それじゃ、今日から民法の勉強を始めるわね! 民法って言葉には、2つの意義(定義)があるの。 実質的意義の民法と、形式的意義の民法ね。 実質的意義の民法は、私人間の法律関係を規律する法、つまり、実体私法の一般法を意味するの。 これに対して、形式的意義の民法は、民法典を意味するのよ。 |
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法律なんだから、法典あるのは当たり前なんじゃないの? | ||
ところが、民法の法源(法源=法の存在形式)は、民法典だけじゃないの。 民法の法源は、成文民法としては民法典と民法特別法とがあるんだけど、不文民法としての慣習法、判例法、条理、学説もあるのよ。 |
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判例法っていうのは、なんとなく判例によって確立した法規範かなぁ、って予想つく言葉だけど、慣習法っていのは、なんだお? | ||
慣習法というのは、ある一定の範囲の人たちの間で反復して行われるようになった行動様式などの慣習のうち、法としての効力を有するものをいうのよ。民法は、慣習法の存在を、その条文の中で認めているの。 |
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民法92条・・・。 『(任意規定と異なる慣習)第92条 法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。』 ですね。 |
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ナカちゃん流石ぁ。そうよね。 それじゃ、次は成文民法としての民法典が、どうやって成立したのか、その沿革について簡単に説明しちゃうわね。 そもそも我が国の民法典は、当時明治政府の司法省の顧問であったボワソナードを中心として、フランス民法典を土台として編纂が開始されたの。いわゆるボワソナード民法ね。 ところが、このボワソナード民法は、制定公布はされたものの、各界からの反発を受けて、実施が延期されて、事実上の中止となってしまうのよ。 そこで明治26年、今度はフランス民法ではなくドイツ民法を取り入れた民法典の編纂作業が開始されるのよ。 伊東博文が、この法典調査会の総裁、梅謙次郎、穂積陳重、富井政章の3名が中心となって、この編纂作業にあたったのよ。 そして、明治29年民法典第1〜3編が制定公布。 明治31年民法典第4編、第5編が制定公布され、全編が施行されたの。 でも、太平洋戦争の敗戦によって、日本の憲法は、大日本帝国憲法から日本国憲法に昭和21年にかわったわよね。 この敗戦によって、国そのものの姿勢も大きく変更を求められることとなり、その結果、民法典も昭和22年に改正公布されたの。とくに第4編、第5編ね。 その後は、戦後のような全面改正はなされてはいないものの、同時死亡の推定規定や、根抵当権規定の追加や、相続人・法定相続分等の改正等、ちょこちょこ改正されているわね。 そして、平成16年、民法の現代語化(平仮名・口語体表記)がなされて、今の私たちにとって読みやすい民法典になったわけ。 (中身は殆ど変更ないが、現代語化に伴い幾つか改正点あり) この沿革から分かると思うんだけど、現在私たちがつかっている民法は、明治時代の第1〜3編と、戦後に作られた第4、第5編とによって成り立っているってことよね。 |
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に、に、日本史はダメ・・・ 法律の勉強で、歴史の話なんて反則だお・・・ |
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歴史っていう程の話なんてしていないじゃない。 大袈裟なんだからぁ。 民法典は、全体として今の説明のとおり5編から成っているの。 内訳は 第1編 総則(1条〜174条の2) 第2編 物権(175条〜398条の22) 第3編 債権(399条〜724条) 第4編 親族(725条〜881条) 第5編 相続(882条〜1044条) 私たちが、この民法(総則)で学ぶのは、この第1編の部分ね。 そうそう。民法は、パンデクテン方式という手法が用いられているの。 このパンデクテン方式というのは、共通の準則としてまとめることができるものについては、できるだけ一つにまとめる、という手法なの。 この手法の特徴は、@条文の数を節約できる、A法の適用にあたり、論理的に一貫した法的思考を助けられる、B民法全体から見ての個別事項の矛盾の発見・回避に優れている、ことと言われているわ。 |
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条文が4桁もあるなんて・・・ やる前から戦意喪失しちゃうお。 |
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なに始める前から戦意喪失しちゃってんのよ! 因みに、ここで勉強する第1編・民法総則は、構成からは民法全体の通則的位置にあるんだけど、実質的には民法財産編(第2編および第3編)の通則なのよね。 だから、特別の規定のない限り、第4編、第5編(とくに身分行為)には適用されないってことは覚えておいてね。 第1編〜第3編は財産法、第4編と第5編を家族法って呼ぶから、そのことも覚えておいてね。 第1編・総則の構成は、次のとおりよ。 第1章 通則 第2章 人 第3章 法人 第4章 物 第5章 法律行為 第6章 期間の計算 第7章 時効 条文がどこにあるかを把握する意味でも、章建てを最初に確認しておくのは有益なことよ。 |
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(コクコク)(相槌) | ||
(ナカたん真面目だなぁ。 どうしよ・・・あたし、既に帰りたひ・・・) |
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サルっ! 目が死んでるわよ! 総則は、物権法や債権法と比べると、ちょっと話が抽象的なことから退屈なこともあるかも知れないけど、なるべく分かりやすいように説明するつもりだから、もー少しやる気見せなさいよ! じゃあ、最後に民法上の権利、その分類を説明して終わるわね。 民法上の権利は、社会生活において、私的な生活利益を享受しうる私的な力をいうの。この権利を私権というのよ。 憲法などで学ぶ公法上の権利とは異なるから注意してね。 私権は、作用的分類、内容的分類との2つに大別されるわ。 作用にもとづく分類として 1.支配権(典型は物権。人格権や無体財産権も支配権に属する) 2.請求権(典型は債権。) 3.抗弁権(同時履行の抗弁権、催告・検索の抗弁権など) 4.形成権(取消権、解除権など) 5.管理権(不在者の財産管理人の管理権など) 内容にもとづく分類として 1.人格権(名誉、プライバシー権、肖像権など) 2.身分権(夫婦の同居請求権、親の親権など) 3.財産権(所有権、抵当権等、 債権、損害賠償請求権など 特許権など) 内容については、民法や他の法律の勉強の中で、どのようなものかが自ずと分かってくると思うから、今は、私権と一口にいっても様々な権利があるんだなぁ、そして、これらの権利が作用と内容とで分類されるんだなぁ、くらいでいいわ。 |
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了解っ! なんかよくワカラナイ権利が、やたら一杯あるって覚えたよ! |
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藤先輩・・・ | ||
あんた、ナカちゃんフリーズさせるような発言してんじゃないわよ! でも権利の中身は、それぞれの関連で一緒に理解していったほうがいいと思うから言葉だけ覚えることもないわよ。 |
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(じゃあ、怒らなくってもいいじゃないの・・・) | ||
ナニ? なんか言いたそうな顔しているけど。 |
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ううん。 あたしは、今、民法っていう長い道の扉の前に立ったんだ・・・って感慨に耽っていたんだお! |
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ふぅ〜ん。 |
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(まったく信用してない目ぇしてるよ・・・この人・・・) |