前回の勉強会では、共有について条文を見て学んだわよね。 共有に関する判例は多くて、共有者相互間の明渡し請求が問題となったもの等が、百選にも掲載されたりしているわけなんだけど、今回は、そのうちの1つの判例をピックアップして、ここで検討しておこうと思うわ。 |
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え? 1つだけなの? |
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チ、チイっ!! 年上の光ちゃんの決めたことに、そうやって口を挟むんじゃないお!! |
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一緒に勉強会する間柄において意見を言うのに、年上も年下もないわよっ! あんた、自分が判例検討したくないからって、そういうところで年齢を理由にするのは、やめなさいよ! |
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じゃあ、じゃあ判例検討いっぱいやろうよっ! | ||
でも、前回の勉強会の中で、判例の考え方については幾つか話してしまったところもあるから、勉強会で紹介する判例は、今日の判例1つでいいかなって思っているのよね。 | ||
うんうん。おっしゃる通りっ!! いや、流石、光ちゃんっ! バランス感覚が、すこぶる優れているよね。 なんでもかんでも、やりゃいいってわけじゃないかんねっ!! そういう絶妙な感覚っていうのかなぁ、コレはもうセンスって言うのかなぁ、ホント凄いなぁって、いつも思っているんだよね。 |
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・・・。 (出たです・・・藤先輩の、最早厭味にしか聞こえない褒め殺し・・・。普段から、人を褒めることがないせいで、恐ろしいくらい、わざとらしい言葉になっているです・・・。) |
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え? そ、そうかしら? まぁ、私もセンスが悪い方ではないって自覚はあるんだけれど、そ、そんなに秀逸かしら? |
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・・・。 (・・・そ、そ、そして毎回こんな、あざとい褒め文句に喜んでしまわれる明智先輩が見ていて悲しいです・・・。) |
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今日、検討する判例は、百選Ⅰ 6版76事件 7版73事件の 最判平成8年10月31日ね。 |
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・・・と言いますと、共有物分割の方法についての判例ですね。 判例検討に入る前に、少し説明をされた方がいいのではないでしょうか? |
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そうね。 それじゃ、軽く説明をしておくわ。 今から検討する判例では、共有物の分割方法が問題となったの。 ここで、少し間違えやすいところだから説明するけれど、共同相続財産についても、相続開始(被相続人の死亡)後、共同相続人間で、遺産分割の協議が行われるのね。 でも、相続財産って一口に言っても、その内容は本当に色々な物があるわ。 土地や、建物、現金預金や、株式、骨董品なんかもあるかも知れないわよね。 |
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・・・ねぇお。 ウチには、田んぼとちっこい家しかねぇお。 株式や骨董品なんてねぇお。 |
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別に、相続財産には、株式や骨董品がある、とは言ってないじゃないのよ。 あるかも知れないわよね、って言っているんだから、ないことだってあるわよ! もう、横からチャチャ入れないでくれる? 相続財産の遺産分割においては、このように色々な物があることが前提となっているわけだから、そこでは、ある相続人は土地と建物をとり、他のある相続人は現金預金を、さらに他の相続人は株式と骨董品を・・・というように分割をすることも可能だわ。 結果として、その評価額が、各相続分に応じたものになっているのであれば、それで協議はうまくいくわけよね。 |
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でも、ソレうまくいかない場合だってあるわけでしょ? 相続で揉めること多いって、よく聞くよ? |
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そうね。 共同相続人間で協議が整わないときは、共同相続人は家庭裁判所に分割の審判を求めることができるわ。 ちょっと、親族相続の話になっちゃうけれど、一応条文くらいは見ておきましょうか。 六法で、907条を見てくれる? |
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民法第907条 『(遺産の分割の協議又は審判等) 第907条 1項 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。 2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。 3項 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。』 |
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この907条2項が根拠条文になるわね。 この審判の求めに応じて、裁判所は906条の定めに従って審判をすることとなるわ。 次は、六法で906条を見てくれる? |
