ごめんねぇ。購買が少し混んでたから。 えーっと、失踪宣告制度が取り消された場合の効果の例外の2つ目からかな? ちょっと現存利益についての説明で、時間とられたせいで予定が狂ちゃったね。 でも、現存利益については、他の条文でも必要な知識になるから、しっかり把握しておくという意味では、やっとかないといけないしね。 あ、購買行ったときに、黒田さんに会っちゃた。 失踪宣告の取消の例外について勉強してるって言ったら、一緒に聞きたいって来ちゃったけど、いいよね? |
||
あ、お邪魔します。 |
||
あ、黒田先輩。 お疲れ様です。 |
||
誰にも、今の私は止められないよ!? やる気まぁぁぁっくす! |
||
『ネージュ・ブロンシュ』(洋菓子店の名前)のシュークリームかかってると元気みたいね。 ホント現金なんだから。 |
||
さぁ来い、さぁ来い! シュークリ・・・じゃない失踪宣告制度の取消例外の2つ目、さぁ来いっ!! |
||
まずは、確認の意味でもう一度条文を読みましょう。 失踪宣告の取消は、民法第32条だったよね。 はい、六法ひいて。 |
||
民法第32条!! 『(失踪の宣告の取消)第32条第1項 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。 第2項 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。』 |
||
まぁ、早いこと。 例外の1つ目は、条文としては32条2項但書の話だったのよね。 今から話す例外の2つ目は、32条1項後段の話なの。 例外の2つ目。 失踪宣告『の取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。』(32条1項後段) ってあるわよね。『善意でした行為』とあるんだけど、この『善意』が、行為の両当事者にいるのかどうかが問題となるのよ。 この問題を理解する上で、まず、下の図を見てくれるかな。 |
||
失踪宣告を受けていたサルの失踪宣告は、その後サルによって取り消されたの。 でも、失踪宣告の取消前に、相続人のナカちゃんは、サルの不動産(青い家)を既に売却しちゃってたのよ。 ナカちゃんから、不動産を買った黒田さんも、その後、私にその不動産を売って、今、サルの青い家は私のもとにあるって事案を考えてみて。 32条1項後段は、善意でした行為については、失踪宣告取消の効果は及ばない、としているわね。 通説・判例は、この「善意」は、ナカちゃんと黒田さんの両方(相続人・譲受人双方)に必要であるとしているわ(「双方善意必要説」大判昭13.2.7)。 |
||
ってことは、失踪宣告取り消し前に、ナカたんとクロちゃんが、私が本当に生きているという事実を知らず(=善意)に、私の家を売却処分しちゃった場合は、私が、その後で失踪宣告を取り消しても、2人の処分行為には、なんも影響しない(32条1項後段)ってことだね! | ||
そう! この相続人・譲受人の双方に善意が必要であると考えるのは、知らない間に財産を取られてしまう失踪者を保護するためなのよ。 だから、サルの失踪宣告について、ナカちゃんだけが悪意でも、黒田さんだけが悪意でも、いずれの場合も、処分行為は失踪宣告取消によって無効となるから、サルは返還請求ができるということとなるわね。 |
||
よくワカッタんだけど、上の図には、なんで光ちゃんもいるの? 関係なくない? |
||
関係ないのなら、わざわざ私を図に入れないわよ! 旧司の択一の問題があるから、上の図を使って考えて欲しいから用意したのよ。上の図を使う場合は、( )内の名前を優先して、質問を読んでみてね。 質問 『A(サル)が失踪したので、A(サル)の妻B(ナカちゃん)の申立てによりA(サル)の失踪宣告がなされた。 ところが、A(サル)が生存していることが判明し、失踪宣告が取り消された。宣告の後で取消の前に、B(ナカちゃん)がA(サル)の土地を相続したとして、C(黒田さん)に譲渡し、C(黒田さん)がさらにその土地をD(私)に譲渡した場合、A(サル)の生存につき、、B、C(ナカちゃん、黒田さん)が善意であるときは、D(私)が悪意であってもA(サル)に対し、その土地を返還する必要がない。』 (旧司63年択一問題 ( )内管理人編集) ○ か × か? |
