クロちゃん・・・。 ワカッテルよね? |
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ええ、藤さんとの打ち合わせ通りですよね、大丈夫です。 任せて下さい。 |
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あ、それじゃホールケーキや、タルトを横のテーブルに御用意して頂いたから、各自・・・あ、チイちゃん? ホールケーキ1個ずつじゃないわよ? 切り分けたピースを、お皿に取って食べてね? |
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あ、そうなんだ。 この大きいケーキ(ホールケーキ)を、それぞれ食べるのかと思っちゃったんだよぉ。ゴメンね。 |
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・・・ソレを1人で食べれるのは、私達の中では、藤先輩とチイちゃんだけです。 | ||
むむむむっ!! ちょっとちょっと、光ちゃん! シュークリームが用意されていないじゃないの! 早く、お店の人にシュークリームも用意するようにオーダーしとかないと!! |
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はいはい、ソレは、すみませんでした。 あ、それじゃ、つかさちゃん、始めてもらっていいかしら。 |
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それじゃ、始めますね。 抵当権実行の手続きについての勉強会ってことになります。 内容的には、民法というより、むしろ民事執行法などの手続法の話になりますので、その気持ちで聴いて頂ければ結構ですから。 |
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民事執行法は、チイは殆ど勉強したことないから楽しみだよぉ。 モグモグ・・・。 |
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抵当権の実行は、現在では民事執行法に定める手続きにしたがって行われます。 抵当権の実行ですが、先ずは、抵当権者による抵当権実行の申立てによって開始します。 抵当権者は、被担保債権の弁済期が来ても、なお弁済がされないとき、抵当権実行の申立てをすることができます。この申立ては、被担保債権の弁済期前にはすることは出来ません。 |
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成程、成程だよぉ。 | ||
民事執行法181条では、抵当権実行の申立てには、一定の文書の提出が必要とされていますが、最も利用されているのは、同条3号の抵当権の登記事項証明書になるかと思います。 抵当権が登記されていれば、抵当権者は、これをすぐにでも提出することが出来ます。 ここで重要なのは、抵当権の実行には債務名義(民事執行法22条)が不要だということです。 抵当権の実行は、抵当権自体に内在する換価権の実現と考えられているため、債務名義は不要とされているんですね。 因みにですが、抵当権の実行は、不動産に関する強制執行(債務名義に基づく執行・民事執行法188条)と、ほぼ同じ手続きに従って行われるんですよね。 |
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ほぼ同じっていうのは、具体的にドコが違うのかしら? | ||
両者の違いは、債務名義の要否の違いのみです。 | ||
そうなんだ。 |
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つかさおねーちゃんは、よく知っているよねぇ。 あ・・・シュークリームがもう無いよぉ。 光おねーちゃん、チイのシュークリームも頼んでいいかなぁ? |
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ええ、いいわ。 すみません、此方、シュークリームを追加注文させて下さい。 |
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光おねーちゃん、ありがとぉ! | ||
抵当権実行の方法は、民事執行法180条に規定されています。 その方法は2つあって、 1つは、抵当権の目的物の競売(同条1号)。 もう1つは、不動産収益執行(同条2号)です。 不動産収益執行という制度は、2003年の改正で新たに設けられたものですね。 ここでは、担保不動産競売について説明しますね。 |
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こくこく(相づち)。 | ||
抵当権実行の申立てを受けた裁判所は、抵当権実行の要件が備わっていることを確認した上で、競売開始決定をします。 競売開始決定には、その不動産を差押える旨が宣言され、その競売開始決定が所有者に送達されると、差押えの効力が生じることになります(民事執行法46条1項)。 実務的には、送達前に裁判所が登記所に差押えの登記を嘱託する扱いになっているそうです。 それはともあれ、差押えにより所有者は、その不動産を処分できなくなります。でも、目的物の利用自体は、所有者において継続できますね(民事執行法46条2項)。 |
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もぐもぐ。 処分できなくなっても、まだ使ってていいんだね。 |
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そうですね。 ちょっと、ここからは少し細かい話になるのですが、競売手続きが開始されると、裁判所によって現況調査が行われることになります(民事執行法57条)。 そして、この現況調査に基づいて、物件明細書が作成されます。 競売手続において競売される不動産が、どのようなものであるか、また、どのような権利が付着しているのか等の点が開示されることが不可欠だからです。 実際問題として、抵当権の実行の対象なるような不動産については、各種用益権など様々な権利関係が付着していることが多いみたいなんですよね。 また後の勉強会で学ぶことになりますが、法定地上権の成否(民法388条)といった問題もありますし、特に、賃借権は借地借家法によって登記によらない対抗要件が認められています(借地借家法10条、31条)から、この存在を容易には知り得ない買受人となろうとする者にとっては、これらの情報を開示されないと・・・ってことになるわけです。 |
