最高裁平成元年12月15日第三小法廷決定 | ||
ナカちゃんを交えての、刑法判例再現は初めてだね。 せっかくだからナカちゃんにも被害者役で参加してもらうわね。 配役言うわね。 私がナレーター。 ナカちゃんが、被害者の13歳の少女役。 サルが、被告人の暴力団構成員役ね。 |
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暴力団構成員(被告人) |
よぉ、ネーちゃん。 覚せい剤やるから、オレとラブホ(ラブホテル)行かへんか? |
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はいです・・・ |
13歳少女(被害者) |
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さてと。 ホテル着いたし、約束の覚せい剤をやらんとな。 ホレ、手ぇ出せ、注射したるわ! (ブスっ!) |
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うう・・・ 頭が痛いです。 胸が苦しいです。 吐き気がするです。 |
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アツいです! アツいです! アツいです! |
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おいおい。 頼むで? 大丈夫か? |
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あうあうあうあう。 | ||
・・・・・。 | ||
ヤバいな・・・ コレ、昨日から少なくとも3回は覚せい剤やっとるせいで急性症状でとるな・・・ |
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・・・・・。 | ||
痙攣しだしたわ・・・ こりゃ本格的にヤバいな。しかし、だからって言って救急車なんか呼んだら、覚せい剤がバレてまうしなぁ。 まぁ、しゃあない。 子分迎えに来させて、オレだけ帰るか。 |
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・・・・・。 | ||
知らん、知らん。 オレは知らん。 帰ろ、帰ろ。 |
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ナレーター |
被告人は、覚せい剤の使用の発覚を恐れて、救急医療要請などの措置をとることなく、迎えに来させた子分と一緒にホテルを立ち去りました。 放置された13歳の少女は、被告人が立ち去るときには、まだ生存していましたが、その後、急性心不全のために死亡しました。 被告人は、保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)等で起訴されました。 |
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・・・ハイ。お疲れぇ。 ナカちゃん頑張ったねぇ。 |
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なんで、あたしがお塩みたいな役をしなきゃいけないのかなぁ。 たまには、光ちゃんが被告人役やってよね! |
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お塩か、お砂糖か知らないけど、まぁ、適材適所ってことだから、そこは納得してくれないとね。 | ||
不真正不作為犯成立です! 保護責任遺棄致死罪成立です! |
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うんうん。 気持ちはワカルけど落ち着こうね。 まずは、事案のポイントの整理をするからね。 |
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ドコが適材適所なの? ナカちゃんはナレーターにすべきだったんじゃないの? |
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でも事案を把握してる私が、ナレーターした方がいいって思うんだけどなぁ。 じゃあ、まずは本件のポイントからね。 本件では、保護責任者遺棄罪(基本犯)の結果的加重犯である保護責任者遺棄致死罪の成立が問題となっているのよね。 サルの演じてくれた被告人は、被害者の13歳の少女をホテルに放置したわけだから、保護責任者遺棄罪は成立すると言えるんだけど、被害者の死亡という結果と、被告人がホテルに放置したという行為との間に、因果関係を認めていいかが(=保護責任者遺棄致死罪を成立させていいかが)問題となったの。 |
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放置しただけじゃないです! 救急車を呼んでくれなかったです! |
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そうね。ちょっと私の表現には語弊があったわね。 放置したことが不作為ではなくって、救急車を呼ぶなどの救急措置をとらずに放置したことが、被告人の不作為だもんね。 ナカちゃん、鋭い指摘してくれたね。ありがとうね。 |
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ナカたん、被害者になりきっとるから鋭い、鋭い。 | ||
