違憲審査制の意義、違憲審査権の主体 | ||
さぁ、遂に来たわね。 司法権の本丸っ! 今日からの勉強会は、特に大事な話ばかりになるわ。 司法試験の論文においても、とかく問われることの多い憲法訴訟について、学ぶことになるわけだからね。 |
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・・・あ、痛い。 あたし、お腹痛いっ!! 頭も、胸も、あと心もっ!!! |
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藤さん、大丈夫ですか!? ひ、ひ、光ちゃんっ! 一大事ですっ! 可及的速やかに、然るべき措置をとらないと、とんでもないことになってしまいますっ!! |
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どう見ても仮病じゃないの。 ナニ、最後の。 心が痛いって、嘘ついているから良心が痛いとでも言いたいわけ? 今日は、違憲審査制の意義と、この違憲審査権の主体という2つのテーマを消化したいと思っているから、悪いけどサルの茶番に付き合っている暇はないわよ? |
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『ピエロだよ! とんだピエロだよ!』 | ||
・・・。 (あ、『日常』のゆっこの真似してるです。) |
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それじゃ、今日の1つ目のテーマ。 違憲審査制の意義からね。 『かつてヨーロッパ大陸諸国では、裁判所による違憲審査制は民主主義ないし権力分立原理に反すると考えられ、制度化されなかったが、第二次大戦中に経験した独裁制に対する深刻な反省から、人権は法律から保障されなければならないと考えられるようになり、戦後の新しい憲法によって広く違憲審査制が導入されるに至った』 (芦部信喜『憲法 第6版 高橋和之補訂』 岩波書店 377頁) と説明されるものね。 ここにいう『人権は法律から保障されなければならない』というのは、形式的法治国家にいう法律を意味しているわ。 つまり、人権が憲法に違反した法律によって侵害されないようにされなければならない、ということをいっているわけね。 そうそう。 第二次大戦中における独裁制の下での裁判の狂気を描いた作品として、私の心に鮮明に残る作品として『白バラの祈り』という映画があるんだけれど、個人的には、是非一度見て欲しいなって思っているわ。 |
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あぁ、見た見た。 あたしもかなり高得点の映画だね、アレは。 |
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・・・あんたは映画見過ぎ。 もっと基本書読む時間もちなさい。 |
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うわ、ひでぇ。 是非一度見て欲しいって言っといて、ソレかい!! |
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この違憲審査制を具体化しているのが、憲法81条ね。 条文を確認しておきましょうか。 |
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日本国憲法第81条。 『第81条 【法令審査権と最高裁判所】 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。』 |
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この違憲審査制の根拠は、 @憲法の最高法規性 A基本的人権尊重の原理 に求められるわ。 |
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こくこく(相づち)。 |
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次に、この違憲審査制の類型なんだけど。 @付随的違憲審査制 A抽象的違憲審査制 の2つの制度があるわね。 @付随的違憲審査制とは、通常の裁判所が、具体的な訴訟事件を裁判する際に、その前提として事件の解決に必要な限度で、適用条文の違憲審査を行う方式をいうわ。 A抽象的違憲審査制とは、特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な争訟とは関係なく、抽象的に違憲審査を行う方式をいうわね。 |
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へぇ〜。 | ||
じゃあ、質問! わが国(日本)は、いずれの違憲審査制をとっているでしょうか? |
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付随的違憲審査制じゃないの? | ||
そうね。正解。 珍しくスンナリ答えてくれたけど、そう考えた理由は? |
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赤太文字だったから。 | ||
オネーちゃんは、ナニを言っているの? 法律上の争訟の勉強会を思い出せばいいんだよ。 裁判所法3条にいう『法律上の争訟』とは @当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり かつ A法律の適用によって終局的に解決し得べきもの って2要件だったじゃない! つまり、裁判所は『法律上の争訟』で、なければ、そもそも審査権を行使しないわけなんだから、具体的な争訟と関係なく違憲審査を行う抽象的違憲審査制ではなく、付随的違憲審査制だってことがワカルんだよ! |
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そういうことよね。 ホント、サルはナニ言ってんだか・・・。 一応、参考的な学説としてだけど、憲法81条が最高裁判所に憲法裁判所的性格を積極的に与えていると解することはできないが、だからといって、それを禁ずる趣旨にも解されないから、法律や裁判所規則でその権限や手続きを定めれば、最高裁判所に憲法裁判所の機能を果たさせることもできる、という注意事項説と呼ばれる考え方もあるわね。 |
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そう言えば、以前の勉強会で少し触れた警察予備隊訴訟を、ここで再度確認しておくべきですよね。 | ||
そうね。 裁判所の違憲審査権が、どのような性格を有するものか、という論点で取り扱われる判例として、まず見ておくべき判例だからね。 警察予備隊訴訟(最大判昭和27年10月8日 百選U 193事件) の判決文では、次のように述べられているわ。 『わが現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。 そして弁論の趣旨よりすれば、原告の請求は右に述べたような具体的な法律関係についての紛争に関するものでないことは明白である。 従つて本訴訟は不適法であつて、かかる訴訟については最高裁判所のみならず如何なる下級裁判所も裁判権を有しない。 この故に本訴訟はこれを下級裁判所に移送すべきものでもない。』 とね。 つまり、警察予備隊訴訟事件では、裁判所は抽象的な合憲性の判断はできない。それは付随的違憲審査制をとっているから、っていっているわけね。 |
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でも、なんか気になる言い回しだよね、これ。 『わが現行の制度の下においては』って言ってたり、『憲法上及び法令上何等の根拠も存しない』って言ってたりするけど、別に、抽象的違憲審査制を禁止しているわけではないとは言えそうだもんね。 |
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あんた、そういう裏読みするの好きよね。 性格が滲み出ている気がするわね。 『法律上の争訟』にあたらなければ、そもそも司法審査の対象とはならないわけよね。 でも、裁判所法3条1項は『その他法律において特に定める権限』によって、本来は『法律上の争訟』にはあたらない訴訟であっても、立法政策上、裁判所の権限によって例外的に、客観訴訟という訴訟類型を認めているって話はしたわよね? ただ、そうなると、客観訴訟における違憲審査権の行使は、すなわち、抽象的違憲審査を認めることになるのではないのか? とする問題が生じることになるわけよね? |
