第三者の憲法上の権利の援用A | ||
さぁ、それじゃ予告通り、今日の勉強会から第三者の憲法上の権利の援用について、しっかり学ぶことにするわね。 まずは、この第三者の憲法上の権利の援用についてだけど、2つに場合分けをして考える必要があるわ。 |
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面倒くさいから考えない場合と、仕方ないから考える場合だね。 | ||
だ・ま・れ。 |
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あたしのお財布に、お金よ・・・た・ま・れ。 | ||
あんな冷たい返しをされたのに・・・。 藤先輩の面の皮の厚さは尋常じゃないですっ! |
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藤さん・・・。 藤さんは、今更な勉強会かも知れませんが、正直、私も苦手な論点なので、出来れば今日の勉強会では、いつものように場を和ませる御冗談を言われるのではなく、的確な御指導をして頂ければ嬉しいって思っています。 |
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・・・。 (ナニ言ってんだろ、このメガネ。 的確な御指導は、あたしがして欲しいわ!) |
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サルの的確な御指導っていうのは、沈黙を守ってくれることじゃないの? あんたが、チャチャ入れると、勉強会進まないしね。 えーっと、冒頭から脱線しちゃったけれど、第三者の憲法上の権利の援用については、2つに場合分けをして考える必要があるのよね。 その2つというのは @特定の第三者 A不特定の第三者 の2つね。 この@特定の第三者とは、自己と何らかの関連を有する特定の第三者の憲法上の権利を援用する場合をいうわ。 この場合は、違憲の主張をする者に法令を適用すると、特定の第三者の憲法上の権利が侵害される、とする主張になるわね。 次にA不特定の第三者とは、その法令が不特定の第三者に適用されるときには、不明確であるとか、広汎に失し表現の自由が害されるとか主張し、法令が文面上違憲であると主張する場合をいうわ。 この場合は、違憲の主張をする者に適用される場合、その法令は合憲であるかも知れないが、不特定多数の仮想上の第三者に適用される場合には違憲になり、その法令の性質上、法令は文面上無効である、とする主張になるわけね。 先ずもって、この理解が大事になるから、この区別は出来るようにしておいて欲しいわ。 |
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えーっと、つまり、憲法上の権利を援用する人から見て、特定の人の場合なら@。 憲法上の権利を援用する人から見て、誰に適用されるかワカラナイ、不特定の人の場合ならAということですよね。 |
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そうね。 もう一つ、今の理解に付け加えておくなら、 @の場合なら法令違憲、適用違憲、両方あり得るわ。 Aの場合には、法令違憲が考えられ得るってことね。 因みに、前後しちゃって申し訳ないんだけれど、この法令違憲、適用違憲、という新司法試験において、この上なく重要な論点については、この第三者の憲法上の権利の援用というテーマの後に学ぶことにするからね。 |
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進行順序が悪いのではないかと問い詰めたい。 小一時間問い詰めたい。 |
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ソレは申し訳ございませんでしたね! 第三者の憲法上の権利の援用については、2つに場合分けをして考える必要があるってことで、その2つの場面。 つまり、 @特定の第三者 A不特定の第三者 のうち、今日の勉強会では@特定の第三者の場面を抑えることにするわね。 どのような場合において、@特定の第三者の憲法上の権利の援用が認められるのか、ということについて理解できるようにしたいと思うわ。 |
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その問題提起ですと・・・検討判例は、第三者所有物没収事件でしょうか。 | ||
そうね。 検討判例は、第三者所有物没収事件になるわ。 (最大判昭和37年11月28日 百選U 112、194事件) |
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難しい判例だったけれど、しっかり読めた気がするよぉ。 | ||
そう言ってもらえると、私も嬉しいわ。 あ、そうそう。 さっき戻ってから、まとめるって言っていた第三者の憲法上の権利主張が認められるか否かで考慮される事項についてだけど、判例検討自体はしないけれど、オウム真理教解散命令事件控訴審決定(東京高裁平成7年12月19日)の決定文を見ておくといいと思うわ。 |
