国会議員の権能 国会の権能 | ||
今日の勉強会では、2つのテーマを中心に学ぶことにするわね。 国会議員の権能。 そして、 国会の権能 の2つね。 因みに、先に言っておくけれど、次回は議院の権能って流れだから。 |
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国会についての勉強会、長いねぇ。 まだ、続くんだ・・・。 |
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あと2回ってところかな・・・。 議院の権能では、少し検討判例も多いから、場合によっては2回に分けるかも知れないから、その場合はあと3回って感じになると思うけれど。 まぁまぁ。文句言っても始まらないから、今日の勉強会始めましょ。 国会議員の権能を、まず説明するわね。 まずは議案の発議権。 これは国会法56条に定められているわ。 ここにいう『議案』とは、案を備えて提出することを要するものを意味するわ。案を備える必要がない『動議』と区別するためね。 因みに、この区別は、帝国議会からの慣例としての区別みたいね。 |
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『動議』ってアレかな? 国会中継とか見てるときに「議長ぉ〜」ってやっとるヤツ? |
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そうそう、ソレ。 因みに、予算、条約、皇室の財産授受に関する議決案、決算などについては、内閣が発議権を有するわね(憲法73条)。 議案の発議権以外には・・・。 さっき出てきた動議の提出権。 『動議』とは、議院の議会または委員会において、議員が特定の事項を議題として持ち出すことをいい、議案として特別の取り扱いをされるもの(国会法56条)以外の議員の発議をいうわ。 あとは、質問権と質疑権。 この2つは別物だから、区別できるようにね。 両者がどう違うのかと言うと、 『質問』とは、議題と関係なく、内閣に対して説明を求め、所見をただすことをいうものなの。 この『質問』には、一般質問(国会法74条、75条)と緊急質問(国会法76条)があるわ。 そして、『質問』と区別される『質疑』というのは、議題となっている案件について、その疑義をただすことができるというものなの。 |
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議題と関係しているかどうかで『質問』か『質疑』かに分かれるということですね。 | ||
そういうことね。 次は、討論権。 これは、議題となっている案件について、質疑終了後、賛否の意見を表明することができるものね。 最後に、表決権。 議題となっている案件について賛否の判断を表明することができるもので、この表決権を議員が自由に行使しうることは憲法によって保障されているわ。 一応、六法で確認しておきましょうか。憲法51条を見てくれる? |
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日本国憲法第51条。 『第51条【議員の発言・表決の無責任】 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。』 |
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免責特権の条文だね。 |
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そうね。 ただ、憲法51条は表決権を保障する条文でもあるわ。 というわけで、国会議員の権能としては、今の説明から 議案の発議権 動議の提出権 質問権 質疑権 討論権 表決権 があるということね。 |
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なんか今日の勉強会は、アッサリ淡々と進んでいる感じだねぇ。 クロちゃんも来てないってことは判例検討もないって思っていいの? |
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特に論点らしい論点があるわけじゃないしね。 つかさちゃんも、ワカッテいるから今日は来ないって選択していると思うわね。 じゃあ、次の論点いくわね。 次は国会の権能についてね。 国会の権能には、 憲法改正の発議権(憲法96条) 法律の議決権(憲法59条) 内閣総理大臣の指名権(憲法67条) 内閣の報告を受ける権能(憲法72条、91条) 弾劾(ダンガイ)裁判所の設置権(憲法64条) 財政の統制(憲法60条、83条以下) 条約承認権(憲法61条、73条3号) 皇室財産授受の議決(憲法8条) があるわ。 それじゃ、それぞれの中身について見ていくことにするわね。 |
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多いなぁ・・・。 いや、マヂで多いよねぇ。 |
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全部細かく見ていくわけじゃないから、そんな顔しないの! 最初は、憲法改正の発議権よね(憲法96条)。 ここにいう『発議』の意味が問題となるわ。 憲法96条1項前段にいう『発議』とは、通常の議案について国会法などでいわれる『発議』とは異なり、国民に提案される憲法改正案を国会が決定することをいうとされるわ。 これに対して国会法などでいわれる『発議』とは、合議体において議案や動議など議事の対象となるべき案件を提起することをいうとされるわね。 |
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あぁ。なんか名前からワカリそうな話だね。ふむふむ。 | ||
次は、弾劾(ダンガイ)裁判所の設置権(憲法64条)ね。 弾劾裁判所についての説明はいらないわよね? ザックリ言っちゃうと、裁判官を裁判する裁判所をいうんだけど。 この弾劾裁判所の設置の権限を、憲法が国会に認めたのは、司法権独立の原則により特別の身分保障が与えられている裁判官の罷免については、公務員の選定罷免権を固有の権利として保持する国民を直接代表する国会議員で組織する国会とは異なる特別の裁判所による独立・公正な判定に委ねるのが適切だと考えられたから、と説かれるわね。 |
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それは違うよ! 明智君っ!! 『論破』 |
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え? どうして、どうして? 何処がおかしいの? |
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弾劾論破。 | ||
明智先輩・・・。 藤先輩は『ダンガンロンパ』で洒落を言いたかっただけです。 |
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驚かさないでよね! 下らない冗談言わずに、ちゃんと聞いてなさいよ! 「論破」なんて言った以上、相応の知識があってのことなんでしょうね? じゃあ、質問してあげるから答えてみなさいよ! 質問! 衆議院が解散されたときは、弾劾裁判所はその活動をすることができない。 ○ か × か? |
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○・・・。 でしょうか? |
