構成要件要素・D過失 信頼の原則・監督過失 | ||
このお店に、みんなで来るのは2回目ですね! あ、この窓際の席でいいでしょうか? |
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うんうん。 どこでも好きなとこにしちゃっていいよ。 |
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早く席に座って、勉強会の続きをするです! | ||
ナカたん、勉強好きだなぁ。 あたしとしては、せっかく美味しいモノ食べるのに、勉強の話されたら喉通らなくなっちゃいそうなんだけどなぁ。 |
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あんたは、それくらいで丁度いいと思うんだけどね。 あ、みんなオーダーは通した? それじゃ、過失の論点の勉強会の続きをしながら、待つことにしましょっか。 過失の論点には、信頼の原則という考え方があるんだけど、知ってる? |
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あ、ソレって、民法総論で勉強した信義則のこと? | ||
信頼の原則と、信義則・・・確かに、名前似てるね。 でも、違うわよ。 信頼の原則というのは、被害者や第三者が適切な行為をすることを信頼することが相当な場合には、被害者や第三者の不適切な行動によって結果が生じても行為者は責任を負わないとする考え方をいうの。 |
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相手を信じて行動したら、相手が思いもよらぬ行動をとった結果、事故なんかが起きても、責任をとらなくっていいってこと? | ||
単に信じただけではダメですよ。 相手の適切な行動を信頼することが「相当」であることが求められるんですよね。 |
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うーん、じゃあ、例えば・・・ 青信号だったら、車は来ないことを想定して横断歩道を渡るわけだよね・・・ コレが、信頼の原則ってこと? |
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そういうこと。 ただ、旧過失論と、新過失論とでは、この信頼の原則の理論的地位が異なるから、そこは抑えておいてね。 旧過失論では、信頼の原則とは、予見可能性の認められない場合を類型化したものとされるの。 サルの言った例をつかうと、信号無視した車が突っ込んでくるなんて予見できないじゃない! ってことで、そのような相手方の不適切な行動は予見できない、とするわけ。 これに対して、新過失論における信頼の原則とは、予見可能性があるにもかかわらず、回避義務を免除するものとされるのね。 同じように、サルの青信号の話を例にとると、赤信号を無視して突っ込んでくる車だってあるかも知れない(予見可能性を肯定)けれど、このような場合にまで回避義務はない、とするわけ(注意義務限定説)。 判例の立場は、前の勉強会でも言ったと思うけど、新過失論の立場を示しているわ。でも、それは旧過失論の考え方で答えることが無理筋ってわけじゃないから、自分にシックリ来る方を自説にすればいいと思うわ。 |
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うんまっ!! カタラーナ、うんまっ!! |
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お店で頂くカタラーナは、また格段に美味しいんですね。 | ||
フルーツカタラーナとショコラ味のカタラーナが特にお奨めなんだお! 判例の立場は、フルーツカタラーナなんだけど、ソレは、別にショコラ味のカタラーナを否定するものではないから、自分にシックリ来るほーを選べばいいと思うお? |
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え? このプレーンカタラーナが通説・判例ではないんでしょうか? すっごく美味しいんですけど。 |
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ないよ! カタラーナに通説も、判例もないよっ! 私の話聞いててくれた? 信頼の原則と、同原則の理論的地位について、まとめていたんだけど、完全にスルーしてなかった? |
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あうあうあう。 私は、ちゃんと聞いていました。 カタラーナには、まだスプーンをつけていないのが、その証拠です。 |
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ナカちゃんじゃなくって、ソッチの2人に言ったつもりなんだけどね。 | ||
あたしだって聞いてたもん! ホラホラ! その証拠に、あたしも、まだスプーンをつけていないよ? |
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・・・。 (ウソです。 藤先輩のカタラーナは、もう3つ目です。今3つ目が来たばかりだからスプーンがついていないだけです!) |
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光ちゃん、ごめんなさい。 みんなで来た喫茶店が嬉しくって、ちょっとハシャいでしまっていました。 |
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あ、私も少し言い方キツかったわね。 美味しく頂きながら、勉強会の話題も・・・ってことにしましょ。 じゃあ、みんなが過度にカタラーナに集中しないように、判例検討やっちゃう? 私ばっかり話してて、気付けば、さっきみたいに独り言・・・っていうのはイヤだしね。 |
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いいから、いいから。 判例検討なんかしないで、光ちゃんが説明しててくれればいいから。 ね? ね? |
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検討判例があるのなら、私は聞きたいです。 | ||
藤さんは御出来になるから、今更判例検討って思われるかも知れませんが、私はまだ勉強が必要な身なので、判例検討させて頂ければ嬉しいです。 | ||
