行政行為の附款
今日は、行政行為の附款について勉強するわね。
この附款というのは、行政実務においては重要なものと位置づけられているわ。
論点が多いところではないけれど、しっかり見ていくことにしましょ。

それじゃ、まずは行政行為の附款とは、どのようなものか。
その定義から説明するわね。

行政行為の附款とは、
行政行為の効果を制限するために意思表示の主たる内容に付加されたる従たる意思表示をいう、と定義される
わ。

具体的には、条件、期限、負担、撤回権を留保するものね。
いやいやいや。
具体的って言うのなら、条文でも挙げて説明してくんないとさぁ。
まぁ、そうよね。
それじゃ、この条文を見て欲しいんだけど。

風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律ね。

(営業の許可)  第3条  
1項 風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別(前条第一項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

2項 公安委員会は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があると認めるときは、その必要の限度において、前項の許可に条件を付し、及びこれを変更することができる
』 

ワカル?
この条文における赤文字部分が、附款なの。
条件を付し、及びこれを変更することができる。』ってしているでしょ?
行政行為の附款については、許容性と、限界がありますよね。

今、光ちゃんが例示して下さったように、法律自体に、附款を付すことができる、って定めている場合には問題はないと思うのですけれど、そうではない場合には、どのような判断をすればいいのかと。
うんうん。
行政行為の附款許容性と、限界についての話ね。

それじゃ、まずは許容性からね。
法律が附款を付すことを定めていればいいんだけど、そうじゃない場合は、確かに問題になるわね。

その場合は、法律がどこまで規律しているのか、つまり、当該行政行為の性質を考慮して具体的に解釈することが必要になるわね。

例えば、まだ勉強していないけれど、行政の裁量行為
この裁量行為の場合には、附款を付す可能性があるといえるわね。
また、付すことができる可能性が高いとも言えるわ。
そうでなければ、裁量の行使が難しくなるわけだからね。

このことは、裏を返せば、附款を付すことが出来る行政行為は、裁量行為であると言うことが言いやすくなるとも考えられるわよね。
  む、む、難しいです。
つかさちゃんの質問には、行政行為の附款限界についても聞いていたよね。

限界については、主に、比例原則との関係目的規制との関係から、その限界が論じられるわね。

比例原則との関係においては、不当な義務を課すことになってはならない。つまり、必要最小限度なものではなくてはならない、とされるわ。

目的規制との関係においては、当該行政行為の根拠となった法律の目的と無関係の規範(=附款は許されない、ということになるわね。
・・・比例原則ってなんだっけ?
比例原則っていうのは、達成されるべき目的と、そのために取られる手段としての権利・利益の制約との間に均衡を要求する原則をいうわ。

講義の際に、先生が 「雀を撃つのに大砲を使ってはならない」という言葉でワカリやすく説明して下さってみえたでしょ?
あの考え方ね。
トリアーエズを撃ち落すのにコロニーレーザーを使ってはならない』ってヤツか、そう言えば言うてたなぁ。
確かに、トリアーエズ程度なら、ザクマシンガンで一撃です。
よくワカるです。
ナニ、その例えは?
例えの理解に説明のいるような例えは、やめてくれない?  
トリアーエズっていうのは、連邦軍の戦闘機で・・・
聞いてないから!
勉強会とは関係ない話は、しなくっていいから!  
ザクマシンガンっていうのは、1年戦争時においてジオン公国軍の主力となったMSザクのメイン武装で・・・
まさかのナカちゃんまでっ!!!

いらないよ?
その説明は、誰も求めていないわよ?

じゃあもう、今日の論点にいくわよ?

行政行為の附款の取消、という論点があるわ。
これは、ザックリ説明すると、瑕疵のある(=違法な)附款が、ある行政処分に付けられていた場合に、その違法な附款単独を対象として、取消訴訟を提起することができるのか
という問題なのね。 
  できるんじゃないの?
あんた、オチだけ言って、どうするのよ。
じゃあ、百選掲載の判例があるところでもないし、簡単な判例紹介で説明することにしようかな。