||
むぐぐぐぐ・・・ あたしの奥さんのナカたんも、そのナカたんから家を買ったクロちゃんも善意なのに、クロちゃんと売買した光ちゃん(転貸人)は悪意なわけか・・・ なんか、あたしが本当は生きてること知ってた光ちゃんには、あたし的には返せって言いたいなぁ。 となると、返還する必要がない・・・って聞いているから「×」ってことになるわけかなぁ。 |
||
私も、藤先輩と同じように考えます。 処分行為の効力は、当事者ごとに、相対的・個別的に決めるべきではないかと思います。 善意者に対しては無効の主張はできないけれども、悪意者に対しては無効主張ができると考えますので、明智先輩が「悪意」であるならば、藤先輩は、明智先輩に対しては返還請求できると思いますので、質問の答えは「×」だと思います。 |
||
通説的理解に立てば、B(ナカちゃん)とC(私=黒田)の双方が「善意」である以上、Cは確定的に権利を取得しているのですから、その後の転得者であるD(明智さん)が「悪意」であったとしても、C(私=黒田)から有効に権利取得できることとなるといえます。 したがって、質問の答えは、Dは土地を返還する必要がないといえ「○」になるのではないかと。 |
||
質問の正解は、黒田さんの「○」になるわ。 通説的立場とは、絶対的構成説のことを意味するんだけど。 この絶対的構成説によれば、質問のような事案において、BC間が双方善意であれば、転得者が悪意であっても保護されるという結論になるのよ。 このような考え方をとる理由は、法的安定の早期解決のためであると説かれるわね。 対して、ナカちゃんのような考え方を、相対的構成説と呼ぶわ。処分行為の効力を、相対的・個別的に考える為、例え、BC間双方が善意であったとしても、転得者が悪意であれば保護されないということになるの。 確かに、相対的構成説は、悪意者から失踪者本人を保護するという見地からは優れていると言えるけれど、失踪宣告制度の趣旨が失踪者の周囲の利害関係人の法律関係の確定にあることを考えれば、通説である絶対的構成説の理解が合致するんじゃないかと私は思うわ。 |
||
ヤバス。 間違えたのは、やる気見せる上では不利に働くんじゃね? |
||
藤さんが間違えたのは、明智さんの問題の出し方が悪いからです。 藤さんを失踪者本人の立場で問題設定されてみえるので、藤さんが客観的な視点を奪われてしまって、答えられる問題もミスリードされてしまったのだと思いますよ? |
||
クロたんの言うとおりだお! あたしなら、この問題は容易に答えられたはずだお! くぅぅぅ。 あたしのやる気を削ぐような真似したことは許せないよぉぉ? ね? ね? 光ちゃん! |
||
へぇ〜。容易に答えられたねぇ〜。 発奮材料になればと、シュークリームの約束までしている私が、あんたのやる気を削いでいるんですか、そうですか。 それじゃ、あんたのやる気を見せるラストチャンスよ! 失踪宣告の取消の効果(32条1項後段)は、身分行為に及ぶか? という論点について検討しましょ! |
||
こくこく (相槌) |
||
この身分行為に対しても、32条1項後段は適用されるのか? という問題は、具体的には、残された配偶者の再婚という場面で問題となるのよ。 上の図を、再利用しちゃうけど。 サルが失踪宣告を受けた本人。 ナカちゃんが、サルの奥さん。 ここまでは同じで・・・。 黒田さんを、ナカちゃんの再婚相手だって考えてみて。 つまり、サルは元夫。 サルの元妻のナカちゃんは、黒田さんと再婚してしまったって事案ね。 |
||
