成年後見制度の理念と成立

前回までは、未成年者の保護について勉強したよね。
今日からは、しばらく行為能力制度について勉強することにするわね。

まず、今日は、この行為能力制度の制度趣旨、その目的、必要性について抑えておきましょ。
  こくこく(相槌)
あたしも、いずれ御世話になるかも知れない制度だから、今日は真面目に聞いておくべきだね。
そういうの関係なしに、いつも真面目に聞いて欲しいんだけどね!

行為能力制度は、判断能力の低下した人等に、新しい制度を求める社会の声の高まりによって生まれたものなの。

その要望には、大きく次の4つがあると言われているわ。

1.身上監護を必要とする人の増加と社会的関心
 これは、いわゆる高齢化社会に伴う、寝たきりや認知症の高齢者が急増したことによって、今や何らかの形で、日常生活の保護を必要とする人々が、数百万人に達しているという社会的背景からの要望ね。

2.国民の人権意識の高まり
 これは、入所した施設内での権利侵害の実体等が明るみに出ることにより、このような状況をどのように改善していくべきか、といった人権尊重への配慮からの要望ね。

3.家族だけでの保護の限界
 高齢者などの介護や身上保護は、家庭の中では、とりわけ女性が中心となって行ってきたわよね。でも、昨今は女性の社会進出も目覚ましく、また、核家族化の進行等で、日常的に保護を必要とする人を家庭内だけで支えることは困難になってきたといえるわ。
 こうした社会的背景から、要保護者を社会全体で保護していこうとする考えからの要望ね。

4.そうした要望があるにも関わらず、その要望に対応する制度が不存在であったことに対する要望
ウチの爺ちゃんも最後は、結構ボケちゃって大変だったからね。
ワカル気がするよ。
私のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんは、まだ元気です。
一緒に、両親の民宿経営を手伝ってくれています。
山菜を摘みに行ったりするのは、専らお祖父ちゃん達です。
判断能力を低下した人達のための制度が、それまで全くなかったというわけではないのよ?
行為無能力者制度というものはあったの。

ただ、この制度には幾つかの問題点があったのよね。

例えば、かつては「禁治産者」、「準禁治産者」といった名称がつかわれていたんだけど、この名称が差別的であると言われることもあったそうね。
因みに、「禁治産者」とは読んで字のごとく「財産を治めることを禁止された者」という意味なんだけどね。

他にも、禁治産者であるためには「心神喪失の状況」にあることが必要だったんだけど、この証明には精神科医の鑑定が必要だったの。
ところが、その鑑定料の相場は50万円と多額のものだったみたいね。
また、鑑定を得て、申立てしても、結論が出るまで早くて6ヶ月、場合によっては1年以上かかることさえあり、これらの多額の費用や、手間がかかるという点も問題として挙げられるわね。
確かに、そんな制度じゃ意味ない気がするね。
ウチの爺ちゃんを保護するのに50万円も鑑定料いるって言われたら、そんなの払えないって思うしなぁ・・・
そこで、この行為能力制度の問題点を改善した成年後見制度が成立したのよね!

成年後見制度の三大理念は、制度趣旨として、抑えておいてね。

つ目は、ノーマライゼーション
聞いたことあるよね?
これは、障害を持つ方でも、家庭や地域で、通常の生活を送れるような社会を築いていこうという考え方よね。
従来は、「禁治産者」という名称に表されているように、能力を剥奪しての保護という形をとっていたんだけど、そうではなくって、能力を奪わずに、ある能力を引き出しながら支援していこうという考え方に変わったのよね。
ウチの爺ちゃんも、物覚えは曖昧になっていたけど、最後までコッコの世話(養鶏)はしてくれていたんだよ。
父ちゃんも、すっごい助かるって喜んでいたからね。
  素敵なお爺さんだったんですね。
あたしの妹の小(チイ)と、コッコ(鶏のこと)を、しょっちゅう間違えていたけどね。
あぁ、爺ちゃん面白かったなぁ。
サルのお爺様は、私も子供の頃にお会いしたから覚えているわよ。
ゆで卵下さったり、五平餅を焼いて下さったわよね。優しいお爺様だったわよね。

