2003年の民法改正によって、色々と問題も多かった短期賃貸借制度は廃止されて、建物明渡猶予の制度が新設されることになったのね。 今日の勉強会では、この建物明渡猶予の制度についても学ぶことにするわね。 さて、2003年の民法改正によって、従来の短期賃貸借保護の制度は廃止されることとなり、期間の長短を問わず、抵当権に後れる賃借人は、抵当権者に対抗できない、ということになったわ。 つまり、抵当権の実行に際しては、そのような賃借権は存在しないものとして扱われ、その不動産の買受人は、買受け後、その賃借人に対して、当該不動産の明渡しを求めることができるのね。 |
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うわ! 結構えげつないんだね!! |
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うーん、ただここに至るまでの経緯もあるのよね・・・。 従来の短期賃貸借の保護の制度というのは、抵当権の効力と抵当不動産の利用権との調和という趣旨から、民法602条の定める期間内の賃貸借は、抵当権に後れるものであっても抵当権者に対抗できるとしていたのよね。 この民法602条の賃貸借期間というのは、山林なら10年、山林以外の土地なら5年、建物3年および動産なら6ヶ月とされているのね。 ところが、民法制定後に制定された借地法、借家法(現在は1991年制定の借地借家法)によって、宅地建物についての賃借権の借主のための期間保護(宅地の借地期間を30年以上に法定し、また借地・借家の貸主の明渡請求に正当事由を要求する等)の制度が設けられたこととの関連で、宅地建物についての短期賃貸借の保護は、解釈上も困難な問題を生じるものとなってしまったのよね。 さらには、この制度を悪用して、競売されそうになった抵当権設定者が、抵当物件にあえて短期賃借人を置いて、競売の妨害を図るといった行為までもが横行するようになってしまったのよ。 |
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なんだか寂しい話だよぉ。 | ||
そうね。 こうした背景を受けて、短期賃貸借の廃止は、主として抵当権者側に立つことの多い金融機関などから強い要望を受けるものとなっていたの。 でも、そもそも短期賃貸借制度は、抵当権と利用権との調和を図る趣旨の制度だったわけよね。 なのに、単にこれを廃止するだけでいいのか、ということは当然、問題となるわけよね。 |
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そうかなぁ? | ||
実際の例を挙げて、考えてみるとワカルんじゃないかしら。 例えば、サルが土地を持っていたとして、その土地にアパートを建てて、アパート経営しようとした・・・なんて事案を考えてみてくれる? |
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ふむふむ。 たしかに土地だけ持ってても仕方ないしね。 アパート経営かぁ。うんうん、悪くないかも。 |
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ただ、アパート経営をするってことは、当然、アパートになる建物が必要になるわけよね。 そこで、アパート経営のための建物を、銀行から融資を受けて建築したってことにしてくれる? そうなると、銀行からの借入れはローンってことになるわけよね。 まぁ、銀行としてもローンのために、その建築した建物に抵当権を設定する、っていうのが普通だといえるわよね。 |
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まぁ、そうだよね。 抵当権設定しとけば債権回収も容易になるわけだし、銀行も、そうするだろうね。 |
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そうよね。 でも、そうなると建てられたアパートには抵当権が既に設定されているわけなんだから、サルのアパートに入居される賃借人の方は、すべからく抵当権に後れる賃借人ってことになるわけよね。 |
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そりゃ、そうなるよね。 | ||
この場合において、サルが問題なくローンを返済しているのなら、なんの問題もないわ。 でも、家主であるサルが、銀行へのローンの返済を滞らせて、その結果、銀行がアパートに設定した抵当権を実行したとすると・・・。 抵当権に後れる賃借権が否定されてしまう、ということになるわけよね。 |
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あ・・・なるね。 なっちゃうね・・・。 でも、そんなことだと、誰も入居してくれなくなっちゃわない? |
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そうよね。 そんな安心して入居できないようなアパートでは、借りてくれる人もいなくなっちゃうわよね。 でも、ソレでは、アパート経営をしようとしている家主のサルだって、アパートを建てた意味がないってことになっちゃうわけよね。 |
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確かに。 でも、あたしのアパート経営は、別に競売妨害を目的としているわけじゃないんだし、普通の賃貸借なんだから認めてくれてもいいじゃないの! |
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その言い分もワカルわ。 ただ、抵当権に後れる賃貸借が、サルがいうような普通の賃貸借(いわゆる正常型)なのか、競売の妨害を意図するような賃貸借(いわゆる妨害型)なのかを明確に区別することができるのか、というと、なかなか困難なことだと思わない? |