本決定は、次のものね。 最高裁の判断は、次のとおりよ。 『被害者の女性が被告人らによって注射された覚せい剤により錯乱状態に陥った午前零時半ころの時点において、直ちに被告人が救急医療を要請していれば、同女が年若く(当時13年)、生命力が旺盛で、特段の持病がなかったことなどから、十中八九同女の救命が可能であったというのである。 そうすると、同女の救命は合理的な疑いを超える程度に確実であったと認められるから、被告人がこのような措置をとることなく漫然同女をホテル客室に放置した行為と午前2時15分頃から午前4時頃までの間に同女が同室で覚せい剤による急性心不全のため死亡した結果との間には、刑法上の因果関係を認めるのが相当である。』 最高裁の本決定に、不真正不作為犯の成立要件をあてはめてみましょうか。 @作為義務については、被告人が被害者に覚せい剤を注射したという先行行為、そして、ホテルの客室には、被告人と被害者の少女の2人しかいない密室空間という排他的支配を根拠に認められそうよね。 A作為可能性については、容易性の有無で検討すべきところ、救命措置としての救急医療要請は電話一本で行えるものであった以上、この点も要件充足しているわね。 したがって、作為義務、作為可能性があったにも関わらず、少女に対する救命措置を講ずることなく部屋を去った被告人の不作為は、救急医療要請さえしていれば、少女の救命が十中八九可能であったいえる本件事実下においては、その不作為と死亡という結果の刑法上の因果関係を肯定するに足るものといえるわね。 |
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んーとね。 この「十中八九」って表現なんだけど、これって80〜90%で救命できる可能性があったっていう証明が出来ないと、因果関係が肯定できないって意味? |
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人の生き死には、そんな数値化できるものじゃないからね。 ここで使われている「十中八九」という言い回しは、勉強会の説明の際に話したと思うけれど、あくまでも「合理的な疑いを超える程度に確実」であるという意味で用いられていると思ってくれていいわ。 |
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私は、覚せい剤を打たれて殺されているんだから、本件は傷害致死罪じゃないんでしょうか? | ||
たしか、平成2年重判(平成2年重要判例解説)では、傷害致死の検討余地もありって言ってた気がするわね・・・。私、ちょっとしっかり読んでないからウロ覚えなんだけど。 どうなのかなぁ・・・ でも、この少女は無理矢理覚せい剤打たれたわけじゃないんだから、同意傷害ってことになる気もするからね・・・ |
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民法で勉強したです! 13歳は、未成年です! まだ意思能力も未成熟です! 同意は無効です! |
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鋭い指摘するわね。 難しい問題ね。 あんまり考えたことがないんで、ちょっと答えられないんだけど、特別法の覚せい剤他人使用罪と傷害罪ってことになるのかなぁ? でも、そうなると両罪を並列して起訴した事案がないだけに、ちょっと判断に困るところかなぁ。 罪数の問題や、特別法との絡みの問題もあるから、今ここで回答することは難しいわね・・・ |
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やるじゃん、チビッ子! 光ちゃんが答えられずに困ってるよ!! |
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藤先輩が救急車を呼んでくれれば良かったんです! 絶対許さないです! |
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あたし、なんもしてないじゃん! | ||
してないから不作為なんです! だから悪いんです! |
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違う、違う! あたしは、被告人役っていうだけだから、救急車呼ぶとか、それ以前に注射も打ってないし、ナニもしてないって意味だよ! |
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傷害致死罪です! 絶対許さないです! |
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光ちゃん・・・ なんか暴走しとるんだけど、これでも配役は適材適所だったって言えるの? |
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でもいい検討はしてくれてるみたいよ? | ||
許さないです! 許さないです! 許さ・・・ |
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・・・・・。 | ||
あ、気絶したお。 コレで、せっかくの判例検討データも、ナカたんロボからは消去か・・・ |
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せっかくいい検討してくれていたのにね・・・ も少し配役についても検討しないといけないのかなぁ。 |
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このロボ、ポンコツだから、すぐに電源落ちるみたいだしね。 | ||
よく、そんなヒドいこと言えるわね、あんたは! 友達を、ロボ呼ばわりした上に、ポンコツ呼ばわりするって、どんな神経してんのよ! |
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ウキっ! |