構成要件要素 D因果関係 不作為犯 | ||
今日は不作為犯について勉強するわね。 この不作為犯は、実行行為のところで学ぼうかとも思ったんだけど、やっぱり因果関係で学ぶべきと思って、ここに廻したのよね。 ところで・・・ 不作為犯にいう「不作為」っていうのは、どういう意味かワカル? |
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あれ? ナカたん、また来てるの? そんなに、コッチにばかり顔出してて、学部の講義は大丈夫なの? |
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御心配なく。 私、留年のせいで、単位取得には余裕があるので。 |
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ん? (いつもあんまり表情ないからワカリにくいけど、若干ムスっとして見えるような見えないような・・・) |
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無視しないでくださぁ〜い。 質問したのに、誰も相手してくれないとは思わなかったわよ。 仕方ないから、もう一回聞くわね。 質問。 不作為犯にいう「不作為」っていうのは、どういう意味ですか? |
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作為をしない・・・ ってことは、ナニもしないことでしょうか? |
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違うわね。 不作為犯における「不作為」の定義は。 「期待された特定の行為をしないこと」を言うのよね。 例えば、さっき私がナカちゃんとサルに質問したよね? その質問に対して、ナカちゃんとサルは、会話をしていたわ。 つまり、ナニもしていなかったわけじゃないわよね? でも、私の質問に答えてもらいたい、という期待に応える行為はとってくれなかった・・・ コレは、私の質問に対しては不作為といえるわね。 |
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ワカリヤスイようで、ワカリにくい例えだなぁ。 も少し上手な例えはないの? |
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私の質問をスルーしといて、ナニよ、その態度は! でもまぁ、確かに解り難かったかなぁ。 そうね、例えば・・・ 溺れる我が子をお父さんが見殺しにした場合を考えてみて? この時、お父さんは、保護者として救護義務があるわけだから、救護することこそが期待された特定の行為といえるわ。 この時、お父さんがタバコを吸ってたり、鼻唄を歌っていて、救護しなかったら・・・ コレはナニもしていないわけではないけれど、不作為と言えるということね。 |
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こくこく(相槌) |
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不作為犯には、2種類あるの。 真正不作為犯と、不真正不作為犯ね。 真正不作為犯は、不作為を明示的に構成要件要素として規定する犯罪。 これに対して、 不真正不作為犯は、通常は、作為によって実現される構成要件を不作為で実現する場合の犯罪を言うのね。 不真正不作為犯については、条文見てもワカラナイから、ここは、真正不作為犯とは、どのようなものか六法見て、確認することにしましょうか。 真正不作為犯としては、不保護罪、不退去罪等が例としてあげられるわ。 それじゃ、六法で刑法130条を見てみて。 |
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刑法130条ですね。 『(住居侵入等) 第130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。』 |
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ん? コレって、住居侵入罪のこと言ってね? |
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130条前段と、後段とに分かれているのよ。 前段部分は、サルが言うように住居不法侵入罪を、後段部分は、不退去罪を定めているのよ。 「又は〜」以降の部分が後段にあたるわね。 論述等で、条文を引用する際には、前段か後段か、意識して書けるようにしてね。 |
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ほうほう。 まぁ、あたしはまだ条文さえ怪しいから、それは先のことでいいよね。 |
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自分を甘やかせることだけは上手なんだから! ところで、さっき不真正不作為犯は、刑法の条文に明示的に定められていないから六法で確認できない・・・って言ったわよね。 でも、ソレって罪刑法定主義に反するとは思わない? (※ 罪刑法定主義とは) |
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あ、ホントだ! 言われてみれば、そうだよね。 確か、罪刑法定主義から導かれる派生原理にあった法律主義は、罰則は法律で定めなければならないという考え方だったよね。 なのに、不退去罪みたいに、不作為を明示的に罰することを定めていないというのなら、裁けないってことになるね・・・ どうすんの? |
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質問をしたのは私なんだから、聞き返すのはNGじゃない? でもまぁ、難しい問題だから仕方ないかな。 実際、不作為犯は、罪刑法定主義には反するとする考え方もあるのよ。 例えば、刑法199条「殺人罪」は、「人を殺すな」というものなのに、同条を適用して不作為犯による殺人罪の成立を認めてよいのか? とする見解もあるからね。 ただ、通説的理解としては、例えば、この199条の「殺人罪」には、「人を殺すな」という禁止規範に、「人を救命しろ」という命令規範も含まれているんだ、って考えるのよ。 それならば、この命令規範に反して、救命義務があり、かつ、助けられる人の命を不作為によって助けなかった場合には、199条の適用が認められることになるという理解ね。 |