若干1名の不心得者を除いて、圧倒的多数をもって判例検討することとなりました。 それじゃ、検討判例は、百選掲載判例から。 最高裁昭和42年10月13日第二小法廷判決を。 (最判昭和42年10月13日 百選T 53事件) |
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ホントです! この少し溶けてきたカタラーナも、とっても美味しいです! |
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ですよね? | ||
マヂで? あ、店員さぁ〜んっ! ショコラ味と、抹茶味と、フルーツカタラーナを、それぞれ3つずつくださぁ〜い! あたしも、少し溶けたカタラーナを食べてみたいもんねっ! |
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みんなはカタラーナが溶けるのも気づかないくらい勉強していたのにねぇ〜。 全く溶ける心配がないなんて素敵ねぇ〜。 |
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食べるのが遅いだけなんじゃないの? あたし、もう2〜30個は食べてるよ? |
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2,30個っ!? 一体、いつの間に、そんなに食べてみえたんですか? |
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・・・このお店に長居してると、私のお小遣いが無くなりかねないわね。 早めにお暇しないと、お会計で悲鳴あげる羽目になりそぉだわ。 それじゃ次は、過失の論点から、監督過失について勉強しましょうか。 この論点は、監督者・管理者がいかなる場合に、過失責任を負うか、という問題ね。 判例再現は、ちょっと不評みたいなので、私が簡単に事案を説明するから、みんなも考えてみてね。 検討判例は、ホテルニュージャパン事件ね。 (最決平成5年11月25日 百選T 59事件) この事件は、お客さんの煙草の不始末による火災で、ホテルニュージャパンが多数の死傷者(死亡32名、傷害24名)を出してしまったという事案なんだけど。 有名なワンマン社長の横井社長が、監督過失責任を問われたの。 ホテルニュージャパンでは、スプリンクラー、又は防火区画を設置しておらず、消防計画の策定や消防訓練にも不備があったの。 そうした背景から、火の燃え広がりが早く、さらには適切な避難誘導もされなかったために、多数の客の死傷という結果になってしまったのよね。 管理・監督の立場であるということは、結果からは遠い立場であるということなのよね。また、管理・監督という行為は、結果に対して間接的な行為であるわよね。 このような場合においても、社長に業務上過失致死傷罪を問えると思う? |
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出火の直接原因は、お客さんの寝煙草ですよね。 でもホテルには、不特定多数のお客さんが宿泊されるのですから、色々なお客さんがみえることは当然です。 私の実家も、民宿を経営していますから、そのことはよく分かっているつもりです。 それなら、火災発生の危険に対して、備えることがホテル側の義務だったと思います。 防火、消火設備さらには避難誘導までもが不十分であれば、多数の死傷者を出す惨事になることは予見可能と言えますし、予見可能であったのであれば、そのような事態を避けるべく適切な回避義務を講じておくべきだったと思います。 これらの義務違反が認められる以上、これらの義務を従業員にさせていなかった社長さんには、ホテルの火災事故に対して、監督過失責任があると言えます。 私は、社長さんには業務上過失致死傷罪が成立すると思うです! |
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火事が起きることは予見可能だって言うわけね。 その点については、判例も肯定しているわね。 ナカちゃんの家が民宿経営だからかな、なかなか説得力のある意見だと思うわ。 本決定は、次のものね。 『被告人は、代表取締役社長として、本件ホテルの経営、管理事務を統括する地位にあり、その実質的権限を有していたのであるから、多数人を収容する本件建物の火災の発生を防止し、火災による被害を軽減するための防火管理上の注意義務を負っていたことは明らかであり(〜中略〜)権限に属さない措置については、被告人自らこれを行うとともに、右防火管理業務については防火管理者において適切にこれを遂行するよう同人を指揮監督すべき立場にあったというべきである。 そして、昼夜を問わず不特定多数の人に宿泊等の利便を提供するホテルにおいては火災発生の危険を常にはらんでいる上、被告人は(〜中略〜)本件建物の9、10階等にはスプリンクラー設備も代替防火区画も設置されていないことを認識しており、また、防火管理者が行うべき消防計画の作成、これに基づく防火訓練、防火用・消防用設備等の点検、維持管理その他の防火防災対策も不備であることを認識していたのであるから、自ら又は防火管理者を指揮してこれらの防火管理体制の不備を解消しない限り、いったん火災が起これば、発見の遅れや従業員らによる初期消火の失敗等により本格的な火災に発展し、従業員らにおいて適切な通報や避難誘導を行うことができないまま、建物の構造、避難経路等に不案内の宿泊客らに死傷の危険が及ぶおそれがあることを容易に予見できたことは明らかである。 したがって、被告人は(〜中略〜)宿泊客らの死傷の結果を回避するため、消防法令上の基準に従って本件建物の9階及び10階にスプリンクラー設備又は代替防火区画を設置するとともに、防火管理者を指揮監督して、消防計画を作成させて、従業員らにこれを周知徹底させ、これに基づく消防訓練及び防火用・消火用設備等の点検、維持管理等を行わせるなどして、あらかじめ防火管理体制を確立しておくべき義務を負っていたというべきである。 そして、被告人がこれらの措置を採ることを困難にさせる事情はなかったのであるから、被告人において右義務を怠らなければ、これらの措置があいまって、本件火災による宿泊客らの死傷の結果を回避することができたということができる。 以上によれば、右義務を怠りこれらの措置を講じなかった被告人に、本件火災による宿泊客らの死傷の結果について過失があることは明らかであり、被告人に対し業務上過失致死傷罪の成立を認めた原判断は、正当である。』 として、横井社長に対して、監督過失責任を肯定して、業務上過失致死傷罪を成立させているのよね。 |
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防火・消火体制は、お客さんを宿泊させる側として、最低限整えていないと許されないです! ウチの民宿は、建物自体は古いし、近所にある旅館とかと比べても、立派でも豪華でもないですけど、お客さん第一という信条は大事にしています。 |
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ナカちゃんの実家の民宿は素敵なところみたいね。 夏休みにでも、みんなでお邪魔するっていうのも、ありかもね。 |
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是非是非っ! お父さんもお母さんも、いつもお世話になっている明智先輩には、一度御礼をしないと、って話していたので、来て頂ければ、きっと喜ぶです! |
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もぐもぐ・・・ ペロペロ・・・ すいませーん。 フルーツカタラーナ、オカワリくださぁ〜いっ! |
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楽しい会話に割り込むようで気が引けるのですけれど・・・。 判例・通説の立場である過失犯における具体的予見可能性説から考えると、 本件事案では、不十分な防火設備によって火災がいつか起きるかもしれない、という程度の認識だったので、私としては、予見可能性としては不十分ではないかとも思えるのですが。 |
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その考え方自体はありえるところだと思うわね。 重大な被害が予想され得る場合には、予見可能性の程度は低くてもよい、とする考え方では、つかさちゃんは納得できないかな? |
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私は、判例の考え方に納得しています。 こんなヒドい防火管理体制の下では、火災の発生は、予見可能だったと言えますし、それなのに適切な措置をとらなかったことは回避義務違反だと思います。 |
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いえ、私が疑問に思っているのは、火災の発生を具体的に予見し得ていないという点なんですけどね。 漠然と、不特定多数の方が泊まる場所なんだから火災発生の危険がある・・・そんな場所で防火管理体制が不十分なら火災が広がって死傷者を出すおそれがある、という程度の認識で、予見可能性を肯定してもいいものなのかと。 |
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そんな言い方されるのは、おかしいです! いつ、どこで、火災が発生するなんてことが分からないからと言って、予見可能性がないとすることは妥当ではないと思います。 お客様を御泊めする場所なんだから、不測の事態への対処は然るべきことです。それをせずにいたら、火災発生時に大災害になることは当然のことだと思います。 具体的な予見がないことを理由に、予見可能性を否定することはできないです。 |
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つかさちゃんは、ちょっと具体的予見可能性説を、厳格に解釈し過ぎているんじゃない? 具体的予見可能性説は、そこまで厳格に具体的な予見は求めていないはずよ? だって、具体的予見可能性説を、極端に厳格化しちゃうと、「何時何分何秒地球が何回周ったとき?」って話になっちゃうわよ? そんな不合理を強いるのではなくって、一定の抽象化は必要と考えるべきと言えるし、そのように考えることで学説は一致しているからね。 ただ、漠然とした危機感をもって予見可能性を肯定してもいいのか、とする疑問はあり得るところだとは私も思うわね。 |
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私も、明智先輩の考え方に賛成です。 | ||
ヤバいっ! コレ、絶対ヤバいヤツだお! うますぐるっ!! |
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少し、そういう傾向があったのかも知れないですね。 もう一度、しっかりと復習しておきます。 |
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ううん、私の考え方が合ってるってわけでもないし、疑問提示してくれて、私も嬉しかったよ。 ありがとうね。私も、もう一回検討しておくわね。 |
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え? フルーツカタラーナが、もう無い? マヂで? 急ぎで作ってもらってもいいですか? え? ソレは無理? |
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ちょっとっ! あんた議論に全然参加していないようだけど、聞いてんの? |
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うんっ! 今、ちゃんと店員さんに確認したよ? フルーツカタラーナは、もう今日の分は無いってさ。 んで、追加で作るのは時間かかるから無理だってさ。 |
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聞いてないわよ! そんなことはっ!! |
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あ、光ちゃんのオキニは、フルーツカタラーナじゃなかったっけ? ショコラ味は、まだあるから、ソッチ貰えばいいんじゃない? |
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藤先輩、一体幾つ食べられたんですか? | ||
いちいち数えながら食べてないからワカンナイ! でも、まだまだ食べれるから心配しなくっていいよ! |
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勉強もしないで、食べてばかりの人には、ココでスポンサーからのオーダーストップが入りましたっ! | ||
どぉぉっ〜っん! | ||
藤先輩、私のカタラーナを少し上げますから、そんな固まらないで下さい。 | ||
竹中さん、ズルいです! 私のカタラーナも、一緒に食べて下さい! 私のは、藤さんのお勧めのショコラ味ですよ。 |
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ケチくせぇこと言わずに、全部寄越せや〜。 | ||
・・・・。 |