内閣の組織と権能@ 閣議と文民について | ||
さて。 今回と次回、次々回の3回に分けて、内閣の組織と権能について、まとめることにするわね。 まぁ、正直、この3回で学ぶ内容は、殆ど憶えることばかりで、あまり面白みのないところかも知れないけれど、択一で問われる以上は、避けては通れないってことで。 それじゃ、今日から勉強する内閣の組織と権能について、条文と一緒に抑えていくことにしましょうか。 まずは六法で、憲法66条を確認してくれる? |
||
日本国憲法第66条。 『第66条 【内閣の組織、国会に対する連帯責任】 1項 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。 2項 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。 3項 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。』 |
||
憲法66条1項にあるように、内閣とは『その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣』で構成される合議体なのね。 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、合議体として内閣の構成員であるとともに、その各省庁の大臣でもあるの。 ただし、このことは無任所(ムニンショ)大臣が存在することを妨げるものではないわ(内閣法3条)。 |
||
無任所大臣って、無職の大臣ってこと? | ||
大臣という職務に就いている以上、無職ってことはないでしょうに。 無任所大臣というのは、特定の省庁に就いていない大臣のことね。 そういった無任所大臣も、内閣の合議体の一員として認められるってことが内閣法3条に定められているって理解でいいわ。 |
||
憲法の勉強会なんだから、内閣法の話なんて必要ないだろ。 常識的に考えて。 |
||
ただ、択一の過去問では、このような質問もありましたからね。 『内閣の構成員である各大臣は、それぞれ主任の大臣として、行政事務を分担管理することになる。 行政事務を分担管理しない国務大臣として無任所大臣を置くこともできるが、主任の国務大臣の場合と異なり、憲法上その存在を予定する規定はみられない。』 ○ か × か? という問題ですね(平成17年旧司法試験択一問題)。 |
||
答えは○ですよね。 |
||
そうですね。 少し引っ掛けくさい気はしなくはないですけれど、無任所大臣については、内閣法に定めがあるだけで、憲法上は、その存在を予定する規定はないわけですから、正解は○ということになりますね。 |
||
つかさちゃん、ありがとうね。 というわけで、木下さんも、憲法の勉強会において内閣法についても言及していることの必要性を御理解いただけたかと思いますけど。 因みに国務大臣の数は、現行法上14人以内で、最大17人とされているわね。 これも、木下さんは御不要と思ってみえる内閣法2条に定めがあるんですけれどね。 じゃあ次は、六法で憲法67条1項、68条1項を見てくれる? |
||
日本国憲法第67条1項。 『第67条 【内閣総理大臣の指名】 1項 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決でこれを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だって、これを行ふ。』 日本国憲法第68条1項。 『第68条 【国務大臣の任命】 1項 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。』 |
||
ナカちゃん、ありがとうね。 内閣総理大臣は国会議員であること(憲法67条1項)、国務大臣はその全員が国会議員である必要はないが、過半数は国会議員であることが必要(憲法68条1項但書)とされているわね。 続いて、憲法72条、74条を見てくれる? |
||
日本国憲法第72条。 『第72条 【内閣総理大臣の職務】 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。』 日本国憲法第74条。 『第74条 【法律・政令の署名】 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。』 |
||
内閣の組織について、憲法からワカルこと・・・なんだけど。 憲法は、『行政各部』(憲法72条)や、『主任の国務大臣』(憲法74条)に言及しているわよね。 つまり、これは内閣の下に行政組織が形成されることを、憲法が予定していることを示しているわけ。 因みに、行政組織を構成する『官吏に関する事務』については憲法73条4号で 『憲法73条 【内閣の職務】 4号 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理(ショウリ)すること。』 と定めているんだけれど、内閣の下におかれる行政組織については、法律によるべきことを明示的には規定していないのよね。 ただ、この点について通説的理解は、これを法律事項であると解しているわ。 |
||
では、ここで旧司の過去問から質問を。 『日本国憲法では、明治憲法と異なり、国民の民主的コントロールを徹底させる趣旨から、内閣の下にある行政組織については法律で定めるべきことを明文で規定している。 ただし、行政組織の細部まで、すべてを法律で決めなければならないわけではなく、社会の変化に応じて必要な内部組織の編制替えを迅速・柔軟に行うことができる。』 ○ か × か? という問題ですけど、答えはドッチでしょう? (平成17年旧司法試験択一問題)。 |
||
んんん・・・。 ドッチだろ・・・。 |
||
答えは×ですよね。 | ||
そうですね、正解です。 随分長い問題文のようにも見えますけれど、『日本国憲法では』『内閣の下にある行政組織については法律で定めるべきことを明文で規定している。』という一文で、アウトですね。 ですから正解は、×ということになります。 択一の内閣のところは、ホントこの手の六法の知識の理解を問う問題が多いんですよね。 |
||
まぁ、旧司の問題だからね。 新司法試験を受験する、あたしには関係ないよね。 |
||
・・・。 (・・・ダメだ、こいつ。 なんとかしないとです・・・。) |
||
