今日の勉強会と、次回の勉強会の2回で即時取得について、その後の勉強会では、即時取得の特例について学ぶことにするわね。 | ||
かなり以前に、ソノ名前だけは聞いたよね。 なんか、よく覚えてないんだけど、名前がいいよね。 「すぐに」「もらえちゃう」って感じだもんね、即時取得って名前は。 |
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即時取得には、ちゃんと要件があるんだから、なんでも「もらえちゃう」ってわけじゃないよ! | ||
まぁ、そうだとは思うけどさ。 でもまぁ、名前はいいよなぁって思って。えへへへへ。 |
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・・・。 (なんだか、また藤先輩が悪い顔をしているです・・・。) |
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理由はどうあれ興味をもってくれているのは嬉しいわ。 今日の勉強会では、サルも真面目に聴いてくれそうね。 実は、この即時取得。 今年(2015.5.17更新)の新司法試験の民法論文問題でも問われているわ。 第1問(1)の相手側からの反論の根拠は、まさに、この即時取得の主張だったわね。 他にも、立木の明認や、付合、そして、今回学ぶ即時取得に、177条の対抗要件の可否、留置権・・・と、今年の民法の論文問題は、物権からの出題が中心だったわね。 最後の設問こそ不法行為のオーソドックスな問題だったけれど、大問の1と2は、物権の理解を問うものだったからね。 不動産が、動産に変わり、また不動産に・・・という民法物権編のストーリーを垣間見ることのできる面白い問題だったわね。 また、一緒に検討することもあればって思うわ。 それじゃ、まずは、即時取得の勉強会に先立って、即時取得制度について定めた条文の確認からね。 六法で、民法192条を確認してくれる? |
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民法第192条。 『(即時取得) 第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。』 |
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公信の原則の勉強会の際の事例なんだけど、ココで、即時取得を知る上で、もう1回つかっちゃおうかな。 同じ話だから憶えているんじゃないかしら? 私にはお母様から形見としてもらった宝石があるわよね。 その宝石を、サルがパーティーに行くので貸して欲しいって言うから、一晩貸してあげた、という、あの事案ね。 ところが、サルときたら、その宝石をパーティーの後、つかさちゃんに売り飛ばしてしまったの。 つかさちゃんは、サルが着けていた宝石を、サルの物だと思い込んでいた、ということにしてね。 さぁ、この場合、私は、つかさちゃんに私のお母様の形見の宝石を返してくれって言うことができると思う? っていう事案だったわよね。 図で示すと、下の図になるわ。 |
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あぁ、やった、やった。 無辜のあたしを、悪人に仕立てるお決まりの事案だったよね、コレも。 |
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事案のサルなんだから、別に他意はないわよ! あの勉強会の際に話したわよね。 宝石は動産よね。 そして、動産については、民法は公信の原則を採用しているって話だったわよね。 そのことを民法上の条文で定めているのが、192条なのよね。 ここで、出来れば私の説明の前に、以前の話を再度思い出して欲しいわ。 それから、また改めて今日の勉強会の説明を聴いて欲しいかな。 より即時取得制度が分ると思うわ。 同じ内容でも、色々な説明の仕方があるわよね。 私も、敢えて、ここでは違う説明をしようって思っているから。 |
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それじゃ、少し待ってて欲しいです。 以前の勉強会のノートを、読み返してみるです! |
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(ほけぇ〜) |
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サルは、ナニをボーっとしているのよ。 あんたも、ナカちゃんみたいにノート見返したりしないわけ? |
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邪魔しないでよっ! あたしは、今こうやって自分の中にある記憶を思い出すことで、以前の勉強会での、まとめを整理しているんだからさ。 |
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流石、藤さんですっ! | ||
あら、そうですかっ!! じゃあ、事案について説明しちゃうからね? この事案では、私は、サルに宝石(動産)を貸しただけなんだから、宝石の所有権は、サルには移転しないわけよね。 つまり、サルは宝石の所有者ではないわ。 だから、サルから宝石を買った、つかさちゃんは、それによって宝石の所有権を取得することはできないわけよね。 『何人(ナンビト)も無権利者から所有権を取得することはできない』とする原則は、ここでも働くわけだからね。 ということは、つかさちゃんが、宝石をサルの物だと信じて買ったとしても、私は宝石の返還を請求することができる、という結論になるはずよね。 でも、動産の譲渡は、極めて頻繁に、それも短時間の間に、何人もの間を移転することが普通よね。 その途中に、今回の事案のサルのような無権利者がいるために、その後の動産取引による所有権移転が全て否定される・・・としてしまうと、取引社会に無用の混乱をもたらし、到底、取引の安全が確保されないことになってしまうわよね。 即時取得制度は、このような動産流通保護から求められた制度なの。 どういうことかって言うと、つかさちゃんは、宝石を現に占有しているサルを、宝石の持主だと思ったからこそ、宝石をサルから買い受けたわけよね。 サルが宝石を占有していることは、サルが宝石の所有者らしい外観をもっていた、ということになるわ。 その外観を信じたからこそ、つかさちゃんは宝石をサルから買ったのに、でも実は、その宝石は私の物でした・・・という場合には、つかさちゃんの信頼を保護して、つかさちゃんに宝石の所有権を認め、私の宝石の所有権を失わせることによって、広く動産取引の安全を保護しよう、というのが192条(即時取得)の趣旨になるわ。 |
