裁判所の組織と権能③ | ||
藤さんは、やっぱり凄いですね! 先日の焼肉のお食事での柴田さん、すっごく悔しそうでしたよ? |
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まぁ、所詮アスリートと言っても胃袋までは鍛えちゃいないってことだよね。 スゴい食べるなんて豪語しといて、あの程度かと。 『あのな、大食いなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。 得意げな顔して何が、大食い、かと。 お前は本当に大食いなのかと問いたい。 問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。 お前、大食いって言いたいだけちゃうんかと。 もう、おまえ、それいいたいだけちゃうのか、と。』 |
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あんた、どんだけ言うつもりよ! でも私も悪かったかもね・・・。 私の友人に、すごく食べる人がいるんです、なんて柴田さんに話したせいで、柴田さん、対抗意識持っちゃったみたいだったし・・・。 |
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柴田さん、チイちゃんにまで負けるのは信じられないって顔をされてみえたです・・・。 | ||
翌日、腹痛のせいで午後からの出勤をされて、SPの上司の方に、そんなことで警護が務まると思っているのかって怒られたってラインがきてたわ・・・。 なんだか誘って悪いことしちゃったみたいね。 |
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でも、柴田おねーちゃん、すっごい大食漢だったよね! チイ、あんなに食べる人、オネーちゃんくらいだと思っていたから驚いちゃったよ! |
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『まおゆう』! ・・・もとい! おまゆう! (=お前が言うな!の略) |
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・・・た、確かに、チイちゃんは底抜けだったです・・・。 | ||
そ、そうね・・・。 帰りの車中でも、柴田さんもサルには勝ちたいって言ってみえたけれど、チイちゃんには勝てないって認めてみえたしね・・・。 |
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えーーっ!! チイだって、また柴田おねーちゃんと勝負したいよぉ! |
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こ、こ、個人的には、食事は楽しむものであって、勝負するものではないって思うんだけどね・・・。 でも柴田さんも楽しかったみたいだったわ。 だって、柴田さんが、あんなに表情豊かな方だったなんて、私も驚かされちゃったくらいだからね。 |
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ソレ言うなら、柴田さんも驚いとったお。 いつも静かな御嬢様が・・・って。 |
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違うわよ! ソレは、サルが余計なことばっかり言うからじゃないの!! つかさちゃんは、サルのイエスマンだし、ナカちゃんは基本突っ込んでくれないし、チイちゃんは食べることに夢中なんだから、私が突っ込まないと、あんたが言いたい放題だからじゃないのよ!! わ、わ、私のイメージが壊れたら、あんたのせいだからね!! |
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ウワっ!! 恐ろしい責任転嫁っ!!! いい年こいて他人のせいとか、マヂでないわぁっ!! |
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あぁぁぁぁ。恥ずかしい・・・。 柴田さん、私のこと、ガサツな女だなんて思ってないかしら・・・。 |
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そんなことないですよ、光ちゃん。 柴田さんも、いつもあまり笑わない御嬢様の笑顔が沢山見られて、今日は嬉しかったって言ってみえましたもの。 |
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顔面造りモンだから、あまり笑うと顔が壊れるからね。 普段は、あまり表情壊さないようにしとるんだよね。 うんうん、あたしはワカッとるから大丈夫やで(ニッコリ) |
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あんた、そのネタ、まだ持ち出す気なの? あ、ちょっとおしゃべりに華が咲いちゃったわね。 えーっと、それじゃ、今日の勉強会からは最高裁判所について学ぶことにするわね。 早速、条文の確認からね。 憲法79条1項を見てくれる? あ、ついでに、裁判所法5条も一緒に御願いね。 |
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日本国憲法第79条1項。 『第79条 【最高裁判所の裁判官】 1項 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。』 裁判所法第5条。 『(裁判官) 第5条 1項 最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。 2項 下級裁判所の裁判官は、高等裁判所の長たる裁判官を高等裁判所長官とし、その他の裁判官を判事、判事補及び簡易裁判所判事とする。 3項 最高裁判所判事の員数は、十四人とし、下級裁判所の裁判官の員数は、別に法律でこれを定める。』 |
