刑法 検討事例問題(回答編)
  光おねーちゃぁーん!
起案してきたよぉ!
見てほしいよぉ!
今回は、しっかり検討できた気がするです。
そう?
ソレじゃ、先ずは2人の起案を見せてもらおうかしら。
起案    
 起案においては、サルを「」、チイを「A女」と表記しております。
第1 甲の罪責
1.医師免許を持たない甲は、甲が医師免許を有していると誤信したA女の承諾の下、A女に豊胸手術を行いショック死させている。
 医師免許を持たないとはいえ、甲の行為は手術行為であり、また、A女の同意を得た上でのものである。このような場合にも、甲の行為に傷害致死罪(刑法205条)が成立するかが問題となる。

(1)ア.実行行為とは、構成要件の予定する法益侵害の現実的危険性を有する行為である。
 傷害罪の保護法益は、人の身体の安全である。甲の豊胸手術は、A女の生理的機能に障害を与える有形的方法であることから、傷害罪の実行行為にあたる。 
 そして、傷害罪は、暴行の結果的加重犯を含むものであるため、傷害の結果の死についても甲は責任を負う。

イ.しかし、甲の行為は豊胸手術という医療行為である。医療行為であるならば、「正当行為」(刑法35条)が認められるのではないか。
 この点、正当行為とは、法令又は正当な業務による行為をいうものであるところ、甲は医師免許を有していない。そして医師でない者の手術行為は、医療行為とはいえない。
 従って、甲の豊胸手術は正当行為にはあたらない。

ウ.しかし、甲の豊胸手術行為に対して、被害者であるA女は同意を与えている。かかるA女の同意は、甲の行為の違法性を阻却するかが問題となる。
 この点、違法性の本質は、社会的倫理規範に違反する法益侵害又はその危険にあり、社会的相当性を有する行為は違法性が阻却される。
 そうだとすれば、被害者の承諾があり、社会的相当性を有する同意傷害については違法性阻却が認められるべきといえる。
 本件では、A女は甲に承諾を与えてはいるものの、かかる承諾は、甲が医師免許を有しているという誤信に基づくものである。つまり、この誤信がなければ、A女が甲の手術を承諾したとはいえず、A女の承諾には、真意にそぐわない重大な瑕疵があったといえる。このような真意ではない承諾は無効と解するべきである。また、医師免許を有さない甲の医療行為は、社会的相当性を有するものとはいえない。
 従って、真意に基づく承諾がなく、社会的相当性を有さない甲のA女に対する豊胸手術行為には、違法性阻却事由はない。

エ.従って、A女の身体を侵害し、よってA女を死亡させた甲の手術行為は、傷害致死罪の客観的構成要件を満たす。

(2)甲には、A女への身体侵害についての認識及び認容があったことから、傷害の故意が認められる。
 この点、甲には、A女の死という結果についての認識及び認容はないものの、傷害罪は、暴行の結果的加重犯を含むものであるため、傷害の故意があれば、死という結果についての認識・認容までは求められない。

2.従って、甲の行為には、傷害致死罪(刑法205条)が成立する。
成程、成程。
(1)客観的構成要件を、(2)主観的構成要件を、それぞれ検討しているわけね。

そうね。
被害者の同意については、構成要件の実行行為の段階で検討すべきよね。
そして、真意に基づかない同意であることから、被害者の同意は違法性を阻却しないとする考えから、2.傷害致死罪の成立を認めているわけね。
特に問題がないように思えます。
いい検討が出来ているのではないでしょうか。
そうね。
本問のLCとなる事例が、実はあるのよね。
東京高判平9年8月4日
なんだけど・・・。
被害者が、加害者が医師免許を有しているものと誤信して手術の承諾をしたものの、加害者の不適切な豊胸手術によって死亡してしまったという事案について、傷害致死罪の成立を認めたという裁判例なのよね。
へぇ、そんな裁判例があったんだねぇ。
本件では、被害者のチイちゃんの承諾には、そもそも錯誤があったわけよね。
そうだね。
オネーちゃんが、本当のお医者さんだと思って、チイは手術を依頼しているわけだもんねぇ。
このような同意が真意に基づかない場合には、違法性が阻却されないもしくは構成要件該当性が否定されない)ことには争いはないわ。
  こくこく(相づち)。
そして、もし仮に、被害者の真意に基づく同意があったとしても勉強会でも検討した判例最決昭和55年11月13日)で示されているように

被害者が身体傷害を承諾した場合に傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合わせて決すべきものである

という基準によって決せられるべきということになるわね。

もっとも、本件事例では、手術担当の医師の医師免許の有無についての錯誤があったわけだし、この錯誤は、同意を否定するには十分な重大な錯誤であることは間違いないところなんだから、この基準まで示す必要があるのかは、ちょっと考えてしまうところかしらね。
チイ達は、今回の事例ではあまり問題にならないかなぁって思ったから示さなかったけど・・・。
そうね。
本件においては、私もその点について言及していないことは問題にならないと思うわ。
もう少し錯誤が軽微なものであったりした場合には、その後の、被害者の承諾を正当化する基準についても触れて検討すべきかな、とは思うけどね。
  成程、成程だよぉ。
あとは、今回の事例では問題にはなっていないけれど、被害者の同意自己決定権の限界という問題もあるわね。

例えば、一番ワカリやすい例としては、命よね。
生命に関しては、被害者の同意があったとしても、パターナリズムの見地から、個人の処分の自由を認めていないわ。
同意殺人罪刑法202条後段)があることからもワカルようにね。

少し細かい知識としては、強姦罪177条)についても、真意に基づく同意があったとしても、被害者が13歳未満の場合には、構成要件該当性は否定されないわね。

だから、被害者の承諾があれば大丈夫ってわけではないから、その点については、しっかり復習しておいて欲しいわね。
   ・・・。
・・・終わったわよ?
ソコの方?
 
  ・・・。
ずっと「ポケモンGO」の進化作業に没頭しているです・・・。
とんでもないです・・・。
捕まえまくったポッポを、延々と進化させる・・・。
コレが、俗にいう「ポッポマラソン」か・・・ハードだお・・・。
・・・。

(私のスマホなのに、最近は藤さんが、ずっとお持ちになっているんですよね・・・。
 まぁ、あまり電話なんてかかってこないから問題ないですけど・・・。)
 ・・・。

(こ、この『ケ』モンがぁぁ!) 

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