裁判所の組織と権能A | ||
それじゃ前回に引き続き、裁判所という組織について、そして、裁判所の権能について、条文を確認しながら見ていくことにするわね。 | ||
うんうん! |
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今日は、下級裁判所について学ぶことにするわね。 まずは六法で、憲法80条を見てくれる? |
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日本国憲法第80条。 『第80条 【下級裁判所の裁判官・任期・定年、報酬】 1項 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。 2項 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。』 |
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へぇ〜。 コレ、知らなかったけど面白いねぇ。 下級裁判所の裁判官って、最高裁判所の指名と、内閣の任命って2つの手続きを踏むんだね。 あ、アレじゃない? プロ野球で言うなら、スカウトが全国から選んできた有力選手一覧の名簿を出して、監督が、そん中から選ぶって感じ? |
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ナニ、その例えは・・・。 この2段階方式には、ちゃんと意味があるのよ。 内閣による恣意的ないし党派的な任命の危険を防ぐことで司法の独立と公正を確保し、他方、裁判所内部だけでの任命による司法の独善を防ぐっていう立派な趣旨があるんだからね! |
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成程、成程・・・。 スカウトだけには任せておけないから現場の判断である監督の声も重要。 しかし、実際に選手を見たわけでもない監督の声だけで決めてしまっては、全国行脚して選手を見てきたスカウトの存在が有名無実なものになってしまう・・・ 成程ねぇ〜。 いや、よく考えているよねぇ。 |
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・・・一つも「成程」になっていないです。 | ||
やめてよ! オネーちゃんっ! チイ、かえってワカラナクなっちゃうよぉ。 |
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ここで論点として、最高裁判所が実質的に指名した者について、内閣は任命を拒否できるのか? って問題があるのね。 |
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成程・・・。 スカウトが全国を巡って、上位指名するよう求めてきた選手を、獲得しないことが監督には認められるのか? って問題だね。 |
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あんた、いい加減にしなさいよ!? 現実問題としては、内閣が、任命を拒否したことはないっていわれているから、この問題は、あくまでも理論上の問題になっちゃうんだけどね。 この問題については 『内閣は最高裁判所の指名を尊重し、名簿に掲げられた者をそのまま任命しなければならず〜中略〜内閣がそれを任命しないことは原則として許されないと解すべき』 とされているわね。 ただし、 『内閣に形式的にせよ任命権が留保されている以上、もしも最高裁判所の指名が恣意的になされていると認める充分な理由がある場合に限って、内閣がそれを任命しないこともできると解するほかない』 (佐藤功『憲法(下)【新版】』有斐閣 1984年) と説かれるところね。 |
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はいはい。 スカウトが、契約金の一部をドラフト指名された選手から、対価として受け取る、といったような恣意性が認められれ・・・ |
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サル・・・。 それ以上、続けるのなら、今から柴田さんに電話しちゃうわよ? |
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ガクガクブルブル・・・。 | ||
チイ、柴田おねーちゃん好きだよ!! また会いたいよっ!! |
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チ、チイっ!! 勉強会では、無駄口叩くんじゃないっ!! |
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ソレを、あんたが言うの? まぁ、いいわ。 次は、再任(再指名)の問題についてね。 憲法80条1項は 『下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。』 と規定しているわよね。 この規定の趣旨を、どのように解するべきか、という問題があるの。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
学説は、大きく次の3説に分かれているわ。 まずは、自由裁量説。 この考え方は、任期を文字通り任期と解し、裁判官は任命の日から10年を経過すれば当然に退官し、再任は新任とまったく同じであり、任命権者(指名権者)は自由な裁量によって再任か不再任かを決定できる、とするの。 次に、覊束裁量説。 この考え方によれば、任期は文字通り任期であり、裁判官は任命の日から10年を経過すればその身分は消滅する。しかし、10年の任期の定めは、この期間ごとに特段の事由ある不適格者を排除するために設けられたものであり、そのような特段の事由のない者は、当然に再任されるべきだ、とするわ。 最後に、身分継続説。 この考え方は、裁判官の任期は国会議員等の任期とは本質的に異なり、その前提には「終身官制」ないし「身分継続の原則」が横たわっている。したがって憲法78条に規定されているような身分保障の例外に該当しない限り、10年の任期経過後も裁判官の身分は継続するのを原則とし、ただ10年ごとにその的確性をチェックするにすぎない、と考えるわけ。 |
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うわぁ・・・。 久々に学説が一杯出てきよった・・・。 |
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では、最高裁判所は、今、説明した3説のうち、いずれの立場を示しているのかってことになるわけよね。 | ||
