担保物権総論の第3回ね。 今日は前回に引き続き、担保物権の種類には、どのようなものがあるのか、ということについての話をするわね。 担保物権には、 @留置権とA先取特権という2つの法定担保物権。 B質権とC抵当権という2つの約定担保物権があるってことは話したわよね。 前回は、このうち、ある要件のもとで法律上当然に成立する法定担保物権である@留置権とA先取特権についての話をしたわね。 今日の勉強会では、信用の供与に際し、当事者間の契約によって設定される約定担保物権であるB質権とC抵当権についての話をしようと思うわ。 |
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コピペ乙って言われて、少し工夫してきたお。 | ||
・・・別に、あんたに言われたからじゃないわよ! それじゃ、まずはB質権からね。 まずは、六法で342条を見てくれる? |
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民法第342条 『(質権の内容) 第342条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。』 |
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条文にあるように、質権とは、債権者が、債務者から『その債権の担保として』『受け取った物を占有し』、債務者が弁済をしないときは『その物』から『他の債権者に先立って』優先的に『弁済を受ける』ことが出来る担保物権をいうわ。 この際、担保として、債権者に差し出される物は、債務者の物であっても、第三者の物であってもいいわ。 (※ 質物を差し出した者を『設定者』、それが債務者以外の第三者であるときは、これを『物上保証人』という) |
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こくこく(相槌) |
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質権は、最初にも言ったように約定担保物権だわ。 でも、質権設定契約だけでは足りず、これに加えて、質権の目的となる物が質権者に引き渡されることによって効力を生ずるものなの。 このように、契約に際して、その物の引渡し等が要件となるような契約を、要物契約というわ。 質権は、要物契約性があるということね。 六法で、344条を見てくれる? |
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民法第344条 『(質権の設定) 第344条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。』 |
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成程、成程。 確かに、ドラマとか漫画とかで「質に入れる」って言うときは、その物を相手に渡しているもんねぇ。 ドラマの『ハチワンダイバー』でも、主人公の菅田が退会駒を質入するときは、実際に駒をお店のオジさんに渡していたよ。 |
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そうね。 ドラマ等のシーンで、そうやって具体的にイメージが持てるのは、いいことよね。 因みに、ここにいう『引渡』は、占有改定(183条)によることは許されないわ。 このことは、民法345条にあるわね。 ちょっと確認してくれるかしら? |
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民法第345条 『(質権設定者による代理占有の禁止) 第345条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。』 |
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担保物の占有は、必ず債権者に移転されなければダメってことだよね! | ||
そうね。 そして、これが質権の特徴とも言えるわ。 同じ約定担保物権である、今日この後で紹介する抵当権とは、この占有の移転が要件となっているか否かは異なる点だからね。 因みに、何故、質権には、この占有移転が求められるのか、というのは、公示の原則からの要請が理由に挙げられるわ。 ここで、民法343条を見てくれる? |
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民法第343条 『(質権の目的) 第343条 質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない。』 |
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この条文を反対解釈すれば、質権の目的となりうる物は、譲渡可能性のある物であればよい、ってことになるわよね。 つまり、動産でも、不動産でも、譲渡可能性のある物であればよい、ということになるわ。 ちなみに・・・だけど、民法362条を見てくれる? |
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民法第362条 『(権利質の目的等) 第362条 1項 質権は、財産権をその目的とすることができる。 2項 前項の質権については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、前三節(総則、動産質及び不動産質)の規定を準用する。』 |
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権利(財産権)もまた質権の目的とすることができるのね(362条1項)。 | ||
あ、でも、自動車や航空機などの特別法によって抵当権の目的となることができる動産については、質権の設定は認められていませんよね(自抵20条など)。 | ||
あ、そうだったわね、つかさちゃん、ナイスフォロー! でも、質権はこのように登記のような公示方法をもたない動産であっても、その目的物とすることができるわ。 ただ、だからこそ公示の原則の徹底のために、債権者への引渡し、それも占有改定が認められない引渡しが要件とされているわけね。 |
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あれ? ・・・ってことは、昔、『キン肉マン』で見たアデランスの中野さんが言うてた『女房を質に入れても』っていうのは、おかしくないかな? |
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ですです! 奥さんには譲渡可能性がないから、そもそも質権の目的物にならないです。 キン肉マンは『掟破りのロビン・スペシャル返し』といい、デタラメばっかりです・・・。 |
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まぁ、キン肉マンは知らないからコメントのしようがないけれど『女房を質に入れても』っていうのは喩え言葉だから、真面目にツッコむのはナンセンスだとは思うけれどね。 | ||
だおだお。 ナカたんは、アホの子だからねぇ。 『足元に火がつく』とか『足が棒になる』って言われて、 「なってないです!」ってドヤ顔で言われてもねぇ、って話だよね。 |
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ぐぬぬぬぬぬっ!! フッたのは藤先輩じゃないですかっ!! 『オンドゥルルラギッタンディスカー!』 |
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・・・サルに「アホの子」なんて言われたら、ナカちゃんだって許せないわよねぇ。 あ、もう少し質権については紹介したいことがあるから続けるわよ? 質権については、設定に際し、あるいは、弁済期前の契約によって、質権者が弁済として質物を取得し、あるいは法律に定める方法(354条、367条、民事執行法等)によらずに質物を処分して、その代価から弁済を受けるという合意(いわゆる流質契約)をすることは禁止されているわ。 ナカちゃん、ナカちゃん、349条を見てくれる? |
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えっぐ・・・えっぐ・・・。 民法第349条 『(契約による質物の処分の禁止) 第349条 質権設定者は、設定行為又は債務の弁済期前の契約において、質権者に弁済として質物の所有権を取得させ、その他法律に定める方法によらないで質物を処分させることを約することができない。』 |
