行政的執行@ー1 | ||
ソレじゃ、サルは帰っちゃったけれど私達は、このまま行政代執行法の適用の可否について、具体的な事案を素材に検討することにしましょうか。 先ずは、条文をここでもう一度見ておきましょうか。 行政代執行法2条を見てくれる? |
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行政代執行法 『第2条 【代執行】 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。』 |
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そうね。 そして、行政代執行法2条からは、行政代執行の4要件が導かれるわ。 その要件は @『法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為』であること A『(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)』 (=代替的作為義務であること) B『義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難』な場合であること C『その不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるとき』 の4要件だったわよね。 |
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ですです。 |
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ソレじゃ、早速、具体的な事案を考えてみましょうか。 質問! 風俗営業規制法違反の風俗営業者に対して課せられた営業停止義務について、行政代執行法の適用は可能でしょうか? |
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この事案は、前回勉強した義務の分類で例示された食中毒を出した飲食店とソックリです! つまり、違反した店舗ではないお店を営業停止しても仕方がないわけですから、この営業停止義務は、非代替的不作為義務といえるです! 行政代執行法は、代替的作為義務であることが要件なのですから、この要件を欠くため、この事案においては行政上の代執行を行うことは出来ない、という結論になるです! |
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ピンポン! ピンポンっ! そうね。 この事案は、ナカちゃんがいうように前回例示した食中毒を出した飲食店の営業停止義務とパラレルに考えることが出来るわよね。 今、ナカちゃんが考えてくれたように代替的義務か、非代替的義務かの見極めが重要って言った意味が、実際に事案を考えてみると、よくワカルでしょ。 |
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ハイです! よくワカッタです! |
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ソレじゃ、第2問いってみましょうか。 質問! 道路上に不法建築物を建てた者に対して課せられた除去義務について、行政代執行法の適用は可能でしょうか? |
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今度はチイが答えたいよぉ! うんうん、コレは簡単だよね。 代替的作為義務というのは、他人が替わってなすことの出来る行為を内容とする義務をいうんだよね。 そして、不法建築物の除去は、義務者以外の第三者でも出来ることだから代替的作為義務っていえるよぉ。 不法建築物に対する除去命令義務は、建築基準法を根拠として義務付けられている行為だし(要件@)、代替的作為義務だよね(要件A)。 そして義務者の人が履行しないのであれば代執行してでも、その不履行を放置してはいけないことだよね(要件B、C)。 だから、代執行できるといえるよぉ。 |
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そうね。正解。 この事案は、代執行を行うことが可能な場合といえるわ。 |
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流石、チイちゃんです! | ||
エヘへへへ。 | ||
ソレじゃ、次の質問! 納税の義務について、行政代執行法の適用は可能でしょうか? |
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ソレは少し難しい質問にも思えちゃいますね。 納税の義務については、一般法としての国税徴収法が設けられていて、強制徴収の対象ですので、行政代執行は不適といえますよね。 要件との関係で検討するのならば B『義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難』な場合であること という要件Bでキれる・・・ということになるでしょうね。 |
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そうね。 行政上の強制徴収については、次回の勉強会で説明するつもりだったんだけれど、予習がてらって気持ちで聞いちゃったのよね。 ゴメンね。 ソレじゃ、最後の質問! 先に伝えておくけれど、この問題は少し難しいわ。 ただ、この問題については判例があるから、答えは、判例を見ることで確認するってことにしましょうか。 いくわね? 市庁舎の一部が職員組合事務所として使用を許可されていたが、後に、この使用許可が撤回された場合の事務所内の物件の搬出義務について行政代執行法の適用は可能でしょうか? |