今、サルが言ったサルのお爺様みたいに、能力が低下した場合にも、その人の残存している能力を、その人の意思に応じて活かしてもらおう、という考え方からは、つ目の自己決定権の尊重、という理念があるわね。
この自己決定権の尊重には、もう1つの意味があるわ。
それは、まだ能力のあるときに、能力低下後、あるいは、能力喪失後の生活を、あらかじめ自分で決めておき、その決定を実現させる、ということね。

つ目の理念としては、身上保護の重視という考え方があるの。
財産のみならず、生活支援・自立支援を重視するというものね。
これは、生活の質の維持・向上を目指すことを目的としているわね。
なんか今日の光ちゃんの話、あんまり法律の勉強っぽくないけど、聞いてて、うんうんって感じするね。いいこと言うじゃない!
別に、私が言ってるわけじゃないけどね。

ただ、成年後見制度の理念は素敵だよね。
人は誰しも必ず老いるものなんだから、この理念達成は他人事じゃないよね。誰しもが自らが当事者になることを思えば、この理念にかなった制度になるように社会全体で働きかけていくことが大事よね。

この成年後見制度・・・すなわち、成年後見関連4法(成年後見法、任意後見法、後見登記法、関係法律整備法)と、介護保険法は、いずれも平成12年4月1日から施行されたのよ。

成年後見制度の特徴は、大きく次の4つね。

1.任意後見制度の導入と、法定後見に対する優位性
 任意後見制度については、また後でまとめるつもりだから、そこで確認することにしましょ。

2.法定後見への新たな類型の追加
 従来の「禁治産者」を「後見」、「準禁治産者」を「保佐」に改めると共に、新たに「補助」という類型を加えたの。
 因みに、名称が変更されただけでなく、さっき言った理念に基づいて、「後見」、「保佐」でも、本人の日常生活に関する行為は、単独で行えるようにする等、自己決定権を尊重したものとなっているのよ。
 このあたりについても、また後で勉強しましょ。

3.後見制度の充実
 かつては、後見人、保佐人などの保護者になれるのは自然人だけだったのね。でも、新法では、これを、社会福祉事業を行う法人でも就任できることとしたのよ。
 さらに、必置ではないけれど、全ての類型(「後見」、「保佐」、「補助」)監督人が設けられるようになったの。

4.成年後見登記制度の新設
 これまでの戸籍の記載を廃止したの。
 これは、戸籍に対する風潮が強かった社会背景を受けてのものね。よく「戸籍を汚したくない」といった言葉があるじゃない。そうした家族の意識から、行為無能力者制度の利用を嫌がる家族もいたみたいね。
 今は、戸籍ではなく、「後見登記等ファイル」に登記するという制度になっているわ。
なんか、質問も条文確認も、判例検討もないまま終わっちゃいそうなんだけど・・・
こんな楽でいいの?
今日は、制度趣旨と、目的について把握してくれればいいわ。
それぞれの類型の内容については、ひとつずつ抑えていくからね。
  ひとつずつ?
後見、補助、保佐・・・全部やるの?
特に大きな論点があるわけでもないから、大丈夫よ。
それぞれの制度の内容について抑えてくれればいいわ。
少し予習しておけば、確認する流れになるから楽だと思うわよ?
  ソレって、つまり、予習してこないとキツいわよ?
って言ってるの?
予習は当然の前提だから、私はして来いなんて言わないけどね・・・  
  「命令」してくれよ・・・「やって来い!」って、命令してくれるのなら、そうすりゃあ、勇気がわいてくる。
あんたの命令なら、何も怖くないんだ・・・
予習のナニが怖いってのよ?
して来ないことが怖いのなら、やってくればいいだけでしょ? 
 
・・・JOJOのナランチャ?
また、えらくマイナーな台詞を真似されているです・・・

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