紹介する判例は、神戸地判平成3年4月22日ね。
西脇許可処分条件取消請求事件

事実の概要から話すわね。

兵庫県西脇市長から、廃掃法7条に基づいて、一般廃棄物処理業の許可を受け、浄化槽法35条に基づいて、浄化槽清掃業の許可を受けていた業者が、本件の原告なの。
この業者は、西脇市長から両許可を受けて、浄化清掃業者として事業を行おうとしていたんだけど、両許可を受けた翌年に、西脇市長は、新規業者の参入抑制の目的の下、この両許可について『県立高校及び雇用促進事業に限る』とする附款を設けたわけ。
この業者は、この附款の定めに該当する業者ではなかったことから、この附款があると、せっかくの許可が台無しになってしまう・・・ということで、この附款部分の取消を求めて、西脇市長を訴えた、という事件なのね。

本件では、
許可という行政処分と、その行政処分に付された附款とが問題となっているんだけれど、業者としては、許可処分については争うつもりはないことはワカルわよね。
業者が争いたいのは、あくまでも附約部分だけよね。

つまり、本件の争点は。
行政処分+附款というとき、附款単独を取り消すことができるのか?
ということよね。
  あたしは、できるって思うな。 
だから理由を言ってよっ!

判決では、次のように述べているわね。

『〜中略〜被告は、昭和62年度には原告に無条件の許可を与えていたのに、昭和63年度には、これに「県立高校及び雇用促進事業団に限る」との条件をつけて許可したものであり、その実質において、前年度の許可をその一部を除いて取消したものといわなければならない

 本件の一般廃棄物処理業の許可申請が廃棄物処理法6条1項所定の処理計画に適合しているか否かについて(証拠略)によると、西脇市では従前、原告以外の2業者が許可を受けて浄化槽汚泥の収集・運搬に当たり、それで格別の支障がなかったこと、昭和63年度の浄化槽汚泥の収集・運搬及びその処理計画もこのことを前提として作成されていることが認められる。

 しかしながら、前記認定のとおり、被告は、原告の前年度の許可申請に対し、無条件でこれを許可したのであるから、特に事情の変更が認められない昭和63年度の許可申請に対し、同年度の処理計画を所与の前提として、これに適合しないと主張することは、行政としての一貫性を欠き、許されないといわざるをえない。 

 以上検討したところによると、本件の一般廃棄物処理業の許可申請に条件を付した理由として被告が主張するところはいずれも根拠を欠き、前記のとおりこの条件付加が許可の一部取消しの実質をもつことからすると、右条件付加部分は裁量権を逸脱してなしたもので、違法というほかない。

 被告の主張する浄化槽清掃業の許可申請に条件を付した理由(証拠略)は、一般廃棄物処理業の許可申請に条件を付したことが適法であることを前提にしているところ、この前提を欠くことは、右に述べたとおりであり、被告はその他の法所定の欠格事由を主張・立証しないから、本件浄化槽清掃業の許可に付された条件部分も違法である。


つまり、争点に対する答えとしては、「できる」ということね。 
  あたしの言ったとおりじゃないの。
ナニがよ!
あんたは、ただ「できる」、「できる」って言ってただけでしょ!
大事なのは結論に至る理由なんだからね。

瑕疵ある附款が、当該行政処分に付されている場合であっても、その瑕疵ある附款が、当該行政処分から分離可能であれば、その附款部分だけを対象に取消訴訟を提起することはできる、って理解になるわ。

この理解を大事にして欲しいわね。
カビの生えたお餅と同じ理屈だね。
可分か、不可分か・・・っていう視点をもって、分離の可否についても考えることができるわけでしょ? 
あんた、そのカビの生えたお餅好きね・・・。
別に、それであんたが理解しているのなら、いちいち突っ込まないけどね。  
なんか、お餅の話してたら、無性にお餅が食べたくなったお!
これはもう光ちゃんが、あたしを美味しいお餅を出してくれるお店に連れて行くしかないお!
悪いけど私、カビの生えたお餅を出してくれるお店なんて知らないわよ?  
おいっ!!
お前はバカなのかっ!?
どこのどいつが、カビの生えたお餅を好き好んで食べるっつーんだお!
黙って、美味いお餅の食える豪華なお店に連れてってくれればいいんだお!
・・・・。  
・・・なんてね、なんてね。
とまぁ、冗談はさておき。
美味しいお餅の食べれるお店なんて、どうかなぁって思うわけなの。 
勝手に行けば!?   
・・・。
(思わず、心の声がMAXで出てもぉたお。
 コレは、今日は無理ぽぉ。
 ・・・ショボォーン。)

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