次回の勉強会からは、民法物権編最後の砦・・・譲渡担保について学ぶことにしたいと思っているわ。 ただ、その前に非典型担保についての、おさらいをしておこうかと思ってね。 |
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ってことは、イントロみたいな感じ? | ||
うーん、まぁ、イントロってより補講ってことで・・・まぁ、付録みたいな位置付けになるかな。 だから読み飛ばしてくれてもいいし、付録とは言え、付録目的にナニか買うってことも往々にしてあるわけなんだから、大事に読んでくれれば、ソレなりに得るものもあるって感じで。 |
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・・・そんな風に言うんだったら、勉強会ってことにしちゃえば、いいじゃないの。 | ||
まぁ、非典型担保については、どこまで説明したものか迷ってね。 譲渡担保については、しっかり紹介したいって思っているんだけれど、その他の非典型担保についても、一応軽く紹介しておこうかなって思ってね。 そういう意味で補講ってことにしたわけ。 |
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なんか、よくワカラナイけど、やるならとっとと始めちゃおっか。 | ||
そうですね。 せっかく、こうして皆さん揃っているわけですし、いつもと同じ姿勢で聴かせて頂きたいって思ってます! |
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そう言われちゃうと、私も身が引き締まるわね。 じゃあ、いつもの勉強会同様、真面目に頑張っちゃうわね! |
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あら・・・なんか余計なこと言うたんやないの? クロちゃん・・・。 |
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そんなことないですよ。 どうせやるのなら真剣に・・・って気持ちは大事だと思います。 オマケくらいって気持ちで聴くのと、勉強会って気持ちで聴くのとでは得るものも違うはずですからね! |
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・・・真面目か! |
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つかさちゃんは、いつも真面目じゃないのよ。 ナニを今更なこと言ってんのよ、サルは。 さて、我が国では、早くから債権担保のために、民法に規定された質権や抵当権でなく、別の制度を利用して債権担保の効力を上げようとする方法がとられてきたのよね。 コレが非典型担保と呼ばれるもの・・・ってことは、担保物権のイントロでも説明したとおりよね。 |
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・・・うーん、だったっけ? | ||
教えてもらったです! 藤先輩が、いつものように忘れているだけです! |
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そうよね。 この非典型担保には、具体的には次のようなものが行われているのね。 第一に、債権担保のために、ある財産権を債権者に移転する、というものがあるわ。 名目的には売買契約をするんだけれど、契約の時に当事者間では、債務が弁済されれば移転された財産権が、また債務者に戻るけれども、弁済されなければ、その財産権を確定的に、その債権者に帰属させることが約束されているわけね。 これを、譲渡担保というわ。 この譲渡担保については、最初にも言ったように、しっかり勉強会を割いて学ぶことにするわね。 |
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うぇーーーっ!! | ||
なんて声あげてくれるのよ! えーっと、第二に、あらかじめ所有権を移転するわけではないんだけれど、期限に債務者が弁済をしなかったら、その目的物の所有権を、債権者に移転することを約するものがあるわ。 形式としては代物弁済の予約とか、売買の予約という形をとるわね。 この場合は、債権者としては、将来の所有権取得を確保しなければならないことになるわ。だって、途中で第三者に売却されてしまっては困るわけだからね。 だから、その目的物は、不動産とし、仮登記(不動産登記法105条2項参照)によって、その権利を保全することになるわ。 そのため、コレを仮登記担保というのね。 この仮登記担保については、1978年に「仮登記担保契約に関する法律」が制定されているわね。 |
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こくこく(相づち)。 |
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この他にも、債務者が第三者に対して有する債権の取立ての権限を債権者に与える代理受領。 銀行が取引先の預金を貸付金の担保とするときにつかう相殺予約なども非典型担保の一例として挙げることができるわね。 |
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結構色々あるんだね、非典型担保。 | ||
そうね。 他にもあるんだけれど、まぁ、これくらい抑えておけばってところかしらね。 ソレじゃ、この流れで、譲渡担保と仮登記担保について簡単に紹介していくわね。 |
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・・・この流れって、どの流れだお・・・。 あたし的には、この流れで終わってくれても、ええんやけど。 |
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まだ始まったばかりじゃないですか。 | ||
そうよね。 さて、非典型担保は何故行われるのか?ってことから話しましょうか。 この理由については、以前のイントロでも軽く触れているんだけれど、おさらいって意味で、ここで再度触れておくわね。 |
