今日から民法物権について勉強することにしましょう。 しばらくは、イントロとして物権法総論を学ぶことにするわね。 最初はザックリとした理解で、いいと思うわ。 それじゃ、今日はズバリ! 物権ってナニ? ってことを理解することにしましょう。 |
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ズバリって言うのなら、さっさと言ってまえばいいお。 ホレホレ。 |
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あんた、相変わらずよね・・・。 それなら、そうしちゃうけれど、言葉だけでワカルかしら? 物権とは、一定の物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利をいうのよね。 ここで物権の性質をよく理解する際に、債権との対比での説明がなされるわ。 これは、物権と債権との区別を明らかにすることで、物権の性質がよりワカリやすくなるからなの。 |
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こくこく(相槌) |
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一つ簡単な質問を出すから考えてみてくれる? 質問! 私とナカちゃんとの間で、私の所有する土地を、代金1000万円で売る契約を交わしたのね。 その契約の際に、土地の引渡し、登記、代金支払などは、契約成立の1ヵ月後って決めたの。 さぁ、この場合、この契約から生ずる、私とナカちゃん、それぞれの権利関係はどうなるでしょうか? |
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え? ソレは簡単じゃない? 光ちゃんは、ナカちゃんに代金1000万円払えって言えるでしょ? ナカちゃんは、土地の代金を支払うんだから、土地と、トウキ? 今いちよくワカラナイけれど、ソレも寄越せって言えるんじゃない? |
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そういうことよね。 今、サルが言った私とナカちゃん、それぞれの権利。 これらの権利は、いずれも売買契約から生ずる債権なの。 |
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へぇ〜。 ソレが債権なわけね。ふむふむ。 |
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契約成立から1ヶ月後。 私とナカちゃんとの間の契約が、約定通りに履行されたのであれば、ナカちゃんからは私に1000万円の代金の支払いがなされ、私からナカちゃんへは、私の所有する土地の引渡しと移転登記がなされることになるわけよね。 このとき、私の所有する土地の所有権は、「完全に」私からナカちゃんへと移転することになるわ。 この売買によって、私からナカちゃんに移転した所有権。 この所有権は物権なの。 |
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移転した所有権・・・。 えーっと、ソレは物権なわけね・・・。ふむふむ。 |
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と、ここまでの理解を前提として。 ここから、物権と債権との違いを考えて欲しいわけなんだけど。 私とナカちゃんとの間で交わした売買契約。 この契約によって、私はナカちゃんに対して、代金1000万円を支払え、対するナカちゃんは私に、土地を引き渡せ、って、それぞれ言えるってことだったわよね。 じゃあ、私は、この代金1000万円をサルに支払えって言えると思う? |
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いやいやいや、言えるわけないでしょ。 なんで、あたしが関係もないのに、チビっ子の1000万円を払わないと、いけないの。 |
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まぁ、そうよね。 じゃあ、もう少し事案を複雑にしてみて・・・。 質問! 私がナカちゃんとの売買契約を結んだ10日後。 私の所有する土地(まだナカちゃんに引き渡していない同じ土地)を、今度は、チイちゃんにも売ってしまったとしてみて? (いわゆる二重譲渡) この場合、ナカちゃんは、チイちゃんに対して 「その土地は、私が明智先輩から買った土地なんですから、チイちゃんが買っちゃダメです!」 って主張はできると思う? |
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うーーん・・・どうなんだろ・・・。 チビっ子にしてみれば、ナニしてくれてんだ! って気持ちはあるだろうけど、ソレは、余計なことした光ちゃんに言えって話なのかなぁ。 でも、光ちゃんの取引の相手であるチイに、直接、そんな取引はダメだよって言えれば、早いようにも思えるしなぁ。 |
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ナカちゃんは、チイには、そんな主張をすることはできないよ! | ||
そ、そうなるの? | ||
そうなるわね。 ソレは、ナカちゃんが私に対して有する 「土地を引き渡せ、移転登記をせよ」 という権利が債権だからなの。 債権は、特定の人と人との間に生ずる権利をいうわ。 もう少し厳密に言うと、債権とは、直接の支配権ではなく、他人の行為を介在させ、また排他性が存在しない権利をいうの。 さっき、私がナカちゃんとの間で結んだ売買契約を理由に、サルに対して代金の支払いを求めることはできない、って話を、サルは当たり前のように話していたじゃない。 確かに、答えとしてはその通りよね。 債権は、売買契約を交わした私とナカちゃんとの間でのみ生ずる権利であって、それ以外の人には主張できないわけなんだからね。 でも、ソレは、ナカちゃんにとっても同じことが言えるわけ。 ナカちゃんは売買契約の相手方である私に対しては、チイちゃんとの売買契約はするな、という主張はできるんだけれど、チイちゃん本人に対しては、契約がないわけなんだから、その主張はできない、ということになるの。 |
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ちょっと待って下さいです! 私は、明智先輩から土地を買っているです! 土地を買ったということは、土地の所有権は私にあるはずです! それならば、私は、土地の所有権(物権)を主張して、私の所有権を侵害する人(=チイ)に対して、その妨害を排除できるんじゃないですか? |
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ん? なんか話が、急に飛んでない? |
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そうね。 ちょっとナカちゃんの指摘は、先取りになっちゃってたわね。 確かに、ナカちゃんが言うように、土地の所有権がナカちゃんにあるのだとすれば、その土地は他の何人(ナンビト)にも属することはないわ。 そうであるならば、ナカちゃん以外の者が、そのナカちゃんの所有権を脅かそうとする場合には、ナカちゃんは、これに対して、その土地の所有権を主張して、その妨害を排除できるということになるわね。 でも、ここで考えて欲しいんだけど・・・。 私とナカちゃんとの間で売買契約がなされたとき、私の土地の所有権は、いつの時点で、私からナカちゃんに移転するの? |
