いやぁ、よもやあんな豪勢な御迎えがあるなんて夢にも思わなかったお。 | ||
本日はお嬢様のお友達も大勢おみえとのことでしたからね。 インチストレッチしたリムジン(クライスラー300)を御用意させて頂きました。 |
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民法物権法の勉強会の打ち上げってことで御願いしておいたのよね。 | ||
す、すごい車でした・・・。 私なんかが乗っていいのかしら・・・って心配になってしまうような車で・・・。 |
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ホント凄かったよぉ! チイ、すっごい興奮しちゃったもん! |
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チイは騒ぎ過ぎだお。 幾ら車内が広いからって暴れてんじゃないお。 |
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だってだって、あんな広い車があるなんて知らなかったんだもん! | ||
私なんて靴を脱いで乗らないとダメかと思ったです。 | ||
帰りも、あの車で送るつもりだから、そんな気遣いはいらないわよ。 さてと。 今日は打ち上げってことで、今日までの勉強会を頑張ってくれた、みんなの頑張りに応えたいって気持ちで、私も張り切っちゃったのよね! |
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・・・えーっと、ここはパーティールームなのかな? | ||
左様です。 今日は、お嬢様が皆様方の為にパーティーの御準備をされましたので。 |
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うほほほほほいっ!! いやぁ、流石、光ちゃんっ! あたしの胸の高鳴りがエラいことになってんよ!? |
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そのサルの期待に応えることが出来ると私も思っているわ。 さて、それじゃ先ずは楽しみにしている御料理から運んでもらっちゃおうかしら。 |
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ワーイワーイッ! |
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な、なんだろ・・・和食・・・いや、パーティールームなんだし、洋食なのかな・・・ワクワク・・・。 | ||
まぁまぁ、慌てない、慌てない。 ホラ、いつまで立ってるつもりなのよ。 先ずは座ってくれなきゃ御料理も来ないわよ? |
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ほほほほ。 椅子に座ることが、こんなにも興奮した経験が、かつてあっただろうか・・・。 |
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ワクワクするです。 | ||
そうですね。 | ||
きたぁーーーーっ!!! | ||
お皿に蓋が被さっているよぉ! チイ、こんな風に出てくる料理なんて初めてだよぉ! あ、あ、開けてもいいの? |
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そうね。 ソレじゃ、みんな一斉に・・・。 |
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ごたぁーーいめぇーーんっ!! | ||
・・・っ!! | ||
・・・。 | ||
・・・。 | ||
・・・な、なんだお、コレは・・・。 | ||
よくぞ聞いてくれました! 私、御手製の特別創作料理! その名も「光スペシャル」よ!! |
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・・・ス、スープが紫色をしているよぉ。 | ||
大根とカリフラワーが入っているのが見えるです・・・。 | ||
牛肉と蛸も入っています・・・ね。 | ||
いつも御世話になっている飲食店の一流の料理人の方々に御願いして、お店の味をちょっとずつ頂いてきたのよね。 例えば、老舗割烹料理店の注ぎ足しで引き継いできた持出し厳禁の秘伝の醤油ダレ。 開業以来変わらぬ味が人気のフレンチのシェフからは、デミグラスソース等を御無理を言って頂いてきたわ。 |
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・・・そのタレやソースを、そのまま舐めたいくらいなんだけど。 ま、ま、まさか、お前、そんなお宝を・・・。 |
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勿論、今日の料理には、惜し気もなく使わせて頂いたわ! | ||
ぎょぇぇぇぇぇぇっ!! こ、こ、こいつ、やりよったでぇーーーーっ!!! |
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い、いえ、でもそんな素晴らしい味がベースになっているというのなら、料理の味も安心できるはずですから。 | ||
いやいや・・・だって、このスープの色見てごらんよ。 紫色してんだよ? このアホ、絶対混ぜて使ってるよ・・・。 |
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ええええぇぇぇっ!? | ||
そのままで使うなら、ナニも私が料理することなんてないからね。 それぞれのお店に行って、お食事を楽しめばいいって話になっちゃうわ。 でも、今日は私がみんなに、おもてなしをしたいって思ってのパーティーなんだから、それじゃ寂しいかなって思ってね。 |
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あ・・・あ、アホがおる・・・。 いい? いくら美味しいネージュ・ブロンシュのシュークリームだって、すき焼きの中にブチ込んだら、そんなもの食えたものやないってことくらいアホでもワカルでしょっ!! |
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はいはい。 そういう固定概念や先入観では、新しい味の発見なんて到底できないわよ? あんたのいうシュークリームだって、昔っからあったわけじゃなくってよ? もう、そんな御託はいいから、先ずは口に入れてみなさいよ! きっと感動しちゃうはずだから! |
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・・・。 (た、食べたくないです・・・。) |
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・・・。 (・・・なんか見てるだけなのに目が痛くなってきちゃったよぉ。) |
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・・・。 (・・・た、食べないといけないのでしょうか。) |
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お嬢様、皆様、ご遠慮なさってみえるようです。 | ||
もぉ~。 今日は打ち上げパーティーなんだから、遠慮なんてしないでよ。 さぁ、召し上がれ。 |
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・・・えぇーーいっ!! 喰ったらぁぁぁぁぁあっ!! |
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パクッ! | ||
・・・こ、こ、これは・・・。 | ||
・・・。 | ||
まじぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! | ||
もう、サルったら。 「マヂ!?」なんてぇ~。 信じられないってこと? うんうん、そうよね。 狭い了見に囚われていたサルには、驚きの味でしょうね。 |
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いやいや、コレ、マヂでヤバいからっ!! | ||