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便利だからだよね。 | ||
サルは、ソレばっかりね。 あの勉強会のときも、ソレばっかり連呼してたじゃないのよ。 ここでは、もう少し丁寧に、その理由について説明することにするわね。 非典型担保が行われる理由としては、確かに端的に言うならば、サルがいうように便利だから、ってことになるんだけれど・・・。 質権や抵当権には、当事者にとって不便な点があり、それを回避するために行われるってことよね。 例えば、抵当権は不動産しか目的物とすることができないため、動産(機械等)を担保にしようとすれば質権による他はないってことになるわけなんだけれど、質権だと、その目的物の占有を債権者に移転しなければならず、それでは生産活動のための融資を受けるのには役立たないってデメリットがあるからよね。 |
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つまり、便利だからってことだよね。 | ||
オネーちゃんは、短くし過ぎなんだよぉ。 | ||
そうよねぇ? 他にも理由は挙げられるわ。 例えば、債務不履行のときは、債権者は、質権、抵当権の実行という手続きをとることが必要となるわけなんだけれど、その手続き(競売手続)は必ずしも簡便なものではないわ。 そこで、仮登記担保をつけておくことによって、競売によらないで、その所有権を取得するという形で、債権の回収を図ることができるわけよね。 この点は、譲渡担保においても同じなので、不動産についても譲渡担保が利用されることがあるわけね。 |
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まぁ、つまり便利だからだよね! | ||
サルは、その言葉だけで済ませようとし過ぎよ! 何故、便利といえるのか、ってことを抑えておかないと、非典型担保が行われる理由を理解したことにならないわよ? |
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竹中さんのために、簡単な言葉にして下さっている藤さんに、その言い方はないと思いますよ? | ||
ま、待って欲しいです! 私だって、流石に、そんなアッサリとした理解では困るです! |
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で・・・ですよね・・・。 | ||
(あ、黒田先輩が珍しく、たじろいでみえるです! ここで、しっかり伝えれば、黒田先輩の呪いが解けるかも知れないです!) ですです! 藤先輩はいつも・・・ |
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そうですよね。 きっと藤さんは、いつも私が藤さんの言葉を補足されることを期待してみえたんですよね。 だから敢えて、言葉足らずにされてみえたんです・・・。 ソレなのに・・・ソレなのに・・・私は・・・。 |
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あ・・・また、おかしな方向に行ってしまわれたです・・・。 | ||
いやでも、ようやく、あたしのメッセージがクロちゃんに届いたみたいで、なんか嬉しいよ。 | ||
うわっ!! とんでもないこと言い出したです!! |
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すみませんでした! 藤さんの気持ちも分からずに、いつも傍観していた私を許して下さい! |
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いいよ、いいよ。 ホラ、よく『言葉は無力』って言うじゃない。 思いの丈が言葉で全部伝わるのなら、誰も苦労しないんだよね。 それでも、今日また、あたしとクロちゃんとは一つ分かり合えたんだもん。 言葉は無力っていうけれど、こうして幾ばくかでも伝わるものがあるのなら、けっして無力なんかじゃないよね・・・ そう、言の葉を重んじる木下家の末裔のあたしは感じることができたよ。 ありがとうね、クロちゃん。 |
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ふ、藤さぁ~んっ!! | ||
・・・。 (・・・もう知らないです・・・グスン。) |
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・・・こ、こ、このサルだけは・・・。 えーっと、話を戻すわね。 譲渡担保や、仮登記担保については、債権者は、その目的物の所有権を取得するに際しては清算(目的物価額が債権額より大きいときは、その差額を清算して返すこと)を行うことが原則とされているわ。 コレは、債権者の得るものが被担保債権の弁済を受けるという担保本来の目的を超えることは妥当ではないからよね。 また非典型担保については、法律制度上の不備を補うものとして行われているわけなんだけど、その効力を、当事者間、あるいは、対第三者との関係で、どのように考えるのか、ということが大きな問題となるわね。 そのあたりについては、また勉強会の中で学んでいくことにしたいって思っているわ。 |
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うんうん。 | ||
ソレじゃ、もう少しだけ続けるわね。 先ずは、非典型担保の一つである譲渡担保についてね。 設定の当事者については、抵当権の場合と同じで、一方は債権者であり、他方は債務者または目的物の所有者(設定者)ということとなるわ。 当事者間では、債権者は債務の弁済期に弁済がなされれば目的物を設定者に返還する義務を負うわ。 従って、債権者が弁済期前に、その目的物を他に処分することは、設定者に対する債務不履行となるわ。 債務者が弁済しないときは、債権者は目的物の所有権を確定的に取得できるけれど、そのとき清算を行うべきであるとされるわね(最判昭和46年3月25日)。 対第三者との関係においては、譲渡担保の形式的側面である所有権移転という点を重視するのか(所有権的構成)、実質としての担保権という点を重視するのか(担保権的構成)で、考え方に相違が出てくるわ。 まぁ、判例は所有権取得の側面を重視する傾向にあるわね(最判昭和56年12月17日)。 この譲渡担保は、占有を移さない動産担保(動産抵当)の他、いわゆる集合物を担保の目的とすること(集合動産譲渡担保・最判昭和62年11月10日)や、ゴルフ会員権等の新しい権利(最判平成8年7月12日)についても担保の目的とすることを可能にするなど、適用領域を広げているわね。 色々と抑えておかないといけないところだから、この譲渡担保については、しっかり学ぶことにするから、そのつもりでね。 |
