方されるのは嫌です!
そうね。
債権譲渡の勉強をしていないと、少し理解が苦しいところかも知れないわね。

少し乱暴な理解になってしまうけれど、判例が述べている
民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の『払渡し又は引渡し』には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三債務者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる
ってことで、今は抑えておいてくれればいいわ。

そして、判例は、民法304条1項趣旨を、第三債務者保護説の考え方で捉えているってことね。

ただ、債権譲渡と抵当権に基づく物上代位の優劣においては、後者が優先されることになるわけだけれど、他の債権者(差押債権者が、抵当権者の物上代位による差押えに先立って、転付命令民事執行法159条まで得た場合には、抵当権者の抵当権に基づく物上代位が劣後することになるってことは大事だから、こっちも忘れずに抑えておいてね(最判平成14年3月12日)。
あ、平成14年判決ですが、掲示板で御指摘がありましたし、ここで判決文を紹介させて頂いても、いいでしょうか。
同判決文では、次のように述べられていますよね。

(1)転付命令に係る金銭債権(以下「被転付債権」という。)が抵当権の物上代位の目的となり得る場合においても,転付命令が第三債務者に送達される時までに抵当権者が被転付債権の差押えをしなかったときは,転付命令の効力を妨げることはできず,差押命令及び転付命令が確定したときには,転付命令が第三債務者に送達された時に被転付債権は差押債権者の債権及び執行費用の弁済に充当されたものとみなされ,抵当権者が被転付債権について抵当権の効力を主張することはできないものと解すべきである。

 けだし,転付命令は,金銭債権の実現のために差し押さえられた債権を換価するための一方法として,被転付債権を差押債権者に移転させるという法形式を採用したものであって,転付命令が第三債務者に送達された時に他の債権者が
民事執行法159条3項に規定する差押等をしていないことを条件として,差押債権者に独占的満足を与えるものであり(民事執行法159条3項,160条),他方,抵当権者が物上代位により被転付債権に対し抵当権の効力を及ぼすためには,自ら被転付債権を差し押さえることを要し,この差押えは債権執行における差押えと同様の規律に服すべきものであり(同法193条1項後段,2項,194条),同法159条3項に規定する差押えに物上代位による差押えが含まれることは文理上明らかであることに照らせば,抵当権の物上代位としての差押えについて強制執行における差押えと異なる取扱いをすべき理由はなく,これを反対に解するときは,転付命令を規定した趣旨に反することになるからである。

最判平成14年3月12日
民事執行・保全判例百選 第2版 101事件
ムキョっ!?
判例掲載百選が、民法百選じゃないじゃまいか!
これ、民法の勉強会なんだから、リンク紹介不要じゃね?
ええ、まぁ、そうなんですけど。
解説文にあたられる際には、掲載百選の呈示があった方が便利かな、と思いまして。
まぁ、難しいところだから、あまり踏み込まずにアッサリ抑えておいて・・・。
いずれ、演習やゼミの勉強の中で、また改めて理解に努める・・・ってことでもいいと思うわ。
・・・いや、この勉強会には、演習もゼミもないやないの。
ですよね。
ソコで、一応、私なりのまとめをココでしておきたいな、って思いまして。

最判平成14年3月12日の考え方ですが、同判決争点となった転付命令が第三債務者に送達されて以後は、当該強制執行において他の債権者の権利行使(差押え含む)ができなくなるのは、転付命令が目的債権の独占的満足を得る制度であることから、その転付命令の確定は当該執行事件が終局したということであり、もはや当該執行手続に加入する余地がなくなったことを意味するためである、という、まとめで、いいかと。

 本判決の結論および理由付けにつきましては、学説の対立から考え方の異なる捉え方もあるところですので、このまとめは、あくまでも、つかさちゃんの理解、という位置付けで御理解下さい。)
私も、その理解で抑えているわね。
・・・転付命令もワカラナイよぉ。
って、ソコの小動物が訴えるような顔しとるんだけど。
転付命令は、民事執行法で学ぶものですからね。
一応、条文だけ確認しておきましょうか。
竹中さん、御手数ですけれど、民事執行法159条1項を見て頂けますか。
民事執行法第159条1項

『(転付命令) 第159条
1項 執行裁判所は、差押債権者の申立により、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令(以下、「転付命令」という。)を発することができる。
コレが転付命令かぁ。
チイは、民事執行法は勉強してないから、また勉強しないといけないなぁ。
チイちゃん、一緒に勉強して、アソコのいつも人を小ばかにする先輩を見返すです!
  そうだね、ナカちゃん!
一緒に頑張ろうねっ!!
  言われてるよ?
光ちゃん。
どんな曲解したら、今のナカちゃんの発言が、私に向けられたものだって理解になるのよ。
サルに向けての発言に決まっているじゃないのよ。
幸せな人だなぁ、光ちゃんは。
・・・あんたにだけは言われたくないけどね。
抵当不動産の賃料に対する物上代位について
(最判平成1年10月27日 百選6版86事件 7版84事件)
どうしようかな・・・。

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