2016年最初の勉強会になるわね。 と・・・いうわけで。 勉強会に先立って年始の御挨拶を。 あけましておめでとう。 |
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あけましておめでとうだよぉ! | ||
あけましておめでとうです! | ||
あけましておめでとうございます。 今年もよろしく御願い致しますね。 |
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あたし達とクロちゃんは、新年早々顔合わせてんだけどなぁ。 まぁ、付き合いで言ってやんお。 あけあけ、おめおめ。 |
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新年早々、サルは感じ悪いんだから。 年の初めくらいは気持ちよく挨拶できないものかしら。 |
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あ、そだそだ。 御節あんまと、あんまと。 |
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柴田さんからも伺っているわ。 思いの外、喜んでくれたってね。 去年、サルがろくな御節が食べられなかったぁってボヤいていたこと思い出してね。慌てて、お正月に届くように柴田さんに御願いしちゃったのよね。 でも、お陰で一緒にサル達と初詣に行けたって、柴田さんも喜んでいたから、怪我の功名だったなって思ったわ。 |
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そうだ! 柴田おねーちゃんにお年玉貰ったんだよぉ。 光おねーちゃんからも改めて御礼を伝えておいてね!! |
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了解。 そっかぁ。柴田さん、チイちゃんにお年玉なんて渡していたんだぁ。 優しいんだから、柴田さん。 |
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チイちゃんだけじゃないですよ。 私や藤さんにまで下さったんですよ。 ですよね? 藤さん。 |
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あ・・・うん、そうやったかな? | ||
そうだ! 柴田おねーちゃん、いなかったナカちゃんの分も用意して・・・ |
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ちょ、ちょ、ちょっ!! い、いつまでお正月気分に浸っているつもりなの? 勉強会始めないのなら、あ、あたしも暇じゃないんだし帰るよ? |
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な・・・ナニよ、急に・・・。 | ||
いや、あたしは勉強会がしたくて、したくて、たまらないんだからさぁ。 ホント、今日の日を、一日千秋の思いで待っていたってのに、ソレが、なかなか始まらないって言うんじゃ、急かしもしちゃうよ!! |
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え? でも、ナカちゃんの分のお年玉・・・ |
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チ、チイっ!! チイは、いつまで、おしゃべりしてるつもりなの!! 勉強会の邪魔するのなら帰らせるよ!? |
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えええぇぇぇっ!! イヤだよ、イヤだよぉ!! |
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ハイハイっ! というわけで、勉強会、勉強会っ!! |
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・・・怪しい。 | ||
怪しくない、怪しくないよぉ。 | ||
そ、そうですよね。 藤さんが勉強熱心なのは、いつものことですものね。 |
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なんだか怪しいです・・・。 | ||
あぁ。もうキリがないから勉強会始めちゃってよぉ。 | ||
なぁんか怪しいのよねぇ。 まぁそれじゃ、今日は、法定地上権の成立要件の続きからね。 先ずは条文からってことで、法定地上権について定めた民法388条の確認からね。 |
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民法第388条。 『民法第388条 (法定地上権) 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。』 |
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そして、この条文から導き出される、法定地上権の成立要件は、次の4要件だったわよね。 ①『抵当権』『設定』当時、『建物が』『存する』こと。 ②『抵当権』『設定』当時、『土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する』こと。 ③『その土地又は建物』の一方又は双方に『抵当権が設定され』たこと。 ④『土地又は建物』の『所有者』が『抵当権』の『実行により』異なるものとなったこと。 このうち重要なのは①と②になるわけだけど、①については前回、前々回の2回に分けて見たわけなので、今日は②の要件について学ぶことにするわね。 要件②とは 抵当権設定当時、土地建物が同一人の所有に属すること よね。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
じゃあ、ちょっと趣向を変えた質問をしてみようかしら。 質問! 抵当権設定当時、土地と建物とが別異の人に属していたとしたら、どうなるかしら? |
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法定地上権の成立要件を欠くんだから、法定地上権が成立しない。 | ||
そのまんまの答えじゃないのよ。 法定地上権が成立しない結果、どうなるの? ってことを訊いているのよ! |
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・・・困るんじゃね? | ||
困るようなことには、ならないと思うよぉ。 だって、抵当権設定当時において、土地と建物が別の人に属しているっていうのなら、その当時において、建物のために土地利用権(地上権、賃借権)を設定することが法律上可能なわけだし、それに実際、土地と建物とが別の人に属しているってことは、その場合は大体、何らかの利用権が設定されているんだろうしね。 だから、その状態で、土地または建物に設定された抵当権が実行されて買受人が登場したとしても、従前からあった土地利用権が抵当権に先立つものである以上、抵当権者に対抗しうるってことになるから、ソレが建物のためにあるのなら、法定地上権が成立しなくっても困るようなことにはならないよ。 もっと言っちゃえば、法定地上権を成立させる必要がないってことだよね。 |