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あ、ホントだぁ。 | ||
この問題については、国会両議院議員の選挙における選挙人の投票価値の平等が争われた最大判昭和51年4月14日の判決文を見ておくべきね。 『(元来、右訴訟は、公選法の規定に違反して執行された選挙の効果を失わせ、改めて同法に基づく適法な再選挙を行わせること(同法一〇九条四号)を目的とし、同法の下における適法な選挙の再実施の可能性を予定するものであるから、同法自体を改正しなければ適法に選挙を行うことができないような場合を予期するものではなく、したがつて、右訴訟において議員定数配分規定そのものの違憲を理由として選挙の効力を争うことはできないのではないか、との疑いがないではない。 しかし、右の訴訟は、現行法上選挙人が選挙の適否を争うことのできる唯一の訴訟であり、これを措いては他に訴訟上公選法の違憲を主張してその是正を求める機会はないのである。 およそ国民の基本的権利を侵害する国権行為に対しては、できるだけその是正、救済の途が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らして考えるときは、前記公選法の規定が、その定める訴訟において、同法の議員定数配分規定が選挙権の平等に違反することを選挙無効の原因として主張することを殊更に排除する趣旨であるとすることは、決して当を得た解釈ということはできない。)』 として、最高裁は客観訴訟における違憲審査権を肯定しているわ。 そして事実、この判決以降も、客観訴訟において違憲審査を行使しているわけね。 |
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ふぅ〜ん。 | ||
ナニ、そのうっすい反応は。 次は、今日の勉強会の2つ目のテーマ。 違憲審査権の主体についてね。 ここで、憲法81条を再度確認してくれる? |
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日本国憲法第81条。 『第81条 【法令審査権と最高裁判所】 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。』 |
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この条文を読む限り、違憲審査権の主体として、最高裁判所が、その主体となることは明らかよね。 問題となるのは、この条文の文言からは明らかではない下級裁判所が違憲審査権の主体となり得るか、ってことなのね。 |
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確かに、確かに。 81条は『最高裁判所は』って書いてあるだけだもんね。 |
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この点について 『違憲審査権が司法権の機能の一環としてとらえられる以上それは最高裁判所だけでなく、同じく司法権を担当する下級裁判所においても行使できる性格のものと解するのが自然である』 と説かれるわ。 (野中俊彦・他『憲法T・U 第5版』 有斐閣 277頁) では、この問題を判例は、どう捉えているのか? ってことよね。 |
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こくこく(相づち)。 |
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この下級裁判所の違憲審査権が争われた判例として、最大判昭和25年2月1日があるわね。 この事件の判決文では、次のように述べられているわ。 『憲法は国の最高法規であつてその条規に反する法律命令等はその効力を有せず、裁判官は憲法及び法律に拘束せられ、また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである。 従つて、裁判官が、具体的訴訟事件に法令を適用して裁判するに当り、その法令が憲法に適合するか否かを判断することは、憲法によつて裁判官に課せられた職務と職権であつて、このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない。 憲法81条は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であつて、下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもつているものではない。 それ故、原審が所論の憲法適否の判断をしたことはもとより適法であるのみでなく、原審は憲法適否の判断を受くるために最高裁判所に移送すべきであるとの所論は、全く独断と言うの外はない。』 とね。 つまり、学説同様、判例の立場も 『法令が憲法に適合するか否かを判断することは、憲法によつて裁判官に課せられた職務と職権であつて、このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない』 とし、下級裁判所の違憲審査権の行使を認めているってことになるわ。 |
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成程、成程。 憲法81条は、そのような解釈をもって読めってことね。 |
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読めっていうか、このように解釈されるべき条文だよってことね。 どうも、サルは言葉が乱暴だから困るわねぇ。 |
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あたしが乱暴なのは言葉遣いだけだけどね! | ||
ど、どの口で、そんなことを言うですか! 私は、藤先輩に、散々頭突きをされているです!! |
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やだなぁ、頭突きだなんて。 あんなの、ただのスキンシップじゃないの! |
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ですよね。 私なんて、正直、竹中さんが羨ましいくらいですもの。 いいなぁ、藤さんと仲良くってって。 |
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ぐぬぬぬぬぬぬ。 (黒田先輩も、一度木下頭突きを喰らえばいいんです! アレは、正直ものすっごく痛いんです!! ) |
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ナカちゃん、大丈夫よ。 今度、サルがまたあんな真似したら、私も、柴田さんにスキンシップをサルにしてくれるよう御願いするから。 |
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ちょっ!! おまっ!! 柴田さんは関係ないやないかっ!! |
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スキンシップなんでしょ? 柴田さんも、サルとは仲良くなりたいって言ってみえたもの。 私も、応援したいって思うのは当たり前じゃないのよ。 |
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・・・あ、あたしは仲良くしたくないもん。 あんなゴリラ女とは・・・。 |
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え? え? 今、なんて!? |
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いやいやいやいやいやっ!! 言ってないから!! ご・・・ご・・あんな、ご立派な女性とは・・・って言ったんだよ。 そうそうそうそうそう。マヂでそうっ!! |
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・・・。 (柴田さんはスゴいです。 名前を出すだけで、藤先輩がタジタジになっているです。) |