じゃあ、次は閣議についてね。 閣議については、内閣法4条に定めがあるわ。 一応、見ておくと・・・。 『内閣法第4条 1項 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。 2項 閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。 3項 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。』 とされているんだけど。 閣議については、原則として全員一致が求められるわね。 これは、憲法66条3項が 『内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。』 として、内閣の連帯責任を定めている以上、内閣としての一体性が求められているからなの。 まぁ、少し余談になるけれど。 閣議は非公開であって、閣議の秘密を守ることは閣僚その他の参加者の倫理的義務とされているわ。 閣議の内容を外部に公表するときは、実際に内閣総理大臣の委任を受けて、閣議を進行する役割をもつ内閣官房長官が、それを担当するという例になっているわね。 |
||
7条解散については、ここで触れておかれるのでしょうか? | ||
議院内閣制の衆議院の解散のところで説明しようかと思っていたんだけど、ここで説明した方がいいかしら? | ||
・・・いえ、光ちゃんが進行しやすいようにして頂いて構いませんが。 (・・・7条解散の話が出たら、そこから苫米地事件の判例検討って流れにしようと思っていたんだけど、このままだと判例検討ないままになっちゃうから、なんて言えないし。 どうしよう・・・また判例検討のない勉強会に出たことになっちゃったけど、いいのかしら?) |
||
ん? 解散、解散って、さっきから言ってるけど、もう今日の勉強会は解散ってことでいいの? オワリ? オワリ? |
||
耳ざとく「解散」の二文字に反応しないの! 今日の勉強会のタイトルは、2つあったでしょ? 閣議と文民について・・・。 つまり、まだ文民についての説明をしていないじゃないの。 というわけで、今から文民についての説明をするわね。 ナカちゃん、何度も読んでもらって申し訳ないんだけれど、憲法66条2項だけでいいから、もう一度読んでくれる? |
||
六法読むのは大事なことです! 申し訳ないなんてことは、全くないです! 日本国憲法第66条。 『第66条 【内閣の組織】 2項 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。』 |
||
エラいっ! 流石ナカちゃんっ!! えーっと、この憲法66条2項は、文民統制、いわゆるシビリアンコントロール(civilian control)をうたっているわけね。 文民統制というのは、軍が政治に介入するのを防止するために、通常の政治部門と軍組織とを分離し、政治部門が宣戦、講和、軍隊の規模などの軍に関する重要決定を行い、軍を自己の統制下におくことをいうんだけど。 まぁ、サルが好きなザックリした言い方をするなら、軍隊が暴走しないように文民で止めることってことかな。 |
||
はいはい。 よくワカリました。 それじゃ、解散! 解散! |
||
はい・・・解散中止っ! ここで、憲法66条2項にいう『文民』の意味が問題となりまーす。 この『文民』の意味について学説は幾つか分かれているんだけど。 その意味を狭く解するものから、広く解するものまであるわけだけど、幾つか紹介しておくわね。 まずは『『文民』とは軍人でない者をいう。軍人であっても、軍人をやめたときは、そのときから『文民』になる。すなわち、『文民』は非軍人の意である。』 (宮沢俊義 『全訂日本国憲法』 日本評論社 1978年) 他には 『旧憲法下において正規の職業軍人であった者およびこの憲法下において現に自衛官である者は文民ではない』 (佐藤功 『憲法(下)新版』 有斐閣 1984年) あとは 『『文民』とは』『現在軍人でない者とこれまで軍人であったことをない者を含む』 (清宮四郎 『憲法T【第3版】) 有斐閣 1979年) 等の学説があるわね。 まぁ、これらの学説は戦前の職業軍人の扱いをどうするか、っていう議論からのものだから、今の日本には軍人はいないって話にもなるところだけどね。 ただ、現役の自衛官は『文民』ではないという点については争いはないところだから注意してね。退役された自衛官について、『文民』とすべきか否かという点については争いがあるわけだけど。 |
||
え? でも退役した自衛官が、入閣することだってあるわけでしょ? 争いがあるって言うのに、それはいいわけ? |
||
アラ。 帰る気満々だと思っていたら、いい質問するじゃない! そうね。 この問題についての政府見解は、こういう考え方なんだけど。 この政府見解と考え方を同じにする学説もあるわね。 『憲法99条により特に憲法尊重擁護の義務を有する国務大臣の資格要件として、平和憲法に適合的でないと考えられる軍国主義思想の持主ではないことを基準とすることは、旧憲法の職業軍人の経歴を有する者に絞りをかける基準として必ずしも不合理なものではない』 (中村睦男ほか 『注釈日本国憲法下巻』青林書院 1988年) ただ、軍国主義思想の持主なのかどうか、という点を明らかにして、その是非を決めるというのは、憲法19条に抵触するおそれがあるとも考えられるところよね。 |
||
確かに、とんでもない軍国主義思想の持主だって、自衛官にはいたからなぁ。 ゴトウ一等陸佐なんて、フンドシ一枚で戦う気満々だったよ。 あの変態は洒落になってないよね、うんうん。 (※ 生理的に受け付けない方も、おみえになるかと思いますので、リンク先の画像につきましては、勉強会との関連もないので自己責任でお願いします。) |
||
誰それ? | ||
『真女神転生』ってゲームに出てくる実在しない自衛官の名前です。 | ||
ちょっとっ! あんた、ナニ真面目な顔して、どうでもいい合いの手を入れてんのよ! |
||
いやだって、あの人の存在、あたしの中でトラウマになってるし。 フンドシ1枚って、マヂないわ・・・って。 |
||
ゴトウ一等陸佐・・・。 私も、しっかり憶えておくようにしますね。 |
||
いらない、いらない! 心底いらない知識だからね! ソレっ!! |
||
よしっ! クロちゃん!! 今度一緒に、あたしのPSPでメガテン(=『女神転生』の略)をやろう! ゴトウ一等陸佐を、一緒にフルボッコにしてやろうよ! |
||
はいっ! 是非っ!! | ||
・・・・。 (1人用RPGのゲームを、あの画面の小さいPSPで、どうやって一緒に遊ぶというのか、非常に興味深いところです・・・。) |