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そうね。 丁寧に答えてくれて、ありがとうね、チイちゃん。 借地権の対抗問題(民法177条、605条、借地借家法10条)や、借地権の譲渡性の問題(賃借権の場合は民法612条)は生じ得るだろうけれど、抵当権の設定当時において、土地・建物の所有者が異なって、建物所有者が何らかの土地利用権を有している場合には、その利用権の存続の問題になるだけであって、法定地上権は成立しないし、また、その必要もないって話になるわけよね。 つまり、法定地上権制度の存在意義は、抵当権設定当時、土地・建物が同一人に属し、自己借地権の設定が認められていないために、競売に際して、建物の存続を図りえなくなることを避ける点に求められるって理解になるわけよね。 |
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えへへへへ。 | ||
この理解から、土地・建物の所有者が異なるのに、実際には、建物のための土地利用権が設定されていなかったというような場合には、法定地上権は成立しないものとされているわ。 | ||
ふむふむ。 なるほろ、なるほろ。 |
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但し、これとは逆の場合。 つまり、抵当権設定当時は、土地・建物が同一人に属していたのに、後に、その一方が譲渡された場合については、判例・学説は、ともに法定地上権の成立を肯定しているのよね。 |
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へぇ~、そうなんだ。 | ||
それは何故かってことを一緒に抑えておいて欲しいわね。 抵当権設定当時において、土地・建物が同一人に属していた場合に、後にその一方が譲渡された場合、その譲渡の際に、建物のための土地利用権が設定されたとしても、その利用権は抵当権の設定に後れることとなってしまい、抵当権者に対抗することはできないわ。 そして、競売の結果、それらの利用権は消滅することになってしまう(土地抵当の場合)し、もともと抵当権者は、抵当権の設定を受ける際、法定地上権の成立を予期しているのだから、後に一方が譲渡されたという偶然の事情によって、その予期を覆すべきではない、という価値判断が働くからなのよね。 |
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ふむふむ。 ワカる、ワカる。 |
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とまぁ、こうやって説明すると法定地上権の成立要件の②抵当権設定当時、土地・建物が同一人に属していた場合、というのは一義的に明らかなようにも思えるところよね。 ただ、そう一筋縄じゃないからこその勉強会ってことよね! |
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マ、マヂっすか。 | ||
色々な場面ごとに検討すべき問題が幾つかあるわけなんだけど。 この勉強会では、幾つかある問題のうち、抵当権設定当時、土地・建物は異なる所有者に属したが、競売の時までに、それが同一人に属するに至った場合についてみてみることにするわね。 |
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ん? ん? もっかい言って! |
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上の文章、もう一度読めば? | ||
メ、メタは駄目ですぅ!! | ||
ここでの問題のポイントを先に伝えておくわね。 土地・建物が異なる所有者に属していたものの、後に同一人に属することになると、以前の勉強会(※ 法定地上権①勉強会参照)でも言ったように、従前建物のために存した土地の利用権は混同(民法179条)によって消滅するってことだったわよね。 ソレを、抵当権設定当時に、土地・建物が異なる所有者に属していて、後に同一人に、その所有が属することになった場合でも同じように考えていいのか? ということが問題になっているのよね。 |
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・・・えーっと、つまり・・・。 従前(=抵当権設定後に、土地・建物が同一人の所有になる前)の土地利用権が、混同によって消滅しちゃうと・・・抵当権の実行によって、土地と建物の所有者が分離した場合、法定地上権が成立しないと、建物は収去しないといけないってことになるわけだよね? |
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そういうことになるわね。 この問題を、 土地抵当型(土地に抵当権が設定されている場合) と 建物抵当型(建物に抵当権が設定されている場合) とに分けて考えてみましょうか。 |
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こくこく(相づち)。 |
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先ず、土地に抵当権が設定されている場合(土地抵当型)からね。 ナカちゃん、この問題を考える前に、民法179条を見てくれる? |
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民法第179条。 『民法第179条 (混同) 1項 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。 2項 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。 3項 前二項の規定は、占有権については、準用しない。』 |
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例えば、借地権(土地利用権)の設定された土地が抵当権の目的となっている場合は、民法179条1項但書きにいう 『その物』が『第三者の権利の目的であるとき』 に該当するわ。 この場合は『この限りでない』という例外にあたるわけだから、混同は生じない、ということになるわけ。 |
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あらま。 条文一本で解決しちゃうわけね! |
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そうね。 少し言葉を足しておくわね。 実際、土地の抵当権者は、抵当権設定当時、その土地上に存していた建物のための約定利用権がある場合、その存続を予期するわけよね。 ただ、この約定利用権は一般的に、賃借権である場合が多いため、ソレが法定地上権に変わるということは、抵当権者にとっては不利になる場合が多いってことになるわけね。 したがって、借地権は、混同の例外として存続し、土地買受人に対する関係では、その借地権の対抗力のみが問題になり、法定地上権は成立しない、という結論になるということね。 |