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ありがとうね。 最高裁判所は、最高裁判所長官1名および14名のその他の裁判官(最高裁判所判事)によって構成されるわ(憲法79条1項、裁判所法5条1項、3項)。 それから、ナカちゃん、今度は裁判所法39条を見てくれる? |
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裁判所法第39条。 『(最高裁判所の裁判官の任免) 第39条 1項最高裁判所長官は、内閣の指名に基いて、天皇がこれを任命する。 2項 最高裁判所判事は、内閣でこれを任命する。 3項 最高裁判所判事の任免は、天皇がこれを認証する。 4項 最高裁判所長官及び最高裁判所判事の任命は、国民の審査に関する法律の定めるところにより国民の審査に付される。』 |
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『最高裁判所長官は、内閣の指名に基いて、天皇がこれを任命』するわ(裁判所法39条1項)。 そして、その他の裁判官は『内閣でこれを任命』し『天皇がこれを認証する』わけね(裁判所法39条2項、3項)。 |
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条文読んだだけじゃねぇかお。 |
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あんた、判例検討したらしたで文句言うし、条文読解は、条文読んだだけって文句言うなんて、どこまでクレーマーなのよ、一体! | ||
まぁまぁ。 ここでの一番の論点は、なんと言っても国民審査制の法的性質をどのように解するべきか、ということですよね。 |
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そうよね。 新司法試験予備試験の論述でも問われているわよね。 ちょっと条文を先に確認しておきましょうか。 憲法79条2項、3項、4項を見てくれる? |
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日本国憲法第79条2項、3項、4項。 『第79条 【国民審査】 2項 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。 3項 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。 4項 審査に関する事項は、法律でこれを定める。』 |
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この国民審査制については 『この制度の趣旨は、内閣による恣意的な任命の危険の防止のために、任命を国民の民主的監督の下におくことにある』 と説かれるわ。 (野中俊彦・他『憲法Ⅰ・Ⅱ 第5版』有斐閣) 他にも 『この国民審査の制度は、最高裁判所が裁判所の有する違憲立法審査権を最終的に行使する権限をもつこと(81条)、規則制定権(77条1項)や下級裁判所の指名権(80条1項)をもつことなど、司法権の最高責任者たる地位におかれていることにてらし、その裁判官に対しても憲法15条の国民の公務員選定・罷免権を及ぼしたものと理解される』 (伊藤正己『憲法【第3版】』弘文堂 1995年 581頁) と説明されるところね。 |
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これ、アレだよね? ずっと前に、ちょっと話に出てきたよね? 無記入と×以外は、無効票になるっていう例のアレだよね? |
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あ、そうね。 でも、今日の勉強会では、この最高裁判所裁判官の国民審査の法的性質にまで踏み込んで話をするわ。 この最高裁判所裁判官の国民審査の法的性質を、どのように解するべきか、という点については、次のような考え方があるわ。 ①解職の制度と解する説(解職制度説) ②解職と同時に適任者の信任を有すると解する説(併有説①) ③解職と任命の事後審査の性格を併有すると解する説(併有説②) これらの考え方のうち学説の通説的理解・判例の立場は、①解職制度説とされているわ。 今日の勉強会では、この考え方を、しっかり抑えることにしましょう。 |
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検討すべき判例としては、最大判昭和27年2月20日ですね。 (百選Ⅱ 184事件) |
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そうね。 でも今日の検討判例は、これだけだし、個別ページへの移動はせず、このまま判例を見ることにしましょうか。 |
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そうですね。 | ||
本件の争点は、次の点になるわ。 まず今日の勉強会でのメイン論点である ①最高裁判所裁判官の国民審査の法的性質を、どのように解するべきか、という点。 そして ②罷免の可否がわからないために何の記入もせずに投票された印のない白票を「罷免を可としない投票」として法律上扱うことが憲法21条、19条に反しないのか、という点。 この争点に注意して、今から見る判決文を見て欲しいわ。 |
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とは言え、先にオチ言うとるからなぁ。 通説・判例は解職制度説ってことだから、①については聞くまでない気がしてまうんだけどなぁ。 |
