最判平成13年11月22日 
前回集合動産譲渡担保判例検討同様、事案を丁寧に読み込んで、判例理解に努める・・・という形にしたいって思っているわ。

大丈夫。
もう、これくらいの判例なら読み込めるようになっていると、私は信じているわ。
   ・・・どうだろ。
先ずは、原審適法に確定した事実関係の概要から、本件訴訟での争いが、ナニを巡る、どのような争いか、ということについて把握しましょうか。

それじゃ、前回判例同様、最高裁判決文から、原審が適法に確定した事実関係の概要からね。
1 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1)株式会社ベストフーズ(以下「ベストフーズ」という。)は,上告人との間で,平成9年3月31日,株式会社イヤマフーズ(以下「イヤマフーズ」という。)が上告人に対して負担する一切の債務の担保として,次の内容の債権(以下「本件目的債権」という。)を上告人に譲渡する旨の債権譲渡担保設定契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
ア 債権者 ベストフーズ
イ 債務者 株式会社ダイエー(以下「ダイエー」という。)
ウ 債権  債権者が債務者との間の継続的取引契約に基づき、(ア)平成9年3月31日現在有する商品売掛代金債権及び商品販売受託手数料債権,(イ)同日から1年の間に取得する商品売掛代金債権及び商品販売受託手数料債権

(2)本件契約においては,約定の担保権実行の事由が生じたことに基づき,上告人が第三債務者であるダイエーに対し譲渡担保権実行の通知をするまでは,ベストフーズが,その計算においてダイエーから本件目的債権の弁済を受けることができるものとされている。

(3)ベストフーズは,ダイエーに対し,平成9年6月4日,確定日付のある内容証明郵便をもって,債権譲渡担保設定通知(以下「本件通知」という。)をし,同通知は同月5日にダイエーに到達した。同通知には,要旨,「ベストフーズは,同社がダイエーに対して有する本件目的債権につき,上告人を権利者とする譲渡担保権を設定したので,
民法467条に基づいて通知する。上告人からダイエーに対して譲渡担保権実行通知(書面又は口頭による。)がされた場合には,この債権に対する弁済を上告人にされたい。」旨の記載がされていた。 

(4)平成10年3月25日,ベストフーズが手形不渡りを出したことにより,イヤマフーズは上告人に対する債務の期限の利益を喪失し,本件契約において定める担保権実行の事由が発生した。上告人は,ダイエーに対し,同月31日,書面をもって本件譲渡担保設定契約について譲渡担保権実行の通知をした。同書面に確定日付はない。

(5)被上告人国は,平成10年4月3日付け及び同月6日付けの差押通知書をダイエーに送達して,同年3月11日から同月20日まで及び同月21日から同月30日までの商品売掛代金債権及び商品販売受託手数料債権(以下「本件債権」という。)について,ベストフーズに対する滞納処分による差押えをした。

(6)ダイエーは,平成10年5月26日,本件債権について,債権者を確知することができないことを理由に,別紙供託目録記載のとおり,被供託者をベストフーズ又は上告人とする供託をした。

(7)ベストフーズは,平成10年6月25日,破産宣告を受け,被上告人馬橋隆紀はその破産管財人である。

2 本件は,上告人が,被上告人らに対し,本件債権の債権者であると主張して,上告人が別紙供託目録記載の弁済供託金の還付請求権を有することの確認を求めている事件である。
因みに、原審は、次のような判断の下、上告人の本訴請求を棄却すべきものとしたのよね。
判決文は、次のものだったわ。

(1)本件通知には,ベストフーズがダイエーに対する債権につき上告人のために譲渡担保権を設定したとの記載があるが,これに続けて,上告人からの別途の通知があった場合には上告人に弁済することを求めるとの記載もあるから,本件通知は,将来の別途の通知があるまでは,ダイエーはベストフーズに弁済すれば足りることを意味し,それまでの間は,担保権の目的物を消滅させることが認められている。

 したがって,当面は担保権設定による制約を受けない旨通知されていることになる。また,本件通知では,別途の通知があるまでは,債務者ダイエーが担保権設定者である当初の債権者ベストフーズに対する反対債権をもって,譲渡担保権が設定された債務と相殺することも容認しているものと考えられる。