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それは違うよ! 竹中君っ!! 『論破』 |
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違わないわよっ! 正解よっ!! あんたもう、それがやりたいだけじゃないのよ!! 質問の答えも考えずに、下らない冗談ばっかりやってるんじゃないわよ! 憲法64条1項は 『国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。』 としているわ。 『両議院の議員で組織』と定めている以上、衆議院の解散により、衆議院議員全員の議員たる身分が失われ、衆議院が不存在となった以上、弾劾裁判所は活動をすることができなくなるってことよね(裁判官弾劾法20条)。 だから、正解はナカちゃんの言うように○になるわね。 |
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アホアホアホアホ!! | ||
・・・・。 (藤先輩・・・似合い過ぎてて悲しいです。) |
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アホは、あんたじゃないのよ! その言葉、鏡に向かって言いなさいっ! ちょっと論点が多いのは、条約承認権(憲法61条、73条3号)ね。 あ、因みに条約とは、広く文書による国家間の合意を指し、条約、協定、協約、議定書、宣言、憲章などがあるわね。 この条約の意味は、国際法上の条約と、憲法上の条約とで異なるところだから注意してね。 六法で、憲法73条3号を見てくれる? |
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日本国憲法第73条3号。 『第73条【内閣の職務】 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。 3号 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。』 |
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この条文にあるように、条約の締結は、内閣の職務なのね。 但し、『事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要』とするってことね。 これが、国会の権能である条約承認権なの。 この国会の承認は、国内法的かつ国際法的に、条約が有効に成立するための要件であると解されているわ。 その意味では、条約締結は、内閣と国会の協働行為だと言えるわね。 また、国会の承認は原則として『事前の承認』とし、『事後の承認』は、あくまでも例外的な場合にすべきとされるわね。 つまり、『事後の承認』は、特にその条約を成立させることに緊急の必要性があるような、やむを得ない場合に限定すべきであるとされるわ。 |
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じゃあ、もし内閣が国会の承認を事前に得ずに、条約を締結してもぉて、その後、国会が 「ナニ勝手に、そんな条約なんて結んでいるだよ! 承認なんてしてやらねぇよ! ばぁーか!!」 ってなったら、どうするんだお? |
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すごくいい質問だと思うんだけど、表現があまりにあまりね。 つまり、こういうことでしょ? 事後の承認が欠けている場合に、条約の国際法的効力は、どうなるのか? って聞きたいわけでしょ? 事前に承認が得られなければ、内閣は条約を締結することができないわけなんだから、条約が成立することはないから、問題にはならないわよね。 問題は、今、サルが言ったような場合よね。 つまり、事後不承認の場合、条約の国際法的効力はどうなるの? って問題ね。 この条約の国際法的効力については、次の3説があるわ。 @有効説 条約の国内法上の効力と、国際法上の効力とを区別し、国際法上は有効とする考え方。 A無効説 国内法的にも国際法的にも無効と解する考え方。 B条件付無効説 条約に関するウィーン条約46条に照らし、国会の承認権の規定の具体的意味が、諸外国にも「周知の」要件と解されるような場合には、国際法的にも無効であるとする考え方。 の3説ね。 国会の意思を尊重するという前提に立つのであれば、国会の事後承認が得られない条約については、AかBの考え方になるといえるわね。 |
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じゃあさ、じゃあさぁ。 「条約を承認して欲しいんだったら、お前ら(=内閣)の締結しようとする条約の、ココと、ココを直すんだったら、認めてやってもいいぜ?」 って国会が言ったとしたら、どうなるわけ? |
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あんたの頭の中にある国会は、さっきからなんで、そんなに性格がひん曲がっているのよ! でもまぁ、その論点もあるわね。 国会の条約修正権についてね。 通説的理解としては、否定説とされているわね。 否定説によれば 『条約を締結するについて外国と交渉することは、内閣の職務であり、日本国を代表して条約案の作成に参加するのも内閣である。 したがって、国会は、内閣が外国と交渉して作成した条約案を承認する権限を有するだけであり、その承認を与えるに当たって、原案に変更または増補を加えることは許されないと解するのが正当であろう』 と説かれるわね。 (宮沢俊義 『全訂 日本国憲法』(日本評論社 1978年 565頁)) |
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・・・。 (藤先輩の頭の中の国会は、暴力沙汰は起こすわ、喧嘩上等だわ、嫌がらせをするわ、足は引っ張るわ、とんでもないです。) |
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それじゃ、最後に、皇室財産授受の議決についてね。 六法で、憲法8条を見てくれる? |
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日本国憲法第8条。 『第8条【皇室の財産授受】 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。』 |
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これは、皇室に不明朗な財産が流れ込んだり、また、皇室から自由に財産が流れ出したりすることによって、世間の疑惑を招き、皇室と特定の者との好ましくない結びつきができないように、皇室関係の財産授受を国会の議決要件としている、と説かれるわね。 | ||
あたしみたいな人間に、一任してくれれば安心なのにね。 | ||
ナニ、それ。 突っ込んで欲しくって言ってるわけ? |
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え? 別に、そんなつもりは微塵もなかったんだけど。 アレ? なんか、あたし今、おかしなこと言ったかな? |
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・・・。 (ダメだ、こいつ。 早くなんとかしないと・・・です。) |