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あたしみたいな真人間のすることは、全部正しいことに決まってんだろうが! 常識的に考えてっ!! |
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私なら、藤先輩のされることは全部妨害型に認定しても、いいように思ってしまうです・・・。 | ||
コイツめっ!! (ゴツンゴツンッ!) |
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痛いですぅぅぅぅぅっ! | ||
ちょっとっ!! あんた、ナニやってんのよ!! |
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コレは暴力じゃないお。 目上の人に対しての誤った言動を正すための体罰だお。 ニシシシシシシ。 |
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「ニシシシシ」なんて笑いをしておいて、体罰ですか、そうですか。 | ||
明智先輩・・・。 柴田さんに頼んで、藤先輩を懲らしめてやって欲しいです・・・。 |
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ぎょえっ!!! や、やだなぁ。 ナカたぁ~ん。 軽い冗談じゃないのよぉ。 ほーら、痛いの痛いの飛んでいけぇ~。 |
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じゃあ、ナカちゃんに謝りなさいよ! | ||
えぇーー。 謝るようなことはしてないと思うんだけどなぁ。 |
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頭突きしておいて、謝らなくっていいわけないじゃないのよ! ねぇ? ナカちゃん? |
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そうだよぉ。 オネーちゃんは、ちゃんとゴメンナサイしないとダメだよぉ。 |
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謝罪というのは、あくまでも自発的な意思によってなされてこそ意味があると思うんだお! 強要した謝罪では意味がないって思うんだお! |
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で? | ||
したがって、意味のない謝罪は、あたしはしないお。 | ||
あんた、どんだけ謝るの嫌いなのよ! もういいわよっ! 柴田さんに頼んで、その腐った性根を叩きなおしてもらうんだから! |
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ぎょえええええっ!! ごめんなさいっ! ごめんなさいぃぃぃぃっ!! |
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・・・なんだか違う気がするです。 | ||
そうよね。 でもまぁ、一応謝っているんだし、ナカちゃんも許して上げてくれない? |
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ハイです! | ||
よし、気は済んだみたいだな。 | ||
・・・ぐぬぬぬぬ。絶対悪いって思ってないです・・・。 | ||
思ってる、思ってるよぉ~。 ニシシシシシシ。 |
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ナカちゃん、大丈夫よ。 私も、コレは一度、しっかり懲らしめておく必要ありって判断したからね。 さて。 さっきの問題は、結局のところは、抵当権に後れる賃借権が抵当権に対抗できないということを前提として、そのような場合に、賃借人の保護を、どのようにして図るべきか、ということになるわけよね。 ここで、民法387条を見て欲しいわ。 |
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民法第387条。 『民法第387条(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力) 1項 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。 2項 抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。』 |
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民法387条は、抵当権者の同意による賃借権の存続を規定しているわね。 さっきのサルのアパート経営みたいな賃貸用建物であれば、抵当権者にとっても賃借権の存続が望ましいケースといえるわ。 そのようなケースにおいては、抵当権者の同意によって賃借権が存続できるようにしようというものね。 |
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成程、成程。 そういう制度もあるわけね。 |
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でも、抵当権者が、このような同意を与えるかどうかは、まったく抵当権者の自由に委ねられているわけだし、抵当権設定当初はともかく、将来において賃借人が競売妨害をしないとも限らないってことを考えてしまうと、なかなか、このような同意が、すんなりなされるのか、というのは疑問といえるわ。 ただ、抵当権者にとってもメリットのある場面においては、このような同意も得られるわけよね。 この387条の制度は、土地・建物を問わず適用があるわ。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