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そっかぁ。 法定地上権の成否は、買受けする人にとっては大きな問題だもんねぇ。 買う前に知っておきたいところだよねぇ、うんうんモグモグ。 |
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ですよね。 ですから、物件明細書には、競売手続完了後なお不動産上の権利および法定地上権が成立することになる場合には、その概要が記載されるわけです。 そして、この物件明細書は、現況調査報告書などと共に、その写しを裁判所に備えておいて、一般の閲覧に供することによって、物件に関する情報の開示に努めようとしているわけです(民事執行規則31条)。 |
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つかさちゃん、話してばっかりで全然ケーキ食べていないじゃないの。 少し一休止入れて、お茶でも飲んでよ。 |
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ありがとうございます。 でも、ここから、いよいよ次の段階・・・売却の話なので。 そこまで話させて下さい。 売却の方法ですが、入札または競り売りその他の方法がとられます(民事執行法64条2項)。 その他の方法ですが、これは民事執行規則51条が定めていますね。 売却手続きで、最高価格買受申出人が出ますと、執行裁判所は、売却決定期日を開いて、売却の許可、不許可を言い渡します(民事執行法69条)。 売却許可決定が確定すると、買受人は、執行裁判所の定める期日までに代金を納付しなければならないことになります(民事執行法78条)。 この際、代金の納付による買受人の不動産の取得は、その後に、実は抵当権が存在しなかったとか、消滅していた等の事情があっても妨げられることはありません。 これは、債務者、所有者等が、競売手続の中で、抵当権の不存在、消滅を争って、競売手続を進行させないことが十分可能であったのに、それをしなかったということから、買受人の地位が、これらの債務者等によって覆されることがない、ということを意味します。 |
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そうなんだ。 勉強になるわね。 |
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この帰結は、抵当権の設定登記自体に公信力を与えることを意味するものではありません。 例えば、偽造書類によって、虚偽の所有権移転登記がなされ、その上に、抵当権が設定されたという場合には、真実の所有者は、登記簿上まったく競売手続とは無縁であって、抵当権実行手続の進行さえ知る機会がないわけです。 ですから、そのような場合にまで買受人が保護されるわけではないということになりますからね。 |
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そっかぁ。 ありがとうね、つかさちゃん。 随分と詳しく話してくれて。 |
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うんうん。 チイも、抵当権の実行が、どんな手続きを経ているのかワカッタよぉ。 |
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法定地上権のとこが、よくわからなかったので、また後の勉強会では、しっかり勉強したいです! | ||
ですね。 法定地上権の問題については、また光ちゃんが、しっかり教えてくれることと思いますよ、ですよね? |
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そうね。 私も、つかさちゃんに負けないように頑張らないとね! |
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藤さん・・・あのぉ、勉強会終わりましたけど・・・。 | ||
クロちゃぁ~ん、ダメじゃないのぉ。 ちゃんと打ち合わせ通りに、もっともぉぉぉぉっと引き伸ばしてくれないとぉ。 |
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え? 打ち合わせって? |
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・・・あ・・・あの・・・先日、藤さんが、柴田さんのボイスレコーダーの件で、光ちゃんに謝罪としてのネージュ・ブロンシュでの御馳走を要求されるから、その際には、私が勉強会を担当して、時間を稼ぐように指示されまして・・・。 | ||
・・・いや、ソレは言うたら、アカンやつやないの。 | ||
サル・・・あんたときたら勉強もしないで、そんなことばっかりに頭をつかって・・・。 | ||
で、でも、でもでも約束したかんねっ!! 晩御飯も1回は、ゴチってもらうかんねっ!! |
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で、ですよね。 | ||
つかさちゃんも、どうしてサルの悪企みに協力しようって思うのかしらねぇ。 | ||
ホントです・・・。 黒田先輩は、藤先輩のこととなると途端に残念な人になってしまうです・・・。 |
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えへへへへ。 このチーズケーキは、お土産にしよっと。 ネージュ・ブロンシュのケーキは、ホント、どれも美味しいよぉ。 チイは、この店の店員さんになりたいなぁ。 |