自由裁量説なんでしょ? (赤太文字になっとるかんね!) |
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藤さんに、そんな質問されるなんて、光ちゃんも野暮ですよね。 この最高裁の立場を明らかにしたとされるのが、宮本裁判官再任拒否事件ですよね。 判例ではないのですが、非常に大事な事件と言えます。 |
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はいはい。アレね。 あ、でもちょっと、向こうのチビッ子達に、簡単に説明したげてよ。 |
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はいっ! 事件は1971年。 熊本地方裁判所の判事補だった宮本康昭判事補は、10年の任期を終えるにあたり、引き続き再任を希望しました。 しかし、最高裁判所は、再任指名簿への登載を拒否したため、宮本判事補は再任されませんでした。 この際、最高裁判所は、再任指名が自由裁量行為に属するものであるとして、自由裁量説の立場を示し、再任拒否理由についても人事の秘密であることから公表せず、さらには宮本判事補の不服申立ても却下したんです。 しかし、この再任拒否理由さえ明確にしない再任指名名簿への登載拒否が、宮本判事補が当時、最高裁判所から問題にされていた革新的な団体である青年法律家協会の会員であったことから、思想・信条による差別ではないか、と問題となったんですよね。 |
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確かに、ソレは納得いく説明が欲しいところだよねぇ。 再任拒否しといて、理由は人事の秘密だってことで言わないわ、不服申立ても却下では、たまったもんじゃないね。 |
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ただ、自由裁量説によれば、指名権者は、自由な裁量によって再任か、不再任かを決定することができる、ということですからね。 勿論、自由裁量説に対しては、憲法78条にいう裁判官の身分の保障との整合がないこと、裁判官任用制度の実態への配慮を欠くものである等の批判はなされるところですが。 |
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あ、つかさちゃん、ありがとうね。 どうしよっか・・・ちょっと短いけれど、区切りがいいところだから、ココで終わりにしておきましょうか。 あ、じゃあ時間も早いことだし、よかったら柴田さんも一緒に誘って、ご飯行かない? 非番の日だったら、いつでも声かけて欲しいって言ってみえたし、この時間なら、柴田さんも準備される御時間大丈夫だと思うしね。 |
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ご、ご、ご飯っ!! 行きたい、行きたい、行きたぁいっ!! ・・・で、で、でも、なんか一緒に来るって言ってない? |
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え? 柴田さんのこと? |
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光ちゃん・・・実は、あたし極度の人見知りでさぁ。 あんまり知らない人と一緒っていうのは苦手なんだよねぇ。 |
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・・・あんたが人見知りだって言うのなら、世の中の人の大半は、対人恐怖症って話よっ!! ナニが人見知りよっ!! |
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え? 柴田おねーちゃん来るの? チイ、会いたい、会いたいっ!! |
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私も、一度お会いしただけですけれど、すごく気さくで誠実そうな印象を受けました。 もう少しお話してみたいなって思っていたので、御一緒させて頂けるのなら嬉しいです。 |
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私だけ柴田さんを知らないのは寂しいです! 是非会わせて欲しいです! |
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サルは、どうするの? 今日は、柴田さんのかねてからのリクエストで、焼肉にするんだけど。 |
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や、や、焼肉うぅぅぅうっ!? | ||
別に、柴田さん、サルに危害加えたりは、されないわよ。 | ||
そ、そ、そうだよね。 いやぁ、でも会ったとき 「いつも御嬢様が御世話になっております」 って、めっちゃ強く手ぇ握ってきたからなぁ。 ぶっちゃけ、威圧感さえ憶えたんだよなぁ、あれ・・・。 |
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やましい事があるから、威圧感を憶えるです・・・。 | ||
・・・。 (このチビッ子め・・・。 いつもは言いにくいことを、ここぞとばかりに言いよってからに・・・。 まぁ、でも確かに、明智財閥のお抱えのSPが、一般人相手にどうこうなんてなさそうだしね。 うんうん。 コレは焼肉を食べれる絶好の機会だし、行くしかないよね!) |
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どうするの? サル? | ||
行く、行く、行くぅっ!! | ||
焼肉屋さん、御座敷あるから畳だよね! チイ、今日は投げてもらえるかな? |
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ほ、他の御客様もおみえになることだし、柴田さんが、また困るだけじゃないかしら。 そんなにチイちゃんが投げて欲しいのなら、今度また改めて機会を設けてもいいわよ? |
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ホント!? わーい、わーいっ!! |
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・・・この小動物ときたら、どこまでネジが外れてんだお。 いっそ、頭からブン投げられれば、少しはまともになるんじゃないかと・・・。 |
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・・・。 (その理屈なら、藤先輩が真っ先に投げられるべきだと思うです。) |