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・・・大事なことだから二度言いました・・・ って感じ? ソレ、さっきも言うたやないの・・・。 |
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アラ、そうだったかしら? えーっと、ソレじゃ最後に仮登記担保についても簡単に紹介しておくわね。 |
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ま、まだ、やるんかい。 | ||
簡単な紹介にするから付き合いなさいよ。 仮登記担保は、戦後に広く行われるようになったものなんだけど、1960年代後半に、判例が債権者の清算義務や、第三者との利害の調整について多くのケースを積み重ね、さっき述べた1978年の立法という経緯を辿ったわけね。 この1978年に立法された仮登記担保法によると、債権者(仮登記担保権者)は、債務不履行に際し、仮登記担保権の実行をすることになるんだけれど、実行に着手してから2ヶ月間は、目的物の所有権を取得することができないのね(これを清算期間という。仮登記担保法2条)。 そして、この間に他の債権者(後順位抵当権者等)との利害調整を図ることとしているのね。 その骨子について簡単に話すと、実行に際して、債権者が支払うことになる清算金について、後順位抵当権者は物上代位をなしうるとし(同法4条)、また後順位抵当権者が、その間に競売の申立てをすると、仮登記担保権者は最早、目的物の所有権を取得することはできず、その競売手続きの中で配当を受けることとされているわ(同法13条、15条)。 そして、債権者が目的物の所有権を取得するときは清算義務を課せられ、しかも清算金の支払いと引き換えでなければ所有権を取得できないとされているわ(同法3条1項、2項)。あ、因みにだけれど、これは強行規定だからね(同条3項)。 |
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なんか色々面倒くせぇってことだけは理解すた。 | ||
ソレは、殆どナニも理解していないってのと同義だと思うです。 | ||
ホント、そうよね。 この法律は、仮登記担保において債権者の最終的な所有権取得機能を認めながら、その実行の過程では、出来るだけコレを担保権・・・ソレも特に抵当権に近いものとして構成しようとしているといわれるわね。 ただ、仮登記担保権の内容について、今述べたような法律上の制約が加わったことで、法律制定後は、仮登記担保自体があまり利用されなくなってしまったともいわれているわね。 前回学んだ根抵当権なんかは、被担保債権を特定しない債権担保手段が、債権者(担保権者)から見て便利なものとして、よく利用されているんだけどね。 そうそう。 この根抵当権との関係で、仮登記担保について話しておくと、仮登記担保法では、債権の特定しない仮登記担保を、他の抵当権などの担保権に対しては、まったくその効力を主張できないものとしたのよね(同法14条)。 これは仮登記担保においては、被担保債権が登記されないため、極度額によって優先権の範囲を限定することができない結果、根抵当立法の際に否定した包括根担保を認めることになってしまうという理由からね。 まぁ、この仮登記担保法14条の存在も、仮登記担保があまり利用されない原因の一つになっているっていえるかもね。 |
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・・・根抵当なんて、やったっけ? | ||
・・・前回の勉強会の話です。 | ||
・・・あんた、なんなら憶えてんのよ! | ||
・・・むぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。 あっ!! あたしへの精神的苦痛の慰謝料としての飯ゴチを、まだ受け取っていないことを思い出したお!! これは、ものごっつ大事なことだお!! よかった、よかった。 思い出せて、心底良かったお!! |
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・・・こ、こ、このサルだけは・・・。 | ||
すっごい高くて、すっごい美味しいもんがええなぁ。 なんだろ、なんだろ・・・中華? いや、お寿司? あぁぁぁぁぁぁぁ、ちょっと待って、コレ、お腹の準備も必要になってくるよね? もっともっとお腹空かせておかないと勿体無いよね? |
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・・・そうね、そうね、ホントそうね。 | ||
いいなぁ、いいなぁ。 オネーちゃん、美味しい物食べられるなんて羨ましいなぁ。 |
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そっか。 チイちゃんも美味しい物大好きだものね。 ソレじゃ、民法物権法の勉強会が全部終わったら、打ち上げってことで、みんなで何処か御食事に行きましょうか。 |
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え? いいの? ワーイ、ワーイッ! |
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ちょ、ちょっ!! そ、ソレは、あたしへの謝罪のゴチとは別勘定だからね!! |
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・・・そうね、そうね。 | ||
・・・。 (明智先輩から、激しい呆れ感が伝わってくるです・・・。 コレは、藤先輩を、なんとかしないとです!! ) |