最判昭和51年12月24日 〜仙台水路時効取得事件〜 |
||
先に、配役を言いますね。 私は、ナレーター。 サルが、水路を水田として利用していた農家の方。 黒田さんが、国側でお願いしますね。 |
||
ナレーター |
本件事案で係争地となった土地は、公図の上では、水路として表示されている国有地でしたが、古くから水田やあぜに作り替えられて、利用されていました。 当然、公図の上だけの水路となってしまっており、最早、水路としての外観は失っていたのです。 |
|
いやぁ、爺さんは、45枚もの田んぼを小作していたって言うんだから大したもんだなぁ。 | 国を訴えた農家 |
|
国 |
どうも。 この度、自作農創設特別措置法(農地改革による国の土地政策の下での法律)により、あなたのお爺さんが小作されてみえた水田を、あなたに売り渡すことに致しました。 |
|
それはそれは。 それじゃ、爺さんの耕していた、この水田を、国がわしに売ってくれるということですか? |
||
そうです。 それじゃ、コチラが契約書になります。 |
||
いやぁ、コレで爺さんの耕していた水田が、わしのものになったってことかぁ。 | ||
ナレーター |
この売渡日から10年が経ちました・・・。 民法162条には、取得時効が定められています。 (参照条文 民法162条) 『(所有権の取得時効)第162条 1項 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。 2項 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。』 男は、国に対して、自分は10年間、この水田を自己の物と信じ(善意)、平穏公然と占有してきたのだから、民法162条2項の適用により、この本件係争地の所有権について取得時効が成立すると主張してきたのです。 |
|
ちょっと待ってください。 あなたに売ったのは、あなたのお爺さんが小作していた水田部分であって、水路は含まれていませんよ。 |
||
水田とあぜを売ったんだろ? そん中には、あんたんとこのいう水路なんてありゃせんかったで? |
||
外観はどうであれ、国は、あの水路を公用物として認識しております。 国が公用物の使用について廃止した事実がない以上、そのような主張は認められません。 |
||
バカじゃねぇの? 水路なんて、おたくらが言っとるだけで、存在してないよ! |
||
水路は国の公用物ですから! 国が廃止していない以上、使用しているんです! 国が使用している公用物に、時効取得の時効の起算なんてできるわけないでしょ! だから時効取得なんて、ありえないんですよ! |
||
|
||
・・・お疲れ様でぇす。 やっぱり黒田さんには、行政側の役がシックリきますよね。 |
||
黒田先輩の、あの顔、私苦手です・・・怖いです・・・。 | ||
光ちゃんのジト目も、あたし苦手だけど、クロちゃんのあの顔は洒落になってないよね・・・ まぁ、ドッチも犯罪者顔だよね。 |
||
・・・そんなに言わないで欲しいです。 自分では見えないんで、あんまり言われると、凹んじゃいます・・・ |
||
黒田さん、気にされなくっていいですよ。 私は、そんなことないって思っていますから。 (サル・・・何気に、私の顔のこと犯罪者呼ばわりしたわね!?) それじゃ、事案のポイントを、まとめますね。 水路は国有地であり、つまり「公物」ということとなります。 この「公物」概念については、国会賠償法について勉強する際に、しっかり学ぶつもりですが、ザックリ簡単に言ってしまうと、「公物」は「国の物」ということですよね。 今回の争点は、国の物であっても、民法上の法規である時効取得はできるのか? ということですよね。 |
||
あたしは出来ると思うけどなぁ。 パッと見て、もう水路じゃないっていうのに、使っているんです、なんていう国の主張の方が、おかしいと思うもん。 |
||
そうね。 最高裁も国の主張を認めなかったわ。 判旨は、次のものよ。 『公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財産については、黙示的に公用が廃止されたものとして、これについて取得時効の成立を妨げないものと解するのが相当である。』 というわけで、公法上の権利関係についても民法の適用を認めているわね。 因みに、この判例では、従来までの判例理論が覆されたという評価がなされているところがあるのよ。 ソレが、国の主張する公用物に対する考え方ね。 これまでは、公用物については、国が主張するように公用物に対して、国が使用しないことを行為として求める、公用廃止行為必要説がとられていたと考えられていたんだけど、上記判例の判断を見てもワカルように、本件では、黙示的公用廃止説がとられているのよね。 黙示的公用廃止説にいう公物が公物でなくなる場合の要件については、本件判例の判旨が述べているものとされているわ。 まま、この点については、今回の勉強のテーマとは関係ないところだけど、いずれ勉強するところだから、予習だと思って簡単に抑えておいてね。 要件は、また、その際にしっかりやりましょ。 |
||
へぇ〜。 ・・・って、どうでもいいけど、なんか論点の内容よりも公用物に対する考え方の説明の方が充実してない? しかも、珍しく判例の引用少ないし。 |
||
前回、検討した別府農地買収処分事件の理解があれば、他の判例については、この程度でいいと判断されてみえるのではないでしょうか? | ||
判例の引用が長い・・・ って指摘もあったので・・・。 私としては、よかれと思ってしていただけに少なからずショックだったんですけどね・・・。 |
||
そんなことを明智さんに言われる人が、私たちの中にいるってことでしょうか? | ||
ええ・・・。 ジィ〜・・・ |
||
まさか・・・。 ジィ〜・・・。 |
||
そ、そ、そんな・・・。 ジィ〜・・・。 |
||
ん? どったの? お腹でも空いた? 言っとくけど、あたしの財布には100円しか入ってないからオゴれないからね! |
||
100円・・・って。 ナニも買えないじゃないのよ |
||
帰りにスーパーで、新鮮なモヤシが3袋も買えますぅぅっ! | ||
あんたホント、モヤシばっかり食べてるのね・・・。 | ||
同情すんなら飯オゴれっ! |