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この条文は、零細な債務者を保護するために、民法制定に際して、議会修正で設けられた規定なんだけれど、現在においては、この合理性については疑問が投げかけられているわね。 まぁ、この疑問については、譲渡担保の勉強会の際に、学ぶことにしましょうか。 質権についての紹介は、これくらいかな。 |
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紹介って言うんだから、2、3行で済ませて欲しかったなぁ。 | ||
ソレじゃ、条文読んで、おしまいになっちゃうよ! | ||
ぶっちゃけ紹介なんだし、ソレでいんじゃね? | ||
ふ、藤さんでしたら、ソレで十分でしょうけれど、他の方は、それでは、ちょっと厳しいと思いますよ? | ||
サルは、ホント、文句しか言わないのね! それじゃ、次はC抵当権について紹介するわね。 ここも、まずは条文を見てもらおうかしら。 六法で、民法369条を見てくれる? |
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民法第369条 『(抵当権の内容) 第369条 1項 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 2項 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。』 |
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抵当権とは、その目的物の『占有を移転しない』ままで『担保』とする担保物権をいうわ(369条1項)。 質権と異なって、設定者は、抵当権を設定しても、その抵当権の目的物を手元に置いて、そのまま利用し続けることが出来るわ。 |
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ソレ、さっきも言うたやないの。 | ||
ワカッテるわよっ! ちょっと、質問しちゃうわね。 質問! 工場を経営しているナカちゃんが、経営が苦しいので、工場のある機械を担保にして、融資を受けたいって考えたとしてくれる? この場合、ナカちゃんは、質権と抵当権、いずれを選択した方が、自分にとって都合がいいって思う? |
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それは抵当権です。 抵当権であれば、私は、その担保に入れる機械を、相手に渡す必要がないです。 |
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そういうことよね。 生産活動を行う上において、生産設備自体を担保の目的として融資を受けることができる。これは抵当権の大きな魅力よね。 また、だからこそ、抵当権は、最も重要な担保物権としての地位にあるわけなの。 |
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成程、成程。 確かに質権だと、そうはいかないもんね。 |
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でも一方、抵当権は、占有を移さずに、しかも特定の債権者に優先的な弁済を認めるものなので、抵当権については、占有移転以外の方法による公示がなされないと、他の一般債権者にとっては酷といえるわよね。 ここで再度、369条を見て欲しいわ。 |
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民法第369条 『(抵当権の内容) 第369条 1項 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。 2項 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。』 |
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369条1項が、抵当権の目的物としては、原則として登記制度による公示方法をもつ不動産に限定しているのは、そういう理由からなの。 また、369条2項では、その他には地上権、永小作権についても抵当権の設定を認めているわね、 |
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え? おかしいじゃないの。 さっき、光ちゃんは質問で「工場機械」(動産)を例に出して、質権と抵当権のドッチにするって聞いていたじゃない。 原則、不動産っていうのなら「工場機械」は、抵当権設定はできないってことだから聞く意味なくない? |
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あ、ソレはさっき私が、光ちゃんに補足した話ですね。 動産でも、登録制度のある物については、特別法によって抵当権の設定が認められています(自動車低当法、航空機抵当法等)。 また他にも、工場や鉄道の設備・施設を一括して抵当権の目的とする財団抵当制度というのもあるんですよね(工場抵当法、鉄道抵当法等)。 ですから「工場機械」は、この特別法の適用によって抵当権の設定が認められるということになります。 |
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あ、あぁぁ〜。 アレね? うんうん。知ってたぁ〜。 |
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まぁ、また抵当権の勉強会の際に、しっかり話すつもりだけれど、抵当権は、債務不履行に際して始めて、他の債権者に対して優先的効力をもつものなのよね。 つまり、債務不履行以前には、債権者は潜在的に、その抵当権の目的物の交換価値を支配しているに過ぎないわ。 この意味から、抵当権は価値支配権であり、これを指して価値権といわれる場合もあるわね。 |
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む、む、難しい言葉だね。 | ||
また、抵当権の勉強会の際に、しっかり、その意味を理解することにしましょ。 今日は、まだイントロだからね。 |
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・・・なんという濃厚なイントロ。 最早、イントロというより、中トロ・・・いや、大トロってなくらい濃厚だお。 ・・・ヤバい。そんなことを話していたら、無性に美味しい御寿司が食べたくなったお! |
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あんた、ナニ自分で勝手に御寿司を連想してんのよ・・・。 | ||
オネーちゃん! 御寿司は、この前、光おねーちゃんに御馳走してもらって食べたばっかりじゃない! |
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あのお店には、あたしの欲っする濃厚な大トロはなかったんだお! 口の中でトロけてこその大トロなんだおっ!! |
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それじゃあ、藤先輩の食べたい大トロを出してくれるお店に行くです! | ||
アラ、ナカちゃん、珍しいわね。 ナカちゃん、そんなに御寿司が好きだったんだ。 |
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よしよぉーーしっ!! よくぞ言ったおっ! チビッ子っ!! それじゃ、行くおっ! 行くおっ!! |
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藤先輩だけで行けばいいです!(ドヤっ | ||
そうだよっ! ナカちゃんの言うとおりだよっ! 食べたいのは、オネーちゃんだけなんだから、オネーちゃんだけ行けばいいんだよ! |
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成程ね。そういうことねっ! 流石、ナカちゃん! いいこと言うじゃないっ! |
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『オンドゥルルラギッタンディスカー!』 |