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うーーん・・・どうなんだろう・・・。 使用許可が撤回された以上、職員組合員の人は、使用していた市庁舎から立ち退かないとダメだよねぇ。 だから、立ち退き義務は当然あるわけだよねぇ。 |
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・・・でも立ち退くんだったら、事務所内の物件だって、そのまま放置されたら困るです! | ||
あ、でも待って、待って! 立ち退き義務(ないしは明渡し義務)は、その場所を占有している人が応じてくれないとダメな義務だから、非代替的作為義務だよね? |
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うーん、でも明智先輩の質問は、事務所内の物件の搬出義務についてです。 物件の搬出だったら他の人でも出来そうだし、この義務(搬出義務)については代執行は可能って言ってもいいようにも思えるです。 |
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そっかぁ、そうだよね。 事務所内の物件の搬出義務は代替的作為義務って言えそうだもんね。 うんうん。 チイも、そう思うよぉ。 |
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成程、成程。 よく検討してくれたわね。 ソレじゃ、判例は、この問題をどう捉えているのかってことを見てみることにしましょうか。 LCとなる判例は、茨木市組合事務所明渡請求事件になるわ。 (大阪高決昭和40年10月5日) 判決文は、次のものになるわ。 『もつとも、抗告人が相手方に対してなした行政代執行の前提たる戒告は、前記の如く、庁舎内にある相手方組合事務所の存置物件の搬出についてであつて、組合事務所の明渡しないしは立退きについてではないが、組合事務所存置物件の搬出は組合事務所の明渡しないしは立退き義務の履行に伴う必然的な行為であり、それ自体独立した義務内容をなすものではなく、況(いわ)んや、法律が直接命じた義務あるいは法律に基づく行政処分により命じた義務でないこと勿論である。 従つて、組合事務所の明渡しないしは立退きについて前記の如く代執行が許されないからといつて、組合事務所存置物件の搬出のみを取上げ、これが物件の搬出という面では代替的な作為義務に属することの故に、代執行の対象とするが如きことが許されないのは、いうまでもない。 そうであるから、前記庁舎使用許可取消処分に基づく行政代執行は、その執行の範囲を相手方組合事務所内の存置物件搬出に限定すると否とを問わず、行政代執行法二条の要件を欠き違法であるといわなければならない。』 と、述べているのよね。 |
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ふえっ!? | ||
代執行の適用は認めてもらえなかったの!? | ||
そうね。 今、ナカちゃん達が考えてくれたように、物件の搬出それ自体については、裁判所も 『代替的な作為義務に属する』 と認めているわ。 でも、ナカちゃん自身が言ってくれたように、立ち退く以上、物件を放置されたら困る・・・というのは、そうよね。 つまり 『組合事務所存置物件の搬出は組合事務所の明渡しないしは立退き義務の履行に伴う必然的な行為』 といえるわけよね。 そして、その搬出義務は 『それ自体独立した義務内容をなすものではなく、況(いわ)んや、法律が直接命じた義務あるいは法律に基づく行政処分により命じた義務でない』 以上、 『組合事務所の明渡しないしは立退きについて前記の如く代執行が許されない』 という結論になるわ。 そして、そのような結論を回避するために 『組合事務所存置物件の搬出のみを取上げ、これが物件の搬出という面では代替的な作為義務に属すること』 をもって 『代執行の対象とするが如きことが許されない』 として、代執行法の適用は認められない、という論旨展開をとっているわけね。 |
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むぅぅぅぅぅぅ。 難しいよぉ。 チイは、ナカちゃんの意見に大賛成だったよぉ。 |
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そうね。 代執行が認められるように思える事案ではあるけれど、少なくとも判例は、そのように捉えていないってことよね。 ただ、建物の引渡しと、これに伴う物件搬出の代執行の可否については下級審の判断も分かれているから、事案に即して考えるべき問題といえるわ。 |
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頑張るです! | ||
うんうん! 楽しかったよぉ。 オネーちゃんも一緒に考えれば良かったのにねぇ。 ダメなオネーちゃんには、チイが家に帰ったら、メッ!ってしとくよぉ。 |
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考えたらサルのいない勉強会は、コレが初めてね。 道理で、進行がスムーズだと思ったわ。 |
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私は藤さんのみえない勉強会は、灯の消えた街のような寂しさを感じちゃうんですけれどね・・・。 | ||
近所のスーパー店内 | ||
ハクションっ! ハクションっ!! ・・・ふむふむ。 まぁーた誰かが、あたしに惚れてんのかな? コレは。 いやはや、まったく。 スーパーで優雅に買い物をする、美人なあたしの姿を拝めるなんて、ここのスーパーの従業員は、マヂで果報者だお。 さてさて、このタイムセールのモヤシを本日も大量購入しときますかぁ。ウキキキっ!! (「自称」ヒロイン、辛うじて全話皆勤継続中w) |