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百選掲載の最高裁判決ではなく、高裁決定ですか。 | ||
そうね。 この事案も、特定の第三者の事案だったわけなんだけど。 決定文において、次のように述べられているわ。 『法令又はこれに基づく裁判等の国家行為により不利益を受ける当事者が、その効力を争う裁判上の手続において、この手続の当事者ではない特定の第三者の憲法上の権利が右国家行為により侵害されるとして、当該国家行為が憲法に違反する旨主張する適格(以下「第三者の憲法上の権利主張の適格」という。)を有するかどうかは、右特定の第三者の憲法上の権利の性質、当事者と第三者との関係、第三者が独立の手続において自らの当該憲法上の権利を擁護する機会を有するかどうか,当事者に対し第三者の憲法上の権利主張の適格を認めないときには第三者の権利の実効性が失われるおそれがあるかどうか等を考慮し、当事者に右適格を与えるのが相当と認められる場合は格別、そうでない限りは許されないものというべきである(最高裁判所昭和三七年一一月二八日大法廷判決・刑集一六巻一一号一五九三頁参照)。』 この高裁の決定文で、引用されている判例が、さっき検討した第三者所有物没収事件なのよね。 この決定文から読み取るに、 『第三者の憲法上の権利主張の適格」を有するかどうか』は、 @『特定の第三者の憲法上の権利の性質』 A『当事者と第三者との関係』 B『第三者が独立の手続において自らの当該憲法上の権利を擁護する機会を有するかどうか』 C『当事者に対し第三者の憲法上の権利主張の適格を認めないときには第三者の権利の実効性が失われるおそれがあるかどうか』 といったことを考慮して、その適格性を判断すべきってことになるといえるわね。 そして、第三者の憲法上の権利を主張できるか否かは、 『当事者に右適格を与えるのが相当と認められる場合は格別、そうでない限りは許されない』 という判断をすべきってことよね。 |
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メモメモ!! | ||
む、難しい話ですね。 | ||
そうね。 私も正直、理解が不十分であるという自覚のあるところだから、また、もっといい説明が出来るようになれれば、という気持ちではいるわ。 |
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いや、その前に、法令違憲と適用違憲の説明をすっ飛ばして、この勉強会をしたことを恥じろっ!! | ||
藤さん・・・手厳しいですね。 勉強のこととなると、藤さんは人一倍厳しい態度を、時に見せられるので、私も身が引き締まります。 |
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・・・。 (もっとも、肝心の藤先輩が引き締まっていないと思うです。) |
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説明の順番が悪かったかしら・・・。 でも・・・ |
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言い訳は許さんっ!! 「でも」も「へちま」も、ねぇーんだお!! |
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・・・先に言っておくけれど、精神的苦痛の慰謝料として、ネージュ・ブロンシュでの御馳走って話にするのなら、断らせて頂きますからね! | ||
・・・あ、バレとるのね。 | ||
ふ、藤さん・・・。 | ||
・・・。 (あ、珍しく黒田先輩が、藤先輩の無茶ぶりに呆れてみえるです! こ、これは呪いが解けるチャンス到来かも、です!) |
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損害賠償の方法は、原則、金銭賠償ですから・・・。 ネージュ・ブロンシュでの御馳走を要求する、というのは、当事者間に、特段の意思表示がない以上、難しいのではないでしょうか? |
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・・・な、な、ナニ言っているんですか!? 黒田先輩・・・。 |
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あ、民法417条の話ですね。 | ||
へぇ〜。民法417条ですか・・・。 民法第417条。 『(損害賠償の方法) 第417条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。』 なるほど、なるほど・・・ |
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・・・って、違うですぅぅぅっ!! | ||
こんなにお世話になっている光おねーちゃんに文句を言うなんて、チイは妹として恥ずかしいよぉ。 |