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あんた、たまには黙って判決文読んでなさいよ!! えーっと、最高裁の判決文を見ていくわね。 『最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度はその実質において所謂解職の制度と見ることが出来る。 それ故本来ならば罷免を可とする投票が有権者の総数の過半数に達した場合に罷免されるものとしてもよかつたのである。 それを憲法は投票数の過半数とした処が他の解職の制度と異るけれどもそのため解職の制度でないものとする趣旨と解することは出来ない。只罷免を可とする投票数との比較の標準を投票の総数に採つただけのことであつて、根本の性質はどこ迄も解職の制度である。 このことは憲法第79条3項の規定にあらわれている、同条第2項の字句だけを見ると一見そうでない様にも見えるけれども、これを第3項の字句と照し会せて見ると、国民が罷免すべきか否かを決定する趣旨であつて、所論の様に任命そのものを完成させるか否かを審査するものでないこと明瞭である。 この趣旨は一回審査投票をした後更に十年を経て再び審査をすることに見ても明であろう、一回の投票によつて完成された任命を再び完成させるなどということは考えられない。』 |
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あ、明智先輩。 ちょっと六法で確認させて欲しいです! 日本国憲法第79条2項、3項。 『第79条 【国民審査】 2項 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。 3項 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。』 |
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大丈夫? 続けるわね。 『論旨では期限満了後の再任であるというけれども、期限がきれた後の再任ならば再び天皇又は内閣の任命行為がなければならない、国民の投票だけで任命することは出来ない、最高裁判所裁判官は天皇又は内閣が任命すること憲法第6条及び第79条の明定する処だからである。 なお論旨では憲法第78条の規定を云為(うんな)するけれども、第79 条の罷免は裁判官弾劾法の規定する事由がなくても、国民が裁判官の人格識見能力等各種の方面について審査し、罷免しなければならないと思うときは罷免の投票をするのであつて、第78条とは異るものである。 しかのみならず一つ事項を別の人により、又別の方法によつて二重に審査することも少しも差支ないことであるから、第79条の存するが故に第78条は解職の制度でないということは出来ない。 最高裁判所裁判官国民審査法(以下単に法と書く)は右の趣旨に従つて出来たものであつて、憲法の趣旨に合し、少しも違憲の処はない。かくの如く解職の制度であるから、積極的に罷免を可とするものと、そうでないものとの二つに分かれるのであつて、前者が後者より多数であるか否かを知らんとするものである。論旨にいう様な罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とするもの」に属しないこと勿論だから、そういう者の投票は前記後者の方に入るのが当然である。 それ故法が連記投票にして、特に罷免すべきものと思う裁判官にだけ×印をつけ、それ以外の裁判官については何も記さずに投票させ、×印のないものを「罷免を可としない投票」(この用語は正確でない、前記の様に「積極的に罷免する意思を有する者でない」という消極的のものであつて、「罷免しないことを可とする」という積極的の意味を持つものではない、――以下仮りに白票と名つける)の数に算えたのは前記の趣旨に従つたものであり、憲法の規定する国民審査制度の趣旨に合するものである。罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とする」という意思を持たないこと勿論だから、かかる者の投票に対し「罷免を可とするものではない」との効果を発生せしめることは、何等意思に反する効果を発生せしめるものではない、解職制度の精神からいえば寧ろ意思に合する効果を生ぜしめるものといつて差支ないのである。 それ故論旨のいう様に思想の自由や良心の自由を制限するものでないこと勿論である。』 |
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・・・。 (なっげぇ・・・。) |
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さらに、こう続くわ。 『最高裁判所の長たる裁判官は内閣の指名により天皇が、他の裁判官は内閣が任命 するのであつて、その任命行為によつて任命は完了するのである。 このことは憲法第6条及び第79条の明に規定する処であり、此等の規定は単純明瞭で何等の制限も条件もない。 所論の様に、国民の投票ある迄は任命は完了せず、投票によつて初めて完了するのだという様な趣旨はこれを窺うべき何等の字句も存在しない。 それ故裁判官は内閣が全責任を以て適当の人物を選任して、指名又は任命すべきものであるが、若し内閣が不適当な人物を選任した場合には、国民がその審査権によつて罷免をするのである。 この場合においても、飽く迄罷免であつて選任行為自体に関係するものではない。国民が裁判官の任命を審査するということは右の如き意味でいうのである。』 として、あくまで解職制度だという前提の議論に終始しているわね。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