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民法第906条 『(遺産の分割の基準) 第906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。』 |
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と、このように、共同相続財産については分割の審判があるわけなんだけれど、今から見る判例の共有物は、相続によって共有を生じたものではないのよね。 したがって、本件事案においては、遺産分割の手続きをとることはできないわ。 共有物については、前回勉強したように258条の規定が適用されるんだったわよね。 確認しておきましょうか。 六法で、民法258条を見てくれるかしら。 |
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民法第258条 『(裁判による共有物の分割) 第258条 1項 共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。 2項 前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。』 |
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『共有物の分割について』は『共有者間に協議』が調うのであれば、原則自由に分割できるわ。 でも、その『協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求する』ことになるわけよね(258条1項)。 そして、その場合は、原則として現物分割ってことだったわよね。 そして、現物分割が不可能または、分割することで価値が著しく損なわれる場合には、競売を命じて、その代金を共有者で分けるってことだったわよね(258条2項)。 ここまでの理解を前提として、今から判例を見てみましょうか。 |
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長い前振りだったなぁ・・・。 今から判例見るんだ・・・。 もう終わってもいいかな、って思ってしまったお。 |
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それじゃ、最判平成8年10月31日 (百選Ⅰ 6版76事件 7版73事件) の検討を始めるわね。 |
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よしっ! 珍しく手元にお金が入ったことだし、今日は奮発して、モヤシ炒めに鶏肉を入れてまおうっ! |
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わーいっ! わーいっ!! | ||
むっ!? しかし、今日はご飯ではなく、モヤシをひたすら堪能する・・・という選択肢もあるじゃまいかっ!! この手持ち資金の全額を、モヤシに投入すれば、かなりの量のモヤシが食べれるじゃまいかっ!! 微々たる量の鶏肉ごときで得られる僅かばかりの満足よりも、圧倒的量をもっての最大値の喜びを享受すべきではないだろうか、常識的に考えて。 |
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チ、チイは、ちょっとくらいモヤシの量が減っても、鳥さんが入っているほーが美味しいと思うなぁ・・・。 | ||
あたしのお金を、どう使おうが、あたしの勝手だお! チイが、どう思おうが、そんなことは知ったことじゃないお!! むぅぅ・・・やはりモヤシ三昧という言葉の響きには、恐ろしい魔力があるなぁ・・・。 |
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鶏肉買って帰ればいいじゃないのよ。 モヤシ三昧って、ソレは、いつものあんたの食生活そのものじゃないの。 |
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よし。 決っしたお。 今日は、持てる資力の全てを投入して、モヤシを買うっ! コレは、最早揺るがし難き大本営の決定だお!! |
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鳥さんが食べたいよぉぉぉぉぉっ!! | ||
『退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!』 | ||
ヤダヤダヤダぁぁぁっ! | ||
とんだ聖帝様です・・・。 | ||
あらあら・・・。 それじゃあ、チイちゃんには、私から大学近所のスーパーで、惣菜の鶏肉を買ってあげるってことにするわ。 |
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ほえ? | ||
わーい、わーいっ!! | ||
ナニも心配しなくってもいいわよ。 チイちゃんに買ってあげる鶏肉のお惣菜と、同じ金額で、サルの分のモヤシも買ってあげるから。 あんたは、モヤシ三昧の食卓を満喫したいんでしょ? |
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いやいや、違うでしょ、ソレは! あたしは、あくまでも限られた予算の枠内での話をしていたんであって、外的資金の援助が得られるのであれば、他の選択肢だって当然に考えたわけだし・・・ |
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妹さんに優しいお姉さんにだったら、私も気持ちよく差し入れさせてもらったんだけどなぁ。 | ||
くっ・・・なんだか、してやられた感が半端ない・・・だが、しかぁーし! 『退かぬ、媚びぬ、省みぬ!!』 |
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・・・。 (少しは反省して下さいです・・・。) |