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192条の即時取得の制度趣旨は、動的安全の保護だもんね! | ||
ん? ドウテキアンゼン? ナニ、それ? |
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動的安全ね。 少し説明を加えるわね。 即時取得制度の対象は、動産に限られるわ。 不動産については、即時取得は適用されないの。 ソレが何故か、について説明するわね。 まぁ、何故かって言うよりは、むしろ、その国の立法政策の問題とも言えるんだけど、日本の民法では、動産については、事案でいうところのサルの宝石の占有という動産物権の公示によって、サルを所有者と信じて、サルと取引をした、つかさちゃんを保護して、真の所有者である私を犠牲にすることを止むを得ない、と捉えているわけ。 でも、不動産については、例えば仮に、不動産物権の公示であるサル名義の登記があったとしても、その登記をみてサルを所有者と信じて、サルとつかさちゃんが取引をしたとしても、つかさちゃんが保護されるわけではなく、真の所有者である私の権利が保護されることになるわ。 まとめると、次のことが言えるわね。 動産については、真の権利者を犠牲にして、取引の安全を優先。 不動産については、取引の安全を犠牲にして、真の所有者の権利を優先。 この取引の安全を動的安全。 他方、真の所有者の権利を守ることを静的安全というのね。 動産については動的安全の保護が求められ、不動産については静的安全の保護が求められる、と換言できるわね。 動的安全を保護するということは、公信の原則がとられているということ。 静的安全を重視するということは、公信の原則をとらない、ということになるわね。 |
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・・・説明なげぇお。 | ||
即時取得の話をするのは、実は今回が3回目だからね。 (1回目 答案勉強会第2回 2回目 民法物権勉強会第5回) ある程度、予習で理解があることを前提に、まだ伝えていないことを、ここで、まとめとして伝えたいなって思ったのよね。 ソレで、そう言えば、即時取得の趣旨については、あまり説明していなかったなぁって思ってね。 公信の原則や、公示については、もう勉強済みだから、その説明は要らないかなって思って、今回はちょっとノンストップで説明してみたんだけど、ちょっと解かりづらかった? |
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ううん! チイは大丈夫だったよ! |
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私もよくワカッタです。 | ||
藤さん。 御心配はいらないみたいですね? |
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・・・お、お、おう。 (あたしが心配なんだけどなぁ。) |
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あ、そうそう。 因みに、事案の答えとしては、つかさちゃんに即時取得が成立するのであれば、それによって、つかさちゃんは宝石の所有権を取得し、他方、つかさちゃんに宝石の所有権が認められるとするならば、同時に、私にも宝石の所有権があるとはいえないから、私の宝石の所有権は消滅ってことになるわね。 この事案において、つかさちゃんに即時取得が成立するか否かを考える上で求められる即時取得の要件については、答案勉強会第2回で、チイちゃんが全部言ってくれたけれど、一応、民法物権の勉強会なんだし、次回は、1回まるまるを即時取得の要件の理解にあてて話すことにするわね。 |
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うーん、ちょっと今日の勉強会は、説明ばっかでワカリづらかったように思うなぁ。 | ||
サルは、頭の中で整理できているんでしょ? だったら、これくらいの説明は問題ないんじゃなくって? |
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えーっと、アレじゃないかな。 ナカちゃんみたいな学部の子もおるわけだし、もう少し噛み砕いた説明をしてくれても、いいんじゃないかな、っと、あたしは思うわけ。 |
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藤先輩の気持ちは嬉しいですけど、私はワカったです。 | ||
って言っているけど? (サルぅ〜。 初学者なんだし、素直にワカラナイからって言えばいいじゃないの。) |
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ぐぬぬぬぬぬぬ。 (うーん、ぶっちゃけ、ワカラナイわけではないんだけどなぁ。 途中、途中の言葉が、ちょっと意味がワカラなくって思考停止したりしちゃったんだよなぁ。 ) |
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ソレは、きっと藤先輩が復習をされてないからです。 一度聴いただけで、理解できるなんてことはないです。 |
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うわっ!! サトリの妖怪だおっ!! |
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藤先輩! 私の、これまでの勉強会のノートを貸すです。 是非、このノートをコピーして、今までの勉強会の復習をして欲しいです。 いくら、藤先輩が物覚えが得意と言っても、『記憶より記録』って言葉もあるです。ノートに、まとめることは必要だと思うです。 だから、私のノートを貸すです、使って下さい。 |
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あ、ありがとう・・・。 ナカたん・・・。 |
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ちゃんと次からは自分でノートに、まとめるようにしなさいよ? | ||
・・・うんうん。 (って言うか、毎回コピーもらえば、いんじゃね? まとめは、このチビっ子がしてくれるわけだし、あたしは、ソレをコピーして読んどきゃ、いいわけでしょ? 天才じゃね? あたしってば天才じゃね? ) |
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あうあうあうあうあう。 (・・・ダメだ、こいつ・・・。 なんとかしないと・・・です・・・。) |