前回までの勉強会では、権利義務の主体を学んできたのよね。 今日は、権利義務の客体となるもの・・・ズバリ「物」について学ぶことするわね! 早速、六法で「物」を定義する条文を確認しちゃいましょ。 民法85条をひいてみて。 |
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民法第85条 『(定義) 第85条 この法律において「物」とは、有体物をいう。』 |
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超アッサリっ! 「物」とは「モノリス」も含む・・・とか言ってくれればいいのに。 |
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逆にワカラナイわよ! ナ二よ、モノリスって。 |
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スタンリー・キューブリックの『2001年 宇宙の旅』って映画に出てくる謎の物体。 | ||
見てないし。 しかも、ソレ全然関係ないから。 |
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ナカたんを主役に据えて、リメイクして欲しいよね。 | ||
私みたいな女の子が出てくる映画なんですか? | ||
題して『2014年 地球のチビ』ってタイトルでさ。 | ||
ヒドいです! ヒドいです!! |
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あんた、全然関係ない話した挙句、ナカちゃんの悪口まで言うなんて、いい加減にしなさいよ? 話を戻すわね。 民法85条は、『「物」とは有体物をいう』として、「物」を定義づけているわ。 ここに、有体物とは、物理的支配可能性を基礎とした概念として捉えられているわ。 具体的に言うと、固体・液体・気体が有体物ってことになるわね。 |
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謎の物体モノリスは、石柱だから固体ってことで、有体物と言えそうだなぁ。 | ||
心底どうでもいい相槌打つのは、やめてくれない? じゃあ、質問してあげるわね。 質問! 有体物とは言えないものを挙げてみてくれる? |
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有体物ではないと言うことは、無体物ってことですよね。 空気・・・は気体だから有体物ということになるわけですから・・・熱や、光・・・あと電気などが無体物でしょうか? |
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そうね。 今、ナカちゃんが挙げてくれた、熱や光、電気などは無体物の例示として、よく挙げられるものになるわね。 あと、法律を勉強しているんだから挙げて欲しかったものとして、権利(物権・債権・著作権等)も無体物になるのよね。 |
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権利も無体物になるんですね。 覚えておきます。 |
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どうして、民法がわざわざ「物」の定義を、明文化しているのかと言うと、所有権という権利の客体となるものについて明確にしておくためなのよ。 所有権については、詳しくは民法の物権のところで学ぶんだけど、民法85条は、総則という一般的な形で「物」を規定している条文なの。 というわけで、今日は、所有権の客体となるための要件について、まとめることにするわね。 少し物権にも話が及ぶところはあるんだけれど、また、物権を勉強する際には、総則での勉強を思い出しながら、やるってことにしてくれればいいからね。 |
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こくこく(相槌) | ||
所有権の客体となるための要件は、次の4つね。 @有体物であること A排他的支配が可能であること B特定の物であり、かつ、単一の物であること C独立の物であること の4要件なの。 @の有体物であること・・・については、質問の形で、さっき聞いたから、ここはクリアしたものとして。 A〜Cについて、確認していくわね。 |
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・・・ヤバいなぁ。 モノリスは、Aの要件で、既にアウトっぽいなぁ。 排他的支配は、できそうにないからなぁ、アレは。 |
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ナ二どうでもいいことに頭つかってんのよ! どうせ頭使うなら、もっとマシなことに使ってよね! A排他的支配が可能であること、というのは、権利主体による排他的支配が可能でなければならないということなの。 つまり、排他的支配が可能でないものは、所有権の客体とはならないっていうことね。 モノリスは、どんなものか知らないから置いとくけど、例えば、太陽や月や星なんかは、排他的支配は到底できないわけだから、当然所有権の客体とはならないわ。 ただ、海洋については、一般的には所有権の客体から除外されるんだけど、判例は、支配可能な状態になれば「物」になりうる、とはしているから、この点だけは注意ね(最判昭和61年12月16日 百選T5版補正 11事件)。 |
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人体も、排他的支配ができない存在ですから、所有権の客体とはならないって理解でいいですか? | ||
もちろん、人間(自然人)、ないし、その身体も、所有権の客体からは除外されるわ。 でも、身体から分離した毛髪・歯・血液などは、公序良俗(民法90条)に反しない限り、「物」となりうるわね。 |
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聖遺物みたいな死体や遺骨は、物として、所有権の客体となるってことだね? | ||
聖遺物なんて、難しい言葉知ってるのね。 うん、その理解でいいわよ。 但し、その取り扱いにおいて制限を受けることとなるけれどね。 つまり、もっぱら埋葬・祭祀・供養に取り扱いが限定されることや、所有権の放棄は許されない等の制限がある物とされるわ。 |
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こくこく(相槌) |