それじゃ、今日学ぶもう一つの制度である建物明渡猶予の制度について見ていくことにするわね。 先ずは、六法で条文の確認からね。民法395条を見てくれる? |
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民法第395条。 『民法第395条 (抵当建物使用者の引渡しの猶予) 1項 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。 1号 競売手続の開始前から使用又は収益をする者 2号 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者 2項 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。』 |
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短期賃貸借保護を廃止した代わりに、新設されたのが、この建物明渡猶予の制度なのよね。 抵当権に後れる建物賃貸人であっても、一定の要件を満たすときには、その抵当権が実行されて、買受人が買受けをしたときから6ヶ月間は、明渡しが猶予されることになったのね。 ここにいう一定の要件とは、条文から ①競売手続開始前から、その『建物の使用又は収益をする者』 または ②『強制管理又は』不動産『収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により』建物の『使用』『収益をする者』 と、なるわ。 ただし、その明渡猶予期間中の建物使用については、使用者が対価を払うことを前提としていて、使用者が、その対価を買受人の催告にもかかわらず支払わないときには、この明渡しの猶予を受けることができない、とされているわね(395条2項)。 |
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ふむふむ。 一応、一定期間の保護は与えられているわけかぁ。 すぐに出て行かなくていいっていうのは、有難いって感じだけど、その期間は6ヶ月かぁ。 なんか短いようにも思うんだけどなぁ。 |
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あんまり長くし過ぎると、賃貸人の居る建物では嫌だって思うような人だと買受人になってくれないことになっちゃうだろうし、そうなると競売しても競落人が出て来ないなんてことも考えられるわけだしね。 賃借人の被る不利益(即時退去を迫られること)と、買受人の利益の過度の侵害防止との調和ということからの期間設定が、6ヶ月という期間になっているといえるわね。 |
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成程、成程だよぉ。 | ||
そうそう。 言うまでもないことかも知れないけれど、この明渡猶予期間が認められるのは、抵当権に後れる賃借人であって、不法占拠者には、明渡猶予は認められないからね。 |
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建物については、この明渡猶予期間の制度がありますけど、土地については、このような規定はないんですよね。 ですから、抵当土地の賃借人は、期間の長短を問わず、抵当権者には対抗できないってことになりますね。 |
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そうなんだ。 ソレ聞くと、まだ6ヶ月でも猶予してもらえるだけ、ありがたいって思ってまうなぁ。 |
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そうかもね。 それじゃ私も、あんたへの柴田さんからのお仕置きは、しばらく猶予してあげることにするわね。 |
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ふえっ!? な、な、なんで、いつの間に、そんな恐ろしい話になっとるんだお!? |
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暴力を振るっておいて、ろくに謝りもしないんだから当たり前の話じゃないのよ。 言ってもワカラナイのなら、然るべき手段をもって・・・ってことじゃないかしら。 |
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あ、あ、あたしは、いかなる理由があろうと、暴力は正当化されないって思っとるお!! | ||
・・・「体罰」を理由に、頭突きを正当化しておいて、そんな主張は通らないです。 | ||
そうだよ、そうだよ。 オネーちゃんは、なんかあるとすぐに頭突きしてくるんだから、一度、柴田おねーちゃんに怒られるといいんだよぉ。 |
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まぁまぁ。 猶予期間が頂けたわけですし、その期間を何事もなく穏便に過ごされれば大丈夫ですよ、藤さん。 |
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ヤバす、ヤバす。 ぶっちゃけ、反射的にやってまうとこあっから、なんか、やらかしちゃいそうな予感が、今からヒシヒシとしてんだけど・・・。 |
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・・・。 (反射的に頭突きされたら、私もたまったものじゃないです・・・。) |