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その点については、民法上の条文があるよ! 民法第176条 『(物権の設定及び移転) 第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。』 だから、登記をしなくっても、所有権は、ナカちゃんの元の移転しているといえると思うよ! |
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176条は、意思主義を定めていますからね。 確かに、物権変動(※ 後述)は、意思表示だけで生じ、そこに何らの形式も必要とはされていませんよね。 ですから、登記はもちろん、引渡しをせずとも、売買契約の時点で、当事者の意思表示がなされた以上、土地の所有権は移転しているといえます。 |
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いや、でもソレって、なんかおかしくない? 意思だけでOKってことで、登記も引渡しもせんでいいって話だと、その土地が誰の物なのかなんて、全然ワカラナイよ? |
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ああっ!! ソレです!! |
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サルのナイスなツッコミで、ナカちゃんも思い出してくれたみたいね。 そうっ! 意思主義の下、所有権移転があったとしても、所有権自体は目に見えるものではないわ。 それなのに、物権は排他性があるということで、その所有権主張を認めてしまうと、取引安全が害されることとなってしまうという問題が生じるわ。 そこで、所有権が誰にあるかということを、誰が見てもわかるようにする必要があるわけよね。 例えば、今の質問の事案。 チイちゃんは、ナカちゃんの後から私の土地を買ったわけなんだけど、土地の所有権は既にナカちゃんに移転していて、ナカちゃんが、その所有権をチイちゃんに主張できる、って言われても困るわよね。 私からナカちゃんに所有権が移転しているというのなら、それが外部から、つまり、私とナカちゃんという所有権移転の当事者以外からも、目に見える状態にしておいてくれないと困るっていう話よね。 これが対抗要件の問題なのね。 不動産については、登記が対抗要件とされている(民法177条)わけなんだけど、この問題については、また後の勉強会で詳しく学ぶことにするわ。 (※ 質問の事案の場合、ナカちゃんはまだ対抗要件としての登記を備えていないため、チイちゃんに対しては、所有権に基づく妨害排除請求はできない、ということになります。) また、後の勉強会で言うけれど、この取引安全の見地から、登記という公示のない限り、物権の排他性の主張を認めないという考え方を、公示の原則と呼ぶわ。 |
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あうあうあうあうあう。 その勉強はしたはずなのに、うまく説明できませんでした・・・。 なんだか悔しいです・・・。 |
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自分ではワカッているつもりでも、いざ他人に説明するとなると、色々難しいというのは、あるものよ。 私も、みんなに話す際に、勉強になっているなって思うことが多いのは、説明していて思うところだから、ナカちゃんも、そのうち自分の理解を、うまく伝えられるようになるはずよ。 それじゃ、今日の勉強会の内容をまとめるわね。 今日、抑えて欲しいのは、物権と債権の区別ね。 物権の特徴としては、絶対性・排他性・対世効。 つまり、物権は、誰に対しても主張できる権利ってことね。 債権の特徴としては、相対性・非排他性・対人効。 つまり、債権は、特定の人との間でのみ主張できるにすぎない権利ってことね。 もちろん、物権では、さっき話した対抗要件の問題などもあるわけだけれど、イントロなんだし、ザックリとした理解で今日は構わないからね。 それじゃ、今日は短目だけれど、ここまでにしましょうか。 |
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ザックリって言う割には、結構色々言ってきたなぁ・・・。 どうも、あたしのいうザックリと、光ちゃんのいうザックリとでは、ニュアンスに違いがある気がするんだよなぁ。 |
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藤さんのザックリの切れ味は、快刀乱麻ですからね! | ||
・・・。 (藤先輩のザックリは、切れ味がスゴいというよりも、肝心な部分までも切り取ってしまっているような気がするです・・・。) |
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あれ? もう、おしまいなの? |
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まぁ、今日はイントロだしね。 最初は、少しずつって感じでいいかな、って思っているんだけど。 |
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まだまだ全然やり足りないよ! もっともぉーっと、やりたいよ! |
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コラコラ! 我侭言って、みんなを困らせるんじゃないよ! |
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別に、続きをしても私はいいんだけど。 みんなは大丈夫なの? |
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私は全然構いませんよ。 | ||
私も正直言うと、続きをしたいです! | ||
あたしは、初志貫徹、有言実行の観点から、一度終わると言った以上、断固として終わるべきだと思う。 っていうか、終わらなければならないと思うっ! |
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初志貫徹か・・・。 オネーちゃんは、やっぱりいいこと言うなぁ。 ウン! 終わるべきだよ! |
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ふえっ!? | ||
え!? 急にどうしちゃったわけ? チイちゃん? |
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「やる」って一旦決めた以上、やり遂げる気持ちが大事! でも、「やめる」って覚悟を決めた以上、その気持ちもまた大事ってオネーちゃん言ってたもん! だよね? オネーちゃん? |
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だおだお。 木下家、代々に伝わる家訓だお。 言の葉の持つ重みを誰よりも大事にする木下家ならではの家訓だお。 |
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口から出任せばかりの、あんたが、よくもそんな言葉を言えたものね。 まぁ、いいわ・・・。 続きを望むチイちゃんがいいって言っているんだから、今日のところは流してあげるわ。 |
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ウキっ! (・・・チイが、変わらずアホの子のまんまで助かったお。) |