不動産質、権利質

質権についての勉強会は、今日で最終回にするわね。

今日の勉強会では、民法第9章第3節不動産質と、同第4節にある権利質について学ぶことにするわ。
  こくこく(相づち)。
それじゃ、まずは不動産質からね。

不動産も、質権の目的となしうるわ。
この質権の目的となる不動産は、土地と建物になるわね。

でも、不動産については、これまでの勉強会で話したように、抵当権による担保化が可能よね。また、不動産を、占有移転して、担保化しなければならないっていうのは、現実問題として不便な話よね。
少し考えてもらえばワカルと思うんだけど、例えば、銀行が土地を質にとって融資する・・・なんて場合に、そのために占有移転するのか? ってことよね。

だから、この不動産質については、あまり利用されていないとされているわ。

というわけで、ここでの不動産質の説明としては、これくらいにさせてもらうわね。
  うひょ、アッサリ!
いいね、いいねぇ!!
不動産質はアッサリと済ませたけれど、権利質については、もう少し丁寧に見ていくわよ?

まずは、権利質について規定した条文の確認からね。
民法362条を見てくれる?
民法第362条

『(権利質の目的等) 民法362条
1項 質権は、財産権をその目的とすることができる。

2項 前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。
権利質というのは『財産権の上の質権をいうわ。

動産質、不動産質が、物の上の質権であるのに対して、権利質は、権利の上の質権であるという区別があるわね。

前者は、物の上の質権であることから、物上質とも呼ばれるわ。
でも、物の上の質権って言っても、実際には、物の上に成立する物の所有権が質権の目的となっているわけだから、そういう意味なら、物上質だって権利質っていえなくない?
まぁ、そういう見方をすれば、権利質と呼ぶこともできないわけではないわね。
ただ、ここでいう権利質は、所有権以外の財産権を目的とする質権のことをいうのね。

所有権以外の財産権を目的としていることから、次のような問題が、権利質では生じるわ。

物上質においては、その物権性には問題はないわ。
でも、権利質とくに債権については、その目的となる債権自体が排他性を持たないものであるため、その物権性を、どのように考えるのか? 
という問題があることになるわ。

ちょっと、債権についてはあまり勉強していないから、議論の前提となる知識が足りないかも知れないけれど、物権と債権の区別については、一応簡単には話しているわよね。
あの程度の説明で、理解できると思っているのなら、それは思い上がりだお。
・・・どうして、そこまで他人に責任転嫁できるのか聞きたくなるような態度ね。ホント。
オネーちゃんは、少しは自分で学ぶっていう姿勢を大事にしないとダメだよぉ。
講義の課題とかも、最近は、チイにいっつも訊いてくるんだよぉ。
チイだって自信ないんだし、評価が悪いと、チイのせいにするんなら訊いて欲しくないよぉ。
藤さん・・・。
いくら飛び級入学とは言え、チイちゃんに頼られるのは違うのではないでしょうか。
あんた、まだチイちゃんを、そんなことに利用してるわけ?
   ヒドいです。
(おおう。
 まさに『四面楚歌』じゃまいか。
 これは、いかんお。起死回生の発言をしとかんと、今後に差し障るんじゃまいか!?)
ナニ黙り込んでいるのよ。
チイちゃんに謝ったら、どうなのよ!
・・・チ、チイだって、いずれ法科に入学したら課題をこなす力が求められるんだよ?
今できないことが、いずれ出来るようになるなんて、努力もしないで言えると思っているの?

あ、あたしは、チイに実践的な勉強の機会を提供しているつもりだった・・・。
姉として妹のために、そういう機会を与えてあげられるなら・・・って老婆心からの行動だったんだよ。

もちろん、チイに訊く前に、あたしなりの答えは用意しているんだよ?
でも、チイの答えが、どのような評価を下されるものなのか、って言うのは、あたしの口から言っても伝わりにくいんじゃないのかなって思って、レポートは敢えて、チイの考え方に基づいて作成したんだよね。
そして、そのレポートの出来が悪いものであれば、叱咤激励する、これも当然、姉の責務だと思っていた・・・。

・・・でも・・・でも、ソレはあたしの独り相撲だったみたいだね・・・。
オ、オ、オネーちゃぁーーんっ!!
ごめんなさい、ごめんなさい!!
チイは、オネーちゃんの、そんな優しい気持ちに全然気付いてなかったよぉ!!
・・・ダウト!
と、思わず言いたくなる言葉です。
ゴルゴ13なら『ギルティー(有罪)』って言って、狙撃しそうな発言だと、私も思う。
チイさえワカッてくれるなら、オネーちゃんはいいよ。
ふ、藤さん、大丈夫です!
私も、藤さんの真意を知って、今、涙が出そうになっています!!
・・・。
(黒田先輩・・・。
 私も、黒田先輩の盲信っぷりには、違う意味で涙が出そうになっているです。)
つかさちゃんにかかった呪いは、どうやったら解けるのかしらね。
えーっと、問題についての話に戻るわね。

権利質は、その目的が債権よね。
そして、債権とは排他性を有しない権利よね。

となると、権利質の物権性は、どうなるのか
って話だったわよね。

この点については、民法362条をもう一度見て欲しいわ。
民法第362条

『(権利質の目的等) 民法362条
1項 質権は、財産権をその目的とすることができる。

2項 前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。
362条2項は、権利質については、質権の規定を準用する』としているわ。

おそらく起草者も、権利質においては、物権性が物上質よりも希薄であると考えたのでしょうね。
この準用によって、債権質も、その債権の有する交換価値を質権者が直接かつ排他的に支配しうるという点で、物上質とかわるものではなく、債権質を含めて、権利質の物権性は一般に承認されているわね。
だから、質権総則の規定も、権利質に原則として適用されることとなるわ。
あんまり考えたことのない話だったけど、聴いてみると、成る程ぉって思うね。
ただ、権利質という特殊性は考慮されるべきよね。

要物契約性や、対抗要件、換価方法などについては、物上質とは、かなり異なる取り扱いをせざるを得ないこととなるけれど、これは権利質という特殊性を鑑みれば当然の帰結よね。
不動産質は、あんまり利用されてないって話だったけど、権利質はどうなの?
権利質は、生産信用のための債権担保制度としては、その機能を事実上発揮しえない物上質に対して、今日、生産信用の面でも大きな意義を有しているとされるわ。

権利質の目的となる権利のうち、地上権・永小作権を除いては、これを抵当権の目的とすることはできない民法369条2項)んだけど、これらの権利は、質権によって担保化することが可能だわ。

これらの権利、とくに債権については、その上に質権を設定し、その目的たる債権を質権者に留置されたとしても、質権設定者は、物上質のように生産活動を、なんら阻害されることはないわ。
うわっ!!
そう聴くと、なんか権利質って、すっごい使えるって感じすんね!!
もっとも、債権についても、最近では、この後の勉強会で学ぶ譲渡担保が多く利用されているんだけどね。
あらら・・・ソレは微妙な話だね。
上げてからの~落とすってヤツだね。
別に、制度の勉強に、上げるも、下げるもないじゃないのよ。

そんなことより、サル!
あんた、課題を他人に頼るのは、やめなさいよね!
・・・ぶっちゃけ課題が多過ぎるんだお!
出せばいいってもんじゃないんだお!
でもオネーちゃん、チイの見てる限り、課題の勉強しかしてないよ?
・・・まぁ、驚いた。  
・・・チイが、そんなトップシークレットを軽々しく口にしてまうなんて。
・・・まぁ、驚いた。
・・・。
(ダメだ、こいつ。
 なんとかしないと・・・です。)

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