今日は、法人の権利能力について学ぶわね。 法人は、あくまでも法的に擬制された人格であることから、自然人とは違う以上、その権利能力の範囲も当然異なることになるわ。 今日は、その違いについて、しっかり把握することにしましょ。 法人の権利能力の範囲は、次の3つの観点から制限されることとなるわ。 1.法令による制限 2.性質による制限 3.目的による制限 まぁ、法令による制限については、個別法や、会社法等で学ぶことになるから、この民法総則での説明は避けることにするわね。 でも、2と3。特に3については、しっかり勉強するからね! |
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はいはい。 |
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その2度返事やめてよね。感じ悪いわよ? 今日の勉強の中心となる条文を、見ておきましょうか。 六法で民法34条を確認してみて。 |
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民法第34条。 『(法人の能力)第34条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。』 |
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んみゅ? 光ちゃん! 定款ってナニ? |
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あ、確かに説明していなかったわね。 定款については、会社法で詳しく学ぶことになると思うんで、民法で説明することもないと思ったんだけど、必要最小限の説明はしておくわね。 定款は、法人の根本規則を記載したものね(一般法人法11条1項)。 法人の設立には、設立者として社員になろうとする者(設立時社員)が2名以上集まり、共同して、この定款を作成することが必要なのよ(一般法人法10条)。 でも私、前回、法人の設立については、各自、教科書等で確認しておいてって言ったと思うんだけど・・・。 あんた、確認してこなかった・・・わけね? |
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うーん・・・ したけど忘れたんじゃないかな・・・ うん、そうそう。 きっと、そうっ! |
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ふぅ〜ん。忘れた・・・ねぇ。 便利な言葉よねぇ。 まぁ、いいわ。 それじゃ、2の性質による制限から説明するわね。 法人は、あくまでも自然人とは違うわよね。 一番端的な違いは、法人は自然人と違って、肉体を持たないわ。 そのため、肉体を基礎とする権利を享有することはできないわ。 当たり前と言えば、当たり前なんだけど、大事なことよね。 具体的には、肉体上の自由権・生命権・親権などの権利享有主体にはなれないことになるのよね。 このことは、裏返せば、肉体を基礎としない権利は享有することができるってことよね。 具体的には、肉体を基礎としない権利である氏名権・名誉権などは享有できるのよ。 民法710条の非財産的損害の中には、精神的損害だけでなく、金銭評価の可能な無形の損害がありうるとして、法人の名誉権を認めた判例(最判昭和39年1月28日 代々木診療所名誉権侵害事件)もあるわね。 |
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こくこく(相槌) | ||
だから、前回のサルのように、ありもしないデッチあげで、ウチの会社を悪く言うような真似は、法人に名誉権が認められている以上、当該名誉権を侵害する行為になるんだからね! | ||
はいはい。 | ||
その返事やめなさいよ! | ||
はいはいクマクマ。 | ||
なんか変な語尾つけてきたわね・・・ でも、感じの悪さは払拭されてないじゃないのよ! もう! ホント、人の嫌がることするの止めないわね、あんた。 もういいわよ! それじゃ、今日のメイン論点にいくからね。 3.目的による制限 ね。 法人は、定款に定められた目的によって、権利能力を制限されるのよ。 この考え方は、権利能力制限説と呼ばれる考え方なんだけど、判例もこの立場だから、法人の権利能力は、定款によって制限されるんだ、っていう認識でいいわよ。 |
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こくこく(相槌) | ||
定款の「目的」の範囲については、営利法人と、非営利法人とで分けて考えるべきなの。 営利法人、まぁ、ここでは一般的な株式会社を念頭において聞いてくれればいいんだけど。 営利法人においては、「目的」による制限は、「目的の範囲」が拡大されているため、実質的には制限のないのと同様の状態になっているわ。 これに対して、非営利法人では、営利法人と比較すると、目的の範囲認定は厳格なものとなっているのよね。 あまり直接的に論文等で問われる論点ではないと思うけれど、もし聞かれた際には、法人が営利法人か、非営利法人かで、「目的の範囲」の認定が異なることは気を付けておいてね。 |
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こくこく(相槌) | ||
認定が厳しいって、具体的に、どう違うの? | ||
判例から読み取れる、定款の「目的の範囲」について、まとめるわね。 まず、営利法人についてね。 『会社の目的を達成するのに必要な事項は、定款に記載されていなくても、目的の範囲内にある』(大判昭和6年12月17日)。 そして、『会社の目的を達成するのに必要か否かは、定款の記載から客観的・抽象的に必要であるかを想定できればよい』(最判昭和27年2月15日)。 とするのが判例の立場なの。 上記判例からわかるように、営利法人の定款の「目的の範囲」は、非常に広いものといえるわよね。 これに対して、非営利法人では、定款の「目的の範囲」については厳格にとらえているって言ったわよね。 例えば、労働金庫が、非組合員に資金を貸し付けた事案では、この貸し付けは、「目的」の範囲外とされたわ(最判昭和44年7月4日)。 他にも、農業協同組合の、非組合員への貸し付けが、「目的」の範囲外とされた事案もあるわね(最判昭和41年4月26日 百選T 7事件)。 つまり、非営利法人では、定款の「目的の範囲」は、割合に狭く解されるということがワカルかな? |
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うーん。微妙。 同じ行為をしたのに、営利法人なら、定款の「目的の範囲」内で認められて、非営利法人なら認められなかったって、具体例を挙げて欲しかったかなぁ。 |