身分行為に対しても、32条1項後段が適用されると考えると、元妻及び再婚相手の新しい夫双方の善意・悪意が問題になると思います。 判例の立場である双方善意必要説をとるならば、元妻・新しい夫双方が善意であれば、失踪宣告の取消の効果は、善意でした行為の効力には影響を及ぼさないので、再婚は有効となり、この場合は、前婚は復活しないことになります。 |
||
ちょ、ちょ・・・ その元妻、新しい夫の両方が善意であれば問題ないよ? でも、NTRだったらどうなんの? つまりさぁ、クロちゃんが、あたしが生きてること知って(=悪意)て、ナカたんをあたしから寝取る気満々で再婚しかけてきた場合は、これ問題じゃない? あたしとしては、勝手に死亡扱いされた上に、戻ってきてみたら、奥さんがNTRじゃ、色々許せないんだけど? |
||
NTR? すみません。私の勉強不足で、今、藤さんが口にされた言葉の意味を把握しかねるのですが・・・ ただ、現在は、身分行為に対しては、32条1項後段は適用されないと考える説が有力なので、私はそのように理解していますけど・・・。 |
||
そうですね。 黒田さんが御指摘して下さったように、今は、身分行為に対しては、32条1項後段は適用されないと考える説が有力ですよね。 ただ、ナカちゃんのように身分行為に対しても、32条1項後段が適用されると考える説もあるからね。それは、かつての通説ではあったの。 その考え方だと、元妻・新しい夫の双方が善意の場合は、取消の効力は及ばないので、前婚は復活せず、後婚(再婚)のみ有効となる、そこまではナカちゃんの言うとおりよ。 問題は、いずれかが悪意の場合よね。 この場合は、取消によって、前婚が復活することとなって、元妻が再婚しているために、重婚状態となってしまうのよ。 この重婚に対しては、前婚については離婚原因があり、後婚(再婚)については取消原因があるとされるわ。 そして、前の夫と離婚するか、後の夫との婚姻を取り消すかは、妻に委ねる、と考えるのよね。 |
||
え? 私が、藤先輩と黒田先輩との間で、板挟みになってしまうじゃないですか・・・。 困ります・・・。 |
||
ナカたん! 戻ってこい! 戻ってこい! 許してやっからよ! |
||
ソコ! 配役に感情移入しない! そうなのよね。今のナカちゃんの置かれた状況は、元妻にとっても酷よね。確かに、そんな状況になったら元妻は困ることになってしまいそうだよね。 そこで、現在の有力説は、黒田さんの言われたように、身分行為に対しては、32条1項後段は適用されないと考えるのよね。 この説に立てば、再婚当事者の善意・悪意にかかわらず、前婚は復活せず、後婚(再婚)のみ有効と考えるわけ。 この結論は、後婚の絶対的保護による身分関係の維持から導かれる帰結であるとも説かれるわね。 後からした婚姻を有効と見る理由としては、いかなる理由があったにせよ、妻を長期間放置したという事実はあるのだから、その事実は事実として受け止めて、後婚を認めよ、とする考え方に基づくとされているわ。 |
||
でも、あたしが実は無人島に漂着してて、連絡もとれない状況で、ずっと、その島で独りぼっちで、ナカたんとの再会だけを心の支えに生きてきたとしたら・・・ | ||
ふ、ふ、藤先輩・・・ | ||
なのに、ようやく妻に会えると家に戻ってみれば、そこにはクロちゃんが、あたしの使っていた食卓で、ナカたんと楽しく新婚生活を送っていたとしたら・・・ さらに、2人の間には、あたしとナカたんが恵まれなかった子供までいたとしたら・・・ |
||
私、別れます!! 藤さんの奥さんを・・・いえ、藤さんの幸せを奪うような真似は私には出来ません! 早く、この食卓に戻って来て下さいっ!! |
||
あなた・・・生きていたんですね・・・ | ||
藤さん・・・ | ||
ああ・・・・・・帰ってきたよ・・・ ナカ・・・ |
||
三文芝居やりきって、ドヤ顔するのはやめてくださぁ〜い。 話聞いてた? 『いかなる理由があったにせよ、妻を長期間放置したという事実はあるのだから、その事実は事実として受け止めて、後婚を認めよ』って考え方に基づくものって説明したでしょ? 『いかなる理由があったにせよ』! はい、ここ声に出して3回読むっ!! |
