『サル探偵の事件簿』〜File1〜 「名(?)探偵現る!」 |
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焚かれた香の匂いが涼やかな部屋。 しかし、その匂いとはおよそ似つかわしくないモノが其処にはあった。 死体である。 その死体の眼は見開かれ・・・だらしなく弛緩した口からは舌が覗いていた。 床に突っ伏して倒れ込んでいる初老の男は死んでいた。 後頭部を真っ赤に染め・・・ 後頭部打撲による頭蓋骨骨折という男の死因を全ての見た者に訴えかけるように・・・ |
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・・・成程ね。 鈍器による撲殺・・・柴田、コレは「殺し」のようね。 |
捜査一課敏腕刑事・光 |
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打撲痕は被害者の後頭部にありますしね。 その線で間違いないかと。 |
光の後輩刑事・柴田 |
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所轄警察官・竹中 |
ご苦労様です! 警視庁の明智刑事っ! 私は、110番通報を受けて、現場に一番に来た所轄の警察官の竹中です! 明智刑事っ! 早速ですが、この部屋に転がっていた、被害者のものと思われる大理石製の灰皿が凶器と考えられるです! |
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アラ、また同じ現場みたいね。 よろしくね、竹中巡査。 そうね・・・血痕も付着しているし、その可能性は高いわね。 鑑識。 その灰皿を鑑識にまわして、血痕が被害者のものかの確認を。 あ、凶器から犯人の指紋が出るかも知れないから慎重にね。 |
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警視庁鑑識・小 |
わかったよぉ。 あ、明智刑事。 被害者の倒れていた床に、血で「アリガ」って書いてあるよぉ。 |
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「アリガ」? おそらくダイイングメッセージでしょうね・・・。 「アリガ」・・・犯人の名前・・・かしらね。 |
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「自称」天才名探偵・サル |
おいおいおいおい。 まぁーた、無能なお前らときたら見込み捜査ですかぁ。 |
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だ、誰っ!? | ||
うわっ!! また来たですっ!! |
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事件が起きたって聞いてね。 天呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!! どんな難事件であろうとも、人の作ったトリックである以上、解けない謎など存在しない! 市民の味方、正義の執行者!! 誰が言ったか知らないが『天才名探偵・木下藤』たぁ、あたしのことだお! おい、無能共、安心していいお。 この天才・名探偵様が来たからには、この事件は瞬く間に解決してやんよっ! |
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サルの助手・黒田 |
あ、どうも失礼致します。 私は、天才名探偵・藤さんの一番助手の黒田と申します。 皆様、御安心下さい。 藤探偵が来られたからには、この事件は最早解決したも同然ですから。 |
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ふむふむ・・・。 部屋に転がる死体かぁ。 |
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藤探偵っ! コレは密室トリックじゃないでしょうか! |
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・・・いや、その前に「密室」じゃないです。 私が、通報を受けて現場に一番最初に来たですが、部屋に鍵はされていなかったです。 |
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黒田くん。 | ||
は、はいっ!! | ||
『実に面白い』 | ||
藤探偵の名言きたぁーーーっ!! | ||
・・・。 (ソレ言いたいだけです。) |
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ナニが面白いって言うのよ。 あんた、被害者の方を目の前にして不謹慎極まりないこと言うのは、やめてくれない? |
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というか、関係者以外の方が現場に来られるのは困ります。 どうかお帰りください。 |
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そうです、そうです! どうして呼んでもいないのに、いつも勝手に来るですか!! |
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お前らみたいな無能共に任せておいたんじゃ、事件は迷宮入りしかねないお! ここは、この名探偵藤様に、ドンと任せるんだお! むむむ・・・コレが死因かな? |
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ちょっ!! ナニ、凶器を手袋も着けずに勝手に触っているですか!! ソレは重要な証拠かも知れないんです!! |
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あぁぁあぁあぁ!! ヒドいよ、ヒドいよぉ!! |
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事件現場にある物を見ると、つい触ってしまいたくなる。 『ぼくの悪い癖』。 |
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悪い癖って言葉で許されるとでも思ってんの!? ナニしてくれてんのよ!! |
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・・・。 (どうせソレも言いたいだけです。) |
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もうっ!! 現場を荒らしちゃダメだよぉ! 早く出てってよぉ!! |
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おやおや。 ・・・答えを聞く前に追い出しちゃっていいのかな? |
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答え? どういう意味ですか? |
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やれやれ。 この場に居合わせている人の求めている答えは一つだと思っていたんだけどね。 ソコの頭の弱そうな刑事さんは、今夜の晩御飯のことでも気にしていたのかな? |