うんうん。 私は、あんまりそういう表現は好きではないんだけれど「ヤバい」ってことは「すっごくいい」って意味よね。 ちょっとぉ。 ベタ褒めじゃないのよぉ~。 |
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・・・。 (と、と、とんでもない味がするです・・・。 な・・・なんで、こんな滅茶苦茶な味になっているのか逆に知りたいくらいの味です・・・。) |
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・・・。 (・・・魚醤(ナンプラー)? こ、これはクミン? ・・・八角(パージャオ)まで入っていますね・・・。 せっかくの調味料が喧嘩し合ってしまっています・・・。) |
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なんでだろ・・・チイ、食べ物食べて涙が出てきたなんて初めてだよぉ! | ||
ソレは感動の涙よ、チイちゃん。 「感涙」って言葉があるでしょ? 人は、思いがけぬ感動に心が打ち震えると涙を流すことがあるのよね。 |
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断言してやんよ! 絶対違うってなっ!! |
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もうっ。 まだスープしか出てないじゃないのよ。 まだまだメインディッシュもサラダもデザートもあるのよ? いつまでもスープの味に感動していないで、どんどん食べちゃってよ。 チイちゃん? 今日は、チイちゃんやサルの為に、たぁーくさん用意しておいたから遠慮なく食べてくれていいんだからね? |
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お嬢様は、皆様の笑顔を楽しみに、ここ数日仕込みにも余念がございませんでしたからね。 | ||
そうよねぇ。 私の持つ古今東西のあらゆる料理の知識を総動員して、どうやったら美味しい料理が出来るのかってことを、様々な本を読んで調べたからねぇ。 |
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いや待て! 本見る前に、味を見てくれお!! そもそも、創作料理をする以前に、光ちゃん、まともに料理したことなんて、あるの!? |
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「論より証拠」じゃなくって? 今、サルが口にした料理が、その答えをナニよりも雄弁に物語ってくれていると思うわよ? どう? 美味しいでしょ? |
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・・・マヂでブン殴ってやりたくなったお。 | ||
藤さんっ! いくら御友人とはいえ、そのような発言は聞き逃せませんよ? |
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あ・・・いや、あの・・その・・・そだ!! し、柴田さんも、この料理を食べてみておくれお! あたし達の気持ちが理解できるって思うから!! |
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わ、私も御嬢様の料理を? | ||
うんうんうんうん! こ、このスープを飲んでみれば、今のあたし達の気持ちがスッゴいよくワカルはずだからっ!! |
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は・・・はぁ。 | ||
そうよね。 柴田さんにも、この光スペシャルは食べて欲しいわね。 ソレじゃ、コレ柴田さんの分のスープね。 さぁ召し上がれ。 |
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・・・。 (っ!!! コ、コレは・・・っ!!) |
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さささ。 ググっと、いきんしゃい、いきんしゃい。 |
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・・・。 (刑事として、明智家SPとして、数々の現場に臨場してきた私の第六感が告げています・・・。 コレは『危険』・・・だと・・・。) |
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柴田さん、どうしたんだお? はよ、いきんしゃい、いきんしゃい。 |
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お・・・御嬢様っ! も、申し訳ございませんっ!! わ、私は、目下お嬢様の警護中であることを失念しておりました! た、大変に食欲をそそる御料理ではありますが、仕事中の身であれば、その職務を怠って食事を摂るわけには参りません! |
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ちょっ、おまっ!!! | ||
柴田さん、そんなこと気にしなくっていいのに。 もう、ホント柴田さんは生真面目よねぇ。 |
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ええ・・・本当に残念です・・・。 せっかくの御嬢様の御料理・・・口にしたいのは山々なのですが、私が御嬢様の御料理を口にしている際に、何か起きたらと思うと。 職務さえなければ、今すぐにでも食べたいくらいの気持ちなのですが・・・。 |
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し、柴田さん・・・いつも、そんな気持ちで私のことを守ってくれていたのね。 | ||
ち、ちがっ!! 柴田さん、ズルいっ!! ナニ、その取ってつけたような言い訳はっ!! |
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ただ口にせずとも分かります。 断言致します! この御料理は、間違いなくオンリーワンの存在であると! |
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柴田さん・・・その言葉だけで私は満足だわ。 ありがとう。 最高の褒め言葉だと思うわ。 |
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いえ。 嘘偽りのない私の思いです。お嬢様。 |
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・・・。 (絶対、「不味い」という一点においてオンリーワンって意味で言っているです・・・。) |
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き、汚いお・・・。 大人って汚いお・・・。 |
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もうサルったら、わけのワカラナイことばかり言ってぇ。 さぁ、ソレじゃパーティー再開よね。 みんなが喜ぶ御料理は、まだまだあるからね。 遠慮なくどんどん食べてよね! |
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・・・地獄の晩餐会だお・・・。 | ||
・・・さ、さぁ、皆様方・・・。 お、お嬢様の特製料理は、ま、まだまだありますからね・・・。 |
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柴田さん、大丈夫よ? いつも御世話になっている柴田さんの分は、実はちゃんと前もって残してあるのよね。 帰られる際に御土産にしてくれると嬉しいわ。 |
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・・・はぅっ!! きょきょきょきょ・・・きょ、恐縮ですっ!!! |
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・・・。 (「腹ペコモンスター」のチイちゃんの食欲を奪い、あの怖いもの知らずの柴田さんさえをも怯ませる光スペシャル。 おそるべし・・・です。 ・・・って言うか、明智先輩は、どうして料理される際に味見をしてくれないですかっ!!) |