||
いやいやいや、コレきついよぉ。 あたし、自分の立場で考えたら、NTRなんて身悶えしちゃうよ。 認められるわけないよ! |
||
気持ちをワカラナイわけじゃないわよ。 ただ、理解としては、現在の有力説は抑えておくべきかなぁ、って。 しかも、この考え方(身分行為に対しては、32条1項後段は適用されないと考える説)は、家族法改正要綱でもとられているからね。 感情的な問題はおいといて、理解はしておくべきよ。 |
||
うう・・・なんかやり切れない・・・。 | ||
難しい問題ではあるもんね。 そこまでサルが考えてくれたのなら、この配役はアタリだったかな? |
||
まぁ、それはそれとして! さぁ、頑張ったから、『ネージュ・ブロンシュ』(洋菓子店の名前)に行こうよ! みんな楽しみにしてたんだからさ! |
||
あんたの言う「みんな」って、誰と誰のこと言ってるのよ? 少なくとも、私はドッチでもいいって思ってるから、入れて欲しくないわよ? |
||
あたしと、ナカたんとクロちゃんで、「みんな」! | ||
え? 私も、誘って頂けるんですか? いきなりお邪魔したのに、いいんですか? |
||
遠慮しないでよ! クロちゃんも一緒に行こ、行こっ! |
||
は、は、はい! ありがとうございます。 是非ご一緒させて下さい! |
||
(くっくっく・・・ このメガネを誘うことで、光ちゃんが断りにくくする空気を作り出してくれる・・・ さぁ、光ぅ! 圧倒的多数をもって攻めかかる我が軍の猛威にどこまで耐えれるかな?) |
||
黒田さんが、そこまで喜ばれてみえるのに、なしにするというのは申し訳ないですよね・・・ | ||
いえ、明智さんがお忙しいのなら無理にとは言いません。 私たちだけで行くという選択肢もありますし。 |
||
ちょ、ちょ! (オイ! メガネ!! スポンサー置いて行ったら、誰が会計するんだお! 空気読め、空気っ!) |
||
明智先輩も一緒に来て欲しいです・・・ | ||
っ!! (よし! ナカたん、ナイスリカバーっ! もうひと押しだ!) |
||
ナカちゃん、やだぁ。 別に私、断ってはいないわよ? ただ、サルが約束のシュークリームを御馳走するぐらいに頑張ったのかなぁ? って引っ掛かりがあっただけだから・・・。 |
||
今日の頑張りで足りないなら、シュークリーム御馳走してくれたら次回はもっと頑張るから! | ||
だったら嬉しいなぁ。 うん、じゃあ行きましょ。 せっかく、こうしてみんな揃っているんだしね。 |
||
(バァカァめぇっ! 口約束なんぞ法的には、なんの意味も持たないんだよ。 オマエみたいな法律バカなんて、あたしにかかればチョロいもんだお。 ニシシシシシシシシシ!) |
||
あ、黒田さん、その脇に置いてある録音レコーダー後からお借りできますか? | ||
んみゅ? | ||
あれ? 知らなかった? 黒田さん、いつも勉強会参加される際は、やり取りを録音レコーダーで記録してみえるのよ。 後から復習を兼ねて聞くためにね。 あんたの「次回はもっと頑張るから」って発言、しっかり記録されていると思うわよ? |
||
別に、普段から頑張ってみえる藤さんに、そんな言質とる必要はないと思うんですけど・・・。 | ||
・・・。 (このメガネ、マヂでつかえねぇお) |
||
あら? どうしたの? お楽しみの『ネージュ・ブロンシュ』に早く行きましょ? |
||
・・・。 (こうなったら、店にあるだけのシュークリームかっ喰らってやんよ!!) |
||
わーい、わーい。 お友達とお菓子やさんでケーキなんて、初めてぇー。 ドラマみたいぃー。 |
||
・・・。 (あれ? なんかネコ耳が見える・・・ ショックのあまり幻覚かな?) |
||
失踪宣告が、ようやく理解できたです。 今日は嬉しいです。 |