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なかなかいいこと言うじゃないのよ。 確かに、そうよね。 それじゃ、政治献金という行為を例に出して、その話をしようかな。 営利法人である八幡製鉄(今の新日鉄)という鉄鋼会社が、自民党に政治献金をしたのね。 この営利法人の政治献金は、「目的の範囲」内として認められた(最大判昭和45年6月24日 八幡製鉄政治献金事件 百選T 8事件)んだけど。 非営利法人である南九州税理士会が、自民党に政治献金をしたのは、「目的の範囲」外として認められなかった(最判平成8年3月19日 南九州税理士会事件)のよね。 この両者の違いを分かつ考え方については、憲法でしっかり勉強するところになるから、ここでは、営利法人と非営利法人とでは、「目的の範囲」の内か、外かという判断は、営利法人が広くって、非営利法人では狭いということだけ抑えてくれればいいからね。 |
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ドッチも自民党への政治献金なのに、片方はよくって、片方はダメなんだ。 成程ねぇ。 確かに、定款の「目的の範囲」内かどうかは、営利法人と非営利法人とでは違うって言えそうだね。 |
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法人が政治献金するのは、よくないです! 私は反対です! |
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まぁまぁ。 そのあたりの議論は、憲法ですることになるから、今はその話題は置いておきましょ。 今日は、民法の勉強会だからね。 今日の勉強会で抑えてほしいのは、営利法人においての、定款の「目的の範囲」内か、否かの判断基準ね。 さっき上で述べた2つの判例の考え方を、八幡製鉄政治献金事件の最高裁では合わせて、次のように述べているから、この規範は、しっかり抑えておいてね。 『会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含される。』 そして、『当該行為が目的遂行上現実に必要であったかどうか』は、『行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならない』(最大判昭和45年6月24日 八幡製鉄政治献金事件 百選T 8事件) つまり、営利法人における定款の「目的の範囲」内か、否かの判断基準は、客観的・抽象的に判断する、ということね。 |
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営利法人の場合の、定款の「目的の範囲内」か違うかの判断は、客観的抽象的に判断する! 了解っ! |
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因みに、政治献金については、非営利法人は定款の「目的の範囲」外とされるんだけど、寄付行為については、非営利法人であっても、定款の「目的の範囲」内とされる(最判平成14年4月25日 群馬司法書士会事件)のよね。 非営利法人の場合、政治献金はダメ(定款の目的の範囲外)だけど、寄付行為はOK(定款の目的の範囲内)ってことで、今はザックリ抑えておいてくれればいいからね。 それじゃ短いけれど、今日はここまで。 法人の権利能力という論点は、終わったからね。 |
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嘘っ!? もうオシマイ? なんか嬉しいっ! それじゃ、早く終わったし、『ネージュ・ブロンシュ』(洋菓子店の名前)に行こうよ! |
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そんな元気余ってるなら、お店で食べながら、続きを、もう少しやろうか。 | ||
こくこく(相槌) | ||
え? そうなっちゃうの? |
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あんたも甘いもの頭に入れれば、頑張れるんじゃないの? | ||
・・・・。 (くそぉぉぉぉっ。足元見やがってからにぃぃ。 昨日、お店の前通ったときに季節限定のカタラーナって名前の新商品が出ていたんだよなぁ。食べたことないけど、スッゴイ美味しそうだし、アレ食べてみたいんだよなぁ。 でも、お店行ったら、勉強の続きするのは嫌だなぁ。 でもでも、季節限定っていうことは、今しか食べれないわけだし、この機会逃してしまうと、カタラーナってお菓子食べれないままになっちゃうかも知れないし・・・むむむむむ。) |
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なんか後ろに用事でもあるの? でも、サルが『ネージュ・ブロンシュ』誘ったんだから、大丈夫なんでしょ? |
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・・・。 | ||
・・・。 (ナニか、藤先輩が困惑されてみえるです。) |
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ナニ黙ってんのよ? | ||
あひあひあひあひ。 勉強せんと、カタラーナだけ食べる妙案が浮かばなひ・・・。 |
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ナニ? カタラーナって? |
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あたし食べたことないから知らない。 でも、スッゴイ食べてみたい! |
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カタラーナは知ってるわよ。 なんで急にカタラーナが出てきたの? って意味で聞いたのよ。 |
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『ネージュ・ブロンシュ』の季節限定商品みたい。 食べたい、食べたい、食べてみたい! |
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じゃあ行けば、そのカタラーナが頂けるじゃないのよ。 決まりね。 それじゃ、カタラーナを頂きに、お店に行くことにしましょ。 |
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カタラーナだけ食べたいの! カタラーナだけがいいの! |
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いつもサルが楽しみにしてるシュークリームはいらないってことね? まぁ、アレだけシュークリームばっかり食べてれば、飽きちゃうわよね、普通。 |
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違う、違う、違う! カタラーナだけがいいの! カタラーナだけ食べに行きたいの! |
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だからワカッタって言ってるじゃないのよ! もう! どんだけカタラーナ楽しみにしてるのよ! |
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・・・。 (藤先輩は、勉強せずにカタラーナだけが食べたいと思ってみえるんです・・・。 でも、敢えて言わないです。藤先輩ごめんなさいです・・・。) |