地方公共団体 | ||
それじゃ、今回からは地方公共団体について学ぶことにするわね。 先ずは、地方公共団体の定義からね。 |
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ハッ! 言われてみて、六法を見てみたのですが・・・。 憲法第8章の憲法92条から95条には、いずれも『地方公共団体』という文言がありますが、肝心の『地方公共団体』とはナニかってことについては規定していないです! |
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・・・そんなもの、いちいち言わんでもワカルからじゃね? | ||
法律用語辞典によれば『地方公共団体』とは 『国の一定の地域をその場所的要素とし、人的要素としてその地域の住民を構成員とし、国法によって認められた公権力その他の機能をもって公共の福祉の実現を目的とする公共事務を処理する権限を有する法人格のある団体』 (『法律用語辞典【第4版】』有斐閣 2012年 773頁) と定義されているわね。 |
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スッゴい当たり前のことを、やたら小難しく言ってんのな!! | ||
どんな文句よ、ソレは。 ただ、地方公共団体と一口に言っても「都道府県」と「市町村」とがあるわよね。 地方自治法1条の3を、ちょっと見てもらってもいいかしら? |
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地方自治法第1条の3 『地方自治法第1条の3 【地方公共団体の種類】 1項 地方公共団体は、普通地方公共団体及び特別地方公共団体とする。 2項 普通地方公共団体は、都道府県及び市町村とする。 3項 特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合、財産区及び地方開発事業団とする。』 |
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コレ見ると、都道府県も市町村も、同じ普通地方公共団体なんだね。 | ||
そうなるわね。 ただ、この定めは地方自治法の定めであって、憲法上のものではないわ。 そのため、都道府県と市町村という二段階制の地方公共団体を、憲法はどのように捉えているかが問題となるのよね。 |
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学説は大きく2つの考え方がありますよね。 二段階立法政策説と、二段階制保障説の2説ですよね。 通説的な理解としては、後者の二段階制保障説とされています。 藤さんを真似してザックリとした説明をするならば、都道府県・市町村という二重構造は、憲法上の要請であると捉えるわけですね。 |
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す、す、すごくザックリと、まとめちゃったわね。 まぁ、踏み込むと難解なところだし、そ、それくらいでいいのかしら・・・ね・・・。 えーっと、さっきナカちゃんが読んでくれた地方自治法1条の3によれば、都道府県及び市町村の普通地方公共団体と、特別区、地方公共団体の組合、財産区の特別地方公共団体とがあるわけよね。 |
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特別区って、なんだお? |
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あ、そうね。 特別区については、地方自治法281条第1項を見てもらえるといいわね。 ナカちゃん、御願いできる? |
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地方自治法第281条第1項 『地方自治法第281条 【特別区】 1項 都の区は、これを特別区という。』 |
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『都』・・・って、コレ、東京都のことだよね。 ってことは『都の区』ってことは、東京23区のことかぁ。 東京23区のことを『特別区』っていうわけね。 |
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そういうこと。 この『特別区』が、憲法上の『地方公共団体』にあたるのかが問題となるわ。 |
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え? あたるんじゃないの? | ||
そうね。 学説は、『特別区』も憲法上の『地方公共団体』にあたる、あたらない、という両説があるわ(前者を積極説、後者を消極説)。 では、この問題を判例は、どう捉えているのか、ということを見てみることにしましょうか。 |
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渋谷区長選任贈収賄事件ですね? (最大判昭和38年3月27日 百選U207事件) |
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そうね。 事件名からワカルように渋谷区の区長選任に際しての、賄賂の収受が問題となったんだけれど、事案自体は、あまり問題ではないわ。 今日の勉強会との関係でいうと、東京都渋谷区・・・つまり『特別区』が、憲法上(憲法93条2項)の『地方公共団体』にあたるのかが問題となった事件なの。 |
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あたしは、あたると思うお! | ||
理由もなしの当否を言われてもねぇ。 それじゃ、判例の考え方を見てみることにしましょうか。 判決文は次のものになるわ。 『憲法は、93条2項において『地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙する。』と規定している。 何がここにいう地方公共団体であるかについては、何ら明示するところはないが、憲法が特に一章を設けて地方自治を保障するにいたつた所以のものは、新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となつて処理する政治形態を保障せんとする趣旨に出たものである。』 |