そして、 『それ故何等かの理由で罷免をしようと思う者が罷免の投票をするので、特に右の様な理由を持たない者は総て(罷免した方がいいか悪いかわからない者でも)内閣が全責任を以てする選定に信頼して前記白票を投ずればいいのであり、又そうすべきものなのである。 (若しそうでなく、わからない者が総て棄権する様なことになると、極く少数の者の偏見或は個人的憎悪等による罷免投票によつて適当な裁判官が罷免されるに至る虞があり、国家最高機関の一である最高裁判所が極めて少数者の意思によつて容易に破壊される危険が多分に存するのである)、これが国民審査制度の本質である。 それ故所論の様に法が連記の制度を採つたため、二三名(=2、3名)の裁判官だけに×印の投票をしようと思う者が、他の裁判官については当然白票を投ずるの止むなきに至つたとしても、それは寧ろ前に書いた様な国民審査の制度の精神に合し、憲法の趣旨に適するものである、決して憲法の保障する自由を不当に侵害するなどというべきものではない。 総ての投票制度において、棄権はなるべく避けなければならないものであるが、殊に裁判官国民審査の制度は前記の様な次第で棄権を出来るだけ少なくする必要があるのである。 そして普通の選挙制度においては、投票者が何人を選出すべきかを決するのであるから、誰を選んでいいかわからない者は良心的に棄権せざるを得なくなるということも考えられるのである が、裁判官国民審査の場合は、投票者が直接裁判官を選ぶのではなく、内閣がこれを選定するのであり、国民は只或る裁判官が罷免されなければならないと思う場合にその裁判官に罷免の投票をするだけで、その他については内閣の選定に任かす建前であるから、通常の選挙の場合における所謂良心的棄権という様なことも考慮しないでいいわけである。 又投票紙に「棄権」という文字を書いてもそれは余事記入にならず、有効の投票と解すべきものであることの論があるけれども現行法の下では無理と思う。』 と述べているわね。 |
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・・・。 (たぁぁぁあすけぇぇてぇくれぇぇぇぇっ! と叫びたくなったお。 なんでだろ? 長ぇからだな、うん。) |
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判決文にもあるように 『普通の選挙制度においては、投票者が何人を選出すべきかを決するのであるから、誰を選んでいいかわからない者は良心的に棄権せざるを得なくなるということも考えられるのである が、裁判官国民審査の場合は、投票者が直接裁判官を選ぶのではなく、内閣がこれを選定するのであり、国民は只或る裁判官が罷免されなければならないと思う場合にその裁判官に罷免の投票をするだけで、その他については内閣の選定に任かす建前であるから、通常の選挙の場合における所謂良心的棄権という様なことも考慮しないでいい』 としているわ。 つまり 選挙は選ぶ行為(選定行為)。 これに対して、国民審査は辞めさせる行為(解職行為)。 という違いがあるってことになるわ。 |
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ほうほう。 つまり、投票会場で、あたしは、それぞれ違うことをやっていた、と、そういうわけね。 |
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そうなるね。 いずれも投票には違いないけれど、その投票の権利の性質は異なるものだったってことになるわね。 今日は、国民審査はリコール制度だってことを理解して欲しいわ。 |
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オネーちゃんは、投票権があるからいいなぁ。 早くチイも大人になりたいよぉ。 |
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まぁまぁ。 チイに、大人の女は、まだまだ早いよねぇ。 酒も煙草も知らないんじゃ・・・ねぇ? |
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あんただって、煙草の味なんて知らないじゃないのよ。 | ||
はっ!? し、し、知ってますぅぅ。 あ、あたしみたいな、いい女は、酸いも甘いも全部知り尽くしているんですぅぅぅっ!! |
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藤さん、喫煙されるんですね。 全然知りませんでした。なんだか意外です。 |
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でも、藤先輩が喫煙されているのなんて見たことないです。 | ||
あ・・・それは、アレだよ・・・。アレ。 気遣いだよね! 気遣いっ!! み、みんながいないとこだったら、あたしスパスパ吸ってっからね!! |
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ウチにも灰皿なんてないよ? | ||
チイは、父ちゃんの喫煙も、あんまり好きじゃなかったじゃないの! そりゃ、姉としては妹に気遣いもするよ、普通っ!! |
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藤さんは優しいお姉さんですものね。 素敵です! |
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・・・絶対吸ってないくせに。 どうして、そんな意味のない見栄はるのかしら。 |
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あぁ~・・・なんだか口元が寂しいなぁ~。 | ||
・・・白々しい。 |