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ちょっと! 柴田のことを悪く言うのは、やめてくれない? |
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いえ、明智刑事。大丈夫です。 ソレより私達は、このダイイングメッセージにある「アリガ」の線から捜査すべきかと。 |
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そうね。 こんな部外者に付き合っていて初動捜査に遅れをとったら、それこそ失態よね。 さぁ、行くわよ! 柴田っ! (ダダダダ) |
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はい!! 先輩っ!! (ダダダダ) |
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やれやれ。 気持ちばっかだな、あの無能共ときたら。 居もしない犯人探しとは・・・。 |
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えええぇっ!? そ、それはどういうことですか? です!! |
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『真実はいつもひとつ!』 この事件・・・「自殺」だお。 |
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ふえっ!? | ||
現場を一目見た瞬間に、あたしにはピンと来たお。 間違いない・・・自殺だお。 |
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現場を一瞥されただけで、もう解決されてしまわれたんですか!? さ、流石、藤探偵です!! |
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でも、この灰皿の血痕は? | ||
マヂで無能の極みだお・・・。 なんか見付けると、すぐに凶器だと決め付けてかかる狭窄視野。 そんなこったから、この国から冤罪という悲劇がなくならないんだお! そんなもん、そのオッサンが、自分で自分を殴った痕やないかお。 いちいち言わないとダメなの? |
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でもでも、死体の倒れていた床には、血で「アリガ」ってあったよぉ! コレはナニを意味するっていうの? |
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かぁぁぁぁぁぁぁっ!! 無能・・・いや、もう「無能」という言葉では尽し難い程の「無能」っぷりだお! 死者の残した言葉なんだから、そんなもん遺書に決まってんだろが! 常識的に考えてっ!! 遺族に「アリガトウ」って書く途中で事切れたんだお。 |
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でもでもでも、被害者は独身だし、親兄弟もいない天涯孤独の人だよぉ? 思いあたる範囲に遺族らしい遺族もいないのに、遺書なんて書くのかなぁ? |
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む、む、む、無能ぉぉぉぉぉっ!!! アスペか? アスペなのか!? 人は1人で生きているとでも思ってんの!? ソレ一体どんな都市伝説なのよ? 自分のこれまでの人生・・・また、これまで自分と関わった全ての人に万感の思いを込めて遺した言葉・・・。 ソレが「アリガトウ」って言葉に込められているんだお!! |
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待って下さいです! 遺書だって言うなら死ぬ前に用意するはずです! どうして、わざわざ死ぬ寸前に、それも血で書く必要があるですか! |
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そんな無能を露呈せんが如き質問をするなんて・・・。 『恥を知りなさい!』 人は誰しも、忘却する生き物だろうがっ!! ウッカリしてまうことは万人に起こり得ることだろうがっ!! オッサンは遺書を書き忘れていたことに、死の間際になって気付いたんだお。 ソレで慌てて、自分の血で・・・ってことに間違いないお。 |
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流石、藤探偵っ! 人間観察にも鋭い洞察力を発揮してみえる!! |
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・・・そんな人はいないです。 | ||
チイも違うって思うよぉ。 | ||
あ、待って欲しいです! そもそも私は、近隣住民からの「悲鳴が聞こえた」という通報を受けて、この現場に来ているです! そのことは・・・ |
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どんだけ無能なんだお!! ソレ、マヂで聞いてんの? って、お前の脳味噌ほじくり出して直接問い正したくなるような質問は自重してくれないかな? 人は覚悟はしていても、痛みに対しては思わぬ声を上げてしまうものだろが! ましてや死ぬ程の激痛。 大声を上げたとしても、なんの不思議もないお。 |
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でもでもでもでも、自殺するつもりだったのなら、自分で自分の後頭部を殴って死ぬ・・・なんて不確実な方法を選ぶかなぁ。 死にきれないかも知れないし、下手したら障害を抱えて生き残っちゃう可能性だってあるわけだし・・・。 |
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天井知らずの無能っぷりじゃまいか・・・。 正直、呆れて返事する気さえ失せるくらいの発言だお。 いい? そもそも死を選ぶ人の気持ちなんて、日常生活の中で安穏と暮らしとるお前ら如きがワカルわけもないだろうがっ!! ナニを知ったかして、さも有り得ないことのように言ってんだお!! 黙れっ! ニワカがっ!! |
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藤探偵っ!! おっしゃるとおりです!! |
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・・・一番「知ったか」をしている人が、ソレを言わないで欲しいです。 | ||
悲し過ぎるよね・・・。 自分の人生の幕引きを、自分でしなければならない程に追い込まれていたなんてさ・・・。 ねぇ、クロちゃん。 |
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そうですね・・・。 悲し過ぎる事件でしたね・・・。 |
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ナニを、もう解決したみたく言っているです!! 自殺だって言うのなら、自殺の動機はなんなんですか! そんな肝心なことさえ言わずに、自殺だなんて言われても、私達は納得できないです! |
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ソレじゃ、納得のいく説明をしてあげましょうか。 | ||
あ、明智刑事っ! | ||