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最高裁も、今の光ちゃんの結論を支持する判決を打ち出していますよね。 判旨は、次のものですが・・・。 『土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権の要件が充足されていなかった場合には、土地と地上建物を同一人が所有するに至った後に後順位抵当権が設定されたとしても、その後に抵当権が実行され、土地が競落されたことにより一番抵当権が消滅するときには、地上建物のための法定地上権は成立しないものと解するのが相当である。 けだし、民法388条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものであるが、土地について一番抵当権が設定された当時土地と地上建物の所有者が異なり、法定地上権成立の要件が充足されていない場合には、一番抵当権者は、法定地上権の成立のないものとして、土地の担保価値を把握するのであるから、後に土地と地上建物が同一人に帰属し、後順位抵当権が設定されたことによって法定地上権が成立するものとすると、一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるからである。』 と、述べていますよね。 (最判平成2年1月22日) 法定地上権の趣旨についても、本判決では述べられていますから、ここで再度確認しておくといいですよね。 法定地上権の制度趣旨は 『民法388条は、同一人の所有に属する土地及びその地上建物のいずれか又は双方に設定された抵当権が実行され、土地と建物の所有者を異にするに至った場合、土地について建物のための用益権がないことにより建物の維持存続が不可能となることによる社会経済上の損失を防止するため、地上建物のために地上権が設定されたものとみなすことにより地上建物の存続を図ろうとするものである』 と、述べられているところですよね。 そして、この趣旨から本判決が、法定地上権の成立を否定した理由を端的に、まとめるのなら 『一番抵当権者が把握した担保価値を損なわせることになるから』 ということになりますね。 |
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つかさちゃん、判例まで出して説明してくれて、ありがとうね。 それじゃ、次は、建物に抵当権が設定されている場合(建物抵当型)について説明するわね。 ナカちゃん、もう一度、民法179条を見てくれるかしら。 |
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民法第179条。 『民法第179条 (混同) 1項 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。 2項 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。 3項 前二項の規定は、占有権については、準用しない。』 |
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建物に抵当権が設定された場合、その抵当権の効力は、その建物のための借地権にも及んでいることとなるわ。 だから、この場合は、民法179条1項但書きにいう 『当該他の物権が第三者の権利の目的であるとき』に該当するため『この限りではない』、つまり、混同の例外として、その建物のための借地権は存続する、ということになるわ。 |
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あらま。 また条文一本で解決だお。 |
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そうね。 建物が競売された場合、買受人は建物と共に借地権も取得することになるため、借地権の譲渡性の問題として処理すればいいわけだから、この場合も、やっぱり法定地上権を成立させる必要はない、ってことになるわね。 最高裁も、このことは明言しているわ(最判昭和44年2月14日)。 |
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うんうん。納得だよぉ。 実質的に考えてみたって、建物抵当権者は、借地権(=多くは賃借権)付きの建物だってことで抵当権の設定を受けているんだから、その後に、たまたま、土地と建物の所有者が同一の人になったからっていって、法定地上権が成立するっていうのは、おかしい気がするしね。 |
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そう考えるところになるかしらね。 さて、それじゃ、ここまでの理解を前提として発展的理解に繋げていくことにするわね。 考えて欲しい問題は、次の問題ね。 一番抵当権設定当時は、土地・建物が別個の所有者に属していたわけなんだけど、二番抵当権が設定された時には、双方が同一人に属していたという場合ね。 |
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えーっと、つまり一番抵当権設定の時には、法定地上権の成立要件が備わっていなかったけれど、二番抵当権設定の時には、その要件が備わっていた場合、どう考えるのか? ってことだよね。 |
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そうね。 百選掲載判例だし、久し振りに判例検討しちゃいましょうか。 少し事案も複雑だしね。 検討判例は、最判平成19年7月6日ね。 (百選Ⅰ 6版90事件 7版88事件) |
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久し振りの判例検討楽しかったね! 最近、あんまりやってなかったから嬉しかったよぉ。 |
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憲法の勉強会での判例検討が多いせいで、ちょっと民法物権法が割りを受けているとこあるのかもね。 確かに最近、判例検討の回数が減っているものね。 |
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個人的には、判例検討はもう少し多いといいなぁって思っちゃうんですけどね。 | ||
うーん、あたしは逆かなぁ。 っていうか、勉強会の回数自体もっと減らしてもいいとさえ思っているお。 |
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・・・誰のための勉強会だと思っているのかしら、このサルは。 | ||
勉強は自分のためだろうが! 常識的に考えてっ!! |
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流石、藤さんっ! 仰られるとおりだと思います。 こんな当たり前の言葉さえ、藤さんの口から出ると至言の響きを持ってしまうのは何故なんでしょうか。 |
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きっと、あたしが言葉(コトノハ)を誰よりも重んじる木下家の末裔だからだお。 間違いないお。 |
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・・・。 (・・・違うと思うです。黒田先輩の目が眩んでいるからだと思うです。) |