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それじゃ、次はBの要件ね。 B特定の物であり、かつ、単一の物であること、ね。 (特定性及び単一性) 所有権の客体となるには、ある物が、他の物から区別されていなくてはならないのね。 この区別されているという状態っていうのが、特定性及び単一性ってことなの。 特定性と単一性、ということが、どういうことかは、よく酒屋の「ビール1ダース」を例に説明されるわね。 酒屋さんに「ビール1ダース」を注文して買うとするじゃない。 その場合、単に「ビール1ダース」と言っただけでは、どのビール1ダースなのかは、まだ定まっていないわけよね。 でも、その注文に際して、「このビール1ダースをください」って注文して買えば、対象が明確になっていると言えるわよね。 コレが、特定性ってことなの。 特定性については、後々勉強する危険負担という問題でも大事なところになるから、抑えておいてね。 次に、単一性というのは、「このビール1ダース」という特定がなされた場合、ビール1ダースの上に、1つの所有権が成立するわけではなくって、1ダースのビールの中の、そのビール1本、1本に対して、所有権が成立することを意味するわけ。 |
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あたし、ビールは呑まないから、ソコは、絶賛マイブーム到来中のカタラーナで例えてくれれば、えがったのに。 | ||
あんた、ホントどうでもいいことしか言わないのね。 最後にCの独立の物であること、という要件について説明するわね。 (独立性) 所有権は、1つの物の上に成立し、1つ物の上の一部の上には成立しないの。コレが、独立性ってことなのね。 この要件が求められるのは、取引安全への配慮からなの。 ってことは裏返せば、取引安全が保たれるのであれば、独立の物(1つの物)の一部についてであっても、所有権が認められることはあるっていうことになるのよね。 例えば、土地がそうね。 一筆(土地の数え方)の土地の一部について、時効の成立も認められるわけだし、譲渡も可能なのよね。 時効制度については、この民法総則の後半で改めて学ぶことになるから、今は、へぇ〜ってくらいでいいけどね。 |
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へぇ〜。 | ||
「へぇ〜」で済ませていいのは、時効制度についてだけにしてよ? 大丈夫? 今述べたBとCの要件である特定性・単一性・独立性の要件を合わせて、一物一権主義と呼ばれるわね。 民法物権で、改めて学ぶこととなるけれど、大事なキーワードだから、抑えとくといいわよ。 一物一権主義とは、1つの所有権の客体は、1つの物であるということね。 但し、例外もあるから注意ね。 |
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うわ、来たよ、例外っ! | ||
そんな顔しないの! 一物一権主義の例外として「集合物」という存在があるのよね。 例えば、牧場の牛100頭とか、お店の陳列棚にある商品全部・・・みたいな場合ね。 「集合物」とは、個別の物が、一定の目的の下に集められ、経済的に単一の価値を有し、取引上も一体として扱われる物を指すの。 この「集合物」に関しては、1つの権利の対象となりうるのよね。 但し、「集合物」であるとしても、その「集合物」の構成部分は、経済的にも法律的にも、その個性を失っているわけではなくって、独立した存在ではあるのよね。 だから、個々の物は、集合物の構成部分たる関係においては、集合物としての一体的な法律的変動に服することになるんだけれど、独立した物としての関係においては、なお独自の処分その他の法律的変動の対象になるという二面性をもつこととなるわけ。 この「集合物」概念から、民法物権で学ぶ「構成部分の変動する集合動産の譲渡担保」(集合流動資産譲渡担保)が認められているのよね。 譲渡担保自体、民法上の条文がないものなのに、そこにかてて加えての、集合流動動産譲渡担保・・・という物権でも、難易度の高い論点だから、ここでの説明は、これくらいにしておくわね。 |
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・・・やべぇお。 物権を既にやりたくなくなってきてまった。 |
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ちょっと少な目かも知れないけれど、新しい章の話だったし、最後の例外の集合流動資産譲渡担保のせいで、サルがネガティブになっているみたいだから、今日はここまでにしよっか。 | ||
もう少しやりたいです。 | ||
えぇ〜。 光ちゃんが、ここまでって言ってくれてるんだから、ソコはノッておこうよぉ。 |
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私が嫌がることばかりする藤先輩に、私も、たまにはお返しするです! (もう少しやりたいです。) |
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おいおいっ!! ナニ、どす黒い本音を思いっきり口にしちゃってんの!! |
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あうあうあうあう。 (アレ!? 本音と建前が、逆になってしまっていたです!!) |
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ナカちゃん、似合わないことするもんだから・・・ | ||
遂に正体を現したなっ!? チビッ子怪人ナカゾルゲ! |
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あうあうあうあうあう。 | ||
お前の企みは、全てお見通しだ! 勉強する気もないくせに、他人が嫌がることをしたいがためだけに、光ちゃんまで利用しようとは言語道断! |
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あうあうあうあうあうあう。 | ||
ちょっとぉ。 いい加減にしなさいよ。 ナカちゃんが勉強好きなのは、いつものことじゃないの。 あんたを困らせたいからって気持ちだけじゃないのは、ワカってるでしょ? |
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そんな悪い奴には、正義の鉄槌! 真・木下頭突きをお見舞いしてくれるぅっ!! セイっ! セイっ!! |
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・・・・。 | ||
ちょっとっ!! あんた、ナニも気絶するまで頭突きすることないでしょっ!! |
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ちがっ!! まだ、あたしナニもしてないよ! ナカたんが、勝手に気絶しちゃっただけだよ!! |
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あんたが追い込んだ結果なんだから同じことよ! 責任もって、ナカちゃんが目を覚ますまで傍に居てあげなさいよ? |
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・・・逆に、頭突き入れたら目ぇ覚ますんじゃないかなぁ。 | ||
あんたねぇ〜っ!! |