被害者男性は、不動産業をされていたけれど、それは表向きの顔で、裏では未登録の金融業も営んでいたようね。 「アリガ」という文字だけど、被害者の融資顧客名簿の先頭に居たわ。 「有賀」という名前の飲食店経営者がね。 |
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名簿には住所も連絡先もあったので、今、任意で伺って来たところ自供してくれましたよ。 被害者に多額の借財があるのに、経営する飲食店の営業が芳しくなく返済の目途も立たずにいたところ、執拗に返済を迫られて、その旨を謝りに行ったら激しくナジられた為に、カッとなって被害者の傍にあった大理石製の灰皿で背後から殴った、と。 現場の状況とも合致しますし、信用に足る供述だと判断しました。 |
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さっき見付けた灰皿から、有賀の供述通りだったら彼の指紋が採取できるんじゃないかしらね。 犯人の自白、凶器という証拠に、犯行の動機・・・どうやら、この殺人事件も解決したようね。 |
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さ、流石、警視庁きっての敏腕刑事、明智刑事です!! 私達が、現場で部外者の対応に困っている間に、もう事件を解決されてしまったです!! |
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凄いよ、凄いよぉ!! | ||
えーっと、コレでドチラが「無能」なのかもワカッタと思うんだけど。 ソレじゃ部外者のあんたはもう帰りなさいよ。 |
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ふ・・・藤探偵・・・。 | ||
ふっ。 やっぱり、最初にあたしが言うたとおりやったね。 |
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ふえっ!? | ||
ナニが、あんたの言うとおりだったって言うのよ! あんたは「自殺」って言ってたじゃないのよ! |
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『雉も鳴かずば撃たれまいに』とは、よく言ったもんだよね。 被害者は、弁済に窮している男をナジるような真似さえしなければ、こんな目に遭うこともなかったのに・・・。 相手を追い詰めて、自ら殺されるようなことをしてしまった・・・。 その結果がコレだよ・・・。 自ら殺された・・・そう言っても過言ではないよね。 あたしは、現場を一目見た瞬間に、そう思ったからこそ「自殺」だと言ったんだお! |
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さ、さ、流石です!! 藤探偵っ!! まさか、見もしない犯人像のみならず、犯行に至る動機までもを既に看破されていたなんてっ! そ、そ、そんな深い意味が、あの言葉には含まれていたなんて!! やっぱり藤探偵は、天才ですっ!! |
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行間を読んで欲しかったよなぁ。 まぁ、そんなことを、あの無能共に言ってもダメなのかなぁ、やっぱ。 |
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・・・。 | ||
オイ! 車に乗れ! |
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ん? 車? なんで? 送ってくれるの? |
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そうそう、送ってあげるわよ。 警視庁までね! |
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事件協力の金一封かな? それとも、警視総監賞かな? |
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公務執行妨害罪の現行犯よ!! 勝手に現場に乱入した上に、散々警察の捜査を邪魔してくれてっ!! |
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ちょっ!! おまっ!! だ、誰のお陰で事件が、こんなにも迅速な早期解決が出来たと思っているんだお!! |
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少なくとも、あんたのお陰ではないことだけは確かよっ!! あっ! コラっ!! 待ちなさいっ!! |
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うっさいっ!! この無能共がっ!! 死ねっ!! 死ねっ!! 豆腐の角に頭ぶつけて、サッサと死ねっ!! (ダダダダ) |
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あぁ、藤探偵ぃーーっ! 待ってくださぁーーいっ!! (ダダダダ) |
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明智先輩。 次、見掛けたら発砲許可を頂いても、よろしいでしょうか? |
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し、し、柴田刑事・・・。 | ||
気持ちはワカルけど、ソレは認められないわ、柴田。 | ||
・・・。 (流石、警視庁きっての敏腕刑事、明智刑事です。 あれだけ失礼極まりない相手にも冷静です! ) |
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あのサルだけは、あたしが撃ち殺すから!! | ||
・・・。 (前言撤回です!) |
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モシャモシャモシャ。 (この被害者の人の机にあった洋菓子、すっごく美味しいよぉ。 事件の証拠じゃないみたいだし、チイが食べちゃっても大丈夫だよねぇ。 モシャモシャモシャ。) |
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〜File1〜「名(?)探偵現る!」 完 |
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旅行中に、旅行記をどうやって書いたものか思案したものの妙案が浮かばず・・・。 代わりに雑記を埋める与太話を露天風呂の中で思いついたので、書いてみました。 勉強会との関連性を見事なまでに放棄したという完全なるガラクタなので、あくまでもネタとして生暖かい目で見て頂ければ嬉しいです。 産業廃棄物級の代物ですが、キャラへの愛着だけは込めて書いたので、皆様に少しでも楽しんで頂ければ幸いです。 約2年間も放置した『雑記』のネタが、これかよw というツッコミ必至ですが、私もメインはもちろん勉強会だということは重々承知しておりますので、まぁ、久し振りの旅行行ってテンション上がっているんだよね? ってことで御容赦下さい。 続きは・・・サイトにお越しの皆々様の反響次第ってことでw ってか、続きもナニもない話ではありますよね、これ。 |
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(2016.2.21 アホの管理人) |