最判昭和55年9月22日判決
〜宮崎自動車一斉検問事件〜
先に、配役を言うわね。

今回は人数多いから、私はナレーターをやるわ。

原告の、車の運転手は、サル
一斉検問をしていた警察官を、黒田さんって配役でお願いします。
1977年7月8日深夜。

ここは宮崎県の飲酒運転多発地帯です。
なんやぁ?
警察は、まぁた検問やっとるんかい。
 
  はぁい。すみません。
一斉検問です。
ちょっと車停めてもらっていいですか? 
  面倒くさいのぉ。
はよ、済ませてんか?
えーっと、免許証見せてもらっていいですか? 
  ほれ。
免許証
じゃあ、行ってええか?
 
ん?
あなた、ちょっとお酒の匂いがするんですけど・・・
ちょっと車降りてもらっていいですか? 
おいおい。
ええ加減にせぇよ?
勝手に検問やっとる上に、車降りろって、何様じゃい
 
まぁまぁ、ナニもなければそのまま帰って頂いて結構ですから。
そこの派出所で、ちょっと検査だけしてもらえばいいんですから。 
  検査すりゃええんか?
ほれ!
ちょっと、あなた!
飲酒検知の結果見なさいよ!
酒気帯び運転じゃないの!
起訴させてもらいますよ! 
  ナニ抜かしてやがる!
勝手に検問しといて、そんな滅茶苦茶通るかい!
   




・・・ハイ。お疲れ様ぁ。
サルは、やっぱり、こういう役が似合うわねぇ。 
  ぱちぱちぱち
(拍手)
  クロちゃんが、ガチで怖かったんだけど・・・
  判例再現するなら、ちゃんとやらないと勉強にならないかなぁ・・・って。
いいえ、いいえ。
黒田さん、スッゴクよかったです。
しっかり配役演じてくれて、ありがとうございました。 
  あ、ありがとうございます。
(明智さんが、私を褒めてくれた?)
それじゃ、事案のポイントまとめますね。 

この事案での原告(運転手・サル)の主張は、飲酒検問が、何らの法律の根拠なく行われたもので違法であるとするものなの。

この判例の論点は、前回学んだ組織法上の根拠と、作用法上の根拠との区別になるって言ったよね。

自動車の一斉検問の法的根拠について、行政側(警察)はどのように考えているのか。そして、この行政側の主張に対して、組織法・作用法という観点から、どのような批判ができるかを考えてみましょう。

というわけで、まず判旨を見ることにするね。
飲酒運転しておいて、飲酒検問自体が違法だって言える人もスゴイと思うけどなぁ。
  最高裁の判断は、次のものよ。

『職権によつて本件自動車検問の適否について判断する。

 
警察法二条一項が「交通の取締」を警察の責務として定めていることに照らすと、交通の安全及び交通秩序の維持などに必要な警察の諸活動は、強制力を伴わない任意手段による限り、一般的に許容されるべきものであるが、それが国民の権利、自由の干渉にわたるおそれのある事項にかかわる場合には、任意手段によるからといつて無制限に許されるべきものでないことも同条二項及び警察官職務執行法一条などの趣旨にかんがみ明らかである。

 しかしながら、自動車の運転者は、公道において自動車を利用することを許されていることに伴う当然の負担として、合理的に必要な限度で行われる交通の取締に協力すべきものであること、その他現時における交通違反、交通事故の状況などをも考慮すると、警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。

 原判決の是認する第一審判決の認定事実によると、本件自動車検問は、右に述べた範囲を越えない方法と態様によつて実施されており、これを適法であるとした原判断は正当である。



今回の事案において大事なのは、太文字部分なんだけど、最高裁は、警察法2条1項根拠として、自動車一斉検問を認めているのよね。

ただ、前回の勉強で見た条文だから、まだ記憶に新しいと思うんだけど、警察法2条1項って、作用法じゃなくって、組織法だったよね?
組織法というのは、警察というのは、こうこうこういう組織ですよぉ〜って定めているものであって、国民に対する関係について、行政行為の要件・効果を定めたものではないわけよね。

そう考えると、自動車一斉検問の根拠に、警察法2条組織法)でいいの? って批判ができると思うわ。
なるほど、なるほど。
それがこの事案での問題点と批判ってことかぁ。

って、全部、光ちゃんが言っちゃってるじゃん!

要件・効果がよくワカラナイ組織法である警察法2条1項を根拠にしているんじゃ、そりゃ、酔っ払いの運転手だって、納得できなかったってことになるわけだ。
行政法の判例の検討においては、行政側・住民側、それぞれの立場からの主張・反論を考える視点が大事だからね。

酔っ払いの運転手の方が納得してみえるかどうかじゃなくって、それぞれ、どのような主張が考えられるか? っていう理解をしてね。 
  あ、そういう目線なんだ。
私、完全に事案のオチばっか気にしてた。
どうなるんだろ、この話・・・みたいな。
ちょっとぉ。
今更、そんな事言わないでよぉ。
ナニ、その判例検討・・・
 
まぁまぁ。
まだ始まったばっかりなんだから、これから、そういう視点で判例を見るってことで。
ウキっ!

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