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はいはい。 『地方自治を保障するにいたつた所以』は、住民自治と団体自治からってことだよね。 |
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まぁ、そういうことよね。 そして、次に続くわ。 『この趣旨に徴するときは、右の地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである。 そして、かかる実体を備えた団体である以上、その実体を無視して、憲法で保障した地方自治の権能を法律を以て奪うことは、許されないものと解するを相当とする。』 として、憲法上の『地方公共団体』であるためには、単に名前だけの存在ではなく、実体が必要である、と述べているわけね。 そして上記規範に基づいて、本件で問題となっている『特別区』である渋谷区は、どうなのか、という点についての細かい検討をしていくことになるわ。 『翌(昭和)22年4月制定された地方自治法においても、特別区は『特別地方公共団体』とし、原則として市に関する規定が適用されることとなつた(283条、附則17条)。 しかし、これら法律の建前が特別区の事務、事業の上にそのまま実現されたわけでなく、政治の実際面においては、区長の公選が実施された程度で、その他は都制下におけるとさしたる変化はなく、特別区は区域内の住民に対して直接行政を執行するとはいえ、その範囲および権限において、市の場合とは著しく趣きを異にするところが少なくなかつた。 このことは次に掲げる諸法律の規定に照らして、これを推認し得るに十分である。 すなわち、地方自治法においても、都は条例で特別区について必要な規定を設けることができ(282条)、都知事は特別区に都吏員を配置することができることとした(同法施行令210条)ほか、同法附則2条により現に効力を有する東京都制191条の規定に基づき、都制時代に都が処理していた事務の多くのものが依然として都に留保されていた。 また特別法の規定においても、法律上市に属する事務とされていながら、東京都にあつては、重要な公共事務が特別区の権限からはずされ或いは特別区全体を一つの対象として取扱い、都に市の性格と府県の性格とを併有せしめるものが、数多く認められる。』 『特に特別区の財政上の権能については、区は、前叙のごとく、昭和21年東京都制の一部改正により自主財政権が与えられ、独立して区税を賦課徴収し得ることとなつたにもかかわらず、同年の改正にかかる地方税法(昭和21年法律16号)においては、東京都の区は、ただ都の条例の定めるところにより都の課することできる税の全部または一部を区税として課することが認められているに過ぎず、さらに税目を起こして独立税を課する場合においても、都の同意を必要とする(85条ノ11、同条ノ12)と規定し、区を独立の課税権を有する地方団体としては取り扱わず、昭和25年の改正地方税法(同年法律226号)によつてもこの建前は変更されることなく(1条、734条ないし736条参照)、現在に及んでいる。 かように、特別区は昭和21年9月都制の一部改正によつて自治権の拡充強化が図られたが、翌22年4月制定の地方自治法をはじめその他の法律によつてその自治権に重大な制約が加えられているのは、東京都の戦後における急速な経済の発展、文化の興隆と、住民の日常生活が、特別区の範囲を超えて他の地域に及ぶもの多く、都心と郊外の昼夜の人口差は次第に甚だしく、区の財源の偏在化も益々著しくなり、二三区の存する地域全体にわたり統一と均衡と計画性のある大都市行政を実現せんとする要請に基づくものであつて、所詮、特別区が、東京都という市の性格をも併有した独立地方公共団体の一部を形成していることに基因するものというべきである。 しかして、特別区の実体が右のごときものである以上、特別区は、その長の公選制が法律によつて認められていたとはいえ、憲法制定当時においてもまた昭和二七年八月地方自治法改正当時においても、憲法93条2項の地方公共団体と認めることはできない。 従つて、改正地方自治法が右公選制を廃止し、これに代えて、区長は特別区の議会の議員の選挙権を有する者で年齢25年以上のものの中から特別区の議会が都知事の同意を得て選任するという方法を採用したからといつて、それは立法政策の問題にほかならず、憲法93条2項に違反するものということはできない。』 として『特別区』は、憲法上(=憲法93条2項)の『地方公共団体』にはあたらない、とする結論となっているわね。 この考え方は、学説でいうところの消極説の考え方と親和的なものといえるわね。 |
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あらま。 『特別区』って名前なのに、特別扱いされるどころか『普通地方公共団体』扱いさえされないんだ。 マヂで名前だけで、実体がないじゃないの。ソレ。 |
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相変わらず、おかしな評価してるわね。 えーっと、少し短いんだけれど、区切りのいいところだから今日の勉強会は、ここまでにするわ。 |
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賛成、賛成、大賛成っ!! それじゃ、早く終わったことだし、ネージュ・ブロンシュに行って、一息入れよう!! |
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一息入れる程、頑張ったのかしら。 | ||
オネーちゃんは、いつもと一緒だったと思うよぉ。 | ||
ということは、いつも通り一生懸命だったということですよね! | ||
・・・。 (今のチイちゃんの言葉のニュアンスから、その結論に至る黒田先輩がスゴいです・・・。 もう随分一緒にいるというのに、藤先輩への評価が改まらないどころか、なんだか以前にも増して、藤先輩への評価が上がっている気がしてならないです・・・。) |