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そんな質問、あたしに答えられるとでも思ってるの? NGは、ドッチだお? |
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・・・私も難しくて答えられませんでした。 | ||
ナカたん、アレじゃない? ひょっとして刑法、苦手だよね? だから、最近ちょこちょこ刑法の勉強会に顔出してるんじゃない? |
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刑法は得意ではないです。 | ||
なになに、その返しは? 得意じゃない、んじゃなくって、端的に苦手って言えばいいじゃない。 |
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刑法は苦手意識が強いです。 | ||
おやおやぁ? 意識の問題だけぇ? 実際、苦手なんでしょ? ねぇねぇ? |
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明智先輩、早く勉強の続きをしてください。 | ||
・・・。 (表情からは読み取り難いが、明らかにムスっとしている気がするお・・・ ヤベぇお、も少しイジってみてぇお・・・ムズムズ) |
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あんた、相変わらず悪い性格してんのね・・・ ナカちゃんの態度で察してる癖に、チョッカイ出してんじゃないわよ! ホント、怒られるまでやめないとこ変わらないわね! 次は、不作為犯の因果関係をどう考えるか? って問題ね。 不作為犯の判例検討で扱う判例を、検討事案にして考えてみることにしましょうか。 この事案を素材に、因果関係の有無を検討してみて。 一緒に行ったホテルで、Xは、13歳の少女Aに、覚せい剤を注射して錯乱状態に陥らせたが、明らかに状態がおかしいAの挙動を見て、それを放置してホテルを去ったの。 Aは、そのホテルで死亡してしまった・・・という事案ね。 (最高裁平成元年12月15日決定 百選T 4事件) このXの放置した行為と、Aの死亡との間に因果関係はあるかしら? |
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『PなければQなし』(アレなければコレなし)という過程的消去公式(又は条件関係公式)で、因果関係の有無を判断するんだったよね? そう考えれば、放置しなければ死亡しなかった、って言えるから、因果関係はあるよね・・・うん、あるある。 |
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うんうん。 条件関係公式をしっかり出して検討してくれているね。 ただ、不作為犯の場合は、判断公式は、「期待された作為を行っていたら結果が回避されたか」という判断に基づいて検討するべきなの。 だから、作為犯と同じ公式を使うのではなくって、若干公式を変えて、『PあればQなし』といえるか、という検討が妥当になるのよ。 つまり、救護していれば死ぬことはなかった、って言えるか、という検討ね。 そして、この場合の判断基準は、救護していれば死亡していなかったと、「十中八九」言えるか、という判断基準がとられるわ。 「十中八九」という言い回しは、換言するならば、「合理的な疑いを超える程度に確実」と言えるか、ということね。 |
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こくこく(相槌) | ||
ワカル、ワカル。 | ||
サル、刑法は他の法律の勉強のときと違って、集中切れないよね。 じゃあ、も少しいっちゃう? |
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あ・・・。 大変言い難いのですが、ここまでにして頂けないでしょうか? 少し復習して理解を固めておきたいのですが・・・。 |
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あら、珍しいわね。 ナカちゃんが、中断を希望するなんて。 私は構わないけど、サルもいいよね? |
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うーん、あたしとしては、もう少しやりたいかなぁ。 (ニヤニヤ) |
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我がまま言って、ごめんなさいです。 ではでは、もう少し頑張ります! |
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大丈夫? 大丈夫? ここから先は、もっと難しい話きちゃうかもだけど、いっちゃっていいの? ねぇ、ねぇ? 大丈夫なの? |
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あうあうあうあう。 | ||
判例検討で、また光ちゃんがいつもの調子で無双しちゃうかも・・・ ナニ聞いているかワカラナイような質問出してくるかも・・・ 学説が幾つも出てきて混乱させられちゃうかも・・・ |
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あうあうあうあうあうあうあうあうあうああう。 | ||
ちょっと! ナカちゃんイジめるのはやめなさいよ! いいよ、いいよ。 いつもサルのせいで中断すること多いんだから、ナカちゃんが中断したって全然気にしなくっていいからね! |
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ごめんなさいです。 ごめんなさいです! |
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ウキっ! (あたしをみて! あたしをみて! あたしの中のモンスターがこんなに大きくなったお!) |