 このことは,当初の債権者(ベストフーズ)の債務者に対する債権の帰属に変化はなく,あくまでも担保権設定者であるベストフーズが債権者であることを意味するものである。

 そうすると,本件通知は,担保権者である上告人に債権が移転したことを通知したものと認めることはできず,債務者が同通知により債権の帰属に変動が生じたと認識することを期待することはできない。したがって,本件通知には,第三者対抗要件としての通知の効力を認めることはできない。

(2)本件契約が,将来,約定の担保権実行の事由が発生し,上告人がダイエーに担保権実行の通知をした時点で,上告人に債権が移転するという内容であったとしても,本件通知をその対抗要件であると認めることはできない。

 本件通知を受けた時点では,担保権実行の事由が発生するか不明であり,実行の通知の有無,時期について全く不確定であるから,このような不確実な将来の事由が生じたら債権譲渡の効力を発生させるということを通知するにすぎない本件通知をもって,第三者に対する対抗要件としての通知の効力を認めることはできない。
えーっと、ここらで、登場人物を、あたし達に置換して関係図を用意してくれないかなぁ、と。
登場人物の人数が、ちょっと多くって私達の人数ではフォロー仕切れないのよね・・・。
でも、確かに事案を理解する上での関係図は必要よね。
というわけで、事案の関係図を下に用意してみたわ。
おおう・・・なんだろ・・・。
自分達に置き換えていないせいか、めっさ難しく感じてまうお。
ソレじゃ事件について少し補足説明を加えるわね。

ベストフーズは、スーパーダイエーに対する現在および将来の債権を、ダイエーOMCに譲渡したわ(譲渡担保も譲渡の一種であるため)。
そして、譲渡人として、スーパーダイエーにその旨を確定日付ある債権譲渡の通知をしたわ(平成9年6月4日発、同5着)。

通常の債権譲渡なら、この時点からダイエーOMCが、新しい債権者になるわけだから、スーパーダイエーの弁済は、ベストフーズではなくって、新たな債権者であるダイエーOMCになされるべきってことになるわよね。
ところが、どっこいって話があるわけだね?
そうね。
この事件での譲渡が、譲渡担保なのが重要な意味をもってくるわけね。

つまり、譲渡担保であるため、譲渡担保の実行・・・すなわち、被担保債権が不履行になって、ダイエーOMCが担保権実行をするまでは、引き続き、スーパーダイエーはベストフーズに、債務を支払えばよいってことになってたわけなのよね。
  成程ぉ、そういうことになるよね。
そうね。
そして、平成10年3月25日。
ベストフーズは手形の不渡りを出してしまったわ。

この手形の不渡りにより、(ダイエーOMCと、イヤマフーズとの間の契約から)イヤマフーズは期限の利益を失い、ダイエーOMCによる譲渡担保実行ができるようになったわ。

そこで、ダイエーOMCは、平成10年3月31日、スーパーダイエーに対して、譲渡担保権実行の通知を行い、以後は譲渡担保とされた債権は、ダイエーOMCに対して支払うようにと通告をしたわけ。
ところが一方、ベストフーズは税金を滞納していたんですよね。

そのため、国(税金滞納ということから税務署)が、平成10年4月3日と、4月6日の2回にわたり、ベストフーズのスーパーダイエーに対する債権のうち平成10年3月11日から3月20日までの分、3月21日から3月30日までの分を、滞納処分として差し押さえたんです。
 この時点では、スーパーダイエーは、3月11日以降の債務を、まだベストフーズに支払っていなかったため)
そうなのよね。

このためスーパーダイエーは、ダイエーOMCと国の両方から債務の弁済を求められて、ドチラに支払ったらいいのかワカラナくなったってことで、平成10年5月26日になって供託をしたのね(民法494条後段参照)。

さらに、この平成10年5月26日には、ベストフーズに対して破産宣告があり、ベストフーズには破産管財人が登場しているのね。

このような事案の本件において、このスーパーダイエーの供託金の還付請求権が、いずれに属するのか、ってことが争われているわけね。
つまり、供託金還付請求権が、ダイエーOMCにあるのか、国(あるいは破産管財人)に属するのか(ドチラが優先するのか)ということが争われた事件なわけ。
  む・・・難しい事件だね・・・。
そうね。
この場合の、ダイエーOMCと国らの優劣を決めるのはナニかってことよね。

国税当局は、滞納処分としての差押さえをしているわ。
他方、ダイエーOMCへの債権譲渡は、債権発生前の平成9年3月31日に行われ、これについては平成9年6月4日に、確定日付のある通知が、債権譲渡人ベストフーズから、債務者スーパーダイエーに対してなされているわけよね。ただ、その後は確定日付のある通知にあたるものはないのよね。

そのため、ダイエーOMCとしては、この平成9年6月4日の通知をもって、国に対抗できるのか、ってことが問題になったわけね。
この問題について原審は、平成9年6月4日の通知時点においては、まだ国が差し押さえた債権(平成10年3月11日から3月31日までの分)は発生していなかったのだから、この通知をもっては民法467条にいう債権譲渡の通知にはあたらず、国に対しては対抗できない、と判断しました。

しかし、最高裁は、この原審の判断を覆す判決をしたわけです。
つまり、結論としては、ダイエーOMCは、平成9年6月4日の通知をもって国に対抗できるって判断をしたわけですね。
そういうことね。
最高裁判決文を確認しておきましょうか。

しかしながら,原審の上記(1)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

(1)甲が乙に対する金銭債務の担保として,発生原因となる取引の種類,発生期間等で特定される甲の丙に対する既に生じ,又は将来生ずべき債権を一括して乙に譲渡することとし,乙が丙に対し担保権実行として取立ての通知をするまでは,譲渡債権の取立てを甲に許諾し,甲が取り立てた金銭について乙への引渡しを要しないこととした甲,乙間の債権譲渡契約は,いわゆる集合債権を対象とした譲渡担保契約といわれるものの1つと解される

 この場合は,既に生じ,又は将来生ずべき債権は,甲から乙に確定的に譲渡されており,ただ,甲,乙間において,乙に帰属した債権の一部について,甲に取立権限を付与し,取り立てた金銭の乙への引渡しを要しないとの合意が付加されているものと解すべきである。

 したがって,上記債権譲渡について第三者対抗要件を具備するためには,指名債権譲渡の対抗要件(
民法467条2項)の方法によることができるのであり,その際に,丙に対し,甲に付与された取立権限の行使への協力を依頼したとしても,第三者対抗要件の効果を妨げるものではない

(2)原審の確定した前記事実関係によれば,本件契約は,ベストフーズが,イヤマフーズの上告人に対する債務の担保として,上告人に対し,ダイエーとの間の継続的取引契約に基づく本件目的債権を一括して確定的に譲渡する旨の契約であり,譲渡の対象となる債権の特定に欠けるところはない

 そして,本件通知中の「ベストフーズは,同社がダイエーに対して有する本件目的債権につき,上告人を権利者とする譲渡担保権を設定したので,
民法467条に基づいて通知する。」旨の記載は,ベストフーズがダイエーに対し,担保として本件目的債権を上告人に譲渡したことをいうものであることが明らかであり,本件目的債権譲渡の第三者対抗要件としての通知の記載として欠けるところはないというべきである。

 本件通知には,上記記載に加えて,「上告人からダイエーに対して譲渡担保権実行通知(書面又は口頭による。)がされた場合には,この債権に対する弁済を上告人にされたい。」旨の記載があるが,この記載は,上告人が,自己に属する債権についてベストフーズに取立権限を付与したことから,ダイエーに対し,別途の通知がされるまではベストフーズに支払うよう依頼するとの趣旨を包含するものと解すべきであって,この記載があることによって,債権が上告人に移転した旨の通知と認めることができないとすることは失当である。

4 そうすると,本件通知に債権譲渡の第三者対抗要件としての通知の効力を否定して上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
 この点をいう論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

 そして,以上説示したところによれば,上告人の本件請求は理由があることが明らかであるから,本件請求を棄却した第1審判決を取消し,これを認容すべきである。

と、しているわね。

最高裁が下した判断についての詳細は、判決文から直接読み取ってもらうってことにさせてもらうわね。
うんうん、賛成、賛成っ!!
(これで判例検討が終わるっていうのなら、あたしは、なんでも賛成っ!!)
サルも、もう判決文をしっかり読むことが出来るようになっているものね。
だおだお。

(なわきゃあるかお! お前の目玉は、節穴かお!!)
・・・。

(藤先輩・・・今の藤先輩の目こそ節穴状態です・・・。
 なんて迷